書籍

冷凍カテーテルアブレーション治療ハンドブック

: 沖重薫
ISBN : 978-4-524-25614-3
発行年月 : 2017年7月
判型 : A5
ページ数 : 140

在庫あり

定価4,536円(本体4,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

不整脈の新たな非薬物療法として注目される冷凍カテーテルアブレーションの実践ハンドブック。本治療法の第一人者である著者により、装置のセッティングからカテーテル挿入のポイント、鎮静方法やマッピングの考えかた、各疾患の治療まで実際の過程に沿ってわかりやすく解説。また、高周波カテーテルアブレーションとの対比や実際の症例を交えながら、手技とその工夫など実践面が学べる内容となっている。これから冷凍カテーテルアブレーションを始める循環器医・不整脈医必携の一冊。

はじめに
第1章 冷凍の物性を理解する
 a 冷凍アブレーションによる組織への影響とは?
 b 心筋組織低温化による電気生理学的変化とは?
第2章 装置のセッティング
 a Umbilicalケーブル接続時のポイント
第3章 バルーンカテーテル挿入に適した心房中隔穿刺のポイント
 a 穿刺のコツと注意点
 b リング状カテーテルの取り扱い
 c バルーンマッサージ
 d FlexCathシースのフラッシュ操作
第4章 鎮静方法
第5章 アイスマッピング
 a アイスマッピングとは?
 b アイスマッピングは信頼できる手法か?
第6章 心房粗動治療の実践
 a 有効な先端電極サイズの選択
 b 伝導ブロック作成のポイント
 c ブロックラインの確認方法
 d 高周波アブレーションと異なる利点
第7章 房室結節回帰頻拍治療の実践
 a 通常型房室結節回帰頻拍の治療法
 b 稀有型房室結節回帰頻拍の治療法
 c 房室結節回帰頻拍に対するアイスマッピング法の落とし穴
 d 房室結節回帰頻拍に対する冷凍アブレーションと高周波アブレーションとの相違点
第8章 WPW症候群治療の実践
 a 副伝導路の離断
 b 具体的なアブレーション方法
 c ケースで学ぶWPW症候群の冷凍アブレーション治療
第9章 ATP感受性心房頻拍治療の実践
 a ケースで学ぶATP感受性心房頻拍の冷凍アブレーション治療
第10章 心室頻拍治療の実践
 a 孤発性心室期外収縮の治療法
 b 持続性心室頻拍の治療法
 c ケースで学ぶベラパミル感受性心室頻拍の冷凍アブレーション治療(1)
 d ケースで学ぶベラパミル感受性心室頻拍の冷凍アブレーション治療(2)
第11章 心房細動治療の実践
 a 術前処置:抗凝固療法
 b アブレーション時に心がける事項
 c 冷凍バルーンカテーテルによる左房天井部線状ブロックライン形成法
 d 冷凍バルーンカテーテルによる左房後壁隔離術
 e 肺静脈電気的隔離術の成功率を向上させる工夫
 f 心房細動の冷凍アブレーションに関する諸問題
 g 冷凍バルーンカテーテルを用いた僧帽弁峡部の横断的離断術
第12章 合併症
 a 肺静脈狭窄
 b 血栓形成
 c 横隔神経傷害
 d 血液生化学的検討
第13章 術後管理とフォロー
 a 術後管理の考え方
 b 経過観察,外来フォロー
第14章 冷凍カテーテルアブレーションの臨床成績
索引

序文

 2014年7月に、わが国で冷凍カテーテルアブレーションシステムが臨床導入されてから早3年が経過しようとしております。当院では、主に心房細動を含め1,000例近い症例に対して冷凍カテーテルアブレーションシステムを適用してまいりました。使用当初は多くの論文を参考にしながら手探り状態で始めたこの技術も、症例を重ねるたびに問題点が焙り出されて、その都度克服すべく工夫してまいりました。高周波エネルギーとは異なる冷凍システムの特異性を理解し、長所および短所を十分把握して駆使すれば、非常に有用性の高いアブレーション治療システムであると考えます。
 そこで本書では、これまでの筆者の経験を踏まえ、装置のセッティングからカテーテル挿入、鎮静方法、各疾患の具体的治療法、術後のフォローまでを実践的に解説いたしました。また、実際の症例も取り上げつつ、筆者が考える注意点や工夫(ワンポイントアドバイス)もできる限り盛り込んでおります。
 これから冷凍カテーテルアブレーション治療を始める専門医は勿論、ある程度経験を積まれた専門医にとりましても、より安全かつ有効に本システムを利用していただきたいと願いつつ、さらには本システムが本邦で健全な普及がなされることを祈りつつ本書を上梓いたします。

2017年7月
沖重薫

 カテーテルアブレーションとは、心臓のなか(一部外壁に存在することもあるが)に存在する不整脈の原因部位に対して、カテーテルを用いてそれを破壊する根治治療のことを指す。カテーテル先端から高周波電流を流して心筋の限局した領域(1回の通電で直径5mm程度)を加熱変性させる方法が現在の主流であり、簡単に言えば「心筋を焼いて不整脈を治す」という方法になる。
 一方で、それとは対極的な治療方法として1990年代後半から開始されたのが冷凍カテーテルアブレーション法であり、焼灼するのではなく冷凍凝固させて不整脈を根治する。冷凍カテーテルアブレーションが世界的に広く普及することになったのは、クライオバルーンアブレーションによる肺静脈隔離の普及によるところが大きい。これはバルーンを肺静脈入口部に押し当てて閉塞させ、接触した円周上をワンショットで冷凍凝固壊死させるデバイスであり、その効果の高さと技術的ハードルの低さから短期間で世界中に普及しつつある。しかし、現在のところ冷凍アブレーションの原理や特性に関しては、ほとんどの術者が十分な知識をもたずに単なる道具として冷凍アブレーションを使用しているのが実情と言える。冷凍凝固の基礎知識を臨床使用と絡めてわかりやすく解説するガイドブックの刊行を(筆者を含めて)多くの術者が待ち望んでいるところであった。
 本書は冷凍アブレーションの開発当初から深く関わってきた沖重薫博士による冷凍カテーテルアブレーションに関する画期的な著書である。博士は高周波アブレーションの黎明期からその発展に寄与してきたプロフェッショナルとして広く知られている方であるが、冷凍カテーテルアブレーションに関してもわが国に導入されるはるか以前より動物実験などを含めて多くの経験を有している専門家である。本書では肺静脈隔離に限らず、上室性および心室性不整脈に対する冷凍カテーテルアブレーションに関して多くの実際的な治療法に頁が割かれている。とくに注目すべきは冷凍カテーテルアブレーションの原理に関する記述であり、冷凍させる際の温度低下速度がアブレーション効果に大きく関わることなど、知っているかどうかによって治療効果が大きく変わってしまいかねない情報が披露されている。
 さらにまた本書では、冷凍アブレーション法の際の凝固活性に関する記載もされている。「低温を繰り返しても凝固能に変化はないが、低温後に加温刺激を介在させると凝固能がさらに亢進して、かつその亢進状況が遷延する結果であった」、との記載は冷凍アブレーション術者にとって非常に重要な意味をもっているが、これを知っている術者が実際にはどのくらい存在するであろうか? まさに一歩上のレベルの冷凍アブレーションを行うために書かれたかつてない画期的なハンドブックといえるであろう。そして本書はA5判というコンパクトなサイズに豊富な情報が詰まったハンドブックであり、冷凍アブレーションの初級者からベテランまで幅広く、カテーテル室に常備して役立てていただきたい上本と言って過言ではない。
 冷凍アブレーションを単に道具として使うだけでなく、その原理にまで踏み込み、より安全かつ有効な治療につなげようという博士の知識と洞察力の深さに心から感銘を受け、敬意を込めて本書を推薦させていただく。

臨床雑誌内科121巻5号(2018年5月号)より転載
評者●東京慈恵会医科大学循環器内科教授 山根禎一