書籍

専門医の整形外科外来診療

最新の診断・治療

  • 新刊

編集 : 冨士武史/田辺秀樹/大川淳
ISBN : 978-4-524-25836-9
発行年月 : 2017年4月
判型 : B5
ページ数 : 458

在庫あり

定価10,260円(本体9,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

ベテラン医による症候診断の解説、疾患別の保存療法の実際と外来治療の奥の手、患者説明や病診連携を円滑化する最新の治療知識を一冊にまとめた書籍。病院勤務医・開業医・大学勤務医という異なる立場の編集による、130名を超えるスペシャリストの臨床における創意・工夫、経験がトレイスできる専門医による専門医のための外来診療ガイド。

I.症候別診療総論
 1 痛み・しびれ
  1)頚部の痛み
  2)上肢の痛み・しびれ
  3)背中の痛み
  4)腰の痛み
  5)殿部.下肢の痛み・しびれ
 2 うまくできない
  1)上肢の不自由
  2)下肢の不自由・歩行障害
 3 外傷
  1)脊椎
  2)上肢
  3)下肢
 4 小児疾患
  1)体幹部の症候
  2)上肢の症候
  3)下肢の症候
 5 変形・萎縮
  1)脊柱の変形
  2)上肢の変形
  3)下肢の変形
  4)筋萎縮
 6 よくみられる軟部腫瘍・腫瘍類似疾患
 7 ロコモティブシンドローム
II.疾患各論
 1 全身
  1)関節リウマチ(RA)
  2)骨粗鬆症
  3)痛風
  4)複合性局所疼痛症候群(CRPS)
  5)コンパートメント症候群
  6)骨癒合不全(偽関節)
  7)開放骨折
  8)壊死性筋膜炎,ガス壊疽,破傷風
   a.壊死性筋膜炎
   b.ガス壊疽
   c.破傷風
  9)骨髄炎,関節炎
  10)骨・軟部腫瘍
  11)静脈血栓塞栓症
  12)骨端症
  13)末梢神経麻痺
  14)筋筋膜性疼痛症候群(線維筋痛症,リウマチ性筋痛症も含む)
 2 体幹
  1)変形性脊椎症
  2)脊柱靱帯骨化症−後縦靱帯骨化症(OPLL),黄色靱帯骨化症(OLF)
  3)脊椎炎
   a.強直性脊椎炎
   b.感染性脊椎炎
  4)側弯症
  5)成人脊柱変形
  6)頚椎症,頚椎椎間板症,頚部脊髄症,頚部神経根症,crowned dens syndrome
  7)頚椎症性筋萎縮症
  8)上位頚椎疾患
  9)頚肩腕症候群
  10)斜頚
   a.(先天性)筋性斜頚
   b.痙性斜頚
  11)首下がり
  12)胸郭出口症候群
  13)腕神経叢損傷
  14)腰痛症
  15)腰椎椎間板ヘルニア
  16)脊椎分離症(分離すべり症)
  17)腰部脊柱管狭窄症
  18)脊椎損傷
  19)脊髄損傷
  20)骨粗鬆症性椎体骨折
  21)脊椎・脊髄腫瘍
  22)骨盤骨折
 3 上肢
  1)上腕近位の外傷
   a.肩関節脱臼
   b.肩鎖関節脱臼
   c.鎖骨骨折
   d.上腕骨近位端骨折
   e.上腕骨骨幹部骨折
  2)肘関節の外傷
  3)前腕・手関節の外傷
   a.前腕区画症候群
   b.Galeazzi骨折
   c.橈骨遠位端骨折
  4)手・指の外傷
   a.手根骨骨折
   b.三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷
   c.指骨骨折
  5)肩鎖関節炎,胸鎖関節炎
  6)肩関節周囲の障害
   a.肩腱板損傷・腱板断裂
   b.肩峰下インピンジメント症候群
   c.石灰沈着性腱炎
   d.肩関節周囲炎
  7)反復性肩関節脱臼
  8)手関節の痛み
   a.尺骨突き上げ症候群
   b.Kienbock病
   c.手根不安定症
   d.遠位橈尺関節(DRUJ)障害(TFCC損傷を除く)
  9)手指関節障害(手の変形性関節症)
  10)手指の変形
   a.マレット変形(マレット指,槌指)
   b.ボタン穴変形
   c.スワンネック変形
   d.Bouchard変形,Heberden変形
   e.ロッキング指
  11)腱鞘炎(弾発指,de Quervain病)
  12)上腕骨内外側上顆炎
  13)上肢の神経障害
   a.尺骨神経障害
   b.正中神経障害
   c.橈骨神経障害(後骨間神経麻痺を含む)
   d.特発性前・後骨間神経麻痺
  14)上肢の変形性関節症
   a.変形性肩関節症
   b.変形性肘関節症
   c.変形性手関節症
  15)野球肘(上腕骨離断性骨軟骨炎)
  16)上肢の腫瘍
 4 下肢
  1)大腿骨近位部骨折
  2)大腿骨骨幹部・遠位部骨折
  3)膝関節部骨折
  4)膝周囲損傷
   a.前十字靱帯(ACL)損傷
   b.後十字靱帯(PCL)損傷
   c.内側側副靱帯(MCL)損傷
   d.半月板損傷
   e.膝蓋骨脱臼
  5)下腿骨骨幹部骨折
  6)足関節の外傷
   a.足関節果部骨折
   b.足関節靱帯損傷(捻挫)
  7)足部骨折(距骨骨折,踵骨骨折)
  8)アキレス腱および周囲損傷
   a.アキレス腱周囲損傷
   b.アキレス腱断裂
  9)変形性股関節症
  10)特発性大腿骨頭壊死症
  11)大腿骨頭すべり症
  12)小児股関節炎(化膿性股関節炎,単純性股関節炎)
   a.化膿性股関節炎
   b.単純性股関節炎
  13)Perthes病
  14)先天性股関節脱臼
  15)変形性膝関節症(膝関節骨壊死を含む)
  16)変形性足関節症
  17)足底腱膜炎
  18)爪周囲炎
  19)下肢の腫瘍
  20)下肢の骨端症
  21)下肢のスポーツ障害
  22)下肢の血行障害
   a.閉塞性動脈硬化症(ASO)
   b.動脈血栓後症候群(PTS)
   c.血栓性静脈瘤
  23)下肢の神経障害
   a.腓骨神経麻痺
   b.伏在神経障害364
   c.足根管症候群
   d.Morton病
   e.その他
  24)下肢の変形
   a.脚長不等
   b.O脚・X脚
   c.内反足
   d.外反扁平足
  25)扁平足,外反母趾
   a.扁平足
   b.外反母趾
III.トピックス
 1 外来治療奥の手
  1)先天性股関節脱臼の治療
  2)関節リウマチでの生物学的製剤の使用
  3)スポーツ選手への投薬時の注意点
  4)外来リハビリテーション
  5)腰椎疾患で陥りやすい落とし穴
  6)頚椎疾患と上肢末梢神経疾患の鑑別診断
  7)外来で行っている物理療法
 2 心因性疼痛
 3 心因性麻痺
 4 脳脊髄液減少症
 5 経皮的レーザー椎間板減圧法(PLDD)
 6 サプリメント
IV.医療倫理・医療安全
 1 合併症
 2 外来診療での訴訟対策
巻末用語集
 全身
  筋萎縮性側索硬化症
  多発性硬化症
  外傷後異所性骨化
  神経病性関節症(Charcot関節)
  心因性疼痛
 体幹
  仙腸関節障害
  肋骨骨折
  いわゆる寝違え
  梨状筋症候群
  低身長鹿島田健一
  脊髄空洞症
  鼡径部痛症候群
  肋間神経痛
  腸腰筋膿瘍
 上肢
  肘内障
  肘関節の変形
  Raynaud症候群
  Dupuytren拘縮
 下肢
  下肢筋挫傷
  下肢の感染
  股関節障害(大腿骨寛骨臼インピンジメント,股関節唇損傷)
  股関節周囲石灰化筋炎
  大腿外側皮神経障害
  弾発股
  膝関節骨軟骨腫症
  膝関節足関節滑液包炎
  化膿性膝関節炎
  Baker嚢腫
  距骨壊死
  下垂足
  Brodie膿瘍
  ステロイド関節症
  足底線維腫症
索引

序文

 運動器疾患による症状は、痛みやしびれ、うまく動かない、変形・萎縮、など多彩で、運動器は外傷や腫瘍も多種多様である。運動器疾患の診療は整形外科で行うわけであるが、部位は頭部以外の全身に及び、年齢は新生児から超高齢者に至るまで全年齢にわたる。運動器の障害によって移動機能が低下した「ロコモティブシンドローム」も運動器疾患の一部であるが、その原因は多岐にわたる。このような運動器疾患を扱う整形外科外来では、症候から適切な検査を行い、保存的治療と手術的治療の必要性を判断することになる。診断も治療もたゆみなく進歩しているので、外来診療を行うにあたっては新しい疾患概念、検査、治療法などを知っている必要がある。
 本書では運動器疾患を大きく2つの面からとらえている。すなわち、症候面から疾患を考えて診断に至る部分と、診断がついた後に治療の選択をする部分である。前者の「症候別診療総論」では症候から診断に至る過程を重視し、ベテランの先生方がそのコツも含めて記載している。加えて、外来診療で見逃してはならないレッドフラッグスや専門医への紹介のタイミングも明記している。後者の「疾患各論」では、診断・治療の「この10年の進歩」を示し、疾患概念を確実にするとともに、最新の診療を自分のものにできるように各領域の専門家が記載している。整形外科の診療もここ10年で大きく変わっており、それを把握するだけでも外来診療の質が変わるはずである。
 総論と各論では伝えきれない部分については、外来治療奥の手、心因性疼痛・麻痺、脳脊髄液減少症、などを「トピックス」として取り上げ、医療倫理・医療安全や訴訟の問題などについても記載した。「巻末用語集」には、よく見られる運動器疾患の中で総論・各論に書ききれなかった疾患を追加した。
 本書は通読しても運動器疾患診療の最新の知識が得られるし、外来診療で困った時にページを開けば目の前が開けるように構成されている。運動器疾患診療に是非携えていただきたいと願うところである。

2017年3月
冨士武史
田辺秀樹
大川淳

 1.症候診断学をクローズアップ
  整形外科疾患を広く網羅した全般的な教科書は、これまで多く出版されてきた。学術的な細部まで詳しく解説したボリュームの多い成書から、要点に絞った標準的なものまで、さまざまである。その中で、本書の最大の特徴は、まず症候学から始まっていることである。症候学とは、ある症状を訴えた患者に対して、どのように鑑別疾患を考え、どのような検査をすすめて診断を絞り込んでいくかということである。臨床医が日々外来で行っていることであり、診療においてもっとも必要な技術ともいえる。患者の訴え、外観、体の動き、そして診察所見から、どれほど鑑別疾患が頭に浮かぶかが外来における名医の条件である。そのためには、疾患各論の知識が必須であり、いかに多くの疾患の症状を知っているかも大切ではあるが、それだけでは不十分で、それらの疾患のアウトカムとしての症状から類似のものを集めて、疾患各論の知識を逆方向にたどり、症状から疾患名にたどり着かなければならない。一つの疾患が多彩な症状を呈する場合、さらにその組み合わせは複雑になる。このような知識の双方向性の学習の必要性は、医学教育学でも取り上げられ、10数年前から医学部教育に取り入れられている。たとえば、「腰痛」という症候からどのくらい鑑別疾患を考えられるか。脊椎疾患以外に腹部臓器や骨盤内臓器の疾患、全身性炎症性疾患や精神医学疾患まで鑑別できるかという教育である。本書はまさにそのような症候診断学を最初に取りあげて解説している。忙しい外来で短時間に症候を見抜き、鑑別疾患を想定して、検査をすすめていく、その思考を指南してくれる。外来というものは孤独であり、一人でその場を解決しなければならない。後で先輩に聞いたり、書物で調べたりできるが、それはごく一部の印象的な症例のみに限られることがほとんどで、多くの症例は記憶の片隅から消えてしまう。専門医をめざして学んでいる若い医師にとって、各分野のエキスパートが記した本書の外来ガイドラインは、自らの症候診断技術のラーニングカーブを短縮してくれるであろう。
 2.絶対に見逃してはならないレッドフラッグス
  症候診断において、見逃してしまうと重篤な結果を招きかねない疾患が隠れている。経験を積んだ臨床医は、誰しもこのような見逃しのヒヤリハットを一度や二度は経験しているものである。同じ誤りを皆が繰り返さないように、これらの経験は伝承すべきである。本書では、絶対に見逃してはならない疾患の鑑別法について、レッドフラッグスとして強調して掲載している。外来のデスクの上で本書を見返すことで、レッドフラッグス疾患を頭の隅に常におきながら鑑別診断を下すことができるようになるだろう。
 3.知識の整理に役立つ各論の章
  代表的な症候診断の章の後に、分野別の各論の章が続く。症候診断であがった鑑別疾患の知識の整理に役立つ。本書は、疾患各論についても詳細に網羅されている。整形外科日常診療で遭遇する疾患については、ほぼ取りこぼすことなくあげられており、それぞれについて、疾患概念と検査法、治療方針について最新の知見が解説されている。各疾患での構成も、疾患概念から始まり、診察と検査のポイント、患者への説明のコツ、外来における診療、専門医への紹介と手術のタイミング、最近の手術方法、リハビリテーション、逆紹介のポイントなど、診療の流れに沿って小項目が組まれており、専門外の医師にとっての診療ガイドラインとなり、とてもわかりやすい。図表や写真が多く取り入れられ、視覚的にもわかりやすい。
 4.最近10年の動向についてのアップデート
  専門医にとっても、自分が得意とする分野以外の最新知識のアップデートはむずかしいものである。学会や研究会に積極的に参加していなければ、疎遠になっている分野については、若いころに学んだ知識で止まっていることもある。それぞれの疾患各論の章の冒頭に最近10年間の動向についての概説が枠組みで紹介されている。このアイデアは秀逸であると思う。どの分野においても、診断・治療概念の変遷はめまぐるしいものであり、10年前とはかなり考え方が異なってきていることも多い。新しい術式も随所に現れている。専門医をめざす専攻医のみならず、すでに臨床の第一線で活躍している専門医にとっても、不得意分野の知識整理に役立つであろう。

臨床雑誌整形外科68巻11号(2017年10月号)より転載
評者●東京女子医科大学整形外科教授/講座主任 岡崎賢