書籍

間質性肺炎合併肺癌に関するステートメント

  • 新刊

編集 : 日本呼吸器学会腫瘍学術部会・びまん性肺疾患学術部会
ISBN : 978-4-524-25536-8
発行年月 : 2017年10月
判型 : A4変型
ページ数 : 126

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本呼吸器学会の腫瘍学術部会・びまん性肺疾患学術部会合同編集によるステートメント。間質性肺炎合併肺癌は、肺がん患者の10〜20人に1人と言われており、化学療法や放射線治療において急性増悪をきたす場合があることが知られているが、エビデンスはいまだ乏しい。本書では、本疾患について「これまでにわかっていること」と「これまで不明であり、今後あきらかにすべきこと」を整理し、臨床実践のための指針を示す。本疾患のエビデンス構築、診療ガイドライン作成へ向けて、現在地を知る意味でも呼吸器科医には押さえておきたい一冊。

第I章 間質性肺炎および肺癌の分類
 1.間質性肺炎の臨床・病理・画像分類
 2.肺癌の病理分類
第II章 分子生物学的にみた間質性肺炎および肺癌
第III章 間質性肺炎合併肺癌の臨床像
 1.疫学
 2.抗癌剤による薬剤性肺炎の人種差
 コラム:肺癌薬物療法に関する臨床試験における間質性肺炎の取り扱い
第IV章 間質性肺炎合併肺癌の診断
 1.バイオマーカー
 2.画像診断
第V章 間質性肺炎合併肺癌の治療
 1.間質性肺炎合併肺癌の薬物療法
 2.間質性肺炎急性増悪の診断と増悪予測因子
 3.間質性肺炎急性増悪時の対応
 4.化学療法による間質性肺炎への影響とその対策
  a)間質性肺炎を伴う肺非小細胞癌に対する化学療法の選択
  b)間質性肺炎を伴う肺小細胞癌に対する化学療法の選択
  c)各薬剤における間質性肺炎への影響とその対策
 5.分子標的治療薬による間質性肺炎への影響とその対策
  a)間質性肺炎を伴うdriver oncogene陽性肺癌に対する分子標的治療薬の選択
  b)小分子化合物による間質性肺炎への影響とその対策
  c)モノクローナル抗体による間質性肺炎への影響とその対策
 6.免疫チェックポイント阻害薬による間質性肺炎への影響とその対策
 7.放射線治療による間質性肺炎への影響とその対策
  a)放射線化学療法における放射線肺炎(特に間質性肺炎合併症例において)
  b)定位放射線治療後の放射線肺炎(特に間質性肺炎合併症例において)−放射線肺炎の基礎知識を含めて
第VI章 気腫合併肺線維症(CPFE)と肺癌
 コラム:アスベストと肺癌
索引



To treat or not to treat
 間質性肺炎の多数を占める特発性間質性肺炎、特に特発性肺線維症は経過中に急性増悪を合併し致死的な状態になることがあり、生存期間中央値が約3.5年であることを考えると臨床経過は悪性であると言わざるを得ません。一方で、間質性肺炎合併肺癌はほとんどの抗癌剤開発臨床試験から除外されており、エビデンスに乏しい領域です。何もしなければ死を迎える状況で、危険性はあるが生存期間の延長を求めて治療選択するか、何もしないで死を迎えるか、患者自身にとって自分の命と人生観をかけた究極の選択となることもあります。

Who treats patients with advanced/metastatic lung cancer?
 ある米国のがんセンター医師に「米国では間質性肺炎合併肺癌の治療をどうしているのか?」と尋ねたことがあります。彼は「米国で間質性肺炎合併肺癌はほとんどみかけない」と答えていました。一方で、別の米国呼吸器内科医師に聞くと、「間質性肺炎合併肺癌はある一定の頻度で経験しており対応に困る」とのことでした。このときにはっと気がついたのですが、このような見解の相違は米国の診療体制に起因するのではないかということです。日本では呼吸器内科医が診断・治療・緩和ケアまで一貫して対応することが多いですが、米国では肺癌の診断までは呼吸器内科医が、治療はmedical oncologistが行うそうです。化学療法の対象になりにくい間質性肺炎合併肺癌患者は米国のmedical oncologistには紹介されないのかもしれません。実際に米国の肺癌の診療ガイドライン(NCCN・ASCO)には間質性肺炎合併肺癌の対応についての記載は一切なく、間質性肺炎合併肺癌は問題として認識されていない可能性があります。本領域は、肺癌の10.20%に存在する間質性肺炎合併肺癌を自ら診断し、常に困難に直面している日本の呼吸器内科医師によってエビデンスを構築していくべき分野だと考えております。

Establishment of the statement
 2015年の学術部会で九州大学中西洋一先生から、間質性肺炎合併肺癌のステータスステートメントを日本呼吸器学会腫瘍学術部会を中心に出すことが提案され、同学会びまん性肺疾患学術部会に応援を求めて快諾を得たあと、同年12月末に理事会でも承認されました。2016年3月30日には第1回全体編集委員会が開催され、日本呼吸器学会腫瘍学術部会とびまん性肺疾患学術部会が主体で行い、編集委員会には厚生労働省のびまん性肺疾患に関する調査研究班に加わっていただくことを確認しました。研究班では、2017年2月に『特発性肺線維症の治療ガイドライン2017』を発行して、そのなかで間質性肺炎合併肺癌の内科・外科治療のクリニカルクエスチョンも取り扱っており、そちらとの整合性を保ちました。
 当初は肺癌診療のガイドラインでカバーできていない部分を補うつもりでしたが、エビデンスとなる無作為化比較対照試験が乏しいためステートメントという形でまとめることとなりました。近年、特発性間質性肺炎に対する有力な薬剤が相次いで開発されており、間質性肺炎合併肺癌は今後の展開が大いに期待される領域と思われます。エビデンスの乏しい領域で、治療を行うべきかどうか、治療を行うならどのように治療するのかという困難な選択を迫られる呼吸器内科医師・臨床医・医療従事者と患者の皆様にとって本ステートメントがその一助となり、今後のガイドライン作成に向けた礎になれば幸いです。

2017年9月
岡山大学病院呼吸器・アレルギー内科
木浦勝行
神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科
小倉志