書籍

特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第3版

  • 新刊

編集 : 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会
ISBN : 978-4-524-25707-2
発行年月 : 2016年12月
判型 : A4変型
ページ数 : 166

在庫あり

定価4,104円(本体3,800円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編集により、特発性間質性肺炎(IIPs)の臨床における診断・治療の指針としてまとめた手引きの改訂版。今改訂では、抗線維化薬ピルフェニドンに関する知見の集積、特発性肺線維症の新規治療薬ニンテダニブの登場、国際的なガイドラインや分類への対応など、最新内容へアップデート。IIPsの疾患概念、臨床像、検査・画像・病理所見、治療法まで網羅した専門医はもちろん一般内科医にとっても一助となる一冊。

第I章 びまん性肺疾患と特発性間質性肺炎
第II章 診断の進め方
 1 臨床像
 2 一般検査
  1.胸部X線写真
  2.高分解能CT(HRCT)
  3.血液検査
  4.呼吸機能検査,運動耐容能検査,動脈血ガス検査
 3 特殊検査
  1.気管支肺胞洗浄(BAL)
  2.経気管支肺生検(TBLB)
  3.外科的肺生検(SLB)
 4 間質性肺炎の病理組織総論
  1.間質性肺炎総論
  2.病理組織学的鑑別診断の要点
 5 鑑別診断
  1.膠原病および関連疾患
  2.過敏性肺炎
  3.じん肺
  4.薬剤性肺炎
  5.慢性および急性好酸球性肺炎
  6.感染症
  7.サルコイドーシス
  8.その他
第III章 IIPs各疾患の概念と診断・治療
 A.慢性の線維化をきたす間質性肺炎
  1 特発性肺線維症(IPF)
  2 非特異性間質性肺炎(NSIP)
  3 急性増悪
 B.急性または亜急性の間質性肺炎
  1 特発性器質化肺炎(COP)
  2 急性間質性肺炎(AIP)
 C.喫煙関連の間質性肺炎
  1 乖離性間質性肺炎(DIP)
  2 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD)
 D.まれな間質性肺炎
  1 リンパ球性間質性肺炎(LIP)
  2 pleuroparenchymal fi broelastosis(PPFE)
  3 まれな組織学的パターン
  4 家族性間質性肺炎
 E.分類不能型特発性間質性肺炎
第IV章 管理総論
 1 治療の目標と管理
 2 日常の生活管理
  1.禁煙
  2.環境因子
  3.微生物因子
  4.胃食道逆流
  5.日常生活
  6.定期的な診察
  7.感染予防
  8.精神的配慮と福祉
 3 薬物療法の目標・評価法
  1.ステロイド
  2.免疫抑制薬
  3.抗線維化薬
  4.その他の薬物療法
 4 合併症の対策とその管理
  1.肺気腫(気腫合併肺線維症)
  2.肺癌
  3.気胸,縦隔気腫
  4.肺高血圧,右心不全
  5.感染症
 5 在宅酸素療法と呼吸リハビリテーション
  1.在宅酸素療法
  2.呼吸リハビリテーション
 6 肺移植
  1.一般的肺移植の適応
  2.特発性間質性肺炎(IIPs)における肺移植の適応
  3.IPFにおける肺移植の意義
  4.脳死肺移植と生体肺移植
第V章 かかりつけ医のための診療アウトライン
 1.かかりつけ医のための診療ポイント
 2.かかりつけ医のびまん性肺疾患(間質性肺炎)診療のためのフローチャート
 3.かかりつけ医が専門医に送る際の判断基準
 4.専門医の役割と機能
付録
 付1.わが国の特発性間質性肺炎の歴史と臨床診断基準の第四次改訂
 付2.厚生労働省特定疾患認定基準
 付3.厚生労働省特定疾患認定審査臨床調査個人票
改訂第3版作成作業の経過と委員会の構成
改訂第2版作成作業の経過と委員会の構成
初版作成作業の経過と委員会の構成
索引

改訂第3版 序

 2011年3月に本書の改訂第2版が発行されてから早くも5年半の年月が流れた。この5年半の間には特発性間質性肺炎、なかでも特発性肺線維症の治療の分野で劇的な変革が進んでいる。第2版の発行当時は2008年のピルフェニドン発売から3年目を迎えていたが、その後ピルフェニドンは欧州で2011年から使用が開始され、さらに2014年にはASCENDの結果を受けて米国でも使用可能となった。さらに2014年5月には第2の抗線維化薬であるニンテダニブの国際治験INPULSISの成功が報告され、欧米で使用可能となった。日本でも2015年から認可使用可能となり、われわれはこれまで有用な薬剤のなかった特発性肺線維症に対して2つの有力な薬剤を手に入れることとなり、まさに“抗線維化薬の時代”に突入した。
 国際ガイドラインでも2015年にピルフェニドン、ニンテダニブは“Conditional recommendation for use”という評価となり、使用を条件付きで推奨される薬剤となった。このような時代になりわれわれは、特発性肺線維症の患者さんに対して、少なくとも治療の選択肢としてこれらの抗線維化薬を提示し、説明することが必要となった。
 こういった時代背景に鑑み、また厚労省「びまん班」での特発性肺線維症の治療ガイドライン作成も踏まえて日々の臨床、患者さんの説明に役立てるべき解説書として本書の喫緊の改訂が必要とされることとなった。以上を受けて作成されたのが第3版である。今回も厚労省「びまん班」の多くの先生方のご協力をいただき完成させることができた。この場をお借りして深く御礼申し上げる。
 本書をこの難病に苦しむ患者さん方の日々の診療にお役立て頂くようお願い申し上げる。

2016年11月
日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会 委員長 杉山幸比古
厚生労働科学研究難治性疾患対策研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究班 主任研究者 本間栄

 今回の『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き(改訂第3版)』では、2011年、2015年の特発性肺線維症(IPF)の国際ガイドラインと2013年の特発性間質性肺炎(IIPs)の国際集学的分類の内容とともに、本邦で独自に集積された知見を、国際ガイドラインとの整合性をもたせて盛り込んでいる。いくつかの要点に分けて書評を示す。
要点1.multidisciplinary discussion(MDD)
 臨床、画像、病理の専門医が議論して行うIIPsの診断と治療法の決定は、CRP診断からmultidisciplinary discussion(MDD)診断と名称を変えてIPFの国際ガイドラインに示され、本書でも重要なコンセプトの一つである。今後、MDD診断の普遍性や診療への貢献度についてのデータ的な評価が望まれる。また、IIPsは経過中に膠原病の合併など診断や治療法が変更されることがある。最近は、ある時点でのMDD診断での評価に加えて、時間経過が重視されてきている。
要点2.IIPsの分類基準の変更
 2013年の国際集学的分類ではIIPsの病型分類が変更され、主要分類にMDD診断で病型分類が不可能な症例として分類不能型IIPsが追加された。pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)などのまれな病型も追加され、文献的な疾患概念の確立が望まれる。非特異性間質性肺炎(NSIP)の診断、治療方針については、今後議論が必要である。本邦では急性/亜急性に発症するNSIPは認識されているが、国際分類には慢性経過のNSIPしかないという疾患概念の国際的差異が存在する。本書では、cellular NSIPに対してステロイド単独療法、fibrotic NSIPに対してステロイドと免疫抑制薬の併用が推奨されているが、NSIPの疾患概念と治療法の国際的標準化は今後の課題である。
要点3.抗線維化薬による慢性期の治療
要点4.臨床的挙動に応じた治療戦略の推奨
 今回の改訂ではIPFの慢性期の治療方針が大きく変更された。本邦発の抗線維化薬であるpirfenidoneとその後に開発されたnintedanibが国際臨床試験で有効性を示し、本書でもIPFの薬物療法の第一選択は抗線維化薬となった。改訂第2版ではIPFの治療法にも示されていたステロイドや免疫抑制薬による治療は、NSIPや特発性器質化肺炎(COP)でのみ第一推奨となり、IIPsの治療方針はより明確となった。その一方でまだ明確化されていない事項もある。MDD診断でIPFと診断された症例のなかには、慢性過敏性肺炎やNSIPなどの他病型との鑑別が紛らわしい症例も存在するため、そのような境界例のIPFにステロイドと免疫抑制薬の併用も検討される可能性もあるという記載は残された。また、いまだにIIPsを治癒する薬剤は存在しない。そのため、治療のゴールを何に設定するのか、どこまで病状が進行した時点で治療開始するのかなどの検討が、個々の症例において必要となる。これらの判断を非専門医が行うのは難しい。この点について、「十分な治療経験を持つ専門医の判断が必要」と明記されるなど、慎重な記載がなされている。治療のゴールの設定については、「第IV章 管理総論」に示されている。これは国際集学的分類[3]のIIPsの臨床的挙動に応じた治療戦略の日本語訳に当たり、各病型の非可逆性の程度によって治療方針を変えるべきとしている。たとえば、非可逆性のIPFでは進行速度の遅延が第一目標となる。また、IPFのなかにも病状進行が速い症例と遅い症例が存在するため、増悪速度に応じて抗線維化薬の適正な導入時期を決定する治療が望まれる。最近、MUC5Bなどの増悪速度を予測するバイオマーカーが研究されている。本書では研究中のバイオマーカーとして、ペリオスチンをとり上げている。
要点5.急性増悪の治療
 本邦ではIPFの急性増悪の発症率と死亡原因に占める割合が欧米よりも高く、その予防と治療は重要な課題である。本書では、急性増悪の発症率を抑制しうる薬剤としてnintedanibが示された。治療はステロイド大量療法が中心となるが、免疫抑制薬の併用が本邦で報告され、第III相試験が行われている組み換えトロンボモジュリンあるいはpolymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion(PMX-DHP)療法が治療法として示されている。いまだにエビデンスを有する急性増悪の治療法はなく、さらなる臨床試験の実施が望まれる。

臨床雑誌内科120巻1号(2017年7月号)より転載
評者●久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病部門(第一内科)講師 岡元昌樹