書籍

高齢者糖尿病診療ガイドライン2017

  • 新刊

編・著 : 日本老年医学会・日本糖尿病学会
ISBN : 978-4-524-25284-8
発行年月 : 2017年6月
判型 : B5
ページ数 : 194

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本糖尿病学会・日本老年医学会共同編集による診療ガイドライン。高齢者特有の生理機能の変化や併発疾患など、糖尿病診療にあたって考慮すべき点や臨床上の疑問についてCQ形式で解説。また巻末にアブストラクトテーブルを収載しエビデンスの確認も容易にできる。

I.高齢者糖尿病の背景・特徴
 1.加齢と耐糖能
  I-CQ-1 加齢と耐糖能異常とは関係があるか?
 2.高齢者糖尿病の特徴
  I-CQ-2 高齢者糖尿病はどのような特徴があるか?
 3.高齢者糖尿病の合併症
  I-CQ-3 高齢者糖尿病にはどのような合併症があるか?
II.高齢者糖尿病の診断・病態
 1.高齢者糖尿病の診断
  II-CQ-1 高齢者糖尿病の診断は成人と同様の診断基準を用いるか?
 2.高齢者糖尿病の高血糖
  II-CQ-2 高齢者糖尿病は食後の高血糖をきたしやすいか?
  II-CQ-3 高齢者糖尿病は高浸透圧高血糖状態(hyperosmolar hyperglycemic state:HHS)を起こしやすいか?
 3.高齢者糖尿病の低血糖
  II-CQ-4 高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?
 4.高齢者糖尿病と加齢変化
  II-CQ-5 高齢者糖尿病では薬物の有害事象が出現しやすいか?
  II-CQ-6 高齢者糖尿病では動脈硬化性疾患が増えるか?
  II-CQ-7 高齢者糖尿病では糖尿病がない人と比べて死亡のリスクが高いか?
  II-CQ-8 高齢者糖尿病では認知機能低下や認知症が起こりやすいか?
  II-CQ-9 高齢者糖尿病ではどのような心理状態に注意すべきか?
  II-CQ-10 高齢者糖尿病では身体機能は低下しやすいか?
III.高齢者糖尿病の総合機能評価
  III-CQ-1 高齢者糖尿病では特にどのようなことを評価すべきか?
  III-CQ-2 高齢者糖尿病でなぜ認知機能を評価する必要があるのか?
  III-CQ-3 高齢者糖尿病ではどのように認知機能のスクリーニング検査を行うのか?
  III-CQ-4 高齢者糖尿病ではどのように身体機能の評価を行うのか?
IV.高齢者糖尿病の合併症評価
  IV-CQ-1 高齢者糖尿病ではどのような合併症を評価すべきか?
 1.糖尿病網膜症
  IV-CQ-2 高齢者糖尿病では糖尿病網膜症の評価を眼科医に依頼すべきか?
 2.糖尿病腎症
  IV-CQ-3 高齢者糖尿病では定期的に尿アルブミン値・尿タンパク量と推定糸球体濾過率(eGFR)の測定を用いて糖尿病腎症を評価すべきか?
 3.糖尿病神経障害
  IV-CQ-4 高齢者糖尿病では糖尿病神経障害はどのように評価するのか?
 4.高齢者糖尿病と感染症
  IV-CQ-5 高齢者糖尿病ではどのような感染症にかかりやすいか?
  IV-CQ-6 肺炎球菌ワクチン,インフルエンザワクチンの接種をすることでこれらの感染症を予防できるか?
V.血糖コントロールと認知症
  V-CQ-1 高齢者の糖尿病または高血糖は認知機能低下・認知症の危険因子となるか?
  V-CQ-2 高齢者の重症低血糖は認知機能低下・認知症の危険因子となるか?
  V-CQ-3 高齢者糖尿病における厳格な血糖コントロールは認知機能低下・認知症発症の抑制に有効か?
VI.血糖コントロールと身体機能低下
  VI-CQ-1 高齢者糖尿病の高血糖はADL低下,サルコぺニア,転倒・骨折の危険因子となるか?
  VI-CQ-2 高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖は転倒・骨折,フレイルの危険因子となるか?
  VI-CQ-3 高齢者糖尿病における血糖コントロールはADLの保持に有効か?
  VI-CQ-4 高齢者の糖尿病や低血糖はうつ(うつ病またはうつ傾向)の危険因子となるか?
.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標
  VII-CQ-1 高齢者糖尿病の血糖コントロールは合併症の発症・進展の抑制に有効か?
  VII-CQ-2 高齢者糖尿病における血糖コントロールは感染症予防に有効か?
  VII-CQ-3 HbA1c値と大血管症発症または死亡との間にはどのような関係があるか?
  VII-CQ-4 高齢者糖尿病では厳格な血糖コントロールを行うべきか?
  VII-CQ-5 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標はどのようなことを考慮して設定するか?
I.高齢者糖尿病の食事療法
  VIII-CQ-1 高齢者糖尿病でも非高齢者と同様に食事療法は有効か?
  VIII-CQ-2 高齢者糖尿病の治療開始時のエネルギー指示量を決める際にはどのような点に注意すべきか?
  VIII-CQ-3 高齢者糖尿病の炭水化物,タンパク質,脂肪の指示量の決定にあたってはどのような点に注意すべきか?
  VIII-CQ-4 高齢者における食事のナトリウム制限(減塩)は有効か?
  VIII-CQ-5 高齢者糖尿病のビタミン,脂肪酸の摂取は認知機能低下と関連するか?
  VIII-CQ-6 高齢者糖尿病で勧められる食事パターンはあるか?
  VIII-CQ-7 ビタミンD,カルシウムの摂取量不足は骨密度とは関連するか?
  VIII-CQ-8 高齢者糖尿病の低栄養をどのように評価するか?
IX.高齢者糖尿病の運動療法
  IX-CQ-1 高齢者糖尿病において運動療法は血糖コントロール,認知機能,ADL,うつやQOLの改善に有効か?
X.高齢者糖尿病の経口血糖降下薬治療とGLP-1受容体作動薬治療
  X-CQ-1 高齢者糖尿病の血糖降下薬療法で注意すべき点は?
  X-CQ-2 高齢者糖尿病でSU薬は低血糖を起こしやすいか?
  X-CQ-3 高齢者糖尿病でメトホルミンは心血管死亡を減少させるか?
  X-CQ-4 高齢者糖尿病でメトホルミンは乳酸アシドーシスの危険因子となるか?
  X-CQ-5 高齢者糖尿病でSU薬・メトホルミン以外の経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬を使用する場合にはどのような点に注意すべきか?
  X-CQ-6 高齢者糖尿病の多剤併用は低血糖や転倒の危険因子となるか?
XI.高齢者糖尿病のインスリン療法
  XI-CQ-1 高齢者糖尿病でインスリンを使用する場合にはどのような点に注意すべきか?
XII.高齢者糖尿病の低血糖対策とシックデイ対策
  XII-CQ-1 高齢者糖尿病の低血糖症状は若年者と同様か?
  XII-CQ-2 高齢者糖尿病での低血糖の危険因子は何か?
  XII-CQ-3 発熱,下痢,嘔吐,食欲不振などのシックデイではどのような点に注意すべきか?
XIII.高齢者糖尿病の高血圧,脂質異常症
  XIII-CQ-1 高齢者糖尿病の高血圧の管理は糖尿病細小血管症と大血管症の発症・進展抑制に有効か?
  XIII-CQ-2 高齢者糖尿病の脂質異常症の管理は大血管症の発症・進展抑制に有効か?
XIV.介護施設入所者の糖尿病
  XIV-CQ-1 高齢者糖尿病は介護施設入所の危険因子になるか?
  XIV-CQ-2 介護施設に入所している高齢者糖尿病にはどのような特徴があるか?
XV.高齢者糖尿病の終末期ケア
  XV-CQ-1 高齢者糖尿病の終末期ケアではどのような点に注意すべきか?
アブストラクトテーブル
付録:J-EDIT

『高齢者糖尿病診療ガイドライン2017』作成にあたって

 わが国では、超高齢社会の急速な進行により高齢者糖尿病患者数、全糖尿病患者に占める高齢者糖尿病の比率がともに著しく増加してきている。わが国の高齢化は今後もさらに進展すると予想されており、高齢者糖尿病は今後も増加すると考えられる。
 高齢者糖尿病では、糖尿病合併症に加えて、糖尿病以外の疾患の合併、さらにプレフレイル、フレイル、サルコぺニア、ADL低下、認知機能低下や認知症といった高齢者に特有ないわゆる老年症候群や種々の臓器機能の低下を認めることが多い。また、高齢者糖尿病は低血糖を発症しやすく、転倒・骨折、認知症の発症など低血糖の有害事象が出現しやすいといったことも明らかになってきている。したがって、高齢者糖尿病の診療には、糖尿病のみならず老年医学的知識も必要とする。現在、高齢者糖尿病の診療は、糖尿病専門医のみならず、老年病専門医や循環器内科専門医など他診療科の専門医、さらに介護施設の医師などにより担われている。これら高齢者糖尿病の診療にあたる医師のすべてが、高齢者糖尿病に関する最新、最良の臨床的エビデンスを収集し日常臨床を行うことは難しい。
 日本糖尿病学会では、2013年に“熊本宣言”を公表し、糖尿病合併症を抑制するためにはHbA1cを7%未満に維持することが重要であるが、血糖管理目標は患者の年齢や罹病期間、合併症、低血糖のリスクなど患者の状態によって個別に設定すべきとした。したがって、高齢者糖尿病では患者の状態に応じて、血糖コントロール目標を8%未満とすることも許容されるとしている。一方、日本老年医学会では、高齢者糖尿病を対象として実施したJ-EDIT研究から得られたエビデンスなどを基に、高齢者糖尿病の診療にあたっては、糖尿病の評価のみでなく、認知機能やうつなどの気分障害、ADLなどの身体機能、合併疾患、社会・経済的状態などを総合的に評価(高齢者総合機能評価)し、個々の高齢者糖尿病ごとに最適な治療を個別に選択すべきとしている。このように両学会の考え方は基本的には一致しているものの、高齢者糖尿病の診療にあたって、どのような機能を、どのような手段で評価し、どのような基準で血糖コントロール目標を設定するのかといった細部にわたってはまだ十分な議論がなされていなかった。
 これらのことを背景に、平成26年10月に日本糖尿病学会門脇孝理事長と日本老年医学会大内尉義前理事長の間で「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」を設け、「高齢者糖尿病の診療ガイドライン」の作成を検討することが合意された。合意に基づき両学会より推薦された各4名、計8名の委員からなる合同委員会が設置され、平成27年4月より活動を開始した。合同委員会は、まず平成28年5月に開催された第59回日本糖尿病学会年次学術集会において、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を公表した。さらに平成29年5月に開催される第60回日本糖尿病学会年次学術集会に合わせ、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」を公表すると同時に本冊子を刊行することとなった。
 本ガイドラインは、平成23年から25年にかけて国立長寿医療研究センターの長寿科学研究開発費の助成を受け、日本老年医学会と国立長寿医療研究センターの共同事業として実施された「生活自立を目標とした生活習慣病の検査値の基準設定に関する研究」班(主任研究者:大内尉義、糖尿病分野責任者:井藤英喜)が、高齢者糖尿病、認知症、ADL低下などの老年症候群をキーワードとして系統的、網羅的に収集した文献、さらにその後ハンドサーチにより収集した文献をもとに作成されている。
 本ガイドラインは、クリニカルクエスチョン(CQ)を冒頭に示し、それに対する「要約」「本文」、「引用文献」、さらに必要であれば「参考文献」を記載するというフォーマットとした。「糖尿病診療ガイドライン2016」(南江堂)では、推奨度(推奨グレード)を問う臨床的疑問として回答が可能なものは「CQ」、それ以外の臨床的疑問は「Q」としているが、本ガイドラインは「糖尿病診療ガイドライン2016」でいう「Q」も含めてすべて「CQ」とした。可能な場合はエビデンスのレベル、数を考慮して「推奨グレード」を付けた。また、一部の項目では、高齢者糖尿病に関するエビデンスは不十分であっても、現在の医学的常識、高齢者糖尿病を対象とした検討でなくても高齢者糖尿病に適応できるであろうエビデンスなどをもとに、患者や社会の利益と害のバランスも考慮に入れて推奨すべきと考えられる場合には推奨グレードを付けた。
 高齢者糖尿病を対象としたランダム化比較試験はまだほとんどなく、ましてわが国の診療ガイドラインで最も重要と考えられる日本人高齢者糖尿病を対象としたランダム化比較試験となるとさらに少ない。高齢者糖尿病を対象とした大規模レジストリー研究や観察研究もまだ不十分である。背景が極めて多様な高齢者糖尿病にランダム化比較試験がエビデンスとしてどの程度意義を持つのかといった問題もある。また、CQとしては妥当であるが高齢者糖尿病を対象としたランダム化比較試験を今さら実施するのは難しい、あるいは高齢者糖尿病のみを対象とすることに無理があるといったCQも多いといったことから、「推奨グレード」を付けた項目が少なくなったことをあらかじめお断りしておきたい。高齢者糖尿病に関するエビデンスはまだまだ不十分であることは否めないが、本ガイドラインを通読することにより今後検討すべき項目もおのずから明らかになると思われる。本ガイドラインの公表を契機に、高齢者糖尿病に関する研究が活発化し、それらの成果によりいっそう充実したガイドラインに改訂されることを願っている。
 本ガイドラインが多くの先生方に利用され、高齢者糖尿病の診療の向上に役立つものであることを期待している。

2017年5月
高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会