書籍

呼吸器科医のためのサルコイドーシス診療ガイド

監修 : 杉山幸比古
ISBN : 978-4-524-25782-9
発行年月 : 2016年11月
判型 : B5
ページ数 : 312

在庫あり

定価10,260円(本体9,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

厚生労働省「びまん性肺疾患に関する調査研究班」の作成した『サルコイドーシス診療Q&A集』と『肺サルコイドーシスの治療』を1冊に再構成し、最新の知見を盛り込み内容の充実を図った。サルコイドーシスの病態、診断、治療、患者・家族への対応を解説し、豊富な症例を通して実践的な治療も学べる。呼吸器科医はもちろん眼科、皮膚科、循環器科などサルコイドーシスを診療するすべての医師必携の1冊。

第1章 サルコイドーシスについて理解する
 1.サルコイドーシスとはどのような疾患か?
 2.サルコイドーシスの病態,病因に関するQ&A
  Q1 サルコイドーシスの多彩性,多様性とは?
  Q2 どのような臓器に影響を与えますか?
  Q3 どのような経過をたどりますか?
  Q4 サルコイドーシスの原因
  Q5 体のなかではどのような免疫反応が起こっているのでしょうか?
  Q6 サルコイドーシスの発病要因
  Q7 組織像はどうなっていますか?
  Q8 疫学について教えてください
 3.全身病変としてのサルコイドーシスに関するQ&A
  Q9 呼吸器病変について
   a.呼吸器病変の症状・診断・治療法
   b.肺高血圧症について
  Q10 眼病変について
   a.眼病変の診断
   b.眼病変の検査と治療法
  Q11 心臓病変について
   a.心臓病変の病態
   b.心臓病変の診断
   c.心臓病変の検査
  Q12 皮膚病変について
   a.皮膚病変の診断・検査・治療法
   b.皮膚病変の鑑別診断
  Q13 神経病変について
  Q14 筋病変について
  Q15 骨・関節病変について
   a.骨サルコイドーシスについて
   b.関節サルコイドーシスについて
  Q16 腎・泌尿器病変について
  Q17 肝・消化管病変,脾病変について
  Q18 内分泌,高カルシウム血症について
  Q19 上気道病変について
  Q20 唾液腺,涙腺について
  Q21 血球異常について
  Q22 Heerfordt症候群
  Q23 Lofgren症候群
  Q24 Blau症候群
第2章 サルコイドーシスの診断法
 1.サルコイドーシスの診断基準と重症度分類
 2.サルコイドーシスの診断に有用とされる各種検査の解析
 3.サルコイドーシスの診断・検査に関するQ&A
  Q1 サルコイドーシスの診断と公費助成認定はどのように行われますか?
  Q2 サルコイドーシスで行うべき検査とその意味は(循環器以外)?
  Q3 サルコイドーシスと鑑別が必要になるのはどのような病気ですか?
  Q4 サルコイドーシスの画像所見
  Q5 サルコイドーシス診断のための呼吸器内視鏡検査
  Q6 サルコイドーシスの呼吸機能
第3章 サルコイドーシスの治療法
 1.サルコイドーシスの治療総論
 2.標準的ステロイド治療について
 3.肺サルコイドーシスにおける吸入ステロイドの使用について
 4.サルコイドーシスにおけるメトトレキサート治療
 5.治療に関するQ&A
  Q1 サルコイドーシスの治療薬による副作用について
  Q2 特殊治療法(ペースメーカー,除細動器,CRT,メトトレキサートなど)
第4章 症例から考えるサルコイドーシスの実践治療
 1.無治療−改善例
  症例1 両肺に結節影を認め,診断後6ヵ月で自然消失をみた一例
  症例2 肺野に粒状影を認め,診断後15ヵ月で自然消失をみた一例
  症例3 両肺に小結節影をびまん性に認め,診断後23ヵ月で自然軽快をみた一例
  症例4 両肺に綿花状影を認め,診断後9ヵ月で自然消失をみた一例
  症例5 4年の経過で肺野陰影の悪化と改善がみられた一例
  症例6 一過性のびまん性粒状影の出現と消失をみた一例
 2.無治療−不変.悪化例
  症例7 肺野に粒状影を認め,その後,気管支血管束周囲の病変を認めたが,無治療で改善をみた一例
  症例8 呼吸困難出現後も4年間ステロイド治療が行われず,進展・死亡した一例
  症例9 著明な両側肺門リンパ節腫脹(BHL),肺野病変を有するも,診断後12年間変化を認めない一例
 3.ステロイド標準治療−改善例
  症例10 診断10年後に気管支血管束周囲の病変を認め,治療により改善した一例
  症例11 上葉に.胞および牽引性気管支拡張像の残存はあるが,治療により改善した一例
  症例12 びまん性陰影が急速に進行し,ステロイド治療により改善し,中止できた一例
  症例13 急速に肺野病変が増悪し,ステロイド内服を開始した一例
  症例14 3年間の通院自己中断の間に,急速に閉塞性換気障害が進行した一例
  症例15 吸入ステロイドが有効であった一例
 4.ステロイド標準治療−不安定.悪化例
  症例16 1年間のステロイド標準治療後,非常に緩徐に肺病変が悪化した一例
  症例17 ステロイド標準治療後,漸減し,17年後に中止,その後,非常に緩徐に肺病変が悪化した一例
  症例18 ステロイド標準治療後,漸減中に自己中断し,肺病変が悪化した一例
  症例19 ステロイドの減量に伴って肺病変の悪化を繰り返した一例
 5.少量ステロイド治療例
  症例20 呼吸器感染症のため,少量ステロイドで治療をし,改善をみた一例
  症例21 少量ステロイド治療が有効であった一例
 6.代替治療例
  症例22 眼病変の悪化により短期間ステロイド治療後,肺病変の悪化に対して吸入ステロイドを使用して改善した一例
  症例23 漢方治療が奏効した全身症状を伴うサルコイドーシスの一例
  症例24 メトトレキサート単剤で肺野病変の改善がみられた一例
  症例25 咳,息切れを伴う肺野病変に対してステロイドとメトトレキサート併用治療で改善をみた一例
  症例26 咳,息切れを伴う肺線維化病変に対しステロイドとメトトレキサート併用治療を試みた一例
  症例27 肺野病変と皮膚病変に対しステロイドとメトトレキサート併用治療で改善をみた一例
第5章 患者さん・家族からの質問への対応
 Q1 サルコイドーシスと遺伝子について
 Q2 サルコイドーシスは感染しますか?
 Q3 サルコイドーシスの合併症と全身症状
 Q4 サルコイドーシスは妊娠・出産に影響しますか?
 Q5 サルコイドーシスは悪性腫瘍を合併しやすいですか?
 Q6 サルコイドーシスと膠原病は関係がありますか?
 Q7 喫煙はサルコイドーシスに影響を与えますか?
 Q8 サルコイドーシスの日常生活における注意点は?
索引

はじめに

 サルコイドーシスが第二次世界大戦後に米国在郷軍人の間で多発して問題になり、米国はさっそく国際的な会議をつくり、多くの国々にサルコイドーシスの疫学調査を依頼した。その依頼は1959年に日本にも送られてきたわけだが、受託した野辺地慶三先生、重松逸造先生も「サルコイドーシス」はまったくはじめて聞く病名であったそうだ。それでも全国から94例のサルコイドーシスと診断された症例が集まり、1960年には第1回国際サルコイドーシス学会でそのまとめが発表された。
 肺線維症、間質性肺炎という疾病もやや遅れて認識されるようになり、1970年には第1回肺線維症研究会(現在の間質性肺疾患研究会)が開催された。JR東京総合病院で第1例目の肺線維症が開胸生検で診断されたのは1968年であった。細田裕先生が当時の国鉄中央保健管理所(現JR東日本健康推進センター)の働きを振り返って、「サルコイドーシスと肺線維症という新しい病気に人々は興味を向け、国鉄中央保健管理所は意見交流のためのサロンとなった」と記されている。ちなみに、日本肺癌学会の前身である肺癌研究会が発足したのが1960年であり、JR東京総合病院で肺癌の第1例目の手術が行われたのが1965年であるから、ほぼ時を同じくしてこれらの疾病に対する取り組みが始まったといえるだろう。
 「サルコイドーシスとは何ぞや」とは、2014年9月1日に他界された三上理一郎先生がいつもいわれていた言葉である。これは以前の国鉄の保健管理所所長をやっておられた岡治道先生の言葉であったとも聞く。「いったいこの疾患はどういう疾患なのだ?」という思いは常にこのサルコイドーシスという疾患に付随しているようだ。
 「サルコイドーシスは原因不明の全身性疾患であり、類上皮細胞肉芽腫がその病変部の所見である」ということになっている。しかし、これでこの疾病の全貌が表現されているとはとてもいえない。1960年から半世紀経って、ようやく病因論的にプロピオニバクテリアがその病因であろうことが明らかになりつつある。遺伝的素因、免疫学的病態にしても少しずつみえてきたものがある。また臨床的病状にしても、単に肉芽腫による臓器特異的な障害を呈するだけではなく、全身的な微小血管病変があり、小径線維神経障害があり、様々な臨床症状を呈することもわかってきた。治療法も少しずつ研究が進んでいる。残された大きな問題は、肉芽腫性炎症の遷延化と線維化への対応である。病態の遷延化については慢性疾患として気長に対応し患者さんに付き合っていただくしかない。しかし、特に肺・心臓病変の線維化は生命予後を左右する重要な問題であり、この進行・難治化を抑止することが最も大きな残された課題となっている。病因論から治療方法を考案して対応できるのか、あるいは線維化というまったく別の機序として対応すべきものなのか、おそらく両者から解決すべき問題なのであろうが、これは今後の残された課題である。
 本書が日常のサルコイドーシス患者さんの診療に役立つものとなり、かつ「サルコイドーシスとは何ぞや」という問いに少しでも答えられるものになってくれることを願っている。

2016年11月
山口哲生
四十坊典晴

 サルコイドーシスは全身性肉芽腫性疾患であり、種々の臓器病変と全身症状を理解する必要がある。一般に、眼科、循環器科、皮膚科などでは各科の専門的診療に終始することが多いが、呼吸器科では肺病変に留まらず各科の狭間で取り上げられない症候にも対応する場面が多い。呼吸器科医たる者、全身を理解するつもりで、また各科のセンターになるつもりで診療に従事したいところだが、本書『呼吸器科医のためのサルコイドーシス診療ガイド』は、全身性疾患としてのサルコイドーシスを理解するうえでまたとない良書である。
 前半は病態(第1章)、診断(第2章)、治療(第3章)についてQ&Aを軸に構成されている。とくに、眼病変、皮膚病変についてはカラー写真が多く使用されており、具体的な診療内容を臨場感をもって理解しやすい。心臓病変、骨・関節病変についても豊富な画像所見が大変参考になる。
 サルコイドーシスの診断基準は、1976年に厚生省の研究班の基準が作成され、2006年には日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会の基準として改定された。ただし、特定疾患の公費助成認定においては、2005年以降も以前の基準が使用されるという、少々混乱した状況が続いていた。これを解消すべく、2015年に厚生労働省の研究班と学会が合同で、新しい診断基準・重症度分類を策定した。本書では診断基準、診断手順、各臓器の臨床所見、重症度分類がまとめて掲載されており、新しい基準に慣れるまで手元に置くと便利かと思われる。また、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、リゾチーム、γグロブリン、カルシウム、ツ反などが歴史的にどのように扱われたか整理され、各項目の保険適用についても記載されている。
 サルコイドーシスの治療法を標準化・一般化することは難しい面があるが、本書において国内外の指針におけるステロイド治療の考え方がまとめられたのは大変よかった点である。吸入ステロイド、methotrexateについても記載があり参考になるが、抗菌薬(除菌療法)に関する言及が若干乏しいように感じた。
 後半は「症例から考えられるサルコイドーシスの実践治療」であり、治療別に27例がとり上げられている。サルコイドーシスは短期的にではなく、5年、10年あるいは数十年単位で経過を評価する必要がある。長い経過を踏まえると、ステロイドを使用せずに正解だった症例もあれば、ステロイドの開始が遅れたと感じる症例もある。この道40年(あるいはそれ以上)のベテランの経験は大変貴重であり、この病気の多彩性・多様性を実感させてくれる。
 最後に「患者さん・家族からの質問への対応」というコーナーがあり、多くの文献が引用されているので、自分の知識をあらためて整理するのに有用と思われる
 監修の杉山幸比古先生がお書きになっているとおり、すべてのサルコイドーシス診療者の座右の書として本書を活用していただきたい。

臨床雑誌内科120巻1号(2017年7月号)より転載
評者●東京医科歯科大学医歯学総合研究科統合呼吸器病学分野教授 稲瀬直彦