書籍

恋する医療統計学

研修医 凡太郎,統計の勉強をゼロから始めて学会発表までいきま〜す!

: 中川義久
ISBN : 978-4-524-25717-1
発行年月 : 2015年4月
判型 : A5
ページ数 : 190

在庫あり

定価2,916円(本体2,700円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

「統計の考え方がよくわかる」「難しい題材なのに気軽に読める」など、数々の反響があった雑誌『内科』の連載を書籍化。ドジってばかりの研修医凡太郎が熱血指導医の教えを受け、恋に仕事に奮闘しながら徐々に統計の知識を深めていく…そんなストーリーを読み進めるうちに、いつの間にか統計が好きになってもっと勉強したくなる!統計に苦手意識をもつすべての医療スタッフにおすすめの一冊。

プロローグ
1 スポーツ新聞に潜む統計的考察
   EBM、95%信頼区間
2 平凡を目指す凡太郎と、平均的でない平均値
   代表値、平均、中央値、最頻値、正規分布、四分位範囲、箱ひげ図
3 好物の桃はピーチ、苦手のp値もピーチ
   p値、帰無仮説、有意差
4 どこまでが偶然か?宝くじからαエラーを考察する
   αエラー、βエラー、過誤
5 イヤーピースの間にあるものは?聴診器に潜む診察の鍵
   感度、特異度、検査前確率、陽性的中率
6 最強の打者は誰か?比較することのむずかしさ
   ランダマイズ研究、レジストリ研究、プロスペクティブ研究、レトロスペクティブ研究、バイアス
7 ものは言いよう−表現は異なろうとも真実を見抜け!
   相対リスク減少率、絶対リスク減少率、NNT
8 流血の惨事から学ぶリスク比とオッズ比
   リスク比、オッズ比、コホート研究、ケース・コントロール研究
9 母と息子の絆から垣間見る相関関係と因果関係
   相関関係、因果関係、相関係数
10 たかが宴会されど宴会、差のつく名幹事を目指せ!
   t検定、正規分布、非正規分布、パラメトリック検定、ノンパラメトリック検定
11 たかが宴会されど宴会、カイ二乗のカイは宴会のカイ?!
   カイ二乗検定、観測度数、期待度数、クロス集計表
12 モテるための因子は何か?恋愛指南から学ぶ多変量解析
   多変量解析、説明変数、従属変数、交絡因子、ロジスティック回帰、Cox回帰比例ハザード解析
13 カップ麺の調理法から学ぶ生存時間解析
   生存時間解析、Kaplan.Meier生存曲線、log.rank検定
14 メタアナリシスはメチャアナリシス?合わせ技一本から学ぶエビデンスレベル
   メタアナリシス、ガイドライン、エビデンスレベル
15 プロペンシティスコア・マッチングで先輩風を吹かせよう
   プロペンシティスコア、プロペンシティスコア・マッチング法
16 凡太郎、学会発表デビューの巻
   プレゼンテーション
17 天から降ってくるものは何か?
   研究デザイン、エビデンス構築
エピローグ
参考文献
索引

序文

 「むずかしいがおもしろいに変わる」この一言が本書のコンセプトです。医療統計に関して概説した書籍は数多くあります。いずれも、わかりやすく書いたという文言が表紙や巻頭を飾っています。これは、実際にはわかりにくい書籍が積み上げられてきた事実の裏返しともいえます。
 本書では、天然キャラクターの主人公である多々野凡太郎、熱血指導医である新堂先生、頭脳明晰・容姿端麗の北条遙、彼らがカンファレンスでの巧妙な会話を通じて統計解析を楽しく解説してくれます。統計解析や臨床研究といった硬派な内容を縦糸に、凡太郎と遙の恋心を横糸にして読み物風の書籍に仕立て上げました。楽しく引き込まれるように読み進むうちに、読者の持つ統計解析への拒否感が氷解していく仕掛けです。
 この書籍は著者が単著として一人で全てを書き上げました。数多くの共著者で分担して書籍を作成することは、各々の能力が集積される面もありますが、書籍全体を通じてのコンセプトが不明確になりがちです。本書を通読してもらえば、著者の抱く統計や臨床研究への世界観を共有してもらえるものと期待します。
 読者の皆さんがこの書籍を端緒として統計への知識を深め、立派な臨床研究を行ってくださることを期待します。凡太郎が本書の中で成長していく姿は、読者の皆さんの成長過程を表現しています。皆さんが、凡太郎以上に成長してくだされば著者の喜びです。

2015年3月
中川義久

 日本の卒後教育ではEBMの実践について系統的に教わる機会がいまだ多くありません。また学生・研修医にどのようにEBMを教えてよいのか迷われる指導医の先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。米国の卒後臨床研修プログラム(Residency Programs)で行われているJournal club(論文の抄読会)ではevidence based medicine(EBM)の手法を十分理解しディスカッションが行われていることが多く、とくに、“5つのA”(表1)で覚えることのできる手法を用いると理解しやすいといわれています。
 これは、(1)ある患者さんの臨床的疑問に対して検索可能な形に形式化し、(2)PubMedなどを使用し最適な文献を検索し、(3)その文献に批判的吟味を加え、(4)その文献的知見を実臨床に適応し、(5)そしてその結果を再評価する、という日常診療にEBMを導入する非常にプラクティカルな方法です。ただ、それぞれの過程には学習者が銘記しておくべき重要なポイントがあるといわれています。とくに、(3)文献を批判的に評価するためには「医療統計学」の知識が必要になってきます。
 しかし、「やさしい」「簡単な」と表紙に書かれた医療統計学の教科書を広げると数頁で挫折するということが多く、机の本棚に数冊並んでいるという先生も多いのではないでしょうか。
 今回、南江堂から出版された『恋する医療統計学』は、会話形式で、天然キャラクターの主人公「凡太郎」、熱血指導医「新堂先生」、頭のいい容姿端麗な同僚「北条 遙」が日常のカンファレンスの会話を通じて統計解析を楽しく解説しています。
 1つ紹介しますと、『Lesson1。スポーツ新聞に潜む統計学的考察=「95%信頼区間」』の解説では、“プロ野球選手の1年間の打撃成績で、1,000打数500安打で打率5割の打者が表彰されず、代打でたまたまヒットを打った2打数1安打の選手が打率5割で、首位打者として表彰されたらどう思う? ともに5割打者だが、打数が増加するほど打率が信頼できるデータのように思えるだろう。この直感を数字で表現したものが統計学用語でいう「95%信頼区間(confidence interval)」なのである。医学的にはn数が増えるほど統計的な精度が増すことを意味しており、n数が多いほど信頼区間は狭くなる”とあります。野球好きの私には初めて直感で95%信頼区間の意味を理解できた瞬間で、Lesson15まで一気に読んでしまいました。これで論文の批判的吟味により自信がつきました。さらに学会プレゼンでのポイントや研究デザインのLessonのおまけ付きです。
 中川義久先生が日常診療で築きあげた指導医としての証、臨床研修医ばかりでなく、臨床研究を始めようとする後期研修医の必読の書といってよいでしょう。

臨床雑誌内科116巻6号(2015年12月増大号)より転載
評者●聖路加国際病院Immuno−Rheumatology Center医長/東京医科歯科大学臨床教授 岸本暢将