書籍

ゼロから始めて一冊でわかる!みんなのEBMと臨床研究

: 神田善伸
ISBN : 978-4-524-25548-1
発行年月 : 2016年10月
判型 : B5
ページ数 : 218

在庫あり

定価3,960円(本体3,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

新『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針』に対応した、EBM・臨床研究の新しい入門書。長年診療に携わってきた著者が、“臨床医の視点”からEBMの基本を実践的かつやさしく解説。EBMの考え方と臨床研究の基礎的事項から論文発表までをこの一冊でマスターできる。これから臨床研究を学ぶ医師・臨床研究スタッフ必読の一冊!

本書の到達目標
第1部 EBMの実践エビデンスを読んで診療に役立てよう
 [A]EBMってどういうもの?
  1 完全情報ゲームと不完全情報ゲーム 人生は?診療は?
  2 不完全情報ゲーム 曖昧さの中での決断を!
  3 EBMの誕生 Scientific medicine
  4 EBMってどういうものなの? ベテラン医の経験は役に立たないの?
  5 EBMはガイドラインを遵守した診療のこと?
  6 エビデンスってなに? 無作為割付比較試験の結果のこと?
  7 EBMってどうやってやるの? EBMの5つのステップ
 [B]EBMステップ1:クリニカルクエスチョンへの変換
  1 クリニカルクエスチョンってなに? PICOとPECO
  2 クリニカルクエスチョンにはどんな種類があるの?
 [C]EBMステップ2:エビデンスの収集
  1 エビデンスはどうやって検索するの?
  2 PubMedってなに?
  3 PubMedはどうやって使えばいいの? キーワードの入力
  4 MeSH用語ってなに?
  5 PubMedはどうやって使えばいいの? 文献の絞り込み
 [D]EBMステップ3:批判的吟味
  1 批判的吟味ってなに?
 [E]EBMステップ4:エビデンスの患者さんへの適用
  1 エビデンスを患者さんに適用する際にはなにに気をつければいいの?
 [F]批判的吟味のために−医学統計の基礎知識−
  1 母集団とサンプルってどういうこと? その前に統計解析ってなに?
  2 データにはどんな種類があるの?
  3 中央値ってなに?信頼区間ってなに? データを要約するための数値
  4 生存解析ってなに?Kaplan-Meier曲線ってなに?
  5 2つの群を比較するにはどうすればいいの?そもそもP値ってなに?
  6 検定にはどのような方法があるの?実際の検定方法と,その前提
  7 有意差がついていれば重要な結果なの?有意差がなければ同等なの?
  8 エフェクトサイズってなに? 相対危険度,寄与危険度,オッズ比,ハザード比?
  9 多重比較の問題ってなに?
  10 多重比較は実際にどういうときに問題になるの?
  11 相関関係があれば因果関係があるといっていい?
  12 診断のための検査の有用性はどのようにして評価するの?−定性検査の場合−
  13 診断のための検査の有用性はどのようにして評価するの?−定量検査の場合−
  14 2つの定性検査結果が一致しているかどうかはどうやって判定するの?
  15 2つの連続変数の相関はどうやって評価するの?
 [G]批判的吟味のために−臨床研究の基礎知識−
  1 臨床研究にはどういう種類があるの? 臨床研究?臨床試験?治験?
  2 介入研究にはどのようなデザインの研究があるの?
  3 試験の「相」の意味は? 第I相試験,第II相試験ってどういう試験?
  4 非劣性試験ってなに?
  5 非劣性試験の非劣性マージン(δ)はどうやって決めるの?
  6 観察研究にはどのようなデザインの研究があるの?
  7 バイアスってなに?
  8 選択バイアスってなに?
  9 情報バイアスってなに?
  10 交絡ってなに? 交互作用も同じ意味?
  11 その他のバイアスは? 症例減少バイアス,出版バイアス
  12 バイアスを小さくするためにはどのような方法があるの?
  13 メタアナリシスの結果は信頼性が最も高いの?
  14 批判的吟味の第一歩は研究デザインの確認コホート研究と無作為割付比較試験を読むときの違いは?
  15 観察研究の文献を批判的吟味する際の注意点は?
  16 無作為割付比較試験ならバイアスの心配はないの?
  17 メタアナリシスの文献を批判的吟味する際の注意点は?
  18 診断の文献を批判的吟味する際の注意点は?
第2部 臨床研究に挑戦しよう
 [A]臨床研究のテーマの決定
  1 臨床研究のテーマはどうやって決めるの? そもそも,なんで研究するの?
  2 FINERによる臨床研究のテーマの評価 この研究って重要?
  3 臨床研究のテーマの重要性は簡単に判断できるの?
  4 エビデンスをすらすらと話す先輩が格好いい.どうしたらそうなれるの?
 [B]臨床研究をデザインしよう!
  1 テーマは決まった.次はどうするの? まず,臨床研究の骨組みを固めよう
  2 対象患者の設定 狭いほうがいい?広いほうがいい?
  3 臨床試験の症例数の設定 多ければ多いほどいいの?
  4 臨床研究の主要評価項目ってなに? 評価項目はいくつあってもいいの?
  5 臨床研究の主要評価項目はどのような項目がいいの?
  6 評価する項目はなるべく多く設定しておけばいいの?
  7 研究デザインはどのようにして選べばいいの?すぐに無作為割付比較試験でOK?
  8 前方視的臨床試験をやってみたい 必ず最初は第I相試験から?
  9 後方視的コホート研究をやってみたい すぐにカルテをチェックすればいいの?
  10 多変量解析ってなに?どうやるの?
  11 多変量解析の独立変数はどうやって選ぶの?
  12 中間因子ってなに?解析に入れてもいいの?
  13 連続変数のまま扱う?カテゴリー化する?閾値は有意差のつくところでいいの?
  14 ダミー変数ってなに?
  15 マッチングってどうやるの?
  16 傾向スコアってなに?
  17 無作為割付比較試験のデザイン クロスオーバー試験,要因試験ってなに?
  18 無作為割り付けの方法は? 封筒法でいいの?
  19 ブロック割り付けというのはどういう方法?
  20 盲検化はどのように行うの?
  21 プロトコール通りの治療が行われなかった患者さんの扱いは?ITT,FAS,PPS,どれがいいの?
  22 モニタリングと監査ってなに?
  23 臨床研究データの回収はどうすればいいの?
  24 回収した臨床研究データを解析に使用できるようにするにはどうすればいいの?
  25 欠損値,外れ値はどうすればいいの?
  26 中間解析ってなに?早く結果が知りたければ途中で解析してもいいの?
  27 症例が集まらない 試験の途中で選択基準,除外基準を変更してもいいの?
  28 GCPってなに?ICHってなに?
  29 CRO ?SMO ?CRA?CRC ? 略語がよくわからない
  30 研究費はどうすれば獲得できるの?
 [C]新しい倫理指針をしっかりと理解しよう!
  1 どうして倫理指針が必要なの?
  2「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」はどんな研究に適用されるの?
  3 研究者に求められる責務は?
  4 研究責任者に求められる責務は? (1)研究の開始前に必要なこと
  5 研究責任者に求められる責務は? (2)健康被害に対する補償は必要なの?
  6 研究責任者に求められる責務は? (3)研究の実施中,終了後に必要なこと
  7 研究計画書にはどんなことを書けばいいの?
  8 研究計画書を作ったらどんな手続きが必要?
  9 臨床試験登録ってなに?
  10 インフォームド・コンセントは必ず書面での同意が必要なの?
  11 後方視的研究での同意の取り扱いは?オプトアウトってどうすればいいの?
  12 説明同意文書にはどんなことを書けばいいの?
  13 本人以外の代理の人からインフォームド・コンセントを受けてもいいの?
  14 インフォームド・アセントってなに?
  15 個人情報保護についての注意事項は?
  16 匿名化ってどうやるの?
  17 重篤な有害事象にはどのように対応したらいいの?
  18 利益相反ってなに?どのように管理すればいいの?
  19 研究データはいつまで保管すればいいの?
  20 侵襲と介入の定義は?
 [D]新倫理指針に沿って研究計画書を書いてみよう!
  【研究計画書を書いてみよう!】 (1)表紙,目次,研究概要
  【研究計画書を書いてみよう!】 (2)研究の背景,(3)研究の目的と必要性
  【研究計画書を書いてみよう!】 (4)研究対象者
  【研究計画書を書いてみよう!】 (5)説明,同意取得の方法
  【研究計画書を書いてみよう!】 (6)研究の方法
  【研究計画書を書いてみよう!】 (7)評価項目,(8)観察および検査項目
  【研究計画書を書いてみよう!】 (9)中止基準
  【研究計画書を書いてみよう!】 (10)被験者に予測される利益,不利益
  【研究計画書を書いてみよう!】 (11)有害事象発生時の対応
  【研究計画書を書いてみよう!】 (12)研究の終了,中止,中断
  【研究計画書を書いてみよう!】 (13)研究実施期間,目標症例数とその設定根拠,(14)解析対象
  【研究計画書を書いてみよう!】 (15)モニタリングと監査
  【研究計画書を書いてみよう!】 (16)研究対象者の人権に対する配慮,(17)費用負担,健康被害の補償
  【研究計画書を書いてみよう!】 (18)倫理に対する配慮,(19)研究の資金源と利益相反
  【研究計画書を書いてみよう!】 (20)試料,記録文書などの保存,(21)研究の登録,研究結果の公表
  【研究計画書を書いてみよう!】 (22)研究組織,(23)研究計画書の変更,(24)研究対象者および関係者からの相談への対応,(25)参考文献,参考資料
 [E]論文を書いてみよう!
  ●英語が苦手?
  【論文を書いてみよう!】 (1)Introduction
  【論文を書いてみよう!】 (2)Patients and Methods
  【論文を書いてみよう!】 (3)Results
  【論文を書いてみよう!】 (4)Discussion
  【論文を書いてみよう!】 (5)図表の作成
  【論文を書いてみよう!】 (6)その他の部分
  ●投稿した論文の流れと修正(revise)
  ●論文執筆のためのツール EndNoteってなに?
臨床試験用語集
索引

序文

 本書は科学的な診療の実践を目的とした前半部分と、そこで得た知識を臨床研究に発展させていく後半部分で構成されています。想定した読者層は医師だけでなく、看護師、薬剤師、CRC(臨床研究コーディネーター)など、診療や臨床研究に関わるすべてのスタッフの人たちに理解しやすいように記載したつもりです。
 とはいえ、私は臨床研究を専門としているわけではなく、本来の姿は血液内科の臨床医です。内科の初期研修を終えて入局した東京大学第三内科は分子生物学の研究が盛んな教室で、私も大学院生として白血病の分子病態の研究に着手したのですが、大学院の途中(大学卒業後4年目)で骨髄移植を学ぶために都立駒込病院の血液内科で半年間研修させていただきました。その半年の間に「科学的な診療」と「臨床研究」に触れることができました。まだ、国内ではEBMという言葉もほとんど知られていなかった時代で、臨床研究の論文を詳細に読み解きながら診療に活かしていく体験は新鮮でした。そして、このときに教わったのが、日常診療における一つ一つの決断について「なぜそうするのか?」と聞かれたら、科学的な根拠を持って回答できなければならないということです。その回答は必ずしも「この研究において、こちらがより優れていたので選択した」というような明確なものとは限らず、「過去のデータをみてもどちらが明らかに優れているということはなさそうなので、自分が慣れている方法を選んだ」というような回答でもかまいません。とにかく、しっかりと合理的な理由を説明できるような決断をしなければならないということです。そして、都立駒込病院では臨床研究にも携わらせていただきました。その成果が国際専門誌に掲載されたときの喜びはその後の臨床研究を進めていく原動力となり、ずっと地道な臨床研究活動を続けてきました。本書を発刊するにあたり、2016年7月までに国際専門誌に私が発表した327編(共著を含む)の英文論文の内訳を調べてみました。すると、症例報告69編、基礎研究28編、その他(総説など)7編を除く223編が臨床研究の論文でした。このなかでも後方視的研究が編と大半を占めており、前方視的研究は無作為割付比較試験4編を含む33編でした。残りの10編がメタアナリシスや臨床決断分析などのデータの二次利用の研究です。それぞれの論文のタイトルを見ただけでも、当時の苦労や研究を通じて学んだこと、そして研究の成果が現在の診療にどのように反映されているかが瞬時に頭に浮かびます。
 ですので、今、自治医科大学の血液科グループでは若手医師にも早い段階(後期研修の1〜2年目)から臨床研究(まずは後方視的研究)を体験してもらうようにしています。彼ら、彼女らが自分の研究を英文論文として発表し、それが明日の世界の診療のために役立っていくという喜びを味わっています。そして、それは次の研究の励みとなっていくことでしょう。とはいってもEBMも臨床研究も、入り口は診療現場のクリニカルクエスチョンです。まずはクリニカルクエスチョンから診療現場での決断までの過程を、本書の前半部分で学んでいただきたいと思います。
 さて、近年、日本国内でさまざまな臨床研究不正の問題が発覚し、臨床研究の信頼性を高めるための努力が求められています。2015年4月には新しい倫理指針が施行され、侵襲を伴う介入試験にはモニタリングを必須化するなどの信頼性向上のための試みが始まりました。この変化は、研究者にとっては臨床研究を実施するうえでの障壁となっていますが、信頼性を確保するためには避けられない壁です。その壁は、現状では臨床研究を実施する「力」が不足している(臨床研究の知識・経験の面で、あるいは投入できる研究費の面で、など)研究者をはじき出す役割を果たそうとしています。確かに信頼性を確保するためには即効性の高い方法でしょう。しかし、このままでは研究者の研究意欲は低下し、日本の臨床研究は縮小の一途をたどっていきそうです。一部では臨床研究の信頼性確保の業務をビジネスチャンスととらえるような風潮さえあり、臨床研究実施のための費用が高騰しています。
 そのような状況のなかで、本書の目的はその壁を乗り越えるための「力」を高めることです。研究者の「力」だけではなく、研究者をサポートするさまざまな職種の皆様の「力」も高めて、その高まった「力」を合わせることによって、独力ではよじ登ることができない高い壁を軽々と跳び越えられるようになること、それが私の理想です。本書が多くの人々の科学的な診療と臨床研究を進めるための知識を底上げする役割を果たしてくれればうれしく思います。

2016年8月
自治医科大学附属病院血液科・附属さいたま医療センター血液科教授
臨床研究支援センター長
神田善伸

 本書はevidence-based medicine(EBM)の考え方、患者への適用の仕方から、臨床研究の組み立て方まで、非常に広範な領域が網羅されている。そのうえ平易な言葉で記載され、医学生・研修医のみならず、メディカルスタッフにとっても読みやすい書物となっている。本書の構成は、前半がEBM、後半が臨床研究となっているが、この両者は当然のごとく深く関連づけられている。EBMの知識は臨床研究を組み立てるうえできわめて有用であり、実施した臨床研究の結果が新たなエビデンスとなるとともに、研究者のEBMの知識に実践的な深みを与えるようになるという点で、車の両輪のようなものである。この二つを結び付けて1冊の書物として上梓した著者の慧眼に感服するとともに、その狙いをしっかりと結実させた努力に敬意を表したい。
 前半では「EBMの基礎」ともいうべき「EBMとは何か」、「どのようにデータを集めるのか」、「どのように患者さんに適用するのか」ということを、Q&A形式で非常にわかりやすく端的にまとめてある。その中ではPubMedやMeSH用語など、医師以外には少し馴染みの薄い言葉に関しても、理解しやすくまとめてある。そこから話は統計にすすみ、生存率やp値の意味、相関、さらには種々のバイアスや多重比較の問題にまで触れている。この辺までくると、少しばかり統計ができると自覚する医師にとっても、十分に読み応えのある内容となっており、一通り統計の基礎は勉強したと思う医師にも、ぜひ一度本書を手にとっていただきたいと思う。数項目の解説ごとに「自分でやってみよう」と題した演習が組み込まれており、内容の理解に対するセルフチェックとして有用である。
 本書で特筆すべきは、後半の内容である。「やさしいEBMの本」や「やさしい統計の本」はこれまでもあったと思うが、「やさしい臨床研究の計画法」というものはほとんど存在しなかったと思われる。後半の内容も「なぜ臨床研究を行うのか」、「何に注意して研究テーマを選ぶべきか」、「どのような研究デザインを選ぶべきか」、「必要症例数の設定はどうするのか」など、おそらく最初に初学者が考えなければならないことを、前半と同様にQ&A形式でわかりやすく述べている。その後には、傾向スコアやブロック割り付け、intention-to-treat(ITT)解析とfull analysis set(FAS)解析など、経験の豊富な医師にも読んでほしい内容が書かれており、さらには倫理指針にまで触れている。巻末には臨床試験の用語集がまとめてあり、より専門的な本にいたるまでの入門書としてもたいへん優れたものとなっている。
 本書は、高度な内容を平易な言葉と卓越した構成で読みやすくまとめた良書である。タイトルに「みんなの」とつけたことに、医学・医療にかかわるすべての人に届けたいという著者の意気込みが感じられる。著者が統計やEBMの専門家ではなく臨床医であることも、本書が理解しやすい内容になっている理由の一つであろうと思われる。医師・医学生・看護師・薬剤師・治験コーディネータなど業種を問わず、多くの医療人に本書を手にとっていただきたい。

胸部外科70巻3号(2017年3月号)より転載
評者●東北医科薬科大学光学診療部教授 佐川元保

 著者の神田善伸先生は血液病学の大家なのですが、本誌の読者にはフリー統計ソフトRの解説書[『初心者でもすぐにできるフリー統計ソフトEZR(Easy R)で誰でも簡単統計解析』、南江堂]のほうでご存知という人が多いと思います。本書は、性格が温厚かつ切れ味抜群な神田先生渾身の一冊です(お名前の読みがなは、筆者と同じ「よしのぶ」です)。
 Evidence-based medicine(EBM)という言葉がない時代から、われわれ臨床医は何かしらの根拠をもとに診療を行ってきました。その根拠の情報源は、peer reviewされて掲載された論文、権威者の書いたpeer reviewされていない総説や教科書、身近な先輩の恐ろしい、あるいは素晴らしい経験とアドバイス、同僚の失敗談、学会や研究会でたまたま聴講した発表・討論などでした。どの情報も重要なのですが、十分に信頼に足るとはいいがたいものでした。というよりは、信頼に足るのか、信頼に足らないのかがわからないという状況でした。そこで、登場してきたのがEBMの手法です。
 「根拠に基づく医療」と翻訳されますが、EBMはいまだに誤解されている面もあります。その真の姿は、個々の患者がかかえる問題を解決することからスタートするものであり、診療ガイドラインを作制し、その推奨をすべての患者さんに適応することを求める医療のことでは決してありません。EBMとは「一人一人の患者さんの診療を行うにあたって、現時点での最良のエビデンスを良心的に、明示的に、かつ賢明に用いること」であり、「個々の医師の経験に基づく臨床技能(clinical expertise)と、臨床研究によって築かれたエビデンスを統合する手法」です(本書より)。McMasters大学(カナダ)がEBMの総本山です。外傷整形外科医ならMohit Bhandari先生の論文を1編も読んだことがないという人は、まずいないでしょう。
 EBMを実践するステップは5つあります。目の前にいる患者さんの治療上の問題点を把握し(ステップ1)、その問題を解決するのに有用であると考える論文を集め(ステップ2)、その論文を読んで理解し、そこから本当に役に立つ根拠のある治療法を抽出し(ステップ3)、さらにその治療法を目の前にいる患者さんに本当に適用してよいのかを吟味する(ステップ4)。そして適用した治療法で本当によかったのかどうかを振り返る(ステップ5)。少し考えると、この手法は、EBM以前の時代からわれわれが自然に行っていた論理思考プロセスと、実は大きな違いはないのです。これをシステマティックに実践する方法論を提示したところが、Guyatt先生とその師匠であるSackett先生の功績です。
 この5つのステップを実践するためには、勉強しなければならないことがたくさんあります。勉強する必要もない簡単な手法なら、わざわざEBMなんていう言葉は不要であったわけですから。でも心配は無用です。本書では、そのすべてについて初心者にもわかりやすいように解説されています(何せ、「ゼロから始めて一冊でわかる!」のですから)。多くは臨床研究にかかわる勉強です。若い先生たちには論文をどうやって検索するのか、どう読むのか、そして臨床研究をどう行うのかなどがコンパクトに記載されており、とっても役立つと思います。みなさんが(たぶん)苦手な統計・検定の話も出てきますが、必要最小限の知識がわかりやすく説明されています。フリー統計ソフトRを併用した解説も多く、このあたりはかなり実践的です。
 ちなみに、以下の言葉や用語の意味がおおざっぱにでも説明できないという人には、一読をオススメいたします。

臨床雑誌整形外科68巻3号(2017年3月号)より転載
評者●帝京大学整形外科教授 渡部欣忍

9784524255481