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循環器疾患最新の治療2016-2017

オンラインアクセス権付

監修 : 堀正二
編集 : 永井良三/伊藤浩
ISBN : 978-4-524-25835-2
発行年月 : 2016年2月
判型 : B5
ページ数 : 636

在庫あり

定価10,800円(本体10,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

最新の診療指針がわかる好評シリーズの循環器疾患版。巻頭トピックスとして「心血管画像診断の進歩(心臓CT・MRI)」「PCIにおけるFFRの活用」「慢性心不全の新しい薬物療法」「肺動脈血栓塞栓症に対するバルーン拡張術」など注目のテーマを11題掲載。主な循環器疾患を網羅し、診断・検査から処方例を含めた標準的治療までを解説。巻末には薬剤一覧も収載。PCやスマートフォンでも利用できる便利な“オンラインアクセス権”付き。

巻頭トピックス
1 心血管画像診断の進歩(心臓CT・MRI)
2 PCIにおけるFFRの活用−医療経済の観点も含めて
3 次世代冠動脈ステントの展開
4 transcatheter aortic valve implantation(TAVI)の将来−日本人に適したTAVIは可能か
5 急がれる成人先天性心疾患への対応−Fallot四徴症術後を中心に
6 慢性心不全の新しい薬物療法
7 心房細動における薬物療法−NOACとβ遮断薬
8 重症心室不整脈に対するカテーテルアブレーション
9 ペースメーカ・ICDの遠隔モニタリング
10 肺動脈血栓塞栓症に対するバルーン拡張術
11 高血圧治療ガイドライン2014を臨床に活かす
I 循環器疾患の基本的治療方針
II 心肺蘇生の実際とACLS
III 循環器診療における医療安全
IV 冠動脈疾患
 1 急性心筋梗塞
 2 急性心筋梗塞に伴う機械的合併症
 3 梗塞後不整脈
 4 梗塞後狭心症
 5 安定狭心症
 6 不安定狭心症
 7 冠攣縮性狭心症
 8 無症候性心筋虚血
 9 冠動脈疾患と抗血小板療法
 10 PCI(バルーン,ステント)
 11 debulking PCI(ロータブレータ)
 12 冠動脈血栓吸引,末梢保護
 13 冠動脈血栓溶解療法
 14 再灌流障害
 15 冠動脈疾患の運動処方,心筋梗塞後のリハビリテーション
 16 心筋梗塞の再発予防
 17 冠動脈バイパス手術
 18 冠動脈バイパス手術後の外来管理
 19 川崎病
V 弁膜疾患
 1 僧帽弁狭窄症
 2 僧帽弁閉鎖不全症
 3 大動脈弁狭窄症
 4 大動脈弁閉鎖不全症
 5 後天性三尖弁膜症
 6 感染性心内膜炎
 7 弁膜症の外科治療
 8 弁膜症外科治療後の外来管理
VI 心筋疾患
 1 心筋炎
 2 拡張型心筋症
 3 肥大型心筋症
 4 拘束型心筋症
 5 不整脈原性右室心筋症
 6 二次性心筋症
VII 心膜疾患,腫瘍
 1 心膜炎
 2 心膜液貯留,心タンポナーデ
 3 心臓腫瘍
 4 心内血栓
VIII 先天性心疾患
 1 心房中隔欠損
 2 房室中隔欠損(心内膜床欠損)
 3 心室中隔欠損
 4 動脈管開存症
 5 肺動脈弁狭窄症,肺動脈狭窄症
 6 Ebstein病
 7 チアノーゼ・肺高血圧症を伴う先天性心疾患
 8 Valsalva洞動脈瘤破裂
 9 Fontan手術後の遠隔期管理
IX うっ血性心不全
 1 急性心不全
 2 慢性心不全
 3 HFpEF(拡張不全)
 4 心不全に対する心臓再同期療法
 5 心不全における不整脈の治療
 6 新世代植込み型補助人工心臓
 7 左室縮小形成術
 8 心臓移植
X 不整脈
 1 洞不全症候群
 2 脚ブロック
 3 期外収縮(心房・心室)
 4 心房細動
 5 心房粗動
 6 上室頻拍
 7 心室頻拍
 8 不整脈治療薬の催不整脈作用
 9 早期興奮症候群(WPW症候群)
 10 Brugada症候群,J波症候群
 11 QT延長症候群
 12 心臓ペースメーカの選択と植込み患者の管理
 13 カテーテルアブレーション
 14 植込み型除細動器(ICD)
 15 不整脈の外科的治療
XI 肺循環
 1 肺血栓塞栓症
 2 肺動脈性肺高血圧症
 3 肺疾患に伴う右心不全
XII 大動脈疾患
 1 Marfan症候群,大動脈弁輪拡張症
 2 高安動脈炎(大動脈炎症候群)
 3 急性大動脈解離
 4 胸部大動脈瘤
 5 腹部大動脈瘤
XIII 末梢血管疾患
 1 閉塞性動脈硬化症
 2 深部静脈血栓症,下肢静脈瘤
XIV 高血圧症
 1 本態性高血圧−ガイドラインに沿った治療戦略
 2 合併症のある高血圧管理
 3 白衣高血圧,早朝高血圧
 4 高齢者の高血圧
 5 高血圧の非薬物療法
 6 二次性高血圧
 7 腎血管性高血圧
XV 脳血管障害
 1 脳梗塞
 2 頭蓋内出血
 3 脳動脈瘤
 4 頸動脈狭窄
XVI その他
 1 動脈硬化
 2 脂質異常症(高脂血症)
 3 起立性低血圧
 4 Raynaud現象
 5 甲状腺疾患と心臓
 6 心疾患と妊娠
 7 心臓病と肥満−メタボリックシンドロームを中心に
 8 糖尿病における心疾患
 9 高齢者診療の注意点
 10 心疾患患者におけるスポーツ指導
 11 心疾患患者に対する精神医学的アプローチ
 12 心疾患患者における一般外科手術の術前・術後管理
循環器領域における最近の注目のエビデンス
 1 虚血性心疾患のエビデンス
 2 慢性心不全のエビデンス
 3 不整脈のエビデンス
 4 脂質異常症のエビデンス
 5 抗血栓療法のエビデンス
循環器関連ガイドライン一覧
循環器疾患の薬物一覧
索引

序文

“A man is as old as his arteries.”(ヒトは血管とともに老いる)

 高齢化社会に伴う動脈硬化性疾患の増加を予言した有名なWilliam Osler博士の言葉です。では、次の言葉はどうでしょうか。

“A man is as old as his heart.”

 編者の造語ですが、超高齢社会を迎えて心不全患者の激増、すなわち“心不全パンデミック”が現実のものとなりつつあります。同様に心房細動と加齢変性に伴う心臓弁膜症も増加しています。長生きすれば誰もがいずれかの循環器疾患をどこかで経験する時代になったと言えるでしょう。このように循環器疾患は患者数が多いうえに、生命予後とともに健康寿命を大きく損ねる大きな原因になります。これから、循環器内科に限らず多くの医師が循環器疾患の診療に関わらざるをえなくなってきています。
 “循環器は得意ではない”という医師も多いことと思います。安心して下さい。高血圧、動脈硬化性疾患や収縮不全、不整脈など循環器疾患の多くは今までの臨床試験の結果をもとに標準的治療法が確立しています。最近ではガイドラインを遵守することがよりよい診療につながるというエビデンスをもとに、“Get with guidelines”が叫ばれています。本書では最新のガイドラインがなぜそのように決められたのか、目の前の症例に対してどのように実践したらよいのかをエキスパートに具体的に記述してもらっています。
 最近、成人先天性心疾患という新たな疾患群が出現してきました。以前なら幼少期に亡くなっていた複雑心奇形を持った患児が、小児心臓外科の手術成績が向上することにより続々と20歳を越えてきたからです。軽症例まで入れると毎年1万人程度増加しています。今は大丈夫でも将来的に心不全や不整脈など臨床的に問題となる症例が少なからずいることがわかっており、それに対する備えが求められています。その点にも力を注ぎました。
 誰でも簡単に情報を手に入れることができる情報フラット化社会において最先端の治療を常にup dateしておくことは重要です。本書の「巻頭トピックス」はそれを意識して編集しました。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)には大きな流れが二つあります。一つはPCIの適応がシンプルな狭窄度から血行動態の評価に基づいて決定されるようになったこと、そして生体吸収型ステントなど血管機能を維持する次世代ステント開発の流れです。最近、増加している高齢者の大動脈弁狭窄症に対するtranscatheter aortic valve implantation(TAVI)は施行できる施設が増え、普及期に入ったと言えるでしょう。その適応も拡大してきています。患者選択においてTAVIの適応と合併症をしっかりと把握しておくことは大切でしょう。希少疾患であり、有効な治療法がなかった慢性肺動脈血栓塞栓症(CTEPH)に対して画期的な治療が開発されました。閉塞肺動脈に対するバルーン拡張術です。日本で開発され、世界をリードする治療として注目されています。「巻頭トピックス」では、慢性心不全や心房細動に対する薬物療法でも、その最先端の情報を提供しています。
 世界的に見れば死因のNo.1が循環器疾患です。そして、世界の循環器医が競い合って、その診断と治療法を日々進歩させています。本書はそのような循環器診療の進歩の全容をテキストとして提供するものです。本書が臨床の最前線に立つ医師の最新版の手引きとなることができれば、監修者・編集者そして著者の最大の喜びです。

2016年3月
監修者
編集者

 超高齢化社会となり、心不全をはじめとする循環器疾患患者数が急増している。わが国の死因のトップはがんであるが、心疾患と脳卒中を合わせるとその死亡者数はがんと変わらず、超高齢者の死亡原因としては、循環器疾患ががんを上回る。また、循環器疾患にかかる医療費はがんの約1.5倍であり、社会的にも循環器疾患は大きな問題である。このように循環器疾患は、患者数が急増しており予後も不良であるが、一方において循環器疾患ほどその治療法が日々進歩している疾患はない。本書を一読していただければ多くの循環器疾患において、診断法や治療法が新しくなっていることがわかるが、とくに「巻頭トピックス」には、最新の情報が載っており、循環器病学の進歩が実感されよう。循環器疾患治療の特徴は、薬物療法が著効を示す点と非薬物療法も有効な点である。最近、分子標的薬の登場によりがんの予後も劇的に改善してきているが、それでも生命予後を改善する薬剤のほとんどは、ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬、aspirin、スタチンなどの循環器疾患を対象とする薬剤である。しかし、薬物療法以上に進歩が著しいのは、非薬物療法である。冠動脈ステントは、ベアメタルステントから薬剤溶出ステントとなり再狭窄は大きく減少したが、さらに血栓症の問題を克服すべく、生体吸収性ポリマーやポリマーフリーのステント、生体吸収性スキャフォールドなどの開発が進んでいる。ペースメーカーに関しては、MRI対応型が普及し、遠隔モニターも可能になっている。補助人工心臓の進歩も著しく、5年生存率80%は心臓移植と遜色ない。治療法と同様に進歩しているのが診断法である。元来循環器病学は、心電図、心臓超音波、CT、MRI、RI、PETと各種モダリティーを用いた診断法が発達してきたが、さらに新しい手法が開発されている。虚血の有無を診断する方法として、近年カテーテルを用いたFFR(fractional flow reserve)が頻用されているが、最近では冠動脈CTによって得られた画像から流体力学モデルによるシミュレーションを行い、狭窄病変のFFRを推定する方法、CT-FFRの開発が進んでいる。CTが普及しているわが国においては、すでに大変多くの冠動脈CT検査が実施されており、今後CT-FFRの普及が見込まれる。心臓の評価においては、現在ではMRIがゴールデンスタンダードであり、ガドリニウムを用いることにより線維化も診断可能であるが、大きな線維化以外の診断は困難であった。しかしT1mappingにより、びまん性の線維化や細胞内脂質の蓄積などの診断が可能となってきた。以上のように循環器疾患に関しては、その治療法、診断法とも日進月歩であり、覚えるべき情報量は膨大である。本書は、循環器疾患の治療法に関する進歩をわかりやすくまとめており、最新の情報を得るうえにおいて格好の書である。また本書は、主な循環器疾患の治療法を網羅しており、循環器疾患患者を診療する医師にとっては座右に置くべき便利な一冊でもある。

臨床雑誌内科118巻5号(2016年11月号)より転載
評者●東京大学医学部附属病院循環器内科教授 小室一成

 『循環器疾患最新の治療2016-2017』が発刊された。この巻のトピックスでは、重要視すべき最近の循環器疾患治療に関し、多岐にわたり的を射た話題が盛り込まれている。わが国における少子高齢化は、循環器疾患の特性を多様化かつ重症化させており、医学的にも医療経済的にも循環器医療を大きく変容させる時代に入った。本書の「巻頭トピックス」は特にそれを意識して執筆されている。ハイリスク症例に対する低侵襲診断(心臓CT、心臓MRI)や低侵襲治療(経皮的冠状動脈形成術、経カテーテル大動脈弁留置術など)は日進月歩であり、診断、救命および術後の生活の質(QOL)の改善に大いに貢献している。さらに新しい抗凝固薬の登場は、高齢化に伴って増加する慢性心房細動の保存的管理に大きな進歩を与えている。また、近年急増している慢性心不全に対する薬物治療も新しい展開を迎えつつあり、これらの内容もわかりやすく解説されている。加えて重症不整脈に対するカテーテル治療や植込み式除細動器治療も進歩が著しい分野であり、専門医ではなくても、これらの最新治療を理解することで救急治療および長期的患者管理に大きく役立つと思われる。また、ここ40年間における先天性心疾患手術の成績向上とともに、成人を迎えた術後患者は増加の一途をたどっており、日常診療で遭遇する機会が増加している。したがって小児循環器医のみによる管理はマンパワー的に困難になりつつあり、成人を扱う医師も今後は積極的に関与する必要がある。特に循環器内科医や成人を扱う心臓外科医にとっては、先天性心疾患術後の長期管理および続発症に対する手術に関して新しい知見を得ることが望ましい。ほかにも近年増加している肺動脈血栓塞栓症に対する低侵襲治療が、トピックスとして取り上げられている。
 本書は、網羅的に循環器疾患の最新治療を記載した600頁を超える書籍であるが、各論ではどの項目も簡潔でわかりやすく、知りたい知識を短時間で得ることができるように工夫されている。たとえば、各項目の冒頭には「診療のポイント・治療指針」と称するサマリーが箇条書に記載されており、読む前から内容の全体像がわかるようになっている。さらに「トピックス」と称して最新の豆知識がコラム形式で各所にちりばめられており、読者を退屈させない。また、各項目の末には最新の参考文献が列記されており、より深い知識の獲得に役立つようになっている。加えて本書の有用性を際立たせている特徴は、巻末に30頁以上にわたり掲載されている「循環器領域における最近の注目のエビデンス」、「循環器関連ガイドライン一覧」、「循環器疾患の薬物一覧」であり、ここには循環器医療における最近の大規模臨床試験の概要、各診断法や治療法に関するガイドラインの出典、薬品の使用法や副作用が網羅されている。これらは臨床研究のための前調査、各治療法に関するわが国におけるコンセンサスの理解、新薬使用などの際にきわめて有用と思われる。
 本書の監修は堀正二先生、編集は永井良三先生と伊藤浩先生という錚々たる循環器領域の権威であり、執筆は約190名に及ぶ各分野のトップリーダーが担当している。本書が比類なき最新治療のバイブルであるといっても過言ではない。

胸部外科69巻13号(2016年12月号)より転載
評者●秋田大学心臓血管外科教授 山本浩史