書籍

白血病治療マニュアル改訂第3版

監修 : 大野竜三/小寺良尚
編集 : 宮脇修一/中尾眞二
ISBN : 978-4-524-25309-8
発行年月 : 2009年5月
判型 : B5
ページ数 : 348

在庫あり

定価8,100円(本体7,500円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

白血病の臨床現場ですぐ役立つよう、最高水準にある施設の専門家が最新の治療指針を、プロトコールもまじえながらまとめた実践的指針書。今改訂では、新薬、新しいプロトコールやそれらのエビデンス、造血幹細胞移植の新しい考え方、それらに伴う治療体系の変化を盛り込み、大幅に内容を見直した。血液内科医はもちろん、白血病治療に携わる医療スタッフ必携の書。

I 治療の前に
 1 白血病の治療指針
 2 インフォームド・コンセント
 3 薬剤用量の算定法─体表面積と/kg

II 治療の流れと選択肢

III 薬物療法のプロトコール
 1 急性骨髄性白血病の治療プロトコール
  A 初発例の治療プロトコール
  B 再発難治例の治療プロトコール

 2 急性前骨髄球性白血病の治療プロトコール
  A 初発例の治療プロトコール
  B 再発難治例の治療プロトコール
 3 急性リンパ性白血病の治療プロトコール
  A 初発例の治療プロトコール
  B 再発難治例の治療プロトコール
 4 Ph染色体陽性急性リンパ性白血病の治療プロトコール
 5 慢性骨髄性白血病の治療プロトコール
 6 慢性リンパ性白血病の治療プロトコール
 7 成人T細胞性白血病の治療プロトコール
 8 骨髄異形成症候群の治療プロトコール

IV 造血幹細胞移植療法のプロトコール
 1 造血幹細胞移植療法の基本方針とドナー選択
 2 造血幹細胞採取法と保存
  A 同種骨髄
  B 自己および同種末梢血幹細胞
  C 臍帯血
 3 不妊対策
 4 同種造血幹細胞移植における骨髄破壊的移植前処置
 5 同種造血幹細胞移植における骨髄非破壊的移植前処置
 6 自家移植における移植前処置

V 支持療法の実際
V・A 薬物療法時の支持療法
 1 感染予防対策─基本的予防処置、血管内カテーテル管理、抗菌薬予防的投与
 2 感染症治療─抗生物質、抗真菌薬、G-CSF
  A 抗生物質の使用の実際
  B 抗真菌薬の使用の実際
  C G-CSFの使用の実際
 3 輸血療法(赤血球、血小板、顆粒球を含む)
 4 DIC(播種性血管内凝固)に対する対策
 5 全身栄養管理

V・B 造血幹細胞移植療法時の支持療法
 1 感染予防対策─無菌室(移植病室)、予防処置、抗菌薬予防的投与、感染モニタリング
 2 GVHD予防のための免疫抑制薬の使い方
 3 同種移植における輸血療法の注意点

VI 毒性と合併症の対策、注意点
VI・A 薬物療法時の毒性と合併症の対策
 1 抗白血病薬の作用機序と毒性
 2 嘔気・嘔吐、口腔粘膜障害(口内炎)、歯周囲炎、ステロイド潰瘍の予防と治療
 3 心筋障害の予防と治療
 4 ビンカアルカロイドなどの神経障害・便秘予防と治療
 5 高尿酸血症の予防と治療
 6 肝機能障害の予防と治療
 7 中枢神経系白血病の予防と治療
 8 レチノイン酸症候群の予防と治療
 9 imatinibによる浮腫・発疹・痙攣などの予防と治療
 10 亜ヒ酸による心毒性の予防と治療
 11 肝臓・腎臓障害時のdose補正と抗がん薬治療

VI・B 造血幹細胞移植療法時の毒性と合併症の対策
 1 移植前治療の毒性対策(放射線治療も含めて)
 2 免疫抑制薬の副作用対策
 3 急性GVHD
 4 慢性GVHD
 5 肝のVOD(veno-occlusive disease)、TMA(thrombotic microangiopathy)
 6 血球貪食症候群
 7 特発性間質性肺炎と閉塞性細気管支炎
 8 サイトメガロウイルス(CMV)の感染症
 9 出血性膀胱炎とアデノウイルス感染症
 10 移植後リンパ増殖症(PTLD)
 11 ヘルペスウイルス感染症(EBウイルスとCMVを除く)
 12 生着不全
 13 再発

VII 高齢者、小児の治療上の注意点
 1 高齢者白血病に対する薬物療法の注意点
 2 高齢者に対する造血幹細胞移植療法時の注意点
 3 小児白血病に対する薬物療法時の注意点
 4 小児に対する造血幹細胞移植療法時の注意点

略語一覧
索引

この『白血病治療マニュアル』は12年前の1996年4月大野竜三先生と小寺良尚先生の編集により誕生、以来好評を博し、2001年2月に改訂された。
 白血病は、固形癌と比べ発生頻度の少ない悪性腫瘍であるが、腫瘍細胞の採取が比較的容易であるため、病態の解明が進み、多くの白血病を分子レベルで理解することが出来るようになってきている。
 白血病の診断についても変化がみられ、これまでの白血病細胞の形態を主体としたFAB分類から、遺伝子異常に沿った新WHO分類に移行しつつある。
 治療においても大きな進歩があり、ある種の白血病においては、薬剤による治癒が現実のものとなりつつある。急性前骨髄球性白血病では、白血病細胞に分化を誘導するレチノイン酸を導入することにより、80%以上の長期生存が期待出来るようになった。また、慢性骨髄性白血病(CML)では、特異的に認められるPhiladelphia染色体(Ph染色体)由来キメラ蛋白のチロシンキナーゼ活性亢進が疾患の本体で、この酵素活性を阻害するimatinibが創薬され、臨床に導入された。その効果は驚くべきもので、CMLの治療は、これまでの造血幹細胞移植にとって変わり、imatinibによる治療が第一選択の治療法となっている。また、これまで極めて予後不良とされていたPh染色体陽性の急性リンパ性白血病もimatinibと従来の化学療法薬との併用でその予後が大きく改善されている。
 このように、白血病の病態解析や治療は日々進歩し続けており、血液専門医であっても、その内容のすべてを理解することは容易ではない。しかし、白血病診療に関わるすべての医師が、白血病の基礎から最新の情報までを正しく理解することは実地診療において必要不可欠であると考える。
 今回の改訂では、これまでの白血病治療研究の成果を盛り込み、わが国における現時点での最高の治療指針やプロトコールを記載するよう編集を心がけた。また本書では、白血病治療に関連する出来るだけ多くの事項を取り上げ、それぞれの項目は、その分野の第一人者の方に執筆をお願いした。本書が、白血病の診療に携わるすべての方に役立つ必携の書となり、わが国の白血病患者における治癒率向上の一助となれば幸いである。
2009年4月
宮脇修一
中尾眞二

本書の奥付をみると、第1版が5刷、第2版が3刷となっており、白血病治療の臨床現場に広く受け入れられてきたことがわかる。第2版(2001年)からは8年が経過しており、その後の治療の進歩を反映するため今回の改訂となった。編者は大野竜三先生・小寺良尚先生から宮脇修一先生・中尾眞二先生へと受け継がれ、これに伴い執筆者もかなり若返った。いずれも白血病治療の領域では第一線で活躍中の先生方である。
 本書の特徴は以下の3点にある。
 冒頭に、インフォームド・コンセントや薬剤投与量の項目などからなる「治療の前に」の章が入っていること、次いで治療のアルゴリズムについてフローチャートを用いながら示した「治療の流れと選択肢」を入れ、各論における治療の全体像をわかりやすく示している。とくに後者については編者自らが執筆しており、ここに力を入れていることが読み取れる。
 これまでのマニュアル本では、化学療法か造血幹細胞移植療法のいずれかを取り上げることが多い。しかし造血幹細胞移植療法は化学療法の延長にあって、同種免疫による治療成績の向上を期待する治療手段である。問題は個々の患者にとっての最適治療をどのように選択するのかである。本書ではそれぞれのエキスパートである編者が協力して、はじめて可能になったものであろう。
 毒性・合併症とその対策、とりわけ移植後の合併症にも多くのスペースを割き、レビュー書あるいは入門書としても読み応えのある本になっている。一方、このことは300頁を超える原因ともなっており、医療スタッフの必携とするには、もう少しコンパクトにしてもよかったのではないかとも思う。
 編者・監修者らが「序」で指摘していることではあるが、新薬の承認が相次いでいるので、いずれ改訂を迫られることは必然といわねばならない。慢性骨髄性白血病については、第二世代チロシンキナーゼがすでに承認されたし、骨髄異形成症候群に対しては、DNAメチル化酵素阻害薬やlenalidomideが2010年には登場しそうである。急性骨髄性白血病については新薬の登場はさらに先になりそうであるが、遺伝子異常による治療の層別化が進められようとしている。いずれにしても、化学療法・移植療法・分子標的療法いずれもカバーしている点で本書はユニークであり、病棟や医局など現場に近い場所に備えておかれることを勧めたい。
評者● 直江知樹
臨床雑誌内科104巻6号(2009年12月号)より転載