書籍

上級医を目指すキミへ消化器内視鏡基本手技のすべて

編集 : 花田敬士
ISBN : 978-4-524-25999-1
発行年月 : 2017年3月
判型 : B5
ページ数 : 254

在庫あり

定価5,720円(本体5,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

すべての内視鏡医が身に付けておきたい、消化管、胆膵内視鏡の基本手技と基礎知識を一冊にまとめた。上部・下部消化管内視鏡、ERCP、EUS、カプセル内視鏡・小腸内視鏡までを網羅し、これから内視鏡を始める医師がいつまでに何を習得すべきかがわかる。習熟度に応じて、行うべきこと、行ってはならないこと、トラブル対処法、上級医に交代するタイミングなども解説され、観察や治療のコツ、手技の要点が一目でわかる。

【総論】
 1.後期研修終了までに習得すべき内視鏡検査とは
 2.内視鏡におけるインフォームド・コンセント
 3.抗血栓薬の取り扱い
 4.鎮静薬の取り扱い
 5.内視鏡を施行するうえでのチーム医療
【各論】
第I章 上部消化管内視鏡
 目標 後期研修終了までに習得すべき上部消化管内視鏡
 機器 上部消化管で用いる内視鏡機器
 観察
  1.上部消化管観察・挿入法(概説)
  2.前処置薬・鎮静薬の使い方
  3.咽頭部の挿入・観察上の注意点
  4.通常光・画像強調拡大内視鏡
  5.色素散布のポイント
  6.生検のポイント
  7.所見の記入方法
  8.病理医との連携
  9.胃切除後症例の観察
  10.EUSのポイント
 治療
  1.異物除去
  2.Helicobacter pylori感染症の検査
  3.ESD・EMRの適応
  4.ESD・EMRの手技を向上するコツ
  5.ESDの偶発症
  6.治療後の経過観察
  7.上部消化管出血の止血法
  8.食道・胃静脈瘤の治療
第II章 下部消化管内視鏡
 目標 後期研修終了までに習得すべき下部消化管内視鏡
 機器 下部消化管で用いる内視鏡機器
 観察
  1.下部消化管観察・挿入法(概説)
  2.前処置の実際
  3.用手圧迫・挿入困難例の対策
  4.通常光・NBI・拡大内視鏡
  5.所見の記入方法
  6.大腸部位別の観察のコツ
  7.上級医に交代するタイミング
 治療
  1.ポリペクトミー・EMRの適応
  2.Cold polypectomy(CP)とは
  3.ESDの適応
  4.大腸切除後症例の検査
  5.下部消化管出血の止血法〜血便への対応
  6.治療後の経過観察
第III章 ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)
 目標 後期研修終了までに習得すべきERCP
 機器 ERCPで用いる内視鏡機器
 観察
  1.ERCPの適応
  2.ERCPのインフォームド・コンセントを得る際の注意点
  3.モニター設置・放射線防護
  4.スコープ挿入の実際
  5.十二指腸乳頭の正面視のコツ
  6.造影法とwire-guided cannulation(WGC)の違い
  7.挿管困難例の対策
  8.上級医に交代するタイミング
  9.合併症を防ぐには
 治療
  1.ESTの実際とコツ佐々木民人
  2.EPBD・EPLBDの実際とコツ佐々木民人
  3.EMSの実際とコツ佐々木民人
  4.ENBDの実際とコツ
  5.ENPDの実際とコツ
第IV章 EUS(超音波内視鏡)
 目標 後期研修終了までに習得すべき胆膵EUS
 機器 EUSで用いる内視鏡機器
 観察
  1.EUSで何が分かるか(適応)
  2.ラジアル型とコンベックス型の違い
  3.ラジアル型の描出法
  4.コンベックス型の描出法
  5.胆管・乳頭をうまく描出するコツ
  6.胆.を描出する際の注意点
  7.造影EUS・エラストグラフィの位置づけ
 検査
  1.EUS-FNAに用いる穿刺針
  2.EUS-FNAを安全に行うには
  3.ERCPとEUS-FNAの使い分け
  4.組織・細胞を採取するコツ207
  5.病理・細胞診断士との連携
第V章 カプセル内視鏡・小腸内視鏡
 目標  後期研修終了までに習得すべきカプセル内視鏡・小腸内視鏡
 機器  カプセル内視鏡・小腸内視鏡で用いる機器
 観察
  1.カプセル内視鏡・小腸内視鏡の適応と使い分け
  2.カプセル内視鏡の前処置
  3.カプセル内視鏡の読影のポイント
  4.カプセル内視鏡の偶発症と対策
  5.小腸内視鏡の手技向上のポイント
 治療
  1.小腸病変に対する治療
  2.術後再建腸管症例におけるERCP
索引

序文

 今般、南江堂から若手医師向けを対象とした「内視鏡の手引き書」の企画を頂いた。近年、内視鏡診療に関するスコープや周辺機器、技術の進歩はめざましく、日進月歩というより、“秒進分歩”の様相である。
 内視鏡診療の魅力は、日本独特の“細やかな”感覚を活かした腫瘍の早期診断、早期がんに対する内視鏡的な切除、いまや外科的、経皮的なアプローチと同等の成績となった胆道、.胞ドレナージ、侵襲の少なさを活かした緩和的内視鏡的治療など、枚挙にいとまがない。私が内視鏡医を志した約30年前とは、内視鏡診療をめぐる環境は大きく変化している。この魅力にひきつけられるように、内視鏡医を志す多くの医学生、研修医、若手医師が今日もわれわれから叱咤激励を受け、スキルアップを目指して修練に励んでいる。
 内視鏡診療は、ともすれば患者および同僚の医療関係者から、全身麻酔を用いた外科的な治療と比較して、“技術的にも易しく、侵襲負担の少ない、患者に優しい偶発症の少ないもの”と思われがちであるが、決してそうではない。特に治療に関しては、偶発症を避けて安全に施行する技術、デバイスの理解、解剖病態の理解など、外科的治療技術の習得と同等の厳しい修練、知識の習得が必要である。私は胆膵内視鏡が専門であるが、特に外科的介入が不可能な症例において、自らの知識、経験、技術、高度な機器の機能を駆使した内視鏡治療で患者の全身状態が劇的に改善していく場面に立ち会うたびに、深い達成感と感謝を感じている。
 内視鏡診療に王道はなく、すべて基礎からの積み重ねである。私の母教室である広島大学消化器・代謝内科は、現在まで消化管、肝胆膵のさまざまな内視鏡診療の領域において多数の傑出した内視鏡医を輩出しているが、“基本を重視”する教育姿勢が貫かれており、教室の上級医から後輩たちには、技術の習得、患者の立場を十分考慮した内視鏡診療のノウハウが受け継がれている。
 今回、茶山一彰教授(広島大学消化器・代謝内科)、田中信治教授(広島大学病院内視鏡診療科)のお許しを頂き、後期研修医を含めこれから内視鏡の修練を始める、あるいは始めて間もない若手医師の先生に向けて、“基本を重視”した内視鏡診療のマニュアルを企画させて頂いた。執筆陣は、まさに若手医師と毎日対峙して、彼らの教育修練にあたっている教室の精鋭たちである。若手医師のみならず、指導医の先生方にも是非手にとって頂きたい。
 最後に、本書の企画製作に献身的な御努力を頂いた、当院IBD センター長小野川靖二先生、および南江堂達紙優司氏、毛利聡氏に深甚なる感謝の意を表する。

2017年2月
JA尾道総合病院内視鏡センター
センター長 花田敬士

 消化器内視鏡に携わる若手の医師は、誰しもがさらに上手になりたいと願い、指導医の指導を仰ぎ、ときには自分で新しいことにチャレンジしながら、日々の臨床に向き合っている。そんななか、診断・治療が上手くいき、自分自身を褒めてあげたくなるようなときもある反面、一つ間違えば大きな偶発症発生に繋がりかねない「ひやり」とする場面に遭遇することも決して少なくはないであろう。患者にとっては、内視鏡を施行した医師が誰であれ、「確実な内視鏡診断、確実な内視鏡治療」をされて当たり前である以上、若手であっても確実な知識と手技の習得は必須である。とはいえ、現在の消化器内視鏡の発展に伴い、覚えなくてはならない知識・手技は相当な量となっており、確実な習得は容易なことではない。また、時間に追われる日々の臨床という現実、そして指導医の数にも限りがある現状では、若手内視鏡医が消化器内視鏡に関連するすべての事項について詳細な指導を受けることは難しいのが実情であろう。このような状況においては、いわゆる「教科書」が指導医の役目を果たしてくれるが、消化器内視鏡全般について「指導医目線」で書かれた若手向きの「教科書」にはあまりお目にかかれない。
 本書は、ほとんどの消化器内視鏡手技の基本について、「指導者目線」で丁寧に記されている。総論では専攻医終了までの目標、基本的なインフォームドコンセント、内視鏡診療の前に注意すべき点などについて詳しく記載されている。各論では各内視鏡手技について、基本的な事項、さまざまなコツ、偶発症とその対処法などが図も交えて詳しく記されており、基本的知識の習得には十分であろう。また、特筆すべきは「先輩ドクターからのアドバイス」といった項が設定されていることであり、これはまさに、執筆された指導医の方々が日頃から若手内視鏡医に話されている内容であると感じた。臨床にとってEBM(evidence-based medicine)は大変重要であるのは当たり前だが、もう一つのEBM?……experience-based medicineも日々の内視鏡教育においては重要であると筆者は考えている。本書には「経験の伝授」も効果的に記されており、若手の内視鏡医にとって優しい「教科書」であると思う。また、本書に記されている「経験」は若手だけではなく、指導医にとっても時として新しい情報となりうる。指導医の皆様も一度手にとって読まれてみてはいかがだろうか。

臨床雑誌内科121巻4号(2018年4月増大号)より転載
評者●獨協医科大学消化器内科主任教授 入澤篤志

9784524259991