書籍

人工呼吸の考えかた

いつ・どうして・どのように

: 丸山一男
ISBN : 978-4-524-24277-1
発行年月 : 2009年7月
判型 : A5
ページ数 : 284

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

マニュアルに盲従しないで、考えて行う納得の人工呼吸管理をマスターできる、全ての医療従事者にオススメの一冊。呼吸生理から人工呼吸器の原理、呼吸モード、モニタの数字や波形の意味、その読み方と知識がリンクするよう配慮された構成と、遊び心のある内容、豊富なイラストにより、楽しく読み進めるうちに人工呼吸の「考えかた」が無理なく消化できる。

1章 プロローグ−何ゆえに人工呼吸か?
A なぜ人工呼吸か
B 人工呼吸を必要とする疾患・病態
C 呼吸仕事量を考える
D 人工呼吸のゴール

2章 呼吸に疲れました−呼吸困難とは
A 呼吸困難とは?
B 呼吸の需要と供給
C 頻呼吸を考える:CO2、O2、pHから
D 頻呼吸を考える:肺・胸郭メカニクスから
E まとめ:呼吸回数が多いときに思い浮かべること!

3章 肺がかたい!−抵抗勢力? コンプライアンスが低い?
A 肺が「かたい」とは?
B 気道内圧と気道抵抗
C 気道内圧とコンプライアンス
D 気道抵抗、コンプライアンスと「肺のかたさ」

4章 時定数(タイムコンスタント)−むずかしそうだけど、分かると便利
A 呼気流量の変化
B 時定数とは?
C 時定数を人工呼吸器設定に生かす

5章 酸素を考える−吸入酸素濃度は? 光と影
A 動脈血酸素分圧とは?
B 動脈血酸素分圧の評価
C 吸入酸素濃度とPEEP

6章 1回換気量を巡って−二酸化炭素の排出
A 換気の目的
B 酸素消費量
C 二酸化炭素の排出
D 1回換気量とは?
E 1回換気量と気道内圧

7章 どのように入れる?−量か圧か? それが問題だ
A 従量式(量制御)換気
B 従圧式(圧制御)換気

8章 自発か? 強制か?−波形で考えるトリガーとサイクル
A 自発呼吸と強制換気
B 自発呼吸
C 強制換気
D sIMV(同期式間欠的強制換気)

9章 圧制御をイメージする−PCV、PSVとは
A 圧制御の吸気流量パターン
B PCVとPSV
C プレッシャーサポート:自発吸気に合わせてサポート

10章 PEEP/CPAPでスッキリ−肺胞を常に開いておく
A PEEP/CPAP
B オートPEEP

11章 二相性のCPAP−APRV、BIPAP、Bilevelの周辺
A まずはAPRVから:気道の圧を開放する換気法
B BIPAP/Bilevel

12章 波形の会話−波形のワンポイントアドバイス
A 圧波形:波形でVCVかPCVかを見分ける
B 流量波形
C 量波形
D 波形でリークを発見:ループは閉じる

13章 困った波形を読む−いかに対処するか
A 人工呼吸器と患者の同調
B 波形で同調の悪さを評価する

14章 良くなったかな?−改善しているか悪化しているかを考える
A 改善・悪化の指標
B PVカーブで考える
C フローボリュームカーブで考える
D 波形で改善を実感する

15章 ウイニング−どのように人工呼吸器から離脱するか
A ウイニングの考えかた
B ウイニングの進めかた

16章 疾患別傾向と対策−あくまでも目安です
A コンプライアンスの低下した肺に対して:ARDSを例として
B 気道抵抗の上昇した肺に対して:喘息、COPDを例として
C 人工呼吸器設定の目安

17章 オープンラングアプローチ−肺保護戦略
A 急性肺傷害の病理
B 人工呼吸による肺傷害

参考文献
索引

人工呼吸を行うべきか否か?強制換気とするか、自発呼吸を温存するか?従庄式か従量式か?吸入酸素濃度は?PEEP/CPAP圧は?・・・・・人工呼吸を開始するに当たって決めるべき項目、設定内容は多い。マニュアル的に数値が決められていれば、とりあえず開始できるが、なんとなくスッキリしない気持ちになりはしないだろうか?換気モードの流れ(パターン・流量)、気道内圧の成り立ち、PEEPの概念を心から理解して治療に当たれば、人工呼吸が分かり、患者が人工呼吸器から離脱できれば楽しい仕事になるであろう。
 人工呼吸器と患者が同調しない状態をファイティングというが、その原因が判断できないと上手な人工呼吸器設定はしにくい。これには、理学所見と波形解析が大変役立つ。換気条件や設定値の選択理由や基準を理解していれば、呼吸器設定の基本方針が分かり、最善を尽くせる。肺の改善を待つという時期を乗り切るために、肺の病態・呼吸状態に対して最善の選択をしているという自信を持ちたいものである。つまり、理想的な人工呼吸とその限界を知っている必要がある。
 人工呼吸は、医師、看護師、臨床工学技士、理学療法士、薬剤師、栄養士などさまざまな職種と家族を含めたチームプレーで成り立つ時代となった。急性の人工呼吸を主体とするICUや急性期病棟と、長期人工呼吸、在宅人工呼吸の特徴はそれぞれ異なる。しかし、人工呼吸の原理、人工呼吸を必要とする肺の気道抵抗・コンプライアンスという概念、呼吸中枢の役割は、すべての人工呼吸において知るべき共通事項であり、その内容は職種の枠を超えていると思う。本書はまさにタイトルのごとく、『人工呼吸の考えかた』の分かりやすい説明に主眼を置いた。人工呼吸が苦手と感じている方々のお役に立ち、人工呼吸の指導をしている方々の参考になれば幸いである。
 筆者は以前、南江堂より『周術期輸液の考えかた』を上梓し、輸液の考えかたを強調したが、本書はその人工呼吸版である。
2009年(平成21年)7月
丸山一男

初学者にも読みやすく、また経験者も知識の整理に最適の人工呼吸の解説書
 呼吸器内科医にとってそれは突然やってくる悪夢である。当直時間帯に喘息重責発作の新患がやってきた、普段外来で診ている特発性間質性肺炎の患者さんが救急隊から“O2 10 lでサチュレーション60%です”という通報とともにやってくる、あるいは肺炎で入院中のCOPDの患者さんが錯乱状態になっていると病棟からコールがある……。気管内挿管をして、ベンチレーターにつないで、トリプルルーメンのCVを入れて、家族に病状説明をしてさて一息……。とそんなことの繰り返しと上級医からいろいろ指導を受けてめでたくウィーニングといった案配でベンチレーターになじんでいった諸兄も多いだろう。
 現在のベンチレーターにはコンピュータが内蔵され、ディスプレーにはpressure−time curve、flow−time curve、pressure−volume curveが表示されていて、設定モード・パラメータとも増えている。救急センターに配置された研修医や、経験の浅い医師にとっては何をどうすればよいのか見当もつかないし、経験のある医師でも前の病院と違うベンチレーターだと、とたんに不安に襲われるのではないだろうか。
 本書では初学者でもわかりやすいように人工呼吸の必要性やモードの選択、そしてウィーニングの目安までが解説されている。本書の特徴として麻酔科の権威が非常にていねいに初出の専門用語を解説しながらイラストも多用して、どのような状態が患者さんの呼吸サポートとして理想的であるかを解説している。疾患に対するコメントはむしろ極力控えることで、救急センターの若手医師や、パラメディクスに読み進みやすく構成されている。その意味で、この本はまずはじめから通読して、それから何度でも読み直すべき優れた解説書である。本書で紹介されているが、今日のチーム医療においてはベンチレーターからの離脱にはパラメディクスがいかに呼吸状態の把握をしているかが重要な役割を果たしているのである。また本書では、あえて答えの出ていない問い、たとえばベンチレーター離脱の最良の方法については、いくつかの選択肢がありうることを寛容している。この辺りも単なるマニュアルに陥らず、病態や呼吸に“思いをはせる”著者の姿勢がみてとれる。もちろん、最近のエビデンスをくまなく網羅しており、しばらく本書を超える良書は現れないだろうとうならせる。ICUや呼吸器・神経・循環器内科の病棟で研修医や看護師とともにベンチレーターの勉強会を行う際に、教科書として用いてもよいし、指導医クラスの医師がこっそり自習用に読み通すと目から鱗の発見や、かつて読んだ論文がいまだに覆されていないことを確認することができたりして、どのレベルの読者にとっても有意義な良書であることは疑いない。挿管の技術も大切であるが、抜管までの理論と実践をサポートする手許にぜひ置いておきたい1冊である。
評者● 高井大哉
臨床雑誌内科105巻2号(2010年2月号)より転載