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抗悪性腫瘍薬コンサルトブック改訂第2版

薬理学的特性に基づく治療

編集 : 南博信
ISBN : 978-4-524-25886-4
発行年月 : 2017年8月
判型 : B6変型
ページ数 : 446

在庫あり

定価5,400円(本体5,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

がん薬物療法で使用される主な抗悪性腫瘍薬を薬剤ごとに解説。適応・副作用、作用機序・耐性機序、投与スケジュールのほか、各薬剤の臨床薬理学的特長、それに基づく使用上のノウハウまでをコンパクトかつ明快に記載。さらに各がん種における代表的なレジメンも掲載。抗悪性腫瘍薬を使いこなすための知識を凝縮した一冊。

I 抗悪性腫瘍薬の臨床薬理学−総論
 A.がん薬物療法の基本的考え方
 B.抗悪性腫瘍薬の分類
 C.蛋白結合
 D.drug delivery system(DDS)
 E.薬物動態・薬力学の個体差
 F.薬理ゲノム学
 G.高齢者の薬物動態・薬力学
 H.臓器障害時の薬物動態・薬力学
 I.分子標的治療薬の臨床薬理学的特徴
 J.抗体薬の臨床薬理学的特徴
II 各薬剤の臨床薬理学的特徴と使い方
 1 分子標的治療薬
  A 小分子化合物
   1.イマチニブ
   2.ニロチニブ
   3.ダサチニブ
   4.ソラフェニブ
   5.スニチニブ
   6.アキシチニブ
   7.パゾパニブ
   8.レゴラフェニブ
   9.レンバチニブ
   10.ゲフィチニブ
   11.エルロチニブ
   12.アファチニブ
   13.オシメルチニブ
   14.クリゾチニブ
   15.アレクチニブ
   16.ルキソリチニブ
   17.ボルテゾミブ
   18.カルフィルゾミブ
   19.ラパチニブ
   20.ベムラフェニブ
   21.ダブラフェニブ
   22.トラメチニブ
   23.エベロリムス
   24.テムシロリムス
  B 抗体薬
   1.トラスツズマブ
   2.トラスツズマブエムタンシン(T.DM1)
   3.ペルツズマブ
   4.リツキシマブ
   5.オファツムマブ
   6.モガムリズマブ
   7.ブレンツキシマブベドチン
   8.ベバシズマブ
   9.ラムシルマブ
   10.セツキシマブ
   11.パニツムマブ
   12.ゲムツズマブオゾガマイシン
   13.イブリツモマブチウキセタン
   14.ニボルマブ
   15.イピリムマブ
   16.ペムブロリズマブ
   17.エロツズマブ
 2 殺細胞性抗がん薬
  A 代謝拮抗薬
  (1)アルキル化薬
   1.シクロホスファミド
   2.イホスファミド
   3.ブスルファン
   4.メルファラン
   5.ベンダムスチン
   6.ダカルバジン
   7.プロカルバジン
   8.テモゾロミド
  (2)葉酸拮抗薬
   1.メトトレキサート
   2.ペメトレキセド
  (3)ピリミジン拮抗薬
   1.フルオロウラシル
   2.カペシタビン
   3.テガフール・ギメラシル・オテラシル(S.1)
   4.テガフール・ウラシル(UFT)
   5.トリフルリジン・チピラシル(TAS.102)
   6.シタラビン
   7.ゲムシタビン
  (4)プリン拮抗薬
   1.メルカプトプリン
   2.フルダラビン
   3.クラドリビン
   4.クロファラビン
   5.ネララビン
  (5)その他
   1.L.アスパラギナーゼ
   2.ヒドロキシカルバミド
  B 抗生物質
  (1)アントラサイクリン系
   1.ドキソルビシン
   2.liposomal doxorubicin
   3.ダウノルビシン
   4.エピルビシン
   5.イダルビシン
   6.アムルビシン
   7.ミトキサントロン
  (2)その他の抗生物質
   1.マイトマイシンC
   2.アクチノマイシンD
   3.ブレオマイシン
  C 微小管阻害薬
  (1)ビンカアルカロイド
   1.ビンクリスチン
   2.ビンブラスチン
   3.ビノレルビン
  (2)タキサン
   1.パクリタキセル
   2.nab.パクリタキセル
   3.ドセタキセル
   4.カバジタキセル
  (3)その他の微小管阻害薬
   1.エリブリン
  D 白金製剤
   1.シスプラチン
   2.カルボプラチン
   3.ネダプラチン
   4.オキサリプラチン
  E トポイソメラーゼ阻害薬
  (1)トポイソメラーゼI阻害薬
   1.イリノテカン
   2.ノギテカン
  (2)トポイソメラーゼII阻害薬
   1.エトポシド
  F サリドマイド関連薬
   1.サリドマイド
   2.レナリドミド
III 各領域におけるがん薬物療法のとらえ方
 A.頭頸部扁平上皮がん
 B.肺がん
 C.消化器がん
 D.乳がん
 E.造血器がん
 F.婦人科がん
 G.腎がん
 H.泌尿器がん
 I.悪性黒色腫
 J.原発不明がん
 K.骨・軟部肉腫
 L.脳腫瘍
索引

改訂第2版 序文

 本書の初版が出版されてから多くの新規薬剤が導入され、がん薬物療法が大きく変わった。新たに使用できるようになった抗悪性腫瘍薬のほとんどが分子標的治療薬であり、現在は免疫チェックポイント阻害薬が新領域の薬剤として注目されている。抗悪性腫瘍薬は治療域が狭く、毒性が時に致死的となる。当初は毒性が軽いといわれていた分子標的治療薬も新たなかつ多彩な毒性を有し、その管理に難渋することもある。免疫チェックポイント阻害薬も、今まで腫瘍領域の臨床では経験したことがなかった免疫による毒性を起こす。しかも治療開始後長期間経ってから出現することもある。
 抗悪性腫瘍薬治療に限らず臨床は常に応用問題の繰り返しである。臓器障害や高齢者など、現場では教科書通りにいかない場面にしばしば遭遇する。その際は臨床薬理学の知識が必要となる。分子標的治療薬の多くが経口で長期投与される小分子化合物や、半減期が数週間に及ぶ抗体薬である。薬物相互作用や毒性の管理に関しても従来のがん薬物療法と考え方を変える必要がある。臨床においても薬剤開発においても臨床薬理学的知見はますます重要となり、それまで抗悪性腫瘍薬の臨床薬理学的知見をまとめたよい書籍がなかったために初版は版を重ね多くの方に利用していただいた。
 今回の改訂では新たに登場したほとんどすべての分子標的治療薬を追加した。初版より内容も薬剤数も増えたが、各薬剤の使い方のノウハウや現場で必要な臨床薬理のエッセンスをまとめ、初版と同様に臨床でいつでも利用できるリファレンスとしてポケットに入るサイズを維持した。携帯できるサイズまで情報を洗練するために協力していただいた著者の方々に、この場を借りて感謝したい。
 がん種ごとに標準的に使用されるレジメンのリストも好評であったため、最新のものにアップデートしてまとめた。がん薬物療法に携わる医師およびメディカルスタッフがハンドブックとして常に携帯して、がん薬物療法に役立てていただければ幸いである。

2017年6月
南博信

 本書を手にとったとき、タイトルにまず目を引かれた。一般によく使用される「抗がん剤(薬)」とせず、「抗悪性腫瘍薬」としている。英語ではantineoplatic agentsにあたるが、欧米では現在でも悪性腫瘍の治療薬に対しchemotherapy(化学療法)がよく使用される。抗がん薬の開発は、2000年を境に殺細胞性抗がん薬から分子標的治療薬にシフトしている。化学療法がPaul Ehrlich、秦佐八郎らが開発したサルバルサンやその他のケミカルに対して命名されたchemotherapyに由来することを考えると、以前より使用されている化学療法薬と低分子・抗原(大分子)を標的としたがん治療薬を包含する形で抗悪性腫瘍薬というのが最もふさわしいと考えられる。正確なterminologyは重要であることから、時代を反映した適切な言葉の普及を意図したものであろう。さらに、抗がん薬治療のknow-howを記載したマニュアルではなく、参考書という意味の「コンサルトブック」としていることも、その内容を期待させるタイトルとなっている。
 本書は第2版、第1版と同様ポケットサイズで、白衣のポケットに入れて持ち運びでき、病棟・外来で必要時、容易に取り出し参照できるのはありがたい。筆者はこの書評を記載するにあたり、通勤バス・地下鉄のなかで通読した。老眼鏡をかける手間を除けば、電車が混んで立っていても片手で読むことができる。
 さて、記載内容であるが、各薬剤の概説の項として対象疾患(保険適用がん種)、副作用、抗がん薬調製時の注意点が簡潔に記載され、作用機序・耐性機序へと続く。サブタイトルにあるように、薬理学的特性、薬物動態(PK)/薬物力学(PD)が本冊子の規模からするとかなり詳細に書かれている。さらに特徴的なのは、性差や臓器障害患者のPK/PDにも触れられていることから、併存症や臓器障害の多い高齢がん患者が増加するなかで、本書は参考になる。おそらく、治療を担当する医師がマニュアル処方医であって欲しくない、つまり患者背景やPK/PDを考えながら担当医自身が投与量・スケジュールを決定してほしいという、抗がん薬薬理に造詣の深い南教授の意図を垣間見ることができる。薬物相互作用についても同様であり、従来の適用疾患のレジメンと副作用対策を羅列したマニュアル本とは異なるところである。
 さらに新規抗がん薬のほとんどが分子標的治療薬であることから、ターゲット分子と適応疾患が押さえてあり、また臨床では話題になることの少ない薬理遺伝学について注意すべき薬剤のところで記載がされているのも新鮮に映る。
 一方で、短い記載だが、各薬物の用法・用量、投与法の実際、ならびに第III章では、主ながん種の標準的なレジメンが列挙され、がん薬物療法を実施するにあたって参考にすることができる。
 本冊子はPK/PDを中心に記載され、抗悪性腫瘍薬の選択、個々の患者に適した用法・用量、安全対策を考えさせる参考書として利用することができ、しかもポケットサイズで持ち運びに便利で、医療の現場で働く医療者すべてが参照できる良書として推薦したい。

臨床雑誌内科121巻5号(2018年5月号)より転載
評者●福岡大学医学部総合医学研究センター教授 田村和夫