書籍

体表臓器超音波診断ガイドブック

皮膚・皮下・血管・神経・筋

編集 : 尾本きよか
ISBN : 978-4-524-25761-4
発行年月 : 2016年4月
判型 : A4
ページ数 : 158

在庫あり

定価4,536円(本体4,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

体表領域の超音波検査は、近年その有用性が注目され、検査機会が着実に増加している。本書は、皮膚・皮下、リンパ節、表在・末梢動静脈、神経、筋・靱帯など、多くの多様な臓器について、超音波画像と病理像やシェーマを交え、病態・臨床所見・超音波所見・鑑別のポイントをコンパクトにまとめた、体表臓器超音波診断の『最初に手に取るべき一冊』である。

I.総論
 A 超音波検査時の基本的注意事項
  1.機器の条件,設定
  2.走査の手順
  3.表示方法と報告書
 B 体表臓器の超音波解剖
  1.皮膚・皮下組織
  2.末梢神経
  3.筋・腱
  4.血管
II.疾患各論
 A 皮膚・皮下組織
  1.腫瘍性病変
   a 良性
    1)脂肪腫(lipoma)
    2)血管腫(hemangioma)
    3)皮膚線維腫(dermatofibroma)
    4)石灰化上皮腫(calcifying epithelioma)
   b 悪性
    1)基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)
    2)悪性黒色腫(malignant melanoma:MM)
  2.その他
   a 粉瘤(atheroma,epidermoid cyst,epidermal cyst)
   b 蜂窩織炎(cellulitis,phlegmone)
   c 皮下膿瘍(subcutaneous abscess)
   d 皮下血腫(subcutaneous hematoma)
   e 脂肪壊死(fat necrosis)
   f うっ滞性皮膚炎(stasis dermatitis)
   g 浮腫(edema)
 B 頭頸部
  1.頸部
   a 正中頸嚢胞(median cervical cyst,thyroglossal duct cyst)
   b 側頸嚢胞(lateral cervical cyst,branchial cleft cyst)
   c リンパ管腫(lymphangioma)
   d 頸動脈小体(carotid paraganglioma,carotid body tumor)
   e 筋性斜頸(muscular torticollis)
  2.頭部
   a 頭部打撲:乳児期以降
   b 産瘤・頭血腫・帽状腱膜下血腫:新生児期
 C 唾液腺(耳下腺・顎下腺)
  1.腫瘍性病変
   a 良性腫瘍
    1)多形腺腫(pleomorphic adenoma)
    2)基底細胞腺腫(basal cell adenoma)
    3)Warthin腫瘍
   b 悪性腫瘍
  2.非腫瘍性病変
   a 唾石症(sialolithiasis)
   b 耳下腺嚢胞(parotid cyst)
   c 急性化膿性唾液腺炎,膿瘍(acute suppurative sialadenitis,abscess)
   d ガマ腫(ranula)
   e Sjogren症候群(Sjogren’s syndrome)
   f IgG4関連疾患
   g 反復性耳下腺炎(recurrent parotitis)
 D リンパ節
  1.正常リンパ節(normal lymph node)
  2.反応性リンパ節腫大(reactive lymphadenopathy)
  3.転移性リンパ節腫大(metastatic lymphadenopathy)
  4.悪性リンパ腫(malignant lymphoma)
   a リンパ節に発生する悪性リンパ腫(nodal lymphoma)
   b 節外悪性リンパ腫(extranodal lymphoma)
  5.結核性リンパ節炎(リンパ節結核)(tuberculous lymphadenitis)
  6.急性化膿性リンパ節炎(pyogenic lymphadenitis)
  7.ネコひっかき病(cat scratch disease)
  8.菊池病(壊死性リンパ節炎,亜急性壊死性リンパ節炎)(Kikuchi disease)
 E 末梢神経系
  1.神経鞘腫(schwannoma)
  2.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
  3.神経線維腫症1型(von Recklinghausen病)
 F 血管系(表在・末梢動静脈)
  1.動脈炎
   a 高安動脈炎(Takayasu's arteritis)
   b 巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis :GCA)
  2.下肢静脈瘤(varicose veins in the legs)
  3.血栓性静脈炎
  4.Mondor病
  5.真性・仮性動脈瘤
  6.穿刺後合併症(頸静脈血栓,大腿動静脈瘻)
 G 胸壁・腹壁
  1.皮下気腫(subcutaneous emphysema)
  2.腹直筋血腫(rectus sheath hematoma)
 H 運動器
  1.骨・筋・腱・靱帯病変
   a 骨折
   b 筋・腱損傷
   c 靱帯損傷
   d 腱鞘炎
   e 手根管症候群・肘部管症候群
    1)手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS)
    2)肘部管症候群(cubital tunnel syndrome:CTS)
  2.関節病変
   a 膝関節水腫
   b ガングリオン(ganglion)
   c Baker嚢胞
   d 関節リウマチ
 I 泌尿器
  1.陰嚢水腫
  2.精巣破裂
  3.精巣捻転症
  4.精巣上体炎
索引

序文

 本書のコンセプトは、“気軽に体表にリニア型探触子をあててみよう!”である。「この領域(体表臓器)の超音波検査は、みたこともやったこともないので、難しいのではないか」という先入観は捨てて、まずは検査してみることである。
 腹部、心臓をはじめ乳腺、甲状腺を対象とした超音波検査は多くの検査室で施行されているが、本書で扱う乳腺、甲状腺を除く体表臓器の超音波検査は、近年その有用性がクローズアップされ、依頼件数も着実に増加してきているものの、一部の臨床家にはいまだその有用性を認識されていない状況にある。
 超音波検査の特徴には次のようなものがある。
 1.超音波装置は日本全国ほとんどの医療機関で設置されており、画像検査の1つとして利用されている
 2.X線検査やCT検査と異なり被曝することなく、小児でも、また何度でも安全に検査できる
 3.検査部位を細かく指定できるため、実際の症状に対応してピンポイントかつリアルタイムに観察、診断できる
 4.CT画像やMRI画像と比較して一般に画像解像度が高く、病変の細かな形状を観察し、内部性状まで詳細に把握、推測できる
 これら多くの優れた点があり、それゆえ今や臨床の場では欠かすことのできない臨床検査の1つであり、総合病院の検査室だけでなく外来、病棟、救急室、手術室などにも設置されている。もちろん検診、ドックでも利用されているが、その他小規模の医院、診療所ときには在宅医療、被災地での医療活動などにも活用されている。
 腹部、心臓、乳腺、甲状腺などを対象とした超音波検査の手順、診断法については十分普及しているが、本書で扱うような体表臓器に関しては標準的な検査法や評価、診断法が認識されているとは言い難い。多くの超音波診断に関する書籍や参考図書が出版されており、体表臓器の乳腺は『乳房超音波診断ガイドライン』、甲状腺は『甲状腺超音波診断ガイドブック』が豊富な超音波写真と詳細な解説が記載されており、もっとも推薦できる参考図書である。しかしながら、その他の体表臓器には“皮膚・皮下、血管、神経、筋、関節、唾液腺、リンパ節”など多様で多数の部位や臓器が含まれ、領域横断的かつ広範な分野であるためか、これらのエッセンスをコンパクトにまとめた超音波診断のガイドブックは見当たらない。
 本書の特徴として、他の書籍にあるような機器の基本的な知識の記述は最小限にとどめ、より臨床的な観点から日常よく遭遇する疾患をピックアップし、その臨床像を概説し、超音波写真をより多く掲載しつつそれと対比できるような病理像やシェーマを添付するようにした。またコラムでは超音波に関する豆知識や重要な情報についても記載している。
 多くの医師や技師の方々に本書を利用し、体表臓器における超音波診断の有用性を理解して頂ければ幸いである。そしていろいろな臨床の場面でもっと気軽に“画像検査のファーストチョイス”として体表臓器の超音波検査を活用して頂き、本書が超音波診断の一助となることを願ってやまない。

2016年2月
尾本きよか

 本書の一番の特徴は、「体表から体内まで、マクロからミクロまでの画像」であろう。超音波診断の書籍には珍しく、身体診察の視診の画像が掲載されている。「体表」というキーワードからは、このような形で展開していくのがいいな、とまず感じた。また、CT、MRIなどの画像診断が超音波画像と関連づけて提供されており、読者は一般診療で目にする画像診断に沿って超音波診断を学ぶことができる。加えて、随所に病理組織所見が添えられているのは、本書ならではの特長といえるであろう。本書は、医師以外に超音波検査士、看護師にも役立てていただきたい内容であり、このような複数の画像診断がセットになっていることは大きなメリットであると思う。
 さて、超音波関連の書籍でありがちなのは、どうだ、とばかりに画像を並べて圧倒するか、いきなり小難しい説明に入るといった、読者にとっては理解がむずかしいパターンである。本書は、個々の超音波画像に丁寧でわかりやすい説明が付されており、さらに理解を助けるためにイラストもふんだんに添えられていてありがたい。画像を描出する際のコツなども随所にちりばめられていて、これからがんばって超音波診断をマスターしようとする人には役立つであろう。
 ゆったりとしたレイアウトと色合いのバランスのよいデザインに関しては、南江堂編集部のみなさんに感謝したい。ほとんどのページに、グレースケールのエコー画像に加えカラードプラ画像があり、見た目にも華やかで飽きさせない工夫がある。グレー画像がほとんどの箇所にもカラーイラストがあり、どのページから読み始めてもビジュアル的に楽しめる工夫がなされている。タイトルと図、表などをパラパラと眺めていくだけでも、頭に印象づけられるように思う。
 重要な医学用語、特に病名にことごとく英語表記が付されていることも、特長といってよいであろう。多くの人は、日本語で教科書を読み、日常診療で日本語の医学用語を使っているが、不明な点をインターネットや文献で調べようとしたとたん、英語とのギャップに直面することになる。英語の論文や教科書、サイトを読むにあたってキーになるのは「名詞」、特に医学用語である。超音波診断を学びながら、知らず知らずのうちに英語表記に慣れておくことは、大きなメリットとなるであろう。
 あえて注文をつけるなら、走査、描出の方法やBモード、カラードプラモード画像に動画が提供されると、本書のよさがさらに引き立つと思う。書籍にDVDをつけると一気に書籍の価格が上がり、読者が手を出しづらくなるためしかたない面もあるが、可能なら南江堂のホームページにアクセスし、あるいはYouTubeなど無料動画サイトを活用するなどの方法で価格を抑えながらこの点をクリアしていただけるとありがたい。もう一点、もし改訂で増頁が可能なら、チャンピオンデータ以外の情報も含めていただけるとありがたい。本書で提示してあるように非常にクリアな画像を眺めた後で実際に自分がやってみると、「何だこれは」というような画像となることを読者は経験する。それをきっかけに読者の興味、熱意が薄れないためには、数ヵ所でもよいので「最初はこんな画像しか撮れなかったが、こう工夫するとここまでみえるようになった」という例を提示いただけると、読者、特に初心者には参考になるのではないであろうか。

胸部外科69巻13号(2016年12月号)より転載
評者●高知大学外科学(外科2)講座教授 渡橋和政

 全158頁、A4判のオールカラーアトラスは、まず手にとって美しい仕上がりである。そして、編者である尾本きよか先生を含め、28名の著者による力作である。これまで体表臓器に関する超音波検査教本の多くは、乳腺、甲状腺がほとんどで、その他としてはリンパ節、血管が添えられているという程度のものが相場であったのではなかろうか。本書は、神経の変性疾患や運動器の外傷にいたるまで、体表の病態はなんでも探触子を当ててみてみようという好奇心に満ちた著者、編集者の意気込みが感じられる、体表疾患を網羅的に扱った待望の著書である。よって、読者は知らぬうちに、自身が調べたいと思う項目にとどまらず、ついつい引き込まれて読みすすめていることに気づくであろう。
 今どきのガイドブックらしく、病理像はもとより、MRIの造影パターンやCTとの対比、わかりやすい解剖の説明図を用いて、至れり尽くせりの解説がされているのがうれしい。そしてもちろん、超音波画像は正常や鑑別疾患との違いがよくわかるように工夫されている。また、各疾患の病態説明も簡潔明瞭に示されており、読み物としても読者の知識欲を十分満足させてくれるものとなっている。大勢の著者の分担執筆でありながら、使用されている用語や構成が無理なく統一されており、これも容易に読みすすめていきやすい理由の一つであろう。これだけの数の著者の分担執筆本とされたことや統合の労に、編者である尾本先生の、長きにわたって活躍されてきたこの領域での人望とリーダーシップをうかがい知ることができる。
 欲をいえば、せっかくのミニコラムが、もっとミニでもよいのでどこかしこに散りばめられていたら、もっと楽しい読み物になったであろうこと、疾患ごとに1からナンバリングされている図表番号が、ところどころ隣り合った疾患のいずれの図表なのか、とっさにはわかりにくかったりすることなどが次版で改善されると、さらに親しみやすいものとなるであろうと感じられた。
 本書評を執筆するにあたっては、職場の仲間の超音波技師3名の意見も参考にした。ぜひとも、似て非なる日本乳腺甲状腺超音波医学会編の『乳房超音波診断ガイドライン』や『甲状腺超音波診断ガイドブック』に勝るとも劣らない手引きであることが、早々に多くの医師、技師に周知されることを願ってやまない。

臨床雑誌外科78巻11号(2016年11月号)より転載
評者●順天堂大学乳腺・内分泌外科主任教授 齊藤光江