書籍

ヒラメキ!診断推論

総合診療のプロが苦手な症候へのアプローチ、教えます

編集 : 野口善令
ISBN : 978-4-524-25938-0
発行年月 : 2016年4月
判型 : A5
ページ数 : 246

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

総合診療のプロが「診断推論」の実際を伝授。米国で診断の思考過程を学び帰国後卒後教育に積極的に取り組んできた編者による、これまでの診断推論本とはひと味異なる一冊。外来で遭遇することが多い20症例につき、診断に至るまでのプロ達の思考過程を体験して、ヒラメキ(スナップ診断)と論理(分析的アプローチ)の両面から診断推論のスキルを身につける。

総論
 診断推論とは何か
01 全身倦怠感
 疲れやすくてだるいんです・・・
02 不眠
 夜間に3度,目が覚めるんです
03 体重減少
 体重が減って,食欲もありません・・・
04 浮腫
 左足全体が痛み,赤く腫れています
05 リンパ節腫脹
 首のしこりが大きくなっています
06 発熱を伴う発疹(fever and rash)
 熱があって,発疹も出てきました
07 発熱
 週に数回,午後に熱が出ます
08 めまい
 めまいが急に出ました
09 失神
 ちょっと寝ちゃっただけ(?)
10 目の充血
 10日前から嘔気があり,左目が充血しています
11 慢性咳嗽
 咳が止まりません
12 嘔気・嘔吐
 昨日からふらつきがあり,嘔吐しました
13 慢性下痢
 下痢がずっと続いています
14 腰痛
 2ヵ月以上腰が痛いのですが・・・
15 関節痛
 いろんな関節で痛みが移動します
16 四肢のしびれ
 半年前から歩くと両足がしびれます
17 意識障害
 家族が話しかけても反応しません
18 咽頭痛
 のどが痛いのですが風邪でしょうか?
19 肝機能異常
 肝機能異常を指摘されました,体がだるく熱もあります
20 全身の痛み
 とにかく体のあちこちが痛いんです
索引

序文

 本書は臨床雑誌「内科」2013年1月号より連載した「学び直し診断推論」を改訂してまとめたものである。ある程度、卒後年次の高い臨床経験のある臨床医も読者に想定して、苦手な症候に対してこれを押さえれば一安心の鑑別診断の考え方を学ぶことを目的としている。
 診断推論は、いまや臨床医の共通言語となり、とくに、研修医、若手医師の間ではなじみが深いが、現在、中堅以上の臨床医として現場で頑張っているのは体系的な診断推論の考え方の教育を受けたことのない世代であろう。経験値を上げてなんとなく日常診療を無難にこなしているが、この訴えの患者に来られると苦手と感じられる症候があると思われる。とくに、原因疾患が、1つの領域にとどまらない場合にそう感じることが多いのではないだろうか。
 臨床医は、スナップ診断(直感)と分析的アプローチ(論理)の2種類の方法を巧みに使い分けながら診断を行っている。本書の構成として、いきなり鑑別診断のリストから考えるのではなく、まず何かひらめくものがないかスナップ診断を試してみる。症候によっては、非特異的すぎるか、苦手でスナップ診断できないものもあるかもしれない。ひらめく疾患がなければ、don’t missの視点から見逃してはいけない疾患のリストについて考えてみる。なお、本書は一般外来を主な対象としているので、救急外来でよく行われるような、最初にdon’t miss疾患を全部除外しておいて、大丈夫と思えたらはじめてdon’t missでない疾患を考えるというアプローチはとらない。Don’t missは、あくまで、なければ安心できる疾患のリストとして押さえで考える。これらのdon’t missを常に押さえるトレーニングをすると、日常診療の何か重大なものを見落としているのではないかという不安から解放されるはずである。
 本書が、「直感」と「論理」を駆使することで苦手な訴えに自信をもって対応できるようになる助けになれば幸いである。

2016年4月
野口善令

●病歴聴取・身体所見の重要性
〜刑事コロンボの勧め〜
 日常診療でいつも遭遇する発熱、体重減少、不眠、リンパ節腫脹など、実際の診断は難しいと考える医師が多い。実際、一人としてまったく同じ症候あるいは訴えであるということはなく、これがまた診断を難しくしている。診断への近道は、まずは患者さんの訴えに謙虚に耳を傾けることである。何気なく言っていた情報が実は診断に直結することもある。確定診断を行う過程でもう一つ重要なのがフォーカスを絞った身体診察である。不明熱患者で下腿にできた2〜3mmの小さな紫斑で診断がつく場合もあり、詳細な身体診察が必須である。われわれ臨床医は診断を行っていく過程で以下のような作業を行っている。
経験と疾患それぞれのもつ疫学を踏まえ病歴、身体診察、検査所見より
 (1) 身体所見からの見た目
 (2) 一定の決まったルール
 (3) 診断基準
を当てはめ、鑑別診断を考え最終診断を行っている。いわば刑事コロンボが行う作業と似ている。この3つの要素についてもう少し詳しく述べてみたい。
 (1) の「見た目」で“一発診断”、非常にかっこいい。皮膚科の先生は非常に得意である。しかし、落とし穴(“わな”)もある。たとえば鞍鼻とくれば、見た目で一発診断“Wegener肉芽腫症”と答える医師も多い。エンドキサンとステロイドパルス療法がゴールドスタンダード。“よし行け〜!”っと。ところが、実は先天性梅毒、Hansen氏病、コクシジオイデスなどの感染症による鞍鼻変化であった場合、われわれが行った治療が命取りになることもある。しかし、知っておくべきクリニカルパールはこの「見た目」にはたくさんある。
 (2) の「一定の決まったルール」とは、たとえば“指圧で消退しなければ紫斑、消えれば紅斑”といったルールが当てはまり、臨床家に知られているルールのことである。しかし、これも不明熱などルールに当てはまらない場合には通用しない。
 (3) の「診断基準」では、診断に役立つ情報を効率よく引き出せ、検査を選択するために参考になるが、いくつもの診察所見や検査法が載っていて覚えづらい。また、一つ一つ診断基準に載っている項目をこなしていくと時間がかかり過ぎ、患者さんの状態が悪化してしまったり、いくつかの疾患がオーバーラップしているとどれがメインなのか決断するのには経験も必要になる。
 このような3つの要素とともに疾患それぞれのもつ年齢、性別および疾患頻度など疫学的背景も考慮して診断をつけていく。
 『ヒラメキ!診断推論』では、総合診療内科または一般内科外来で遭遇する頻度の高い主訴に対してその道のエキスパートの執筆陣が経験を踏まえ解説している。それぞれの主訴に対して病歴聴取・身体診察のポイントおよび検査のポイントのフローチャートが示され、時間のない臨床医にはありがたい。症状に応じて鑑別診断、ピットフォールなども要所要所に解説があり、最後にクリニカルパールでまとめられている。
 研修医ばかりでなく、われわれのような専門医として外来診療を行う中堅医師にも、この一冊はもう一度総合診療的なアプローチを勉強できるよい機会となることを確信している。

臨床雑誌内科118巻6号(2016年12月号)より転載
評者●聖路加国際病院Immno-Rheunatology Center医長 岸本暢将