書籍

虚血評価ハンドブック

PCI・カテーテル室スタッフが知っておくべき最新の知識

編集 : 中村正人/田中信大
ISBN : 978-4-524-25827-7
発行年月 : 2016年2月
判型 : B5
ページ数 : 194

在庫あり

定価6,264円(本体5,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

循環器医・カテーテル室スタッフが知っておくべき虚血評価に関する内容を完全網羅。虚血評価の総論から、各モダリティの適応と限界までの、“真の虚血評価”を行うための知識と技術を実践的に解説。実際的な内容をまとめた、冠動脈狭窄の形態的評価だけでなく、機能評価を加えた“究極の虚血評価”の実践法を習得できる一冊。

総論 虚血評価の知識を究める
 1 虚血評価とは何か
 2 イラストで理解する虚血のメカニズム
 3 機能的狭窄度と解剖学的狭窄度とは
各論I 虚血評価の技術を究める
 A 技術の全体像
  1 虚血評価のための検査のオーバービュー
  2 施設の状況に応じた検査法の選択
  3 患者・病態に応じた検査法の選択
 B 非侵襲的検査
  1 心電図
   a.Holter心電図
   b.運動負荷心電図
  2 心臓核医学検査
  3 負荷心エコー図検査
  4 冠動脈CTおよびperfusion imaging
  5 FFRct
  6 心臓MRI
 C カテーテル検査
  1 冠内圧・冠血流評価
   a.FFR
   b.iFR
   c.CFR
  2 冠動脈造影
  3 IVUS
  4 OCT
  5 血管内視鏡
各論II 症例から学ぶ虚血評価の実践
 FFR(1) 重複病変に対してFFRを実施した例
 FFR(2) 多枝び漫性中等度狭窄病変に対してFFRを実施した例
 FFR(3) 責任血管の特定にFFRを用いた例
 FFR(4) FFRが治療方針決定に有用であった例
 iFR(1) 重複病変に対してiFRを実施した例
 iFR(2) 重複病変の虚血評価にiFRを実施した例
 iFR(3) 側副血行路を有する病変の虚血評価にiFRを実施した例
 IVUS(1) 責任血管の確定にIVUSを用いた例
 IVUS(2) IVUSで有意狭窄の基準の1つを満たしていたが,FFR陰性であった例
 IVUS(3) び漫性病変の治療戦略の検討にIVUSを用いた例
 OCT(1) LADび漫性中等度狭窄病変に対してOCTで虚血を評価した例
 OCT(2) リバースミスマッチを認めたLMT分岐部病変に対してFFRとOCTを実施した例
 OCT(3) OCTで虚血閾値を推定した例
 OCT(4) OCTにおけるリバースミスマッチを呈した例
 血管内視鏡(1) 不安定狭心症の責任病変を血管内視鏡で観察し,診断した例
 血管内視鏡(2) 血管内視鏡がデバイス選択に有用であった例
 心臓核医学検査(1) 心臓核医学検査により虚血心筋量を評価した例
 心臓核医学検査(2) 心筋虚血のメモリーイメージングが有用であった例
 CT perfusion imaging(1) LADの石灰化と非石灰化を伴った中等度狭窄病変の虚血診断にCT perfusion imagingが有用であった例
 CT perfusion imaging(2) 小血管病変と石灰化を伴った中等度狭窄病変の虚血領域の診断にCT perfusion imagingが有用であった例
 FFRct(1) FFRctにて多枝縦列病変の機能的狭窄度を個別評価した例
 FFRct(2) FFRctのシミュレーション技術で縦列病変のステント治療戦略を検討した例
索引



虚血性心疾患の予後改善を目指して
 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が臨床に導入されてから38年が経過した。この間、誰もが自分の手技の向上を目指して修練を重ねてきた。結果、デバイスのみならずPCI手技も大きく進歩し、一般的なPCIの成績における施設間差は小さくなり、普遍的な成績が得られるようになった。PCIに限らず、侵襲的な治療介入試験におけるエビデンスは、技術の個人差はその他の差異に比べ無視できるものであることが前提となっている。この観点からは今日のエビデンスに基づいたPCIの実践は非常に説得力がある。このような中、PCIは予後改善が改めて問われており、虚血がそのキーワードになっている。本来、PCIは虚血を改善するために実施する治療手技である。適応は解剖学的な狭窄評価に基づいて判断され決定されてきた(今日もゆるぎないが)。この判断は虚血とリンクすることが前提である。
 最近、機能的狭窄度評価と解剖学的狭窄度評価の比較は必ずしも合致しないこと、虚血がない中等度狭窄においてはPCIをdeferし薬物療法で経過観察しても安全であることや、逆に機能的検査で虚血が証明された場合にはPCIの実施が臨床的にメリットを有することが示されている。このように、虚血をキーワードとしてPCIのエビデンスをどのように日常に応用するかが予後の改善に直結する時代に突入したといえる。背景には、虚血性イベントを防止するうえでの薬物療法の大きな進歩があり、PCI後の再狭窄も著しく低減され、局所治療としてPCIが満足できるものになったことが挙げられる。そこで、本書が企画された。本書は、虚血に関するエビデンスをどのように理解し、実践していくかを多くの読者に体感してもらえるよう、最先端で診療・研究をされている先生方に執筆いただいた。虚血に関するエビデンスを体感し、医学の進化の次なるステップを皆で考えてみたいと思っている。

2016年1月
中村正人
田中信大

 なぜ今、虚血の評価か?その疑問に答えるキーワードは“appropriate PCI”あるいはPCIの“appropriate use criteria”のようである。
 PCI(経皮的冠動脈インターベンション)の技術の進歩と薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)などの機器の開発はその適応を急速に拡大し、冠動脈疾患の増加も伴ってPCI症例数の増加につながってきた。一方で、至適内科治療と血行再建術の予後に差がないとする介入試験の報告や医療費の高騰は冠動脈の血行再建術を取りまく環境を少しずつ変化させ、現在、PCIの適応をより厳密にすることが求められている。さらに病型によって血行再建術の効果がより明確となり、冠動脈バイパス術とPCIにも予後改善効果に差があるとの観察も報告されてきた。そのような背景のなかで血行再建術の予後改善効果が明確であるものをappropriateとして定義し、より厳格にPCIの適応を考えようとする機運が生まれてきているのは、きわめて自然の流れと言えよう。appropriate PCIと判定するためには心筋虚血の有無と程度を確認することが必要であるが、そもそも冠動脈の血行再建の適応は解剖学的病型とともに心筋虚血の有無と範囲によって決められてきた。その方法論が古典的には、あるいは今でも、スタンダードは運動負荷心電図と心臓核医学検査である。
 しかしながら、これだけでは検査数も含め当然限界があり、多くの施設で解剖学的な有意狭窄だけで血行再建が行われてきたのも事実である。そこに大きなインパクトを与えたのがFAME試験である。FAME試験では冠血流予備量比(FFR)ガイドのPCIの有用性が示され、FAMEII試験ではFFRガイドのPCIでは至適内科治療よりDESを用いたPCIが有意に予後良好との結果であった。現在冠動脈内圧・血流測定は、血管内超音波などと並んで心臓カテーテル検査室に必須の検査法となっている。さらに、最近では冠動脈の非侵襲的検査にはCT冠動脈造影のFFRまで加わり、虚血の診断はさまざまな種類の方法論を症例や病変、そして施設によって使い分ける必要性が出てきた。
 本書はこのような背景のなか、心筋虚血発生のメカニズムに加えて、負荷心電図、心臓核医学、負荷心エコー、冠動脈CTとperfusion imaging、冠動脈FFR、心臓MRIなどの非侵襲的検査と冠動脈のFFR、iFR、CFR、そして血管内超音波やOCTの冠動脈の画像診断など侵襲的検査について個々の検査法の特徴と有用性および限界、手技上のポイントや結果の解釈をコンパクトにわかりやすく解説してある。さらに症例提示によって、より実践的な理解が深まるよう企画されている。医師だけでなく、冠動脈血行再建に携わるメディカルスタッフ全員が一度は手にしていただきたいハンドブックである。

臨床雑誌内科119巻3号(2017年3月号)より転載
評者●順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学教授 代田浩之