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血液専門医テキスト改訂第2版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本血液学会
ISBN : 978-4-524-26157-4
発行年月 : 2015年6月
判型 : B5
ページ数 : 604

在庫なし

定価16,500円(本体15,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

「血液専門医研修カリキュラム」に則ったテキストの改訂版。主要な兆候と検査値異常などの基礎的事項から、腫瘍性・非腫瘍性疾患の病因・病態・診断・治療、患者教育、形態学までの幅広い内容を網羅し解説。今改訂では『造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版』との整合性を取るなど、最新の診療動向を反映した。巻末付録には「血液専門医試験過去問−解答と解説」を収載。専門医をめざす医師必携の一冊。

第I章 造血システムと腫瘍化
 1.造血幹細胞
 2.血球産生と分化
 3.鉄代謝と造血
 4.骨髄性白血病の発症機構
 5.リンパ腫の発症機構
第II章 止血機構
 1.止血・抗血栓機序
第III章 主要な兆候と検査値異常
 1.リンパ節腫大,扁桃腫大,肝脾腫の鑑別
 2.貧血の鑑別
 3.多血症の鑑別
 4.白血球増加症・減少症の鑑別
 5.血小板増加症・減少症の鑑別
 6.出血傾向の鑑別
 7.血栓傾向の鑑別
第IV章 臨床検査・画像検査
 1.骨髄穿刺/骨髄生検
 2.細胞化学的検査
 3.溶血に関する検査
 4.表面形質検査
 5.染色体検査
 6.分子生物学的検査:サザンブロット・ハイブリダイゼーション法,点突然変異
 7.分子生物学的検査:PCR法
 8.リンパ節生検時の検査
 9.リンパ腫の病期診断・治療効果判定とFDGPET(PET-CT)
第V章 治療法:薬剤,放射線,脾摘術
 1.抗血栓薬(抗凝固薬,抗血小板薬,線溶薬)
 2.抗がん薬の作用機序と分類
 3.抗がん薬の副作用
 4.分子標的薬の作用機序と分類
 5.分子標的薬の副作用
 6.放射線療法の適応
 7.放射線療法の副作用
 8.脾摘
第VI章 輸血
 1.血液型,交差適合試験,不規則抗体,HLA抗体
 2.血液製剤と血漿分画製剤
 3.輸血の適応
 4.輸血の合併症(感染症,TRALI,鉄過剰症など)
 5.交換輸血,アフェレーシス
第VII章 造血幹細胞移植
 1.同種造血幹細胞移植:適応疾患
 2.同種造血幹細胞移植:HLA適合とドナーソース
 3.同種造血幹細胞移植:移植前処置
 4.同種造血幹細胞移植:GVHD,GVL効果
 5.同種造血幹細胞移植:合併症(感染症,VOD/SOS)
 6.自己末梢血幹細胞移植:適応,幹細胞動員,前処置
第VIII章 赤血球系疾患
 1.鉄欠乏性貧血
 2.先天性溶血性貧血
 3.巨赤芽球性貧血
 4.自己免疫性溶血性貧血:温式,冷式
 5.発作性夜間ヘモグロビン尿症
 6.赤血球破砕症候群
 7.成人特発性再生不良性貧血
 8.小児特発性再生不良性貧血
 9.先天性骨髄不全症
 10.赤芽球癆廣川誠
 11.ACD(慢性疾患に伴う貧血)
 12.腎性貧血
第IX章 白血球系疾患:腫瘍性疾患
 1.WHO分類:骨髄系腫瘍
 2.WHO分類:リンパ系腫瘍
 3.慢性骨髄性白血病
 4.真性赤血球増加症
 5.原発性骨髄線維症
 6.本態性血小板血症
 7.その他の骨髄増殖性疾患
 8.骨髄異形成症候群
 9.急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)
 10.急性前骨髄球性白血病
 11.混合型急性白血病
 12.二次性(治療関連)白血病
 13.急性リンパ性白血病(Ph染色体陽性急性リンパ性白血病を除く)
 14.Ph染色体陽性急性リンパ性白血病
 15.慢性リンパ性白血病とその類縁疾患
 16.濾胞性リンパ腫
 17.MALTリンパ腫
 18.マントル細胞リンパ腫
 19.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
 20.Burkittリンパ腫
 21.末梢性T細胞リンパ腫
 22.NK/T細胞リンパ腫
 23.成人T細胞白血病/リンパ腫
 24.その他のリンパ性腫瘍疾患:菌状息肉症,Sezary症候群など
 25.Hodgkinリンパ腫
 26.マクログロブリン血症
 27.多発性骨髄腫
第X章 白血球系疾患:非腫瘍性疾患
 1.顆粒球減少症
 2.先天性免疫不全症
 3.HIV感染症
 4.伝染性単核症
 5.血球貪食症候群
第XI章 血栓・止血疾患
 1.血管障害による出血性疾患:血管性紫斑病
 2.特発性血小板減少性紫斑病
 3.播種性血管内凝固症候群
 4.血栓性微小血管症
 5.heparin起因性血小板減少症
 6.抗リン脂質抗体症候群
 7.先天性血小板減少症・機能異常症
 8.血友病
 9.von Willebrand病
 10.後天性血友病A
 11.先天性凝固・抗凝固因子欠乏症
第XII章 小児の造血器悪性腫瘍
 1.若年性骨髄単球性白血病
 2.小児の骨髄異形成症候群
 3.小児の急性骨髄性白血病
 4.小児の急性リンパ性白血病
 5.小児のリンパ腫
 6.Epstein-Barrウイルス関連T/NKリンパ増殖性疾患
 7.小児の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)とLangerhans細胞組織球症(LCH)
第XIII章 支持療法
 1.化学療法時の支持療法
 2.サイトカイン
 3.感染症の予防と治療
 4.鉄キレート療法
第XIV章 臨床腫瘍学,患者教育
 1.統計学を含む臨床研究
 2.オンコロジー・エマージェンシー
 3.がん性疼痛
 4.サイコオンコロジー
 5.長期的合併症と長期フォローアップ
 6.遺伝カウンセリング
第XV章 形態学
 1.骨髄・末梢血スメア標本
 2.骨髄生検像
 3.リンパ節生検像
第XVI章 医学研究と利益相反(COI)
付録
 1.血液専門医試験過去問−解答と解説
 2.血液専門医研修カリキュラム
索引

改訂第2版序文

 血液専門医テキストの第1版刊行から4年が過ぎ、第2版の刊行に至った。この間、血液学の進歩はめざましく、診断、治療が大きく変わりつつある。診断については、次世代シークエンサーをはじめとした分子生物学的な解析法が取り入れられ、新たな疾患分類やリスク分類が生み出される可能性が出てきている。治療についても低分子化合物・抗体薬などの分子標的薬の開発が爆発的といってよいほど進んでいる。
 臨床研究を取りまく社会的環境も大きく変化し、利益相反の明確化、倫理指針の順守、研究不正の防止が強く求められるようになった。また、専門医にかかわる制度についても大きく変わろうとしている。日本専門医機構が正式に発足し、今後少なくとも基本領域については、第三者である機構が認証することになる。サブスペシャリティについては、現時点でまだ明確な方針が定められていないが、今後研修プログラムや取得要件の修正が必要となる可能性がある。
 このように日本血液学会、血液内科医・血液小児科医をめぐる環境が急速に変化しつつあっても、血液専門医制度の基本的な理念は変わることはない。その理念は、社会的・医学的に専門医として認められる血液学の知識および診療能力を有し、人格的にすぐれた血液専門医の育成である。本テキストは、このような血液専門医を目指す医師に求められる血液学の知識を網羅したテキストである。血液疾患の診断法や治療法が進歩し大きく変わりつつある領域がある一方で、不変的で基盤的な血液学の知識とスキルが存在する。形態学は血液学の基本であり、それに基づいて診断基準が確立されている血液疾患も多数ある。本テキストでは、このような血液専門医が有すべき基本的な知識をもれなく提示するとともに、改訂に際してはできるだけ最新のエビデンスも取り入れた。また、今版では、利益相反、臨床研究の指針についても新たに章立てして盛り込んだ。血液学の領域は幅広く、造血、腫瘍、免疫、止血血栓、輸血、移植といった総論的知識と、血液疾患の診断・治療に関する各論的知識が必要とされる。従って、本テキストの内容は広汎で詳細に感じられるかもしれないが、その内容は専門医に求められる最低限の知識と理解いただきたい。本テキストで血液学の基本知識を得たうえで、さらなるスペシャリティを目指すことを期待するものである。
 本テキストを編集するにあたっては、日本血液学会教育委員会と専門医認定委員会が共同で編集委員会を組織した。本テキスト編集にご尽力いただいた両委員会の委員、および執筆いただいた諸先生に深く感謝申し上げる。本テキストによって、より多くの血液専門医が誕生し、より多くの血液疾患患者さんが最適の治療を受けられるよう心から願う次第である。

2015年4月
日本血液学会教育委員会委員長 宮ア泰司
日本血液学会専門医認定委員会委員長 張替秀郎

 専門医にとっての必須の知識と技術はどのように形成されるだろうか? 認定施設において学会指定カリキュラムに沿って数年間の修練がなされ、主治医として種々の疾患を経験する。その過程は一般に順次性に乏しい。種々の診断方法(顕微鏡観察を含む)、化学療法、分子標的療法、幹細胞移植療法、支持療法もまたランダムに経験が積みあげられる。
 カリキュラム中の全疾患を経験することが理想であるが、修練医の数、認定施設の患者バラエティー、指導医数なども千差万別である。したがって、均質な修練になることはまずない。加えて回診・カンファランス・文献抄読会なども行われる。これらは他の主治医の患者(疾患)について学ぶ最大のチャンスである。一定期間の後には知識と技術の積算量は着実に上がって、専門医に求められる基礎が築かれていく。
 蓄積された個々の知識と技術が、専門医試験が要求する標準的知識と技術をほぼ網羅していれば、試験のための勉強はとくに必要ないであろう。しかし、すでに述べた通り、疾患経験はランダムであることから、結果的に経験に乏しい疾患がどうしても残る。その知識をいかにして埋めるかが、修練医に求められる。ここにおいて真価を発揮するのがこのテキストである。
 専門医テキスト編集委員会により選定された項目ごとの執筆者は、その領域の日本のトップの先生方である。ここで改訂第2版の特色をあげてみよう。
 第1に各疾患の病態、診断法、治療法などの記述スタイルは、分担執筆にもかかわらず、ばらつきがほとんどない。これは本書の読みやすさに通じており、日々忙しい修練医にとって誠にありがたい点だと思われる。
 第2に大項目ごとに的確な到達目標が明示してあることである。これは読破する際、理解すべきポイントについての明確な羅針盤となる。
 第3に、上述したようにすべての修練医がすべての疾患を網羅的に経験することは不可能なことから、本テキストの最大の価値がここで発揮される。まず自験症例からどの程度知識が備わっているか、全編を手早く通読してチェックすることが可能となる。ここで自分の実力について大まかな自己採点が可能となる。同時に、まだ十分な経験もなく知識も不足気味の疾患(領域)について必読マークをつけることができる。以上の通読でいよいよ試験前に精読すべきポイントとその分量が明らかになる。
 さらなる本書の特色は、主要な疾患や検査法ごとに《ADVANCED》のコラムがあることである。展開中の新領域・知見が提示され、カンファランスや抄読会のように学問的な興味を刺激してくれる。最後に専門医試験において重視されている血球形態学の知識がまとめてあり、これも自分の形態学の能力を自己評価できるよいチャンスとなる。形態学が少し弱いと思われる場合は、さらに形態学の専門書(アトラス)に当たっておくと試験準備としては完璧であろう。もちろん普段の顕微鏡観察が重要であり、自分が最初に顕微鏡をのぞいて所見を判定できるかが問われるのである。
 晴れて専門医になって治療に当たるようになると、臨床治験にも参加することになる。利益相反(COI)も取り上げられており、日本の臨床現場の問題点も適切に示され、専門医の社会的責任を考えさせてくれる。
 本書を上手に利用し晴れて専門医となり、存分にその知識を患者のために発揮していただきたい。

臨床雑誌内科117巻5号(2016年5月号)より転載
評者●長崎大学名誉教授 朝長万左男

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