書籍

食道運動障害診療指針

編集 : 日本消化管学会
ISBN : 978-4-524-25891-8
発行年月 : 2016年3月
判型 : A4
ページ数 : 112

在庫あり

定価2,916円(本体2,700円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

内視鏡や造影検査で明らかな異常が認められないにもかかわらず「胸のつかえ感」や「胸痛」があり、食道の運動機能に何らかの障害が生じている状態の総称である「食道運動障害」をまとめた“公式ガイド”。食道運動の生理、各疾患の病態、各検査・治療までをコンパクトに解説。2015年春発表のシカゴ分類(Ver.3)など最新知見も反映。非専門医・実地医家も読んでおきたい一冊。

口絵
1.食道運動検査法
 (1)食道内圧検査の原理と種類
  概括
  (1)infused catheter法
  (2)solid state sensor法
  (3)食道内圧検査の実際
 (2)内圧検査以外の運動評価法
  概括
  (1)バリウム造影,シンチグラフィ
  (2)エンドフリップ
  (3)内視鏡超音波検査(EUS)
  (4)インピーダンス/pH測定
  (5)上部消化管内視鏡検査
2.食道運動障害の基礎
 (1)食道運動の生理
  (1)上部食道括約部
  (2)食道体部
  (3)下部食道括約部
 (2)食道運動障害の病態生理
3.食道運動障害の臨床
 (1)臨床症状と診断フローチャート
  (1)非心臓性胸痛(NCCP)
  (2)嚥下困難
 (2)食道運動障害の分類
  概括
  (1)一次性食道運動障害
   a)従来の分類
   b)シカゴ分類
  (2)二次性運動障害
 (3)食道運動障害の治療(アカラシアとアカラシア以外の疾患)
  (1)薬物療法
  (2)内視鏡的治療(バルーン拡張術,ボツリヌス毒素局注療法,POEM)
  (3)外科的治療
索引

序文 −食道運動測定の温故知新−

 現在、ヒトの咽頭から肛門までのあらゆる消化管や、Vater 乳頭などの運動測定が行われているが、最も古いのは食道内圧測定である。かつ内圧測定法が病態の解明や治療の効果判定などに最も活用されている分野も、また食道である。
 歴史的には、1883年にKroneckerとMeltzerがヒトの咽頭と食道運動をバルーン(空気)で記録したのが始まりである。彼らは胃と食道では呼吸曲線が陽圧から陰圧に変化すること、嚥下に伴う食道収縮は肛門側へ伝播することを観察している。1920年代からは水を入れたバルーンによる研究がIngelfinger、Brody、Hightowerらにより行われ、第二次世界大戦後Codeらはバルーン法の精度を高めLES圧を測定している。しかしながら、バルーンは高くて速い圧変化への追従性が悪く[pressure rise rate(PRR)が低い]、その大きさや硬さにより測定値が変化し、かつバルーン自体が食道運動を刺激するなどの欠点を有していた。その後、1950年にQuigleyらは水を満たした細管(catheter)を食道内に挿入し、いわゆるopen tip法により収縮圧の測定を行った。1960年代には常に細管から水を注入するinfused catheter法が開発され、水の注入法もハーバード型のシリンジポンプから1977年には米国MilwaukeeのDoddsや技師のArndorferらがlow complianceのpneumohydraulic capillary infusion pumpを開発し、Dentが考案したDent sleeve sensorを組み合わせることで本法は完成した。収縮圧でopen tipから水の流出が停止すると、細管の一方側のトランスジューサーが感知し、記録する。このトランスジューサーを直接食道内に挿入するのがintraluminal transducer法である。半導体小型センサーの金属受圧面が“ひずむ”ことでbridge回路の電気抵抗が変化し、圧として捕らえる仕組みである。センサーの形態からsolid state sensor法とも呼ばれている。本法は水を注入しないことからより生理的であるが、センサーが非常に高価で壊れやすいという欠点を有していた。
 そんな折に登場したのがsolid state sensorを多数有するhigh resolution manometry(HRM)である。infused catheter法や以前のintraluminal transducer法では慣習的に5.7cm間隔で圧を測定していたが、HRMでは1cm間隔で30数チャネルのセンサーで、咽頭〜体部〜LES〜胃を同時に測定可能となり、「今までみえていなかった(みてなかった)部分の運動」が可視化され、まさにinnovationと呼べる機器と発想の転換である。Castellらは“nutcracker食道”のように親しみのある呼称を用いた食道運動障害の分類を作成し長い間使用されてきたが、今やHRMを用いたPandolfinoやKahrilasらによる新分類(シカゴ分類)は世界を席巻している。現在、HRMなしでは食道運動の臨床と研究は不可能と言っても過言ではない。
 この期に日本消化管学会が日本食道学会の協力を得て「食道運動障害診療指針」を作成するのは自然な機運であろう。本指針作成のために参集していただいた委員は、全員がこの分野における日本の第一人者であり、新しい指針の作成に気概を持つ人々で、委員長として実に頼もしい。本指針作成に関しての基本的な方向性としては、(1)初心者にわかりやすい入門書的な内容、(2)可能な限り図表を多く、(3)基本原理、基礎、病態、治療までを簡潔に網羅、とした。本書は、われわれ作成委員としては渾身の一冊と自負しているが、学会員の諸兄諸姉におかれましてはご一読のうえ、ご批判いただけると幸甚であります。

2016年2月吉日
日本消化管学会ガイドライン委員会ガイドライン小部会「食道運動障害診療指針」作成委員長
群馬大学医学部附属病院光学医療診療部
草野元康