書籍

新 肺高血圧症診療マニュアル

根治を目指す最新の治療指針

  • 新刊

編集 : 伊藤浩/松原広己
ISBN : 978-4-524-25824-6
発行年月 : 2017年3月
判型 : B5
ページ数 : 294

在庫あり

定価6,264円(本体5,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

予後不良の疾患とされている肺高血圧症診療の基礎から診断・検査、治療法までを解説した『肺高血圧症診療マニュアル』をアップグレード。新薬の登場やカテーテル治療の進歩、治療のゴール設定など最新動向を反映。また、診療指針や治療の実際など現場で役立つプラクティカルな解説も一層充実させた。今後の肺高血圧症診療に役立つ決定版。

I 変貌する肺高血圧症診療:治療のゴールが変わる松原広己
II 肺循環の生理を理解する
 1.肺循環の生理とその特徴
 2.肺循環と右室機能
III 肺高血圧症の病態を理解する
 1.肺高血圧症の臨床分類(ニース肺高血圧症臨床分類)
 2.肺高血圧症の病態生理
 3.肺高血圧症の病理像
 4.肺高血圧症の自然歴
IV 肺高血圧症を診断・評価する
 1.肺高血圧症の診察法(身体所見のとり方)
 2.肺高血圧症の診断のポイントと注意点
  A.診断フローチャートと重症度分類
  B.胸部X線
  C.心電図
  D.血液検査
  E.6分間歩行距離,心肺運動負荷試験
  F.呼吸機能検査
  G.心エコー図
  H.胸部CT
  I.胸部MRI
  J.肺血流シンチグラフィ
  K.肺動脈造影
  L.右心カテーテル検査
 3.各群の鑑別
V 特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧症の診療指針と実践
 1.診断のポイントと注意点
 2.治療フローチャート
 3.薬物療法
 4.リハビリテーション
 5.肺移植
VI 慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診療指針と実践
 1.診断のポイントと注意点
 2.診療指針と実践
  A.内科的治療
  B.バルーン肺動脈形成術
  C.外科的治療
VII その他の肺動脈性肺高血圧症の診療指針と実践
 1.膠原病(全身性エリテマトーデス/混合性結合組織病)に伴う肺動脈性肺高血圧症
 2.膠原病(強皮症)に伴う肺動脈性肺高血圧症
 3.膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症の早期診断・早期治療介入
 4.先天性シャント性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症
 5.成人期Fontan循環不全における(肺動脈性)肺高血圧症
 6.門脈体循環シャントに伴う肺動脈性肺高血圧症
 7.HIV感染症に関連する肺動脈性肺高血圧症
 8.薬物および毒物に起因する肺動脈性肺高血圧症
 9.肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症
VIII 特殊な肺高血圧症の診療指針と実践
 1.左心系心疾患による肺高血圧症
 2.呼吸器疾患に合併する肺高血圧症
 3.気腫合併肺線維症に合併する肺高血圧症
 4.肺内肺動脈狭窄症
 5.pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)
付録 肺高血圧症治療に使用する薬剤一覧

序文

 2012年に「肺高血圧診療マニュアル:根治を目指す最新の治療指針」を刊行して5年が経ちます。当時、死亡率の高い難治性疾患である肺高血圧症の病態が徐々に解明され、新しい治療法が開発され、臨床エビデンスが集積し始めていました。しかし、確立した治療法はなく、助けを求める患者を前に医師は苦悩の日々を送っていました。そのようなときに頼りになるのはexpert opinionです。共同編集者である岡山医療センターの松原広己先生の豊富な臨床経験に基づく卓越した視点から、いくつかの新たな治療が提唱されていました。前書はそのコンセプトをもとに、日本のオピニオンリーダーの英知を集め、“根治を目的とする”という大胆なコンセプトでつくられた意欲的なテキストでした。希少疾患を対象としたテキストにもかかわらず、われわれの予想をはるかに超える方に手にしていただいたことに驚いたことを昨日のことのように覚えています。このテキストで提唱した3つの新しい治療コンセプト、3系統薬剤の併用療法、高用量PGI2持続静注、慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplasty(BPA)が今では肺高血圧症治療のスタンダードになっています。
 その当時と比べて、肺高血圧症の病態解明はさらに進み、使用できる薬剤の選択肢は増え、BPAはより安全かつ確実に施行できるようになりました。まさに、“根治をめざす”治療に近づいてきています。しかし、残念ながらガイドラインはその後追いの状態です。一方、新たな問題も出現してきました。左心不全、成人先天性心疾患、肺疾患、膠原病に合併する肺高血圧症がそれであり、その対策が求められています。
 今回、5年の時を経て内容を一新し、肺高血圧症の診療の最前線をわかりやすく説明するテキストを刊行しました。臨床の現場で実践するためのノウハウを具体的に説明しているのも本テキストの特徴です。本テキストが肺高血圧症診療に携わる医師やメディカルスタッフにとって診療の道標になれば、編集者そして著者の最大の喜びです。

2017年2月
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学
伊藤浩

 肺高血圧診療の“バイブル”である『肺高血圧症診療マニュアル』が改訂された。5年ぶりに『新肺高血圧症診療マニュアル 根治を目指す最新の治療指針』となっての登場であるが、この間に新たな薬剤が次々と登場するとともに、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)も広まり、肺高血圧治療は大きく進歩してきた。旧版を使用しておられた先生方にとっては、待ち望んだ改訂であろう。新版を初めて手にされた先生方にとっても、まさにスタンダードマニュアルの登場であろう。
 今回、内容は一新され、そのレベルはまさにグレードアップされている。病態・診断・治療がわかりやすく、かつコンパクトにまとめられている。とくに治療については「診療指針と実践」として特発性および遺伝性、慢性血栓塞栓性、その他(膠原病、先天性心疾患など)、特殊といったそれぞれの病型ごとにポイントと注意点が整理されていて、現時点での肺高血圧症の標準的内科治療(optimal medical therapy:OMT)が理解できるように構成されている。
 「Column」は実践的な解説であり、実際の診療現場に必要なものばかりである。付録の薬剤一覧には、各薬剤のエビデンスが簡潔にまとめられており、知識の確認ができる。また、薬剤の実際の写真も添えられていて、診療の現場で役立つ。
 本書に一貫している肺高血圧治療におけるコンセプトは、わが国における肺高血圧診療をリードしてこられた編者のお一人である、松原広己先生(国立病院機構岡山医療センター)の豊富な経験に裏づけられた“根治を目指す”という熱い思いである。そのような熱い思いが随所にみられ、そして行間に読みとれることが、本書がいわゆる「テキスト・マニュアル」に留まらず、“バイブル”として多くの読者を引きつける所以であろう。循環器・呼吸器・膠原病内科専門医ばかりなく、小児科や放射線科など関連する幅広い診療科の先生方にぜひとも活用いただきたい1冊である。
 本“バイブル”が、わが国の肺高血圧診療のさらなる向上に寄与し、患者さんの根治が実現されることを願っている。

臨床雑誌内科120巻5号(2017年11月号)より転載
評者●九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授 筒井裕之