書籍

日本整形外科学会診療ガイドライン

橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017改訂第2版

  • 新刊

監修 : 日本整形外科学会/日本手外科学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/日本整形外科学会橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-25286-2
発行年月 : 2017年5月
判型 : B5
ページ数 : 160

在庫あり

定価4,104円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本整形外科学会監修の診療ガイドライン。初版以降のエビデンスを加え、橈骨遠位端骨折の合併損傷を含めた診断法、各種治療法の有用性や合併症についてエビデンスに基づいて推奨度を示して解説。また、疫学的事項やリハビリテーションおよび機能評価・予後にいたるまで、計59のクリニカルクエスチョンを設けて、診療の指針を示している。

前文
第1章 橈骨遠位端骨折の疫学
 CQ1.橈骨遠位端骨折の発生状況は?
 CQ2.橈骨遠位端骨折の発生にかかわる危険因子は?
 CQ3.橈骨遠位端骨折に対して行われる治療法の傾向は?
 CQ4.橈骨遠位端骨折と他の骨脆弱性骨折の発生に関連はあるか?
第2章 診断
 CQ1.推奨できる骨折型分類はあるか?
 CQ2.単純X線計測値の基準は?
 CQ3.単純X線正面・側面像の2方向以外にどのような撮影方法が有用か?
 CQ4.関節内骨折の診断にCTは有用か?
 CQ5.不顕性骨折の診断に有用な検査法は?
 CQ6.TFCC損傷の合併率とその診断方法は?
 CQ7.舟状月状骨靱帯損傷の合併率とその診断方法は?
 CQ8.尺骨茎状突起骨折の合併率は?
第3章 治療
 3.1 治療総論
  CQ1.関節外骨折に対して手術療法は保存療法より有用か?
  CQ2.関節内骨折に対して手術療法は保存療法より有用か?
  CQ3.関節外骨折における徒手整復後の残存変形は許容できるか?
  CQ4.関節内骨折における徒手整復後の残存変形は許容できるか?
  CQ5.橈骨遠位端骨折の合併症と発生率は?
 3.2 保存療法
  CQ1.高齢者に徒手整復は必要か?
  CQ2.徒手整復にfinger trapは有用か?
  CQ3.徒手整復に麻酔は有用か?
  CQ4.外固定の範囲とその期間は?
  CQ5.外固定時の手関節と前腕の肢位は?
  CQ6.保存療法の合併症は?
  CQ7.整復評価に超音波検査は有用か?
 3.3 手術療法
  3.3.1.手術療法総論
   CQ1.適切な手術時期はいつか?
   CQ2.高齢者に手術療法は有用か?
   CQ3.関節内骨折の手術で透視下整復は有用か?
   CQ4.関節内骨折に関節鏡視下手術は有用か?
  3.3.2.経皮的鋼線固定
   CQ1.経皮的鋼線固定は有用か?
   CQ2.経皮的鋼線固定の合併症は?
  3.3.3.創外固定
   CQ1.創外固定は有用か?
   CQ2.創外固定の合併症は?
  3.3.4.プレート固定
   CQ1.背側ロッキングプレート固定は有用か?
   CQ2.掌側ロッキングプレート固定は有用か?
   CQ3.ノンロッキングプレート固定は有用か?
   CQ4.角度固定型(単方向性)掌側ロッキングプレート固定は有用か?
   CQ5.角度可変型(多方向性)掌側ロッキングプレート固定は有用か?
   CQ6.掌側ロッキングプレートに骨(人工骨)移植は有用か?
   CQ7.関節内粉砕骨折に複数プレートは有用か?
   CQ8.掌側ロッキングプレート固定後の外固定は有用か?
   CQ9.掌側ロッキングプレートの抜去は必要か?
   CQ10.掌側ロッキングプレート固定の術後合併症は?
   CQ11.掌側ロッキングプレート固定に合併する腱損傷の診断に対して,超音波検査は有用か?
 3.4その他の骨折,治療法
  CQ1.超音波パルスや電気刺激は骨癒合促進に有用か?
  CQ2.髄内釘固定は有用か?
  CQ3.合併する遠位橈尺関節不安定症の診断と治療は?
  CQ4.合併するTFCC損傷は治療すべきか?
  CQ5.合併する尺骨茎状突起骨折に内固定は有用か?
  CQ6.合併する尺骨遠位端骨折に内固定は有用か?
  CQ7.合併する手根骨間靱帯損傷は治療すべきか?
  CQ8.変形治癒に対する矯正骨切りの適応は?
  CQ9.方形回内筋の修復または温存は有用か?
第4章 リハビリテーション
 CQ1.手関節以外のリハビリテーションは有用か?
 CQ2.リハビリテーションプログラムの指導は有用か?
 CQ3.受傷後6ヵ月までに手関節機能は十分に回復するか?
第5章 機能評価,予後
 CQ1.一般的に用いられている評価法は?
 CQ2.妥当性の検証されている評価法は?
 CQ3.変形治癒は機能的予後に影響するか?
 CQ4.骨折の不安定性(再転位)を予測する患者因子,骨折因子は存在するか?
索引

改訂第2版の序

 ガイドラインのない診療は、羅針盤のない航海のようなものである。様々な局面に遭遇した際にどちらを向いて進んでいけばよいのか?行き先を指示してくれるのが診療ガイドラインと言ってよいであろう。故澤泉卓哉前委員長をはじめとした橈骨遠位端骨折のエキスパートの諸兄により作成された「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2012」は、珠玉の診療指針として輝きを放ち続け、本邦での橈骨遠位端骨折の治療レベルの向上に貢献してきたことは間違いない。一方で昨今の医学、医療の進歩はとてつもなく速く、それは手外科の分野においても例外ではない。橈骨遠位端骨折の分野においても、高齢化、核家族化、早期社会復帰への要望など社会構造の変化に伴う手術適応の変化、CT,MRI、超音波機器を使用した診断、治療への応用、鏡視下手術の発展、様々な種類の内固定材料の開発と臨床での使用、内固定術の普及に伴う種々の合併症の発覚、後療法の早期化などに加え、エビデンスレベルの高い文献が次第に発表されるなど過去5年間の診療内容の進歩により、ガイドラインの改訂が必要となった。
 2014年4月の沖縄での日本手外科学会学術集会時にて、橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定(改訂)委員会が立ち上げられた。前回のガイドライン作成では2008年までに発表された文献が検索、採用されており、今回は前回採用された文献に加え、2009年以降、新たに発表された文献が検索の対象となった。これらの文献をみるとこの5年間に診断、治療法ともに様々な変化をみせていた。また文献のエビデンスレベルも向上し、客観的評価、特に患者立脚型評価を記載する文献が増加しており、5年間というガイドライン見直しの期間は適切であることを実感した。しかし、橈骨遠位端骨折という外傷治療の分野では、内科における薬物治療のような明確な比較対照の研究デザインが困難であり、エビデンスレベルの高い文献は必ずしも多くないという事実も再認識した。今後、論文を作成しようとする医師はしっかりとした論文構成が必要と感じた。
 本ガイドラインは前版同様、日常診療で感じた疑問に対する回答をQ&A形式で記載した。クリニカルクエスチョンは上記変化を考慮し、修正、追加が必要であった。その内容は現段階でのup to dateであると作成に携わった委員全員が自負するものである。ただし実際の診療方針は、医師と患者が相談したうえで決定していくものであり、本ガイドラインはあくまで診療においての指標のひとつであると認識していただきたい。
 最後に本ガイドラインの作成に多大なご支援とご尽力を賜りました日本整形外科学会診療ガイドライン委員会、日本手外科学会ならびに代議員の方々、頻回の委員会開催に協力していただきました日本整形外科学会事務局ならびに財団法人国際医学情報センター(IMIC)の諸氏に深謝いたします。

2017年4月
日本整形外科学会
橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定(改訂)委員会
委員長 安部幸雄

 橈骨遠位端骨折に対する診療ガイドラインが5年ぶりに改訂された。改訂第2版の上梓に際し、膨大な作業の指揮をとられた日本手外科学会橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会担当理事・渡邉健太郎先生、砂川融先生、委員長の安部幸雄先生ならびに委員の先生方、構造化抄録作成に協力された日本手外科学会の会員の先生方に心よりの感謝を申し上げたい。
 金谷文則先生(担当理事)、故澤泉卓哉先生(委員長)が中心となり作成された初版の『橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2012』は、日常診療できわめて遭遇する機会の多い橈骨遠位端骨折の治療成績向上に大きく貢献した。一方で、近年の橈骨遠位端骨折に対する診断技術の進歩、関節鏡視手術手技の開発、内固定材料の改良などは、われわれの想像をはるかに超えるものである。さらに、骨粗鬆症に対する強力な治療薬の誕生や高齢化社会における健康寿命延伸の必要性など、橈骨遠位端骨折の治療に大きな影響を与える要因も出現してきた。このため、エビデンスレベルの高い文献を基盤とした、本骨折に対する新たなガイドラインの作成が必要になったと推察される。
 本ガイドラインは、臨床医が日常診療で感じている疑問に対し、過去のエビデンスレベルの高い文献の中から回答を得るというQ&A方式の構成になっている。これにより、橈骨遠位端骨折の疫学から診断、治療、リハビリテーション、予後にかかわる各事項が理解しやすくなっている。各種診断および治療法の有用性に関しては、推奨文の形式での回答(有用性の有無など)に加え、解説とエビデンスの高い文献から引用したサイエンティフィックステートメントを掲載し、Q&Aのみではなく最新の知見も系統的に理解できるようになっている。
 各論をみてみると、「橈骨遠位端骨折の疫学」では発生状況や危険因子について言及されている。「診断」に関しては骨折型分類、各種画像検査の有用性や合併損傷の診断法について記載されている。「治療」では保存的治療と手術的治療の比較をはじめとする総論に加えて、保存的治療として徒手整復の有用性を中心に、外固定の実際や合併症に関して言及されている。手術的治療に関しては本ガイドラインでもっとも紙面が費やされ、手術時期、各手術法の有用性と合併症、合併損傷に対する治療の必要性、変形治癒に対する矯正骨切りの適応などに関して詳述されている。なかでも、掌側ロッキングプレートに関してはその有効性に始まり、抜去の必要性、合併症などに関して詳しく述べられている。「リハビリテーション」では、その有効性について記載されており、「機能評価、予後」では推奨されうる評価法や変形治癒の程度と予後との関連性、骨折の不安定性を予測する患者因子などに関して言及されている。
 上述したように本ガイドラインは、近年発表されたエビデンスレベルが高いと予想される橈骨遠位端骨折に関する文献をもとに作成された。しかし、推奨度作成のためのエビデンスの強さは多くの文献が4段階(A:強、B:中、C:弱、D:とても弱い)のB、Cであり、それに基づく推奨の強さも大多数が3段階(1:強い、2:弱い、3:なし)の2ないし3であった。薬物治療と異なり外科治療においては比較対照群を設定しづらく、エビデンスの強いprospective randomised studyを行うことは困難であり、本ガイドラインに示された推奨度は現時点での限界であるかもしれない。したがって、実際の臨床の場で橈骨遠位端骨折の診療を行う際には、本ガイドラインはあくまで指標の一つであり、最終的には医師自身が各患者の背景などもふまえたうえで最適な診療を行っていく必要があると思われる。
 橈骨遠位端骨折の患者数は、今後も増加していくことが確実な状況にある。それに伴い、新たな診断および治療法が日常診療の場に登場してくることが予想される。したがって診療にあたる整形外科医は、現在標準的に行われている診断および治療法の有効性と限界を知っておく必要がある。本ガイドラインを通読することで、これらを体系的に理解することが可能になると考える。このような点からも、多くの整形外科医、特に若い世代の先生方はぜひとも本書を手にとり、橈骨遠位端骨折の診療に対する理解を深めてほしい。

臨床雑誌整形外科68巻12号(2017年11月号)より転載
評者●北海道大学整形外科教授 岩崎倫政