書籍

ケーススタディでわかる脱ポリファーマシー

  • 新刊

編集 : 徳田安春
ISBN : 978-4-524-25948-9
発行年月 : 2016年10月
判型 : B5
ページ数 : 234

在庫あり

定価4,104円(本体3,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

徳田安春先生が贈る、ポリファーマシー(多剤併用)から脱却するための“賢い処方医になる知恵”と“薬剤師へのメッセージ”。ケーススタディでみる薬剤カスケードと脱処方の実際、薬剤師の視点を通したコメントで多剤併用の解決法を指南する。多剤併用の危険を見抜き、適正な薬物療法を実践するための医師、薬剤師必携の1冊。

I ポリファーマシーとは
 A.実態とそれによる健康被害
 B.内服薬の種類が多くなった理由
II 高齢者におけるポリファーマシーを防ぐツール
 A.高齢者に対して「特に慎重な投与を要する薬物」のリスト:日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
 B.高齢者に対して「開始を考慮するべき薬物」のリスト:日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
 C.日本版Beers基準
III ケーススタディ
 【症例1】統合失調症の既往,6ヵ月前に転倒歴のある施設入所中の80歳男性.症状に沿った内服薬追加増量後,発熱と意識レベル低下となり救急搬送
  [薬剤師コラム]薬剤による錐体外路障害
 【症例2】不安障害のある40歳代女性.不安症に対する薬剤調整の後に胸背部の違和感,動悸,発汗を認めるようになった.心療内科より紹介
  [薬剤師コラム]セロトニン症候群
 【症例3】高血圧の既往あり,近医内科通院中の74歳男性.1年半前より不眠記憶障害を認め同院より加療開始.3ヵ月前より幻聴出現し不眠改善しないため,心療内科を受診し追加処方開始.3日前より見当識障害傾眠を認めるようになった
  [薬剤師コラム]ベンゾジアゼピン系薬物処方の際の注意点
 【症例4】C型慢性肝炎などでA クリニックに通院,不眠症などでB クリニックに通院中であるが,ADLはおおむね自立している82歳男性.繰り返す肺炎の治療中に排尿困難を認め受診
  [薬剤師コラム]スルピリドのドパミンD2受容体遮断作用について
 【症例5】乳がんで化学療法中の38歳女性.オキシコドン,パロキセチンの相互作用により傾眠となった
  [薬剤師コラム]パロキセチンの薬理作用
 【症例6】肺がん,転移性骨腫瘍の治療中,嘔気の治療をしていたらそわそわ落ち着かなくなった81歳男性
  [薬剤師コラム]がん領域とポリファーマシー
 【症例7】認知症で施設入所中の78歳女性.1年前から認知症治療薬が投与されており,その後生じた症状に対して内服薬が次々に追加され,転倒打撲を繰り返し,意識障害で救急搬送
  [薬剤師コラム]ワルファリンの適正使用
 【症例8−1】統合失調症のある60歳代女性.内服のリチウム製剤を増量され,その1ヵ月後から歩行困難と会話困難が出現して救急搬送
 【症例8−2】精神発達遅滞があり長期施設入所中の50歳代男性.リチウム製剤を含む薬剤を内服中であったが,食欲低下のために経管栄養へ変更された.その後から発熱と血圧低下にて救急搬送.敗血症の治療中に多尿に気付かれた
 【症例8−3】不眠と多弁が出現し,双極性障害と診断されリチウム製剤を含む内服が開始された58歳男性.その1ヵ月後に意識障害と眼振が出現
  [薬剤師コラム]炭酸リチウム投与中の血中濃度測定の必要性について
 【症例9】認知症のある80歳代後半の男性.認知症に伴うせん妄のために施設入所,処方変更後に失神をきたし救急搬送
  [薬剤師コラム]ドネペジルによる徐脈,失神
 【症例10】外出しなくなり認知症と診断された76歳女性.認知症治療薬が増量され,意識障害で救急搬送
  [薬剤師コラム]腎機能と投与設計
 【症例11】抗パーキンソン病薬抗精神病薬および排尿障害治療薬を使用中の歳女性.認知機能低下下肢脱力により転倒し胸椎圧迫骨折
  [薬剤師コラム]抗コリン作用の程度はどのように評価するか
 【症例12】ワルファリン服用中で肺がん手術後の72歳男性.術後創部痛に対してプレガバリンが投与され,ふらつき,転倒,頭部打撲により硬膜下血腫となった
  [薬剤師コラム]プレガバリンによる転倒およびワルファリンによる出血【症例13】不眠症で睡眠導入剤を処方されていた77歳男性.副鼻腔真菌症に対して抗真菌薬を使用,意識障害に陥る
  [薬剤師コラム]トリアゾラムを介する薬物相互作用
 【症例14】頻脈でジギタリスを増量された63歳女性.ジギタリス中毒となり徐脈失神で緊急入院
  [薬剤師コラム]ジゴキシンの血中濃度に及ぼす影響因子
 【症例15】心臓肥大で加療中の91歳女性.訪問介護で著明な全身浮腫と低酸素を認め救急搬送
  [薬剤師コラム]心房細動や心不全に対するジゴキシンの使用について
 【症例16】高血圧の既往,1ヵ月前に転倒し左大腿部骨折がみつかった85歳女性.大腿骨頭置換術後に呼吸困難,慢性心房細動が出現.循環器科にコンサルトされ,加療後に循環呼吸状態は落ち着いたが発熱と食欲不振が出現した
  [薬剤師コラム]ジスチグミン臭化物錠の添付文書改訂時の薬剤師の活動例
 【症例17】抗不整脈薬β遮断薬を処方された肝硬変の45歳男性.徐脈急性腎不全無尿となる
  [薬剤師コラム]ベラパミルとβ遮断薬の併用
 【症例18】胃潰瘍痛風の既往がある,変形性膝関節症,高血圧症の78歳男性.サイアザイドなどの降圧薬3剤とNSAIDs,プレガバリン,トラマドールなどの鎮痛薬が処方され腎機能障害をきたした
  [薬剤師コラム]注意すべき腎排泄型薬剤に気づくポイント
 【症例19】ワルファリン内服中の61歳男性.口腔カンジダ症に対してミコナゾールを処方され,肉眼的血尿とPT‐INR延長により緊急入院
  [薬剤師コラム]ミコナゾールとワルファリンの薬物相互作用
 【症例20】頭部外傷後の器質的精神病にて精神科病院に入院中の80歳男性.右肩痛に対してNSAIDs投与後から呼吸不全,血圧低下と徐脈が出現し救急搬送
  [薬剤師コラム]NSAIDs,PL配合顆粒の副作用
 【症例21】転倒による橈骨遠位端骨折に対して鎮痛薬を処方された92歳女性.吐血をきたし救急搬送
  [薬剤師コラム]日本人における消化管出血のリスク因子
 【症例22】パーキンソン病の80歳男性.前立腺肥大症治療薬投与にて失神を繰り返す
  [薬剤師コラム]α1受容体サブタイプの選択性と臨床的影響についての考察
 【症例23】骨粗鬆症にて活性型ビタミンD3製剤とカルシウム剤投与の75歳女性.食思不振,風邪症状,傾眠が出現
  [薬剤師コラム]せん妄と医薬品
 【症例24】続発性甲状腺機能低下症のある40歳代女性.子宮筋腫の術前検査で軽度貧血を認め,鉄剤投与後に全身倦怠感,浮腫,肝機能異常を指摘され紹介
  [薬剤師コラム]レボチロキシンと鉄剤の相互作用の報告の概要
 【症例25】右大腿骨顆部骨折にて入院となった80歳代女性.約4ヵ月前から下肢筋肉の脱力感がみられ,今回は運動時の転倒にて当院整形外科受診.来院時の採血でカリウム2.3mEq/Lと低下を認めた
  [薬剤師コラム]芍薬甘草湯による偽性アルドステロン症
 【症例26】高血圧,心筋梗塞,繰り返す尿管結石症の既往のある50歳代男性.3ヵ月前に急性化膿性閉塞性胆管炎あり,治療後に胆.摘出術が施行された.その後に十二指腸潰瘍にて再入院歴あり.内科的なフォロー目的に紹介
  [薬剤師コラム]アロプリノールの副作用
 【症例27】慢性心不全,狭心症などの既往を持つADL自立した85歳女性が,来院2日前より倦怠感,食思不振,大量水様便を認め来院.来院時ショックバイタルであった
  [薬剤師コラム]ピボキシル基を有する抗菌薬による低カルニチン血症
IV ポリファーマシー対策
 A.ポリファーマシーの有害性を啓蒙する
 B.ポリファーマシー脱却のための研究調査をする
 C.ポリファーマシー脱却のために薬剤師と連携する
 D.賢い「脱」Do処方医になる!
索引

序文

 ポリファーマシーが深刻な問題となっております。ポリファーマシーでは薬剤有害作用のリスクが高まり、特に高齢者で問題です。一例として、ポリファーマシーは転倒を増加させ、転倒すると骨折そして寝たきりとなり、生命予後を悪化させます。ポリファーマシーでよく処方されているベンゾジアゼピン系薬剤の服用では、転倒のみならず、認知機能の低下もきたします。
 このようなポリファーマシーが起きる要因には様々なものがあります。患者さんからの希望もあるでしょう。ガイドラインに従ったためにそうなったということもあるでしょう。製薬企業から魅力的な薬剤が販売されたということもあるでしょう。しかし、重要な要因として見逃してはならないのは、ある薬剤によって起こった副作用に対して別の薬剤を投与してしまう、薬剤カスケードという現象です。
 このような状況の中、本書を世に出すことにしました。内容は従来の医療関連書籍には無かったものがほとんどであり画期的なものです。まず総論として、ポリファーマシーの現状と要因、高齢者において避けるべき薬剤について解説しました。本書のコア部分では、ポリファーマシーで最も問題となる薬剤の「賢くない」使い方について、実際のケースを多数示しました。有害イベント事例を他山の石として、読者が実践的に学習できるようにしています。特に薬剤カスケードについては図を用いて詳細に解説していますので、この複雑な現象が理解しやすくなっていると思います。
 各ケースの最後に、薬剤師のコメントを入れました。薬学の専門的意見は貴重です。従来、医師は、薬剤の知識は製薬企業の営業担当者から仕入れていたことが多かったと思います。欧米では、Pharm Dと呼ばれる現場の薬剤師から薬剤の知識はもたらされます。このようなアカデミックディテーリングの役割を果たしてくれる優秀な薬剤師が日本中の病院には多数います。これからの処方には医師と薬剤師の協働が求められます。
 スウェーデンでは、全国の処方医に対して、国が「脱処方マニュアル」を配布していると聞いています。本書が日本でのそのような役割を果たすことが少しでもできればと希望します。現在、全国の病院や診療所の診察室の本棚にデフォルトで備え付けられている代表的な本は『今日の治療薬』でしょう。処方マニュアルです。その『今日の治療薬』を出版している南江堂の編集担当の方が、本書の企画を持ってこられたことは賞賛に値すると感じ、私は仲間とともにこの企画をお受けした次第です。その意味でも本書は画期的な企画と思います。医師のみならず、多くの医療従事者に読んでいただきたいと願っています。

2016年9月吉日
東京にて
徳田安春