書籍

手稲渓仁会病院消化器病センター胆膵Clinico-Pathological Conference

厳選36例から学ぶ

編著 : 真口宏介
ISBN : 978-4-524-25718-8
発行年月 : 2017年5月
判型 : B5
ページ数 : 268

在庫あり

定価10,800円(本体10,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

手稲渓仁会病院消化器病センターでこれまで行われた690例のCPCから36例を厳選。豊富な画像所見・病理所見を掲載し、診断・治療へと導くノウハウを解説する。実際の診療過程に沿って解説された要点を読み進めることで、胆・膵診療の実力が身につく。症例ごとにディスカッションのポイントをQ&A形式で、各疾患の要点や画像所見のポイントを「ミニレクチャー」で分かりやすく解説した。胆膵の非専門医や若手医師にもおすすめの一冊。

略語一覧
Case1 膵癌or腫瘤形成性膵炎?
Case2 IPMNに併存した小膵癌?
Case3 限局性の主膵管狭窄
Case4 膨張性発育を示す膵腫瘤?
Case5 下部胆管狭窄?
Case6 膵嚢胞性腫瘍or充実性腫瘍?
Case7 膵管内腫瘍?
Case8 分葉状を呈する膵腫瘤?
Case9 充実性病変と嚢胞の併存?
Case10 拡張主膵管をはさんだ二つの腫瘤?
Case11 充実と嚢胞の混在する腫瘤
Case12 大きな膵尾部腫瘤
Case13 慢性膵炎経過中に腫瘤増大?
Case14 主膵管の限局性拡張
Case15 膵頭部嚢胞性病変
Case16 主膵管内腫瘤?
Case17 主膵管拡張と膵頭部腫瘤?
Case18 分枝型IPMNに充実部出現
Case19 分枝型IPMNと離れた部位に腫瘤出現
Case20 分枝型IPMNの近傍で胆管狭窄
Case21 膵尾部の単房性嚢胞?
Case22 造影効果を有する膵腫瘤
Case23 胆管内腫瘤
Case24 広範な胆管壁肥厚
Case25 肝門部胆管狭窄
Case26 膵頭部腫瘤?
Case27 胆嚢隆起性病変の出現
Case28 限局性の胆嚢壁肥厚
Case29 胆嚢ポリープの増大
Case30 胆嚢良性ポリープ?
Case31 胆嚢底部の隆起性病変?
Case32 胆嚢壁肥厚部の増大
Case33 短期間での胆嚢壁肥厚の出現
Case34 中部胆管狭窄
Case35 進展度診断が問題となった乳頭部腫瘍
Case36 乳頭部癌?
疾患名索引

序文

 1997年4月に手稲渓仁会病院消化器病センターを開設し、20年が経過するが、思い起こせばゼロからの出発であった。まずはセンターの専門性を高めることを目指し、病棟を消化器内科、放射線科、外科で統合し、消化器内科医と放射線科医を臓器ごとに胆膵、消化管、肝の3つのグループに分ける体制とした。ただし、カンファレンスは全員参加で症例検討を行うこととした。当初は術前の症例および診断・治療に難渋する症例を提示してきたが、徐々に胆膵疾患の切除例が増加してきたため、切除例の画像診断と病理結果との対比検討を行うことに主眼を移した。大きなシャウカステンに画像フィルムを掲示し、病理結果のみをスライドで投影していたが、その後、PCの普及と外科医の病理検索への積極的な参画により、2004年からはデジタル画像による術前画像、術中所見、病理所見の提示を開始し、これをClinico-Pathological Conference:CPCとよび、胆膵疾患を中心に毎週木曜日の夜に原則2例の提示を行うこととした。症例は、2004年1月15日の症例1から2017年3月までの13年間で実に690例に到達する。CPCには消化器内科医、放射線科医、胆膵外科医、病理医のほか超音波技師も参加するため、多いときには参加者は40名を超える。1例につき1時間程度の討論を行うが、所見やポイントについては大学ノートにすべて記録している。その数も53冊となった。
 本書ではこのCPC 690例のなかから、20年間の集大成として厳選した36例をお届けする。
 本書の読み方について簡単に解説すると、1例につき6ページを基本構成とし、1、2ページ目に画像所見と画像診断のまとめ、3、4ページ目に術前病理診断と術前診断・術式、そして病理所見と最終病理診断、5、6ページ目にディスカッションをQ &Aとしてまとめている。
 各例のタイトルには診断契機や所見を用い、続いてCPCのポイントを記載した。写真をできるだけ大きく掲載するため、key画像を抜粋し、説明文はできるだけ簡潔にした。病理所見にはシェーマと割面像に腫瘍マッピングを施し、組織の拡大像は色分けした枠で囲み、わかりやすい工夫を凝らした。最終病理診断については、膵癌取扱い規約第7版(2016年)、胆道癌取扱い規約第6版(2013年)に準拠した。文字数の制限から、実際のCPCで討論した内容をすべて網羅することは困難であるが、重要なディスカッションポイントは抽出できたと考える。
 また、特徴的な疾患や病変については“ミニレクチャー”として12個のテーマを選び、各2ページで“知って得する”内容を盛り込んだ。なお、疾患名から本書を読みたい場合は、巻末の疾患名索引を利用して頂きたい。
 「画像診断の目的は、最も適切な治療方針を決定すること」であり、病変の発見から始まり、鑑別診断、治療法の選択、手術適応例には術式選択まで行う必要がある。胆膵領域は消化管領域と異なり、内視鏡で直視することが困難であり、多数の画像診断法を要する。“より正確な診断”には画像所見の詳細な読影と情報の集約、そして知識が必要である。そのためには、画像と病理所見の対比、すなわち1例ごとの吟味がきわめて重要となる。このことは「日本消化器画像診断研究会」で学び、実践してきた。本書が、胆膵専門医だけでなく、若手医師にも役立ち、多くの医師と施設の一つの目標となれば幸いである。
 本書の創刊にあたり、現消化器病センターの医師スタッフ一同(次ページ)と、胆膵グループで苦楽を共にした卒業生(1年以上の在籍者、次ページ)に感謝する。特に、当センターの中心で活躍してくれた故小山内 学先生、そして外科手術手技だけではなく、画像と病理の対比の大切さをご教授頂いた北海道大学腫瘍外科の故近藤 哲先生に心からの感謝とともに本書を捧げたい。

2017年4月
手稲渓仁会病院消化器病センター長
真口宏介

 本書の編者である真口先生に書評を依頼され大変誇りに思う。真口先生とは30年以上の長い付き合いであり、ともに「1例1例を大切にすること」と「画像と病理の厳密な対比」を臨床の基本姿勢として診療に携わってきた。その姿勢が貫かれた本書が上梓されたことは筆者にとって大変嬉しい。
 さて、EBM(evidence based medicine)の重要性が叫ばれて久しい。EBMはある診療行為の選択にあたって、その根拠を過去の多くの症例より得られた医学的知見(evidence)に求めるものである。evidenceを元に多くの疾患においてガイドラインが示され、最近はガイドラインがあたかも教科書であるかのように扱われることがある。しかし、実臨床においては典型例ばかりでなく、いわゆる「非典型例」に出くわすことも多く、そのたびに判断に迷う。とくに膵・胆道領域では、肉眼や内視鏡で観察することのできない病変に対して、さまざまな画像所見を駆使して診断を下す必要があり、典型的所見と非典型的所見のモザイクのなかから、それぞれの所見の意味するところを把握し診断につなげていかなければならない。そのためのトレーニングとしては、多くの症例を経験することが最も重要であり、それぞれの症例ごとに画像と病理所見の厳密な対比を繰り返すことが不可欠である。
 本書は、国内の膵・胆道領域の症例数においてハイボリューム施設の1つである手稲渓仁会病院で行われた多数の手術症例のなかから、まさに厳選された36例に対して消化器内科、消化器外科、放射線科、病理の各医師が一堂に会して行われた院内CPCの記録である。膵疾患22例、胆管疾患4例、胆嚢疾患8例、乳頭部疾患2例とバラエティに富んだ症例が包含されており、それぞれの症例を「画像と病理所見の対比」というテーマを元に同様のフォーマットで示しながら、症例ごとに診断上のポイントとなる部分が、読者へのメッセージのように伝わってくる内容となっている。とくに症例の最後の2ページで「CPCディスカッションQ&A」として、症例ごとに肝となるポイントをわかりやすく解説し、今後同様の症例を経験するときに活かせる内容となっており、あたかも真口先生や筆者を育て育んでくれた「日本消化器画像診断研究会」にまるで参加しているかのような臨場感すら覚える。また、代表的な12の疾患についてはミニレクチャーとして疾患の典型的な所見や注意すべき内容について簡潔に解説されている。加えて、共同執筆者の先生がしたためたコラムも四方山話のようで興味深く、若い読者にはためになる内容だろう。
 EBMやガイドライン、なんちゃってRCT全盛の今の時代、本書のような症例報告集はエビデンスレベル5に位置づけられ、あまり重要視されない。しかし、EBMの最初の目的の一つである「目の前の患者の診断のため」には、CPCで行われる徹底的な画像と病理の対比を行うことから得られる知識を蓄積しておくことは必須であり、本書はそのための近道を示してくれるものといえよう。その意味でも、本書は膵・胆道領域の診療を志す初学者の先生ばかりではなく、すでに多くの経験をしたベテランの医師にも必読の一冊と考えられる。

臨床雑誌内科121巻2号(2018年2月号)より転載
評者●成田記念病院顧問 山雄健次