書籍

成人脊柱変形治療の最前線

編集 : 日本側彎症学会
責任編集 : 種市洋/松本守雄
ISBN : 978-4-524-25986-1
発行年月 : 2017年7月
判型 : B5
ページ数 : 366

在庫あり

定価8,640円(本体8,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

成人脊柱変形は、小児脊柱変形の遺残に加え、高齢化や脊椎固定術後変形などの変性変化により近年増加しており、痛みや神経障害・消化器症状など患者のQOL・ADL低下の要因となっている。本書では日本側彎症学会の事業として、これら成人脊柱変形に対する積極的な手術的治療を安全に完遂するための知識を集約した。脊柱グローバルバランスの評価や発症機序、病態から、手術適応の判断・治療戦略の立案や実際の手術手技までを網羅した一冊。

I章 総論
 A 成人脊柱変形治療の歴史
 B 病態
  1.病因による分類
  2.立位グローバルアライメント・バランス
  3.SRS-Schwab分類
  4.疫学
   a.住民検診
   b.加齢と脊柱・骨盤パラメータの変化
   c.脊柱矢状面アライメントの基準値と民族間の違い
   d.医原性後弯症
   e.骨粗鬆症性椎体骨折と脊柱変形
  5.症状と問題点
 C 診断・評価
  1.診かたと注意点
  2.画像診断
  3.健康関連QOL評価
  4.特殊な病態評価:Slot-scanning 3D X-ray Imager(EOS),立位バランス,歩行解析
 D 治療
  1.保存的治療
  2.手術適応の考え方
  3.手術計画の立て方と実際
  4.麻酔管理(周術期管理)
  5.術後管理
  6.合併症と対策
II章 各論
 A 各病態における治療戦略
  1.変性後側弯症(de novo,二次性を含む)
   a.脊柱変形を伴った腰部脊柱管狭窄症
   b.変性側弯症(側弯Cobb角30°以上)
   c.変性後弯症(側弯Cobb角30°未満)
   d.パーキンソン病に伴う脊柱変形
   e.頚椎変形
  2.脊椎固定術後後弯症
  3.骨粗鬆症性後弯症
 B 手術手技
  1.各種解離法と骨切り術
   a.椎間解離法
    a-1.後方進入法(PLIF,TLIF)
    a-2.側方アプローチによる前側方解離矯正
   b.Ponte骨切り術(下関節突起切除を含む)
   c.pedicle subtraction osteotomy(PSO)
   d.vertebral column resection(VCR)
  2.インストゥルメンテーション
   a.後方法
   b.骨盤固定法
   c.前方法
   d.MIS(minimally invasive surgery)
   e.骨粗鬆症対策
付録
 1.Oswestry Disability Index(ODI)
 2.日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)
 3.Scoliosis Research Society.22(SRS.22)日本語版
 4.Roland.Morris Disability Questionnaire(RDQ)
索引

序文

 成人脊柱変形は現代の脊椎外科領域でもっとも注目を集めているトピックの1つで、病態の解明とそれに基づいた治療の進歩には目をみはるものがあります。日本脊椎脊髄病学会学術集会でも2010年以降、成人脊柱変形は毎年、主題として取り上げられ、多くの研究発表がなされ議論が交わされてきました。また、日本脊椎脊髄病学会が実施した全国脊椎手術調査では、脊柱変形手術の全脊椎手術に占める割合は1994年:2.1%、2001年:2.3%と横這いであったのが、2011年調査では3倍増の6.8%となっています。これは脊柱変形手術の対象が小児主体から成人を含む幅広い年齢層に広がったことを意味していると考えられます。これまで脊柱変形治療は側弯症を専門とする少数の脊椎外科医が行う特殊な領域でしたが、変性や外傷を基本病態とする成人脊柱変形はほぼすべての脊椎外科医が対象とすべき疾患です。この現状を受け、日本側彎症学会では急速な広がりを見せる成人脊柱変形の病態理解および治療の標準化が急務と考え、2015年の幹事会で本症に関するスタンダードを1冊にまとめた『成人脊柱変形治療の最前線』刊行を企画しました。本書は2013年と2014年に発刊された『側弯症治療の最前線(基礎編・手術編)』(日本側彎症学会編集、責任編集:川上紀明・宇野耕吉、医薬ジャーナル社)の姉妹書であり、その刊行は日本側彎症学会の重要な事業の1つです。
 本書は成人脊柱変形の歴史・病態・診断・治療を総論として網羅的・包括的に取り扱うのみならず、病態別の治療戦略の立て方や手術手技の実際も各論として詳細に記載しており、この1冊で成人脊柱変形のすべてが分かるように企画しました。本書の執筆は第一線で成人脊柱変形治療を行っている日本側彎症学会幹事および成人脊柱変形委員会委員の各先生が担当され、超多忙な診療・研究業務の中、非常にタイトなスケジュールで仕上げていただきました。麻酔管理は獨協医科大学麻酔科主任教授の濱口眞輔先生にお忙しい中、ゲストオーサーとしてご執筆賜りました。責任編集者として各稿を拝見しましたが、そのすべてが大変な力作に仕上がっています。また、慶應義塾大学整形外科の松本守雄教授には共同責任編集者として、ご多忙の中ご協力いただきました。本書の作成にあたりましては、南江堂の皆様にも多大なご協力をいただきましたことを、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 本書により、読者の皆様方が幅広い疾患スペクトラムを持つ成人脊柱変形についての理解を深め、正確な病態把握に基づいた効果的かつ安全な治療を実施できることを切に願っております。また、これにより運動器不安定症としての成人脊柱変形の適切な管理がなされ、わが国の高齢者医療の発展に少しでも役立てることができればこの上ない喜びです。

2017年6月
獨協医科大学整形外科学教室 主任教授
種市洋

 先進国を中心に生命寿命の延長、出生率の低下によって、世界的に高齢化が進行しています。本邦でも、2015年の統計では65歳以上の高齢者が女性29.5%、男性23.7%に達しました。本書の序文にも記載されていますが、日本脊椎脊髄病学会が実施している全国脊椎手術調査では、全脊椎手術に占める脊柱変形手術の割合が増加しており、この原因は変性や外傷をもとにした成人脊柱変形に対する外科的治療が原因と考えられます。そこで日本側彎症学会は、本症における病態の理解と治療の標準化を目的に本書の刊行を事業化しました。本書は、「I章 総論」、「II章 各論」から構成されており、各セッションには、はじめに“Point”が提示されているため、要点を整理しながら読みすすめることができます。最近の論文から最先端の知見を多く取り入れ、図や表を多用してわかりやすい記述になっています。詳しく知識を深めたい場合には、引用文献から簡単に重要な論文に到達できます。
 総論は、治療の歴史、病態、診断・評価、治療から構成されています。本症は小児の脊柱変形後の遺残に中年期以降の変性が加わった変形と、小児期には変形がなく成人発症の加齢性変化による変性によって発生した変形(de novo)、に大きく分けられます。歴史では、矯正固定法と使用された脊椎インストゥルメンテーションの変遷が紹介されています。病因については変性側弯症と矢状面グローバルアライメントに分類し、症例提示とともにわかりやすく解説されています。病態では、立位保持には頭部から脊椎、骨盤、下肢までのバランスの重要性や理想的な立位脊柱矢状面アライメント、骨盤パラメータ、立位姿勢維持のための代償機能について説明されています。さらに実際の臨床例に使用されるSRS-Schwab分類、脊椎および骨盤パラメータの計測や画像診断、基準値、民族間差、健康関連quality of life(QOL)、歩行解析などについても多くのグラフや表を使用し、わかりやすい解説になっています。手術的治療を考慮すべき愁訴、日常生活動作(ADL)、QOL、また固定範囲や術式決定について詳細に述べられており、症例提示によって手術計画の実際が示され、実践的でわかりやすい構成です。また手術に伴う麻酔や術後管理、合併症とその対策についても記載があります。
 各論は、病態ごとの治療戦略と手術手技に分けた構成となっています。脊柱変形を伴った腰部脊柱管狭窄症、変性側弯症、変性後弯症の疾患ごとの病態、診断、評価、治療法が、症例提示も加えられ詳細に解説されています。また術式選択、固定範囲、矯正目標が示され、使用する骨切り術、矯正術についても図や画像とともにわかりやすく説明されています。さらにParkinson病に伴う変形、頚椎変形などの難治例についても手術時の写真、固定材料の選択と設置のコツ、神経モニタリングについて触れられています。手術手技の章では、さまざまな椎間解離法、骨切り術、使用する脊椎インストゥルメンテーションについて、多くの図やイラスト、画像、手術写真を用いて実践的にノウハウがわかりやすく解説されています。
 本書は、多くの症例を経験され、また論文や学会発表を行っている世界の先端を走るオピニオンリーダーによって企画され、執筆された学会主導の編纂です。著明な脊椎外科医が先端かつ正確な事実をわかりやすく読者に伝えようと努力されたことがよくわかります。脊椎脊髄外科専門医はもちろん、その分野をめざす若手、地域中核病院で本疾患の治療にあたる医師にはぜひ手に取って、臨床で役に立てていただきたいと希望します。

臨床雑誌整形外科68巻13号(2017年12月号)より転載
評者●山梨大学大学院整形外科教授 波呂浩孝