書籍

小児心身医学会ガイドライン集

日常診療に活かす4つのガイドライン

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本小児心身医学会
ISBN : 978-4-524-26001-0
発行年月 : 2009年6月
判型 : B5
ページ数 : 198

在庫なし

定価4,104円(本体3,800円 + 税)

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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本小児心身医学会編集のガイドライン集。「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」、「不登校診療ガイドライン」、「小児の神経性無食欲症診療ガイドライン」、「繰り返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」の4つをまとめた。診断や治療、専門医への紹介のタイミング、保護者、学校への指導などについてもわかりやすく解説しており。一般小児科医はもちろん、小児医療に携わるすべての者が読んでおきたい一冊。

I 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン
本ガイドラインについて
 1.本ガイドラインの目的
 2.本ガイドラインが想定する診療対象
 3.本ガイドラインのエビデンスレベル
 4.本ガイドラインの限界
一般小児科で行う起立性調節障害(OD)診療の概要<本ガイドラインの要旨>
  a.診断
  b.治療
  c.専門医紹介の目安
A.診断の手順
 1.ODのサブタイプ
 2.診断アルゴリズム
 3.新起立試験法
  a.検査場所・時刻
  b.用意するもの
  c.患者への説明
  d.起立試験の手順
 4.新起立試験法によるサブタイプ判定
 5.身体的重症度の判定
 6.「心身症としてのOD」診断チェックリスト
B.治療の進め方
 1.重症度に合わせた治療的対応の組み合わせ
 2.初診以後の通院について
重症度・心理社会的関与に応じた治療的対応の組み合わせ
 1.説明・説得療法
  a.子どもや保護者はOD症状をどう捉えているか
  b.説明・説得のポイント
 2.非薬物療法
  a.日常生活での注意点
  b.運動や食事療法など
 3.学校への指導や連携
  a.学校の担任教師・養護教諭への指導のポイント
  b.学校への指導内容や診断書の記載
 4.薬物療法
  a.薬物療法の考え方
  b.薬剤リストと処方量
  c.推奨できる処方例
 5.環境調整(友達・家庭)
  a.中等症・重症ODに見られる心理社会的問題の起こり方
  b.環境調整のコツ
 6.心理療法
  a.一般小児科で心理療法を実施したほうがよいのか
  b.一般小児科でどのような心理療法ができるのか
C.患者・保護者用ガイド(Q&A)
 Q1.起立性調節障害(OD)とはどんな病気ですか?
 Q2.なぜ起こるのでしょうか?(病態生理)
 Q3.だらだらして怠けているのではないですか?
 Q4.かかりやすい年齢や頻度を教えてください
 Q5.日常生活や学校生活で注意することはありますか?
 Q6.どのような治療がありますか?
 Q7.いつ頃に治るでしょうか?
 Q8.朝起きが悪いのですが、起こしたほうがよいのでしょうか?
 Q9.不登校が続いていますが、どうすればよいのでしょうか?
D.解説の部
 はじめに
 1.診断ガイドライン 補説
  a.一般小児科で行う「起立性調節障害診療の概要<本ガイドラインの要旨>」について
  b.診断の手順、ODのサブタイプ、診断アルゴリズムについて
  c.「心身症としてのOD」診断チェックリスト作成の経緯について
 2.治療ガイドライン 補説
  a.治療の進め方
  b.重症度・心理社会的関与に応じた治療的対応の組み合わせ
  c.@〜Eの各治療法の解説
  d.実際のOD診察において、たびたび使う言葉と「禁句」の例
 3.総説 ODの病態生理と治療
  a.ODとはどのような疾患か
  b.起立時循環調節機構
  c.ODにおける循環調節機構の障害
  d.一般小児科医を受診する際のODの愁訴
  e.ODの中で心身症といえるものがどの程度存在するか
  f.ODの治療
  g.心身医学的対応における注意点(一般小児科向け)
  h.重症ODに対する心理社会的対応(専門医向け)


II 小児科医のための不登校診療ガイドライン
本ガイドラインについて
 目的
 対象と構成
 エビデンスレベル
A.不登校への対応の基礎
 1.小児科医としての不登校への関わり方
 2.このガイドラインの内容について
 3.不登校に対するおおまかな診療の流れ
B.初診段階での診察手順
 1.どのような症状から不登校の存在を疑うか
 2.不登校を疑ったときの問診
 3.初診時の対応と指示
 4.家族の気付きを促す
C.不登校の診療にあたり知っておきたい知識
 1.身体症状の治療に有用な心身症の知識
  a.起立性調節障害
  b.過敏性腸症候群
  c.機能性頭痛
 2.薬物の使用について
  a.お守りとしての効果
  b.贈り物としての効果
  c.話題としての効果
  d.身代わりとしての効果
  e.自主性を育てる効果
  f.治療意欲をみる効果
 3.保険診療について
D.当初1ヵ月の経過観察
 1.診察と情報収集の要点
 2.生活の様子や生育歴についての情報収集
 3.合併する疾患の確認
  a.身体疾患
  b.気付かれにくい発達障害
  c.統合失調症、激しい行動化
  d.解離性(転換性)障害、心気症
E.1ヵ月を過ぎた後の経過観察
 1.長期的な経過観察の基本
 2.診療の再評価と専門診療施設への紹介
 3.不登校の状態評価
 4.不登校の回復過程
  a.階段状の回復
  b.らせん状の回復
  c.一時後退してから回復
 5.毎回の診察の進め方
 6.状態に応じた対応の要点
F.学校との関わり
 1.学校と連携する目的
 2.学校との情報交換の手順
 3.学校と連携するときの注意
 4.子どもと学校とのつながりをどうするか
付録
付録1 初診時の身体症状に関する問診票
付録2 学校との情報交換にあたっての同意書の例
付録3 不登校診療ガイドライン(要約版)


III 小児の神経性無食欲症診療ガイドライン
本ガイドラインについて
 1.本ガイドラインの目的
 2.本ガイドラインが想定する診療対象
 3.本ガイドラインのエビデンスレベル
 4.本ガイドラインの限界
A.摂食障害の概要
 1.摂食障害とは
  a.概要
  b.疫学
  c.診断
  d.摂食障害の状態像
 2.小児の拒食症におけるトピック
  a.前思春期発症例の増加
  b.過食症への移行例の増加
  c.広汎性発達障害との合併例の存在
 3.小児科における摂食障害への対応の考え方
 4.拒食症への対応の概要
  a.基本方針
  b.身体的治療と心理的治療
  c.身体的治療の概要
  d.目標
  e.体重を基準とした治療方法の選択
  f.入院治療の適応基準
B.外来治療(「食べない」訴えへの外来での初期対応)
 1.外来における診断から対応までの流れ(すべての小児科医に必要な対応)
 2.診断に至るまでの注意点(要点)
 3.診断(疑診)後の注意点(要点)
 4.診療で考慮すべき点
  a.年齢を考慮して判断
  b.診察上の注意
  c.親への指導
  d.補足
  e.外来における対応
C.入院治療(一般小児科病棟における神経性無食欲症患児への対応)
 1.入院治療とは
 2.入院での初期対応の実際
  a.治療教育
  b.再栄養療法(refeeding、nutritional rehabilitation)
  c.問題行動への対応
  d.医療スタッフ間のコミュニケーション
  e.保護者への対応
  f.薬物療法
 3.専門機関への紹介
 4.初期対応後の対応


IV くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン
本ガイドラインについて
 1.本ガイドラインの目的と基本的姿勢
 2.本ガイドラインが想定する診療対象
 3.本ガイドラインのエビデンスレベル
 4.本ガイドラインの限界
A.初級編
 1.くり返す子どもの痛みへの対応
  a.はじめに
  b.痛みの経験とコントロール
  c.痛みの成因と評価
  d.くり返す痛み
  e.心理面の影響
  f.痛みへの初期対応(家庭での対応)
  g.痛みへの薬物療法
 2.腹痛
  a.はじめに
  b.本ガイドラインでの反復性腹痛(RAP)、過敏性腸症候群(IBS)の考え方
  c.子どもの腹痛を診るときの心構え
  d.診断アルゴリズム
  e.治療アルゴリズム
  f.治療
 3.頭痛
  a.はじめに―心身医学と小児慢性頭痛診療―
  b.子どもの頭痛を診るときの心構え
  c.小児慢性頭痛の概要
  d.診断
  e.治療
B.資料編
 1.痛み各論
 1-A.痛みの発生機序
 1-B.子どもの痛みの評価
  a.自己申告法による痛みの評価
  b.観察法
  c.臨床上の注意点
  d.痛みの履歴書
 1-C.痛みと精神科的疾患
 2.腹痛
 2-A.反復性腹痛(recurrent abdominal pain:RAP)
 2-B.過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)
 3.頭痛
 3-A.一次性頭痛の診断基準
 3-B.頭痛の薬物療法
 3-C.頭痛の心理・精神療法

索引

昨今、小児心身症・精神疾患の診療に携わる専門医の不足に漸く注目されるようになり、関連学会、国が後押しする事業が展開している。そのような時期に日本小児心身医学会から『小児心身医学会ガイドライン集』を発刊できることに大きな意義を感じている。是非、本書を有効に活用し、日常診療に役立てて頂きたい。
 本ガイドライン集は主に一般小児科医を対象にしていることから、専門医が診療する重篤な病態にはほとんど触れていない。心理的側面を必要とする疾患群を、本格的な心理治療を使わずに、初期に心身医学的に診るための指針としての体裁を採っているのが特徴である。つまり、専門医への紹介を必要としない症例の診療手引き書、あるいは紹介を要する症例では、そこに至るまでの期間の手引き書という位置づけにした。本書の記載事項は診療を新たに始める人の手ほどき、参考になることを目的としているが、本書通りに診療を進めないといけない、というものではない。心身症やその周辺の疾患群は診断・治療を教科書的・定型的に示しにくい最たるものであると認識し、しかし、適切な指針がない現状を鑑み、敢えて学会が取り組んだものである。記載事項の多くは専門委員会構成員の合意に基づくものの、客観的に検証されていないものもあることに留意されたい。しかし、それ故に各委員会ではかなりの時間をかけて討論を重ね、その後にも次に述べるような手順を踏んで発刊に至ったのである。さらにつけ加えると、4つのガイドラインはタイトルやその体裁を敢えて統一していないが、それはそれぞれが異なった分野・疾患群・異常群であり、各班がそれなりに苦労した証だとご理解頂きたい。以下、本学会がガイドライン作成に着手した経緯を簡単に述べて、その位置づけの背景を示したい。
 本学会は昭和57年に創設された。その目的は、すべての小児科医が心身医学を修め、実践すべきであるとの方針で、日本小児科学会の分科会としてその第一歩を踏み出した。そのため、当初から一般小児科医を対象に研修会を開催、さらに平成9年から、専門医向けに演習型「イブニングセミナ」を開催した(詳細は、日児誌110:990−1000、2006)。この過程で、学会として小児心身症の概念を一度整理し、診断・治療を見直し、一般診療や予防に役立てたいという機運が高まった。数年間議論を行い、一般小児科医向け心身症診療ガイドラインを作成することになった。作成は研修委員会が担当し、多施設共同研究事業として行うことになり、平成15年度総会で、「起立性調節障害」、「摂食障害」、「不登校」についてのガイドライン作成が決定した。さらに平成19年、「くり返す痛み」の作成が決定した。それぞれに作成ワーキング委員会が設置された(順に、田中英高、宮本信也、村上佳津美、石崎優子委員長)。委員会は数名以上で構成され、作成過程は本学会総会で公開された。そして『小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン2005(平成18年発行)』、『小児の神経性無食欲症診療ガイドライン第1版(平成20年発行)』、『小児科医のための不登校診療ガイドライン(平成20年発行)』、『くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン(平成21年発行)』の4つが完成した。とくに最後に計画された「くり返す痛み」のガイドラインは、作成に許された時間が少なく、各委員には多大な負担を強いたにもかかわらず、一致団結して作成に当たられたことに敬意を表したい。
 これらガイドラインが発行されたことによって、その効果が現れつつある。すでに日本小児科学会シンポジウムや教育講演で本ガイドライン研修会が開催され、多くの小児科医の関心が集まった。このことが患者に正しい医療情報を選別、獲得できる一助になり、患者の立場に立つ診療の促進にも役立てばと期待している。今後は、適正、効率的、標準的な診療が促進されるように、かつまた心の診療専門医養成にも効果が上がるように、日本小児科学会をはじめ、子どもの心の診療関連6医学会で利用して頂きたいと思っている。さらにサブスペシャリティ制度における専門医試験制度にも本ガイドライン集が有益な情報を与えると考えられる。本ガイドライン集をはじめ、本学会が推進しているすべての事業が、多くの子どもとその保護者の幸福に役立つことを願って、今後も活動の幅を広げていきたいと思っている。
2009年5月
日本小児心身医学会理事長
田中英高

ひところのメディアでは、子どもが犠牲になった悲惨な出来事がほとんど毎日のように話題になっていた。最近はやや落ち着いているようにみえるけれども、どうやらそれはメディアの取り上げ方が違ってきただけなのではないか、という気がする。子どもの苦しみや悩みを周囲の大人が本当に理解するようになったとは思えないからである。
 でもここに、「少なくとも小児科医は正しく子どもの苦しみを理解してほしい」と思う小児心身医学の専門家が「こういう症状を示す子どもがいたら、こういう病気が疑われるから、こういう検査をして、その結果でこういう診断をつけ、こういう処置あるいは治療をしてあげよう。もし、その重症のものであったら、小児心身医学の専門家に紹介してほしい」というメッセージを込めて、小児科医に向けて書かれた本が出版された。それが本書である。大変大事なことであるが、これはあくまでもガイドラインであり、こうしなければならないと強制するものではなく、中には証明も十分ではないけれども、経験的にはこうであった、という内容も含まれているという。まさしく生きたガイドラインである。実際読んでみると、生き生きしている。著者達の経験の豊富さが眩しいほどである。
 ここに取り上げられた項目は、起立性調節障害、不登校、神経性無食欲症、繰り返す痛み、の4つである。当然ながらいずれにも「小児の」という形容詞がつく。他の3項目が疾患や症状であるのに、「不登校」だけはそうではないという違和感を覚えるのは私だけではないだろう。しかし、読んでみると、隠れた疾患によってやむなく不登校に陥っている子どもを何としてでも救い出そうとする著者達の悲痛な叫びが聞こえてきて、違和感はただちに解消する。
 これらの4項目は、それぞれ別々の専門グループが長い間にわたって議論を重ねてきたものを文章化したものだそうである。それぞれのグループの生きた議論を生かすために、あえて統一した書き方にしなかった、ということであるけれども、すべての項目に診断のアルゴリズムや治療のアルゴリズムがあり、読者にわかりやすくしようとする努力は明らかである。
 ところで、小児科医でもなく、まして小児精神科医でもない、神経内科医の私が、何ゆえにこの書評を書いているのか、と訝しく思われるだろう。実はこれにはわけがある。日本小児心身医学会理事長で、この本の発行の責任者である大阪医科大学附属病院発達小児科科長の田中英高先生のお父上である田中敏隆先生は、大阪教育大学学長であった高名な発達心理学者であり、長きにわたって日本学術会議の会員であられた。平成15年10月に私がはじめて日本学術会議会員になったとき、敏隆先生は「子どものこころ特別委員会」の委員長になられたが、私はその委員会の幹事を仰せつかり、2年後に「子どものこころを考える―我が国の健全な発展のために」と題する報告書をまとめるお手伝いをした。大変勉強になったし、何より懐の広い暖かい老先生との会話が嬉しかった。しかし、誠に残念ながら、その報告書が完成する寸前に先生は自転車で怪我をされ亡くなってしまった。その先生のご子息と私が知り合いになるのに、時間はかからなかった。だから、私はこの書評を敏隆先生にも捧げるつもりで引き受けた。敏隆先生! ご子息の作られたご本は、大変役に立つすばらしい本です。
評者● 金澤一郎
臨床雑誌内科105巻3号(2010年3月号)より転載