書籍

痛み治療のための超音波ガイド下神経ブロック実践テキスト

  • 新刊

編集 : 齊藤洋司/奥田泰久
ISBN : 978-4-524-26151-2
発行年月 : 2017年7月
判型 : A4
ページ数 : 222

在庫あり

定価9,720円(本体9,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

大きく適応が広がる超音波ガイド下神経ブロックの種類やその具体的な手法を、標準的に解説。臨床の実践に対応できるペインクリニックにおける神経ブロックの実際書。安全性を重視しながら手技のポイントやコツを記載し、読者の経験値に伴って臨床応用ができる。解剖や適応などを解説した上で写真とイラストを対比し、図表を多用し、簡潔な文章で解説した。

総論
 1.超音波診断装置
 2.超音波プローブとブロック針
 3.神経ブロックに必要な物品
 4.基本的手技
 5.神経ブロックに伴う副作用・合併症
各論
 I 頭部領域
  1.前頭神経ブロック
  2.眼窩下神経ブロック
  3.オトガイ神経ブロック
  4.後頭神経ブロック
 II 頸部領域
  1.星状神経節ブロック
  2.頸神経叢ブロック
  3.神経根ブロック
  4.椎間関節ブロック
 III 上肢領域
  1.腕神経叢ブロック(斜角筋間ブロック)
  2.肩甲上神経ブロック
  3.肩峰下滑液包内注入
  4.筋皮神経ブロック
  5.橈骨神経ブロック
  6.正中神経ブロック
  7.尺骨神経ブロック
  8.腋窩神経ブロック
 IV 体幹領域
  1.肋間神経ブロック
  2.椎間関節ブロック
  3.傍脊椎神経ブロック
  4.神経根ブロック(胸椎)
  5.硬膜外ブロック
  6.腹直筋鞘ブロック
  7.腰神経叢ブロック
  8.仙腸関節ブロック
  9.経仙骨孔ブロック
  10.陰部神経ブロック
 V 下肢領域
  1.股関節ブロック
  2.大腿神経ブロック
  3.外側大腿皮神経ブロック
  4.伏在神経ブロック
  5.閉鎖神経ブロック
  6.坐骨神経ブロック
  7.梨状筋ブロック
  8.膝関節内注入
  9.総腓骨神経ブロック
  10.脛骨神経ブロック
  11.後脛骨神経ブロック
  12.浅腓骨神経ブロック
  13.深腓骨神経ブロック
  14.腓腹神経ブロック
 VI 全身領域
 1.トリガーポイント注射
索引

序文

 痛みの治療は全ての医療分野において重要であり、その目標は痛みを緩和することでその人らしい生活を支えることであると広く認識されるようになった。人々の生活の質を維持・向上させるための痛み治療は、チーム医療による多面的なアプローチが基本となる。「Decade of Pain」を起点に、痛みの制御機構の研究成果は臨床現場に新しい痛み治療薬を導入させた。薬物治療の向上とともに、技術の進歩は神経ブロックの環境を大きく変え、飛躍的な発展に導いた。超音波ガイド下神経ブロックの登場である。神経ブロックは侵害刺激の入力を直接遮断するという点で強力な痛み治療のツールである。しかし、体表面の解剖学的所見から神経ブロックを行うランドマーク法、X線透視下に行うブロックなど従来の神経ブロックは習得が難しく、施行できる医師や施設も限られていた。
 手術麻酔においても、末梢神経ブロックの有用性は周知でありながら、同様の課題からその応用は限られていた。超音波診断装置の目覚ましい進歩により、手術室での超音波ガイド下神経ブロックは飛躍的に普及した。その研究成果も急増し、超音波ガイド下神経ブロックの有用性・安全性を支えるエビデンスを提供し、さらなる発展へと繋がる好循環といえる。神経ブロックの有用性と適応は、痛み治療の現場においてはより高く、より広い。手術麻酔に応用される末梢神経ブロックの確立・普及から、痛み治療への応用が大いに期待される。痛み治療において対象となる末梢神経ブロックは麻酔と比較して圧倒的に多い。また、治療と同時に診断に貢献するという特徴もある。
 このような背景からか、麻酔に応用する超音波ガイド下神経ブロックに関しては多くの教科書があるものの、痛み治療のための神経ブロックに関してはほとんどない。本書は手技の実際をわかりやすく解説し、ベッドサイドにおいて活用していただくことを目的として企画・構成している。各論となる神経ブロックの項目では、頭部領域4ブロック、頸部領域4ブロック、上肢領域8ブロック、体幹領域10ブロック、下肢領域14ブロック、全身領域1ブロックと計41ブロックを網羅している。実践書としての役割に重点を置き、各神経ブロックについて、解剖、適応、合併症、ブロック手技の構成としている。各神経ブロックに共通する項目は重複を避け総論にまとめている。ブロック施行前の解剖をしっかり確認し、器具等の準備を行う。実際の手技の手順詳細を、実践の助けとなるよう解剖図、超音波画像、それに一致する画像解説を基本セットとして記載している。
 本書は、痛みの治療・診断に活用できる基本的な手技から最新の手技の大部分を収めており、日常診療に大いに貢献するものと確信している。全ての神経ブロックや各ブロックにおける全てのアプローチを載せているわけではないが、急速に進歩していく超音波ガイド下神経ブロック領域において、本書が基盤となるテキストとしての役割を果たし、さらなる手技の向上、改善、新しい神経ブロック手技の導入、発展の起点となれば幸いである。

2017年6月
編者を代表して
齊藤洋司

 現在、超音波(エコー)診断装置を使いこなせることが、整形外科医にとって必須の技能になりつつある。超音波診断は小児股関節疾患、腫瘍の診断などで使われていたが、鮮明な像が得られない場合があることや、習熟しないと手技、読影ともむずかしいことから、多くの整形外科医にとって日常的に行われる検査ではなかった。しかし超音波診断は、検査する場所を選ばず、患者に特別な準備を必要としないことや、患者、医療者にとってX線被曝がなく、非侵襲的な検査であるという大きな利点がある。近年、小さくて扱いやすく高解像度の超音波診断装置が普及してきたことから、整形外科でも一般的な検査になってきた。また、超音波検査は診断のみではなく、神経ブロック施行時にもきわめて有用である。従来、神経ブロックは透視を用いるか、体表から触れる骨性隆起、圧痛を指標に盲目的に行われてきた。超音波診断装置を用いることで、解剖を確かめながら針を刺入して薬液を注入することができ、血管・神経損傷の危険性が大きく下がった。
 本書は、島根大学麻酔科教授・齊藤洋司先生、獨協医科大学越谷病院麻酔科教授・奧田泰久先生の編集のもと、経験豊富な麻酔科・ペインクリニックの医師らによって執筆された、ペインクリニックとしての超音波ガイド下神経ブロック法のテキストである。本書の特徴は二つある。
 一つは超音波ガイド下神経ブロック法の基礎と、現在行われている神経ブロックを幅広く網羅している点である。総論として、超音波診断装置とその設定法、神経ブロックの必要物品、基本手技、合併症が解説されている。各論として、41種類の神経ブロックの解剖、適応、手技、合併症が説明されている。脊椎外科医である筆者は、神経根ブロックについて特に興味深く読んだ。神経根ブロック時、透視下で椎骨から神経根の走行を予想しつつ針先を動かして神経根を探ってブロックしていたのを、超音波ガイド下では神経根そのものを直接描出してブロックする。患者にとって余計な苦痛が少なく、医療者、患者にとってX線被曝を避けられる点が大きな利点である。また薬液注入時に薬が神経周囲に広がるドーナッツサインを確認でき、薬液が直接神経内に入り神経障害をきたす危険性を避けうることも利点である。
 本書のもう一つの特徴は、イラスト、写真、超音波画像が豊富に載せてあり、視覚的にたいへん理解しやすいことである。初心者にとって超音波画像は馴染みがなく、解剖が理解しづらい。本書では超音波画像と解剖を描き入れた画像が並べてあり、超音波画像がたいへん理解しやすい。
 ただし、初心者が本書による独学でいきなり患者に神経ブロックを行うのは必ずしも容易ではなく、危険を伴うことがある。はじめに診断に使用して超音波診断装置に慣れることが必要であり、次に超音波画像の読影をよく行い、画像の意味を理解する必要がある。その後、実際に神経ブロックを行うというステップが必要である。はじめは指導者に手ほどきを受けるほうがよい。幸い各地でエコーセミナーが開かれており、手軽に学ぶことができる。筆者の身近には、透視下ブロックを長年行ってきたため、手指、爪に放射線障害が現れている整形外科医が何人かいる。今後、若い医師が超音波診断に関心をもち、本書のようなテキストを参考に超音波ガイド下神経ブロックに習熟してくれることを願う。

臨床雑誌整形外科69巻1号(2018年1月号)より転載
評者●東北医科薬科大学整形外科教授 小澤浩司