書籍

薬剤師のための医学論文の読み方・使い方

  • 新刊

共著 : 名郷直樹/青島周一
ISBN : 978-4-524-25947-2
発行年月 : 2017年7月
判型 : B5
ページ数 : 204

在庫あり

定価4,104円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

「これって本当に患者さんのためになるのだろうか?」服薬指導をしながら釈然としない想いをした経験はないだろうか。本書は医学論文の読み方を解説しながら、「きちんと飲んでください」と説明している薬の効果を「EBM」と「構造主義医療論」により検証し、論文情報の活用法を学んでいく。構造主義生物学者池田清彦氏推薦!明日からの業務が変わる、新時代の薬剤師のための一冊。

はじめに
I章 医薬品情報提供者のプロフェッショナルとして
 1.医療全体の中での薬剤師の役割:調剤室をエビデンスセンターに
 2.医薬品情報を製薬メーカーに依存してよいのか
II章 知っておきたいキーワード
 1.薬剤効果の概念的側面と事実的側面
 2.代用のアウトカムと真のアウトカム
 3.背景疑問と前景疑問
 4.EBMの5つのステップ
 5.内的妥当性と外的妥当性
 6.ランダム化比較試験
 7.コホート研究
 8.症例対照研究
 9.メタ分析
 10.横断研究
 11.その他の研究デザイン
 12.情報収集戦略
 13.6Sアプローチ
 14.PubMed検索のコツ
 15.ハザード比,オッズ比
 16.平均差,標準化平均差,治療必要数
 17.統計的仮説検定,P値,有意水準
 18.統計的推定,95%信頼区間
 19.プラセボ効果,ホーソン効果,ノセボ効果,二重盲検法,PROBE法
 20.クロスオーバー,ITT解析,非劣性試験,マージン
 21.αエラー,βエラー,一次アウトカム,二次アウトカム,複合アウトカム
 22.サブグループ解析,ボンフェローニ法
 23.交絡因子,傾向スコアマッチング
 24.情報が示すものと臨床研究が示す関連
III章 「効果がある薬」の実体:統計学的検討と構造主義科学論的検討
 A 存在論的に考えるか,認識論的に考えるか
 B 統計学的検討の王道,検定推定統計
 C ベイズ統計による検討
 D 統計学的検討と認識論的アプローチ
 E 構造主義,ソシュールの言語学
 F 存在論的か,認識論的か
 G 統計学的検討から構造主義科学論的検討へ
 H 実体,現象,コトバ,私,そしてそのギャップ
 I 構造主義科学論からみた検定推定統計,ベイズ統計
 J 構造主義科学論的検討の一例
IV章 クリニカルクエスチョン
 1.エゼチミブの有効性はどの程度か?
 2.心血管疾患に対する低用量アスピリンの一次予防効果は?
 3.長時間作動型β2刺激薬の長期投与の安全性は?
 4.DPP-4阻害薬の有効性はどの程度か?
 5.チオトロピウム吸入製剤の安全性はどの程度か?
 6.先発医薬品と後発医薬品の効果は臨床的に同等か?
 7.ベンゾジアゼピン系薬と認知症に関連はあるのか?
 8.ピオグリタゾンの膀胱がんリスクは?
 9.認知症は早期発見するべきか?
V章 チーム医療:医師との真の連携とは
 A 連携の現状
 B 職種間のギャップ
 C 職種による2つの立場
 D 在宅医療の現場で
 E 薬剤師との連携
 F EBMを媒介とした連携
おわりに
索引

はじめに

 薬に効果があるのか。こうした問いは、多くの場合で、その薬に効果があるにせよ、ないにせよ、薬の効果というものが、我々の認識とは独立してこの世界に存在することが前提となっている。例えば、風邪薬には鼻水や咳を緩和する効果がある、というときの「ある」は、効果があると思い込んでいるから「ある」のではなく、薬という化学物質にはそうした力が実際に存在しているという意味での「ある」ではないだろうか。
 しかし、薬の効果というものをあらためて考えてみると、それは手に乗せて、直接観察できるようなものではなく、薬の効果なるものがこの世界のどこかに独立して存在しているわけではないだろう。薬の効果がある、というときの「ある」は、サッカーボールのような仕方で「ある」のではなく、どちらかといえば意味が「ある」とか、目的が「ある」というような、とらえどころのないようなものだといえる。しかし、実際に「薬が効く」という意味について考えるとき、我々はどんな情報を参照して、どんなことに関心を向けて、そこにどんな価値を付与しているのだろうか。
 薬を飲めば、今現在悩まされている身体症状が改善もしくは緩和し、あるいは不健康といわれているような状態から健康といわれているような状態に近づくことができる。そう考えることに疑念の余地は少ない。程度の差はあれ、わが国で承認されている薬剤にはそうした薬の効果が確かにあって、だからこそ医療の現場で治療に用いられるのだという確信を抱いている。
 EBM(evidence-based medicine)とは、科学的根拠に基づく医療などと訳される。しかし、薬の効果を臨床医学論文に記述された情報に基づき、科学的に考察すればするほど、そこに立ち現れるのは非科学的といわざるをえないような曖昧な現象だったりする。
 本書では、臨床医学論文を読むにあたり、最低限必要な知識を整理したうえで、薬の効果に関する常識的な知識は、人の関心に応じて切り分けられた認識に過ぎないという側面を明らかにしていく。本書が薬の効果を考えていくうえで、新たな思考の枠組みを提供することができたら幸いである。

2017年6月
青島周一