書籍

要点をおさえる小児救急・プライマリケア

ピットフォール症例から学ぼう!

編集 : 市川光太郎
ISBN : 978-4-524-25854-3
発行年月 : 2015年11月
判型 : A4
ページ数 : 230

在庫あり

定価7,020円(本体6,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

小児救急・プライマリケアの現場において、意図せずに遭遇する可能性があるピットフォール症例とその対応を追体験することができる一冊。症例提示のみならず、小児診療の特徴や使用薬剤の選び方・使い方、小児疾患特有の症候とその対応など、基礎的事項についても解説。小児科医のみならず、一般内科医、ER医、初期研修医にも役立つものとなっている。

I章 見逃してはいけない症候とその対応
 A.中枢神経系
  1.初回入院時に気づけなかったWillis動脈輪閉塞症
  2.3回も繰り返した細菌性髄膜炎の乳児例
  3.項部痛を主訴に受診した脳幹部腫瘍の男児例
  4.急性胃腸炎,アセトン血性嘔吐症と診断されていた結節性硬化症
  5.急性脳症を合併した急性巣状細菌性腎炎
  6.初期対応が十分でなく死亡に至ったけいれん重積
 B.心・循環器
  1.突然のチアノーゼ,呼吸障害で発症したductal shockの乳児例
  2.急性気管支炎と誤診した拡張型心筋症
  3.胸痛を主訴に救急外来を受診した男児2例
  4.自然気胸?原因不明の胸痛とされた心筋炎
  5.嘔吐,腹痛で発症した心膜切開後症候群による心タンポナーデ
  6.初回の診察で見逃された劇症型心筋炎
  7.アデノウイルス抗原が陽性であり,診断が遅れた川崎病
 C.呼吸器
  1.先天性喘鳴と誤診されていた左肺動脈起始部異常症
  2.クループ症候群と初期診断してしまった細菌性気管炎
  3.特発性肺ヘモジデローシスを疑ってしまった肺静脈閉鎖症
  4.長引く喘鳴と体重増加不良
 D.消化器
  1.周期性嘔吐症として経過をみられていた胃軸捻転
  2.急性胃腸炎と誤診された穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎
  3.便秘による腹痛と思われていた腸間膜リンパ管腫
  4.ショックから乳酸アシドーシスを呈した中腸軸捻転
  5.腸重積とIgA血管炎(Henoch-Shonlein紫斑病)
 E.泌尿器・生殖
  1.腹痛持続するも診断まで時間を要した月経モリミナ
  2.慢性腹痛で経過観察されていた水腎・水尿管症
  3.精索捻転が疑われた精巣上体炎
  4.急性陰嚢症である精巣垂捻転を併発したアナフィラクトイド紫斑病
  5.腹部膨満を主訴に受診した女児2例
 F.骨・関節・筋
  1.小児一過性頚椎椎間板石灰化症による斜頚
  2.膝痛を訴えたために診断が遅れた大腿骨頭すべり症
  3.身体診察が不十分であった鎖骨骨折
  4.横紋筋融解症を契機に診断された筋ジストロフィー症
 G.代謝・内分泌
  1.経口抗菌薬による低カルニチン血症と低血糖
  2.ビタミンD欠乏による低カルシウム血症
  3.新生児糖尿病によるケトアシドーシス
  4.長期の下痢症状があり,頻脈発作で救急搬送された甲状腺クリーゼの学童例
 H.乳児
  1.生後2ヵ月未満の発熱
 I.その他(事故,外傷,中毒)
  1.幼稚園で歯磨き中に転倒し,帰宅後に気づかれた左球後部外傷
  2.小さくても毒ヘビによるマムシ咬傷
  3.意外にも洗口液による急性アルコール中毒
II章 知っておくべき小児救急診療の基礎
 A.総合小児(救急)医療の実践のために:成人救急医療との違いを踏まえて
 B.小児蘇生法の基礎
 C.小児ならではの検査時の主な鎮静法
 D.小児に特徴的な疾病の好発年齢の概略
III章 小児のための薬剤の選び方・使い方
 A.静注・経口抗菌薬
 B.抗けいれん薬
 C.抗アレルギー薬
 D.解熱・鎮痛薬
IV章 知っておくべき症候とその対応
 A.発熱
 B.有熱性けいれん
 C.無熱性けいれん
 D.喘鳴
 E.腹痛
 F.嘔吐
 G.出血傾向
 H.失神
 I.川崎病
 J.検尿異常
 K.事故,外傷
 L.虐待の診断と対応
巻末資料
 A.児童虐待の防止等に関する法律(抜粋)
 B.蘇生薬剤の小児用量
索引

巻頭言

 小児(救急)医療における子どもたちの疾病構造が近年、単なる身体的疾患から心身両面の疾患へ変化したことは、まさに現場で実感できる現象です。これに加えてワクチンの充実・普及によって特に重篤な急性細菌感染症は激減してきている印象もあります。しかし、そういう状況のなかでもやはりピットフォール症例には、各分野で一定の確率で遭遇し、診療医を慌てさせたり、思わぬ失意をもたらすことは医学・医療の進歩が顕著になっても変わりありません。
 小児医療、特に小児救急医療においては、その現場の現実として軽症者が圧倒的に多く、そのことがまさに医療側に慢心を起こしかねない背景となっています。このような診療背景のなかで、常に謙虚に診療提供を行うことが小児医療者に求められています。生涯研修医の心を忘れずに、診療技術を高めていくことは、小児医療の実践の理想とも思われ、貴重な症例、ピットフォール症例を診療マインドとスキルの肥料として成長が図られることが希望されます。
 しかし、短い医療人生のなかで個人ではなかなか教訓となる症例に遭遇することは少ないため、難しい貴重な症例、ピットフォール症例などが収集・解説された書籍を、フィクション風に繰り返し読み流して、身体に浸み込ませ自分のものにすることもスキルアップの一つの方法でしょう。このような意図で、今回、本書を企画し、貴重な症例、教訓になった症例、ピットフォール症例を集めることとしました。わが国の現在の小児医療の各分野において現場を知り、牽引している第一線の先生方に、この趣旨を理解していただき、協力いただけることになり、本書が編集できる運びとなったことは、これ以上にない喜びです。各執筆者の先生方には、極秘のpearl caseのみならず、広く小児医療を理解・実践するために、小児疾患の特徴や小児科医の考え方、さらには使用する薬剤の解説、加えて小児疾患特有の症候とその対応の解説を執筆いただくようお願いして、小児科研修医のみならず、一般内科医、ER医、初期研修医にも役立つように編集させていただきました。
 このような贅沢な要望に賛同していただき、玉稿を書き下ろしてくださいました諸先生方に心から感謝いたします。

平成27年9月吉日
市川光太郎