書籍

速習!肺がん免疫療法

基本理解と適切使用のために

編著 : 瀧川奈義夫
ISBN : 978-4-524-25147-6
発行年月 : 2016年12月
判型 : A5
ページ数 : 98

在庫あり

定価3,024円(本体2,800円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

話題の肺がん治療における「免疫チェックポイント阻害薬」の“今”がわかる。基本知識から臨床応用までが簡潔にまとまっており、短時間で必要な情報を速習できる。どのような場合に使用可能か、有害事象の対応、使用時の注意点、今後の展望などをQ&A形式で解説。既存の抗がん剤治療とは異なる経過をたどった症例など、エキスパートの経験に基づいたケースファイルも収載。

緒言:肺がん免疫療法の現況
Chapter1 免疫チェックポイント阻害薬の知識整理
Chapter2 抗PD-1抗体臨床実践のためのQ&A
 1 適応(治療開始前)
  Question1.使用する適切な病期,適切なPSは?
  Question2.組織型による違いはあるか?EGFR/ALK陽性肺がんではどうか?
  Question3.既治療でいつ使用するとよいか(2nd line,3rd line,あるいは4th line)?
  Question4.高齢者での使用は?
  Question5.間質性肺炎を有する場合でも使用可能か?
  Question6.糖尿病あるいは甲状腺疾患を有する場合でも使用可能か?
  Question7.その他の自己免疫疾患を有する場合でも使用可能か?ステロイド使用中はどうか?
 2 有害事象対策
  Question8.外来で注意すべきこと,ルーチンで検査すべきことは?
  Question9.呼吸器症状が出現したときの対処法は?
  Question10.消化器症状が出現したときの対処法は?
  Question11.皮膚症状が出現したときの対処法は?
  Question12.甲状腺機能異常,副腎機能低下時の対処法は?
  Question13.糖尿病が発症したときの対処法は?
  Question14.神経・精神症状が出現したときの対処法は?
  Question15.肝機能悪化時の対処法は?
  Question16.眼症状が出現したときの対処法は?
  Question17.造血障害が出現したときの対処法は?
 3 併用療法(主な臨床試験・治験を中心に)
  Question18.化学療法との併用療法の可能性は?
  Question19.免疫療法との併用療法の可能性は?
  Question20.分子標的治療薬との併用療法の可能性は?
  Question21.術前・術後の使用は?
  Question22.放射線治療との併用療法の可能性は?
Chapter3 肺がん免疫療法ケースファイル:エキスパートの治療法
 ・報告例からみる治療のポイント
 Case1.既存病巣には効いているが新規病変が出現した例
 Case2.heavy treatment後の有効例
 Case3.抗PD-1抗体中止後も効果が持続した例
 Case4.初期増悪後に効果が認められた例
 Case5.EGFR遺伝子変異を有する例

序文

 進行非小細胞肺がん治療が大きく変貌を遂げている。この歴史的瞬間に肺がんの実地医療に携わっていることに感謝したい。わが国では呼吸器内科医を中心に、1983年から使用可能となった殺細胞性抗がん薬シスプラチンを主軸とした多くの臨床試験が行われてきたが、survival benefitを肌で感じることは少なかった。そして2002年に世界に先駆けて承認されたゲフィチニブは画期的な分子標的薬剤として脚光を浴びたが、これで進行肺がんの治癒が可能かという問いには残念ながらNoと答えざるを得なかった。今回、これら肺がん治療のキードラッグに勝るとも劣らない免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)が使用可能となった。すなわちニボルマブとペムブロリズマブという2種類の武器を手に肺がんに挑むのである。
 手術不能あるいは根治的照射不能の進行肺がんに対し、抗PD-1抗体を組み込んだ薬物療法の効果が臨床試験のなかで明らかにされつつある。さらに、術前・術後のがん薬物療法、化学放射線療法、あるいは放射線単独療法のなかにも抗PD-1抗体を組み込み、早期肺がんや局所進行肺がんの治癒率をさらに高める試験も始まっている。これまでの様々な免疫療法のなかで、抗PD-1抗体ははじめてエビデンスを確立したといえよう。しかしながら、効果が得られるのは非小細胞肺がん全体の約20%と考えられている。ペムブロリズマブの適応である腫瘍組織の50%以上のPD-L1発現は約30%の症例に過ぎず、そのなかでも効果が認められるのは半数以下である。ブレイクスルーとなった薬剤ではあるが、EGFRやALK チロシンキナーゼ阻害薬におけるEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のように、より優れたバイオマーカーの発見は必須である。また、抗PD-1抗体特有の有害事象はこれまでの殺細胞性抗がん薬や分子標的治療薬と異なり、予想もつかない全身性免疫反応を生じることが明らかになった。肺障害に代表されるような呼吸器疾患だけではなく、消化器、糖尿病・代謝、膠原病、腎、神経、循環器、血液疾患などあらゆる有害事象を念頭に置きながらモニタリングする必要があり、内科の総合的な力が必要となる。
 本書では、現時点での抗PD-1抗体のエビデンスに加え近未来に結果が得られるであろう臨床試験、バイオマーカー、および有害事象とその対策を中心に述べている。まさに今、進行肺がん患者を目の前にしている医師に手にとっていただきたい。抗PD-1抗体に関する新知見が日々更新されるなか、短期間で執筆をしてくださった肺がん治療のエキスパートである岡山大学、川崎医科大学、四国がんセンターの先生方、初の編者として不慣れな私に多くのアドバイスをいただいた南江堂の達紙優司さんに深謝致します。

2016年12月
瀧川奈義夫