書籍

よい質問から広がる緩和ケア

  • 新刊

: 余宮きのみ
ISBN : 978-4-524-25992-2
発行年月 : 2017年2月
判型 : A5
ページ数 : 246

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

緩和ケアにおける患者への質問の仕方のコツとノウハウを、余すところなく伝授した実践書。患者の何を見て、どのような質問を、どのタイミングで行い、その後どう対応するか、根拠を踏まえて具体的に解説。質問の流れが一目で把握できるチャート図と豊富な会話例により、状況をリアルに体感でき、明日からの診療・ケアに取り入れることができる。緩和ケアに携わる医療従事者必携の一冊。

第I章 痛みについての質問
 ■痛みの問診の流れ(フローチャート)
 A.痛みの評価のための質問
  1.どこが痛いですか?
  2.いつ頃からですか?
  3.今,痛みはありますか?今の痛みはどれくらいですか?
  4.今より痛くなることはありますか?
  5.1日に何回くらいありますか?
  6.どのような痛みですか?
  7.お薬を調整して痛みを楽にしていきますが,どのあたりを目標にしたらよいですか?
  8.痛みに対して,お薬を調整したほうがよいですか?
 B.痛みの治療に対する質問
  1.お薬を飲むのは負担ではないですか?
  2.レスキュー薬は効きますか?
  3.お薬を変更して,痛みは楽になりましたか?
  4.痛みがとれたらこんなことをしたいな,という目標のようなものはありますか?
第II章 呼吸器症状についての質問
 1.息は苦しくないですか?【呼吸困難(1)】
 2.息苦しさの強さはどれくらいですか?【呼吸困難(2)】
第III章 消化器症状についての質問
 1.お腹の張っている苦しさは,どれくらいですか?【腹部膨満感】
 2.今,吐き気はありますか?【悪心】
 3.どんなものを吐きますか?【嘔吐】
 4.お通じは毎日ありますか?【便秘(1)】
 5.便秘に対して,何かご自身で工夫されていることはありますか?【便秘(2)】
 6.下痢する前のお通じはどうでしたか?【下痢】
 7.お口のことで何か変化はありませんか?ピリピリした痛みや違和感はありますか?【口腔ケア(1)】
 8.歯は磨いていますか?お口のケアはしていますか?【口腔ケア(2)】
第IV章 倦怠感・食欲不振についての質問
 1.疲れやすいですか?億劫ですか?【倦怠感(1)】
 2.疲れる感じ(だるさ)はどれくらいですか?【倦怠感(2)】
 3.食欲そのものがないのですか?それとも……【食べられない(1):早期膨満感など】
 4.食欲が出るように,お薬で対応するほうがよいですか?【食べられない(2):食欲不振】
 第V章 精神症状についての質問
 1.もう少しよく眠れたほうがよいですか?【不眠】
 2.眠気は嫌な眠気ですか?【眠気】
 3.普段の様子と今の様子は違いますか?【せん妄】
 4.胸がザワザワしたり,足がソワソワしたり,じっとしていられないような感じはないですか?【アカシジア】
 5.最近,気持ちの落ち込みはありますか?【抑うつ】
第VI章 鎮静についての質問
 1.最期のつらさで鎮静薬が必要になったときは,どのような対応を希望しますか?【元気なときから鎮静を意識する】
 2.何時頃に起きたいですか?【間欠的鎮静】
 3.鎮静薬を使って眠ってすごす必要が出たときは,どのように対応すればよいですか?【間欠的鎮静から深い持続的鎮静への移行】
 4.ずっと眠っていたほうがよいですか?【深い持続的鎮静】
第VII章 患者の意向を引き出す質問
 1.快適にすごせていますか?楽ですか?
 2.もう少し楽なほうがよいですか?
 3.これからこんな風にすごしたいな,という目標のようなものはありますか?
 4.もう少しここがこうなったらいいなぁ,ということはないですか?
 5.今の体調や病状を,どんな風に感じていますか?
 6.気持ちは穏やかですか?(心穏やかではないのですか?)
付録:患者記入用アセスメントシート
索引

はじめに

 私の緩和ケアの師匠は、もともと外科医でしたが「緩和ケア医にとって患者さんと話をするのは、外科医にとっての手術と同じだ」と言いました。17年前のことです。患者さんへ質問したり患者さんと対話を重ねたりしていくことは、緩和ケアにとって治療そのものであるという意味です。その後、緩和ケア医として時を重ねるほどに、私はこの言葉の意味に深く納得していくようになりました。
 病気は苦しい、つらい……。けれど、手を尽くすことで患者さんとその家族に笑みが生まれる、そんな緩和ケアを提供できるようになりたい。そして最終的な目標は“患者さんの満足”、それを目指して診療にあたる……これが私たち医療者に求められていることです。
 そのために医療者として高めるべきスキルのひとつは、“よい質問”ができるようになることです。
 緩和ケアにおいてよい質問とは、“苦しみの詳細”、すなわち
 「(1)患者が何に苦しみ、何を望んでいるのか」
 「(2)苦しみの原因や病態」
 「(3)ケアや治療方針」
がわかるような質問です。
 緩和ケアではアセスメントが重要です。今、目の前にいる患者さんの、こうした“苦しみの詳細”がわかってはじめて、患者さんの意向に沿った緩和ケアへの第一歩が踏み出せます。
 患者さんの言葉をただじっと待っていても、得られるものは少ないでしょう。医療者から積極的に質問を繰り出さなければなりません。日本人のコミュニケーションは、以心伝心、気配りと思いこみなどと言われます。長い付き合いなら、これもよいでしょう。でも付き合いの短い患者さんに対して、その意向に沿った医療を短い診療時間で行っていくには、きちんと相手に問うということが必要不可欠です。診療時間内に患者の満足を得るには、患者さんが「(自分の苦しみや望みを)わかってくれた」と感じることです。逆に、いくら時間をかけても患者さんが「伝わらなかった、わかってもらえなかった」と思うこともあるでしょう。時間ではありません。よい質問を自分の中に蓄えておき、自然な会話の流れの中で質問を繰り出し対話していくのです。
 本書は、私が日々の臨床の中で“よい質問”を目指して工夫をこらし、蓄えてきたものを執筆いたしました。本文中の会話例を読んでいただくとわかるように、よい質問は、症状や病態の評価のみならず、患者さんの安心感につながったり、真のdemandsを探っていくこともできます。私は多くの患者さんから“適切なアセスメントはケアにもなりうる”ということを教わりました。アセスメントの最中に、まだ治療を開始していないのに、患者さんが「やっとわかってもらえた」「安心した」「楽になった」と笑顔で話すのをよくみてきたからです。そしてよい質問をすることで、はるかに短い時間で、信頼関係がより豊かに育ったり、より多くの情報を得て適切な緩和ケアを提供できることを経験してきました。
 本書で取り上げた質問や会話のやりとりはほんの一例であり、実際の現場では患者さんの返答により、無限のパターンがあります。それらを網羅することは到底できませんが、重要度の高いものを取り上げたつもりです。また、実際に質問する際には、さまざまなスタイル、自分にフィットする言葉の言い回し、というものもあります。方言もあるでしょう。ですから、本書をヒントにして、ご自分なりのよい質問を蓄えてくださればよいと思います。
 最後に、本書が誕生するまでに出会った患者さんとご家族、冒頭の言葉を叩き込んでくださった藤井勇一先生、毎日共に働いている埼玉県立がんセンターの医師、看護師、薬剤師の皆さん、そして本書の企画から出版まで労をとっていただいた南江堂の大野隆之さん、高橋有紀さん、鈴木佑果さん、さらに葡萄の表紙を描いていただいた、友人であり画家の柏木リエさんに心からの感謝を申し上げます。
 本書が少しでも皆さんの日頃の問診や対話でのヒントになれば、これに勝る喜びはありません。そして、的を射た質問で、一人でも多くの患者さんの苦痛が癒されるよう祈ります。

2017年初春
余宮きのみ

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