書籍

門脈圧亢進症診療マニュアル

食道・胃静脈瘤の診かたと治療

編集 : 日本門脈圧亢進症学会
ISBN : 978-4-524-25706-5
発行年月 : 2015年11月
判型 : B5
ページ数 : 188

在庫あり

定価7,344円(本体6,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

内科医・外科医・放射線科医の相互連携が求められる門脈圧亢進症について、その診療の実際を体系的かつ簡潔平易にまとめた診療マニュアル。病態、診断と治療選択、および内視鏡治療・IVR・外科的治療の標準的な治療法を実践的に解説。肝臓を診る全ての医師・研修医のための日本門脈圧亢進症学会公式テキスト。

第I章 門脈圧亢進症の病態,診断
 1.門脈圧亢進症の発生機序と病態生理
 2.食道・胃静脈瘤の内視鏡診断
 3.食道・胃静脈瘤の超音波内視鏡診断
 4.食道・胃静脈瘤出血の危険因子
 5.体外式超音波による門脈圧亢進症の病態診断
 6.造影超音波
 7.門脈血行動態
  a)3D−CT
  b)EVIS
  c)血管造影
第II章 門脈圧亢進症の治療手技
  1.消化管静脈瘤治療のストラテジー
 A.内視鏡治療
  1.食道静脈瘤
   a)出血例に対するEVL,EIS
   b)待期・予防例に対するEVL
   c)待期・予防例に対するEIS
   d)地固め療法(1):EIS
   e)地固め療法(2):APC
  2.胃穹窿部静脈瘤
   a)出血例に対するCA局注
   b)待期・予防例に対するCA−EIS
  3.異所性静脈瘤の診断と内視鏡治療
   a)十二指腸静脈瘤
   b)直腸静脈瘤
 B.IVR
  1.B−RTO
  2.PTO,TIO
  3.TIPS
  4.PSE
 C.外科的治療
  1.直達手術,Hassab手術
  2.シャント手術
  3.腹腔鏡下脾臓摘出術
第III章 門脈圧亢進症のマネジメント・特殊な病態
 1.マネジメント
  a)薬物療法(1):バソプレシン,β遮断薬など
  b)薬物療法(2):PPI,ARBなど
  c)バルーンタンポナーデ法(S−Bチューブなど)
  d)栄養療法
 2.特殊な病態
  a)門脈圧亢進症性胃腸症
  b)門脈血栓症
  c)難治性腹水,特発性細菌性腹膜炎(SBP)
  d)肝移植
付録
 付録1:IPH,EHO,Budd−Chiari症候群の診断ガイドライン
 付録2:日本門脈圧亢進症学会の技術認定と技術認定制度
索引

序文

 このたび、日本門脈圧亢進症学会の編集による「門脈圧亢進症診療マニュアル−食道・胃静脈瘤の診かたと治療−」が発刊される運びとなりましたので、編集委員長としてその目的、経緯などをご説明するとともに、一言ご挨拶を申し上げます。
 本書の発刊については、門脈圧亢進症に対する実践的な診療マニュアルを作成することを目指す中で、技術認定と技術認定制度が当学会に導入されたことも契機となり、田尻孝前理事長のもとで検討が開始されました。技術認定制度の目的は「門脈圧亢進症の症状は食道・胃静脈瘤、脾腫・脾機能亢進症、腹水貯留、肝性脳症などさまざまであり、その治療には血行動態など専門的知識が必要とされ、また治療法は内視鏡的治療、IVR、手術療法など多岐にわたる。この日本門脈圧亢進症学会技術認定制度は、各学会の定める専門医制度と異なり、門脈圧亢進症の治療に携わる医師の技術を高い基準にしたがって評価し、専門的に治療を行うに足る所定の基準を満たした者を認定するもので、これにより本邦における門脈圧亢進症に対する治療の健全な普及と進歩を促し、延いては国民の福祉に貢献することを目的とする」ことが明示されています。この目的をよく理解していただいた上で技術認定を受けていただくことも視野に入れて編集された実践的教科書が、今回の「門脈圧亢進症診療マニュアル−食道・胃静脈瘤の診かたと治療−」であると考えています。本書では診療の実際を、病態・診療・診断から治療法の選択、各種の治療法までを各領域の専門家に体系的かつ実践的に解説いたしました。肝疾患の診療に従事するすべての医師に門脈圧亢進症診療の実用書として使用いただければと思います。本学会では門脈圧亢進症の取扱い規約を刊行していますが、本書では取扱い規約の基本的内容を簡潔にまとめた上、より具体的な各種治療の実際について解説を加えました。本書が実臨床の現場で多くの方々に使用いただけることを願っています。
 最後になりましたが本書の企画・執筆にご指導とお力添えをいただいた小原勝敏現理事長、マニュアル作成検討委員会委員の方々、各執筆者ならびに南江堂の関係者各位に感謝の意を表します。

2015年10月吉日
日本門脈圧亢進症学会 マニュアル作成検討委員会委員長
佐田通夫

 この度、日本門脈圧亢進症学会編集の「門脈圧亢進症診療マニュアル」が初めて発刊された。副題に「食道・胃静脈瘤の診かたと治療」とあるように食道・胃静脈瘤出血などの門脈圧亢進症(門亢症)診療の現場で役立つ実践的な内容となっている。本書に先立って「門脈圧亢進症取扱い規約」の初版が1996年に同学会から刊行され、2013年には第3版となって普及している。しかし、取扱い規約は疾患の概念と静脈瘤所見の記述法などについて詳細に解説されているが、治療法の実際については守備範囲外である。より実践的な診療マニュアルの必要性を説いてこられた同学会の小原勝敏理事長の主導で、佐田通夫マニュアル作成検討委員会委員長はじめ多くの委員のご尽力で2年余の時間をかけてこのマニュアルが完成したことは、門亢症診療に関わる一臨床医として大変意義深いと思っている。
 食道・胃静脈瘤出血は、かつて肝不全や肝がんと並び肝硬変患者の3大死因の一つであった。1980年代まで食道・胃静脈瘤出血による死亡をいかに防ぐかが外科においても大きな命題であったが、内視鏡的硬化療法や内視鏡的結紮療法の登場により非手術的な出血のコントロールが多くの症例で可能になった。胃静脈瘤に対してはB-RTOという日本発のIVR技術が登場し、Hassab手術をしなくても治療ができるようになった。また、肝移植が普及して門亢症の原因となる肝硬変そのものを解消する根本的治療が可能となった。このような門亢症治療法の進歩によって食道・胃静脈瘤出血で死亡する肝硬変患者が減っていると推定されるが、これらすべての治療法に精通することも難しい。本書はこの多彩な最新治療を概観することを容易にしている。
 門亢症の病態、診断を概説した第I章に続いて第II章では、最新の治療手技の詳細が現役の第一人者によって分担執筆されている。カラー写真を多用し、シェーマもわかりやすい。第II章冒頭の「消化管静脈瘤治療のストラテジー」では現場で役立つ治療戦略フローチャートが掲載されている。本書のもっとも重要な部分であるため、書籍冒頭のトビラに置いて、本書を開いたらいつでも参照できるようになっていればさらに使いやすくなると感じた。
 本書の企画を知ったとき、なぜ最近はやりの「診療ガイドライン」ではなく「マニュアル」なのか疑問に思っていた。本文によればすでに日本消化器病学会から「肝硬変診療ガイドライン」が、そして日本消化器内視鏡学会から「食道・胃静脈瘤内視鏡治療ガイドライン」が出ていることがわかった。既存のガイドラインとの重複を避け、エビデンスを重視するガイドライン作成にこだわらず「マニュアル」とした慧眼に敬意を表したい。
 本書のもう一つの重要な目的として、2014年からスタートした日本門脈圧亢進症学会技術認定取得のためのテキストという役割がある。この技術認定は内視鏡的治療、IVR、手術療法の3領域に分化したユニークな制度であるが、どの領域の認定を目指す消化器専門医にも役立つように手技の詳細が具体的に図表を駆使して提示されている。
 最後に本書全体をあらためて眺めてみると門亢症の病態生理、診断、治療、特殊静脈瘤など全領域を網羅する形で最新の情報がコンパクトにまとめられていることがわかる。本書を門亢症、肝硬変を診療するすべての内科医、外科医、放射線科医、医療関係者にお勧めしたい。

臨床雑誌内科118巻2号(2016年8月号)より転載
評者●東京大学肝胆膵外科・人工臓器移植外科教授 國土典宏