書籍

外科系医師が知っておくべき創傷治療のすべて

  • 新刊

監修 : 一般社団法人日本創傷外科学会
編集 : 鈴木茂彦/寺師浩人
ISBN : 978-4-524-25486-6
発行年月 : 2017年4月
判型 : B5
ページ数 : 310

在庫あり

定価10,800円(本体10,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

創傷外科治療、いわゆる「けが」「キズ」「キズあと」の治し方に関する知識・技術は形成外科医だけでなく、外科領域を中心として医師に広く求められる。近年では生体反応のメカニズムや環境・力学的要因など基礎面でもアップデートがみられ、臨床医は最新の情報にふれておく必要がある。創傷外科治療のエキスパートである創傷外科専門医の基本的な考え方、縫合技術、創処置技術について解説し、創傷外科専門医を目指す形成外科医や外科系医師のみならず、一般開業医、在宅医療に従事する医師にも役立つ一冊。

I.外科系医師が知っておくべき創傷治療の基本
 A.創傷とは
  1.創傷の定義ならびに急性創傷と慢性創傷の違い
  2.急性創傷
  3.慢性創傷
 B.創傷治癒の原理と考え方
  1.創傷治癒の原理
   1)創傷治癒の基礎−上皮化まで
   2)創傷治癒の必須条件
   3)瘢痕の成熟過程
  2.急性創傷の治癒過程
   1)分層皮膚欠損創の治癒過程
   2)全層皮膚欠損創の治癒過程
   3)瘢痕の肥厚と炎症の遷延化
  3.慢性創傷の病態
   1)慢性化する原因
   2)TIME理論とwound bed preparation
 C.創傷外科治療における基本的考え
  1.院内感染対策
  2.縫合の基本手技
  3.保存治療
   1)総論
   2)局所陰圧閉鎖療法(洗浄型を含む)
II.急性創傷治療の実際
 A.外傷の初期治療
  1.顔面外傷の診断と初期治療
   1)軟部組織損傷
   2)骨折を伴っている場合
  2.手の外傷−診断と初期治療
   1)皮膚,皮下のみの場合
   2)深部組織まで及ぶ場合の初期対応
   3)切断肢(指)の初期対応
  3.手以外の四肢の外傷
   1)軟部組織のみの損傷
   2)骨折を伴う場合の初期対応
 B.熱傷
  1.深さ,面積の診断
  2.初期治療
   1)冷却,減張切開などの初期対応
   2)広範囲熱傷全身初期治療
  3.局所治療
   1)保存的治療
   2)植皮手術の適応について
   3)特殊な部位の熱傷
 C.手術創
  1.開腹,開胸手術後の縫合法
  2.トラブルの原因と対策
  3.瘻孔化,潰瘍化創の部位別治療
   1)胸壁
   2)腹壁,会陰部
   3)頭頸部
   4)頭蓋
   5)四肢関節部
   6)リンパ浮腫
 D.急性感染症
III.慢性創傷治療の実際
 A.褥瘡−診断と治療のエッセンス
  1.褥瘡の成因と予防法
  2.褥瘡の局所治療
  3.褥瘡の手術治療
 B.下腿潰瘍−診断と治療のエッセンス
  1.下腿潰瘍の分類
  2.虚血性足潰瘍
  3.糖尿病性足潰瘍
  4.静脈うっ滞性潰瘍
 C.その他の難治性潰瘍(慢性放射線潰瘍,膠原病に伴う潰瘍)の治療
 D.再生医療の応用
IV.瘢痕治療の実際
 A.ケロイドと肥厚性瘢痕,瘢痕拘縮の診断
 B.ケロイド治療
 C.肥厚性瘢痕治療
 D.瘢痕拘縮治療
索引

序文

 日本創傷外科学会は日本形成外科学会員を主なメンバーとして、2008年に設立された比較的新しい学会です。瘢痕(キズあと)が目立たないようきれいに治すのが本業の形成外科医が、ありふれた疾患でもある創傷(キズ)に正面から向かい合い、創傷を早くきれいに治すことを目的として設立されました。創傷を早くきれいに治すには創傷治癒メカニズムを知ること、創傷の正しい診断と評価を行うこと、適切な創傷治療法を選択することが基本です。日本創傷外科学会はこの基本知識の理解のもとで、熱傷、外傷などの急性創傷や褥瘡、下腿潰瘍などの慢性創傷、ケロイドや肥厚性瘢痕、瘢痕拘縮などの創傷の後遺症、これら創傷のすべてを基礎から臨床まで幅広くかつ奥深く精通している創傷の診断と治療のスペシャリストを育て、かつスペシャリスト同士の情報交換を通じて創傷や瘢痕の病態のさらなる解明と治療成績の向上を図って活動してまいりました。
 この日本創傷外科学会が設立されて間もなく10年になろうとしていますが、これまでに積み重ねられた成果を、国民に還元し社会に貢献するために、創傷治療の現場を担っている外科系医師に知っていただきたい創傷治療のすべてをわかりやすく伝える目的で、本書を企画いたしました。タイトルは外科系医師と記しましたが、外科系医師に限らず創傷治療にかかわるすべての医師やWOCナースその他関係者にも知っていただきたい内容です。
 具体的には、創傷の定義から始まり、急性創傷と慢性創傷の違い、創傷治癒の原理、創傷治療の考え方、縫合法、保存的治療など創傷治療の基本を最初に述べています。続いて、急性創傷治療の実践として顔面外傷や手、四肢など頻度が高く専門的知識を有する部位の外傷の診断と治療の実際および熱傷の診断と治療を述べています。外科系医師に関係する手術創については多くのページを使い、トラブルの原因や対処を部位別に詳述しました。慢性創傷としては褥瘡や下腿潰瘍その他の難治性潰瘍の診断と治療のエッセンスを述べているほか、再生医療の応用についても述べています。肥厚性瘢痕、ケロイド、瘢痕拘縮などの診断と治療の実際もそれぞれのスペシャリストが解説いたしました。
 基礎的な理論から、臨床上の細かい工夫まで創傷治療に関する最新の知見をすべてこの一冊で網羅していますので、本書をお読みいただくことで、皆様の創傷治療成績が上がることを願っています。

鈴木茂彦
寺師浩人

 外科医にとっては、切った皮膚の傷が治るのは当然のこととこれまで考えてきた。血流さえあり、きちんと傷が縫い合わされていれば治るのが当たり前で、縫って7日すれば抜糸を行うのが常識であった。本書はこんな外科医の常識に釘を刺す一冊である。
 本書は、全章が形成外科医によって書かれている。創傷をいかに綺麗に治すか、創傷治療の専門家の形成外科医たちが書いた一冊である。本書の内容は、創傷の定義から始まり、急性創傷と慢性創傷の違い、創傷治癒の原理、創傷治療の考え方、縫合法、保存的治療など創傷治癒の基本を最初に述べ、続いて急性創傷治癒の実際として顔面外傷や手、四肢など頻度が高く、専門的知識を有する部位の外傷の診断と治療の実際、および熱傷の診断と治療を述べている。外科系医師が関係する手術創の治癒に関して多くのページが割かれ、トラブルの原因や対処を部位別に詳述してある。慢性創傷としては褥瘡や下腿潰瘍、その他の難治性潰瘍の診断と治療のエッセンスを述べてあるほか、再生医療の応用にも言及している。さらに肥厚性瘢痕、ケロイド、瘢痕拘縮などの診断と治療の実際も専門的に述べている。基礎的な創傷治癒の理論から臨床上の細かい工夫まで最新の知見が一冊に網羅されており、外科系医師は初期研修、後期研修の期間に一度は読むべき一冊といえる。
 筆者は特にI章Bの「創傷治癒の原理と考え方」が興味深かった。表皮を構成する表皮角化細胞とメラノサイトは外胚葉由来で、真皮を構成する結合織と血管は中胚葉由来とまったく別物で、表皮は再生するが真皮結合織は再生されることはなく、修復されるだけであることが創傷治癒の基本であるとの記載である。すなわち、傷が治るということは真皮が修復された表面に表皮が再生されて被覆する(上皮化)ことにより達成される。真皮が修復された表面に表皮が再生された部分では正常皮膚と違う外観を呈し、これが“傷あと”であるとの記載は、創傷治療では当たり前のことであるが、外科を長くやってきた筆者にとっても新鮮な記載であった。
 「たかが創傷、されど創傷」。外科医たるものは、外傷による創傷であれ、自らメスを入れた傷であれ、創傷が治る過程、創傷治癒が遅延する因子、さまざまな創傷部位の治癒過程の違いなどを知っておくことは必須である。本書はこれら疑問に十分答えてくれる一冊である。

胸部外科70巻10号(2017年9月号)より転載
評者●広島大学外科学(第一外科) 末田泰二郎

 本書は、日本創傷外科学会の監修のもと、2017年4月に発行された。日本創傷外科学会は日本形成外科学会員が主要メンバーになって、創傷をはやくきれいに治すことを目的に2008年に設立された比較的新しい学会である。学会でこれまで蓄積されてきた成果が、本書の随所に記載されている。本書の特徴は、外科系医師であれば誰もが扱う身近な創傷をテーマにして、治癒のメカニズム、診断と評価、治療法の選択に関して、実際の写真や図を示しながら、基本的事項から実際の手技にいたるまで具体的に記載されていることである。系統的かつ視覚的に創傷のすべてを理解しやすくなっている。
 本書の内容は、(1) 創傷治癒の原理と治療の基本的な考え方、(2) 外傷・熱傷・手術創・感染症などの急性創傷治療の実際、(3) 褥瘡・下腿潰瘍・難治性潰瘍(慢性放射線潰瘍や膠原病に伴う潰瘍)などの慢性創傷治療の実際、(4) 瘢痕治療の実際の4つの大項目に分けて記載されている。治療の基本方針、発症のメカニズム、治療や管理のアルゴリズムが図式化され、初心者にもわかりやすい内容となっている。また、最新のガイドラインに基づいて記載されており、代表的な症例が治療後の経時的変化とともにカラー写真で提示されている。本書では、炎症の遷延化、創の感染リスク、創のトラブルと対策、不適切な手術手技についての記載があり、臨床上注意すべき内容が整理されている。外用剤、創傷被覆材、非固着性被覆材は、現在数多く存在するため、多くの医師にとって選択に迷うことが多い。そこで、薬剤や診療材料の使い方、利点と欠点が述べられている。
 整形外科医にとっても、軟部組織の挫滅や欠損を伴った四肢外傷、術後感染、ガス壊疽や壊死性筋膜炎などの感染症、下腿の難治性潰瘍を治療する機会は多い。私の地区では、Orthoplastic Seminarという勉強会を定期的に開催し、整形外科医と形成外科医が個々の症例や一つのテーマについて議論する機会を設けている。両者の壁は低くなり、知識の共有と共通の認識が得られ、双方にとってたいへん有意義な会となっている。本書はまさにセミナーのテキストに相応しい内容となっている。近年、医療技術は飛躍的に進歩している。難治性皮膚潰瘍に対する局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)は有効性の高い新技術として汎用されてきている。NPWTをより効果的かつ合理的に使用できる創内持続陰圧洗浄療法(intra-wound continuous negative pressure irrigation therapy:IW-CONPIT)は感染創へ適用されている。本書にはこれらの治療法の歴史、原理と目的、治療方法、適応と禁忌などについても記載されている。
 創傷処置は、形成外科、整形外科のみならず外科系医師にとって臨床現場で当たり前のように日々行われている。高齢社会を迎えたわが国では、加齢に伴う末梢動脈疾患や糖尿病などの生活習慣病をはじめ、さまざまな慢性疾患をもつ患者が増えている。複合的な要因で創傷治癒が遷延し、感染を併発することもしばしば見受けられる。しかし、このようなリスクファクターをもった創傷に対する処置は、多くの外科系医師にとって、系統的に学ぶ機会がきわめて少なく、実際には個々の臨床現場で自然に習得することになる。これらの習得レベルや手技の正確度は、今まで経験してきた症例内容や指導医の教えに大きく依存することとなる。創傷処置の適正化と標準化が求められている。
 本書は、日常診療で必要とされる創傷処置の標準的な手技が網羅されている。形成外科医、整形外科医などの外科系医師のみならず、創傷治療に携わるすべての医師、WOC(wound、ostomy、continence)ナース、医療従事者には必携の書と思われる。また初期研修医や後期研修医などの若手医師の診療能力の向上にも役立つ。創傷治癒の原理と創傷治療の原則を理解・習得し、創傷を的確に治療する能力を高めることができる。本書を日常臨床の現場で活用し、創傷治療の成績が向上することを期待する。

臨床雑誌整形外科68巻11号(2017年10月号)より転載
評者●産業医科大学整形外科教授 酒井昭典