書籍

軟部腫瘍のMRI

編著 : 青木隆敏
ISBN : 978-4-524-24035-7
発行年月 : 2016年9月
判型 : B5
ページ数 : 292

在庫あり

定価8,424円(本体7,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

あらゆる部位に発生し組織型も数多くあるため診断が難しい軟部腫瘍。第一線で活躍する執筆陣が、軟部腫瘍で主流となりつつあるMRIにおいて“どのような所見に注目するか”“どのような手順で診断を進めるか”“どのように鑑別診断を絞り込むか”などを実践的かつ詳細に解説した、これまでになかった一冊。レベルアップしたい放射線科医、整形外科医必読。

section1 軟部腫瘍の診断と治療にあたって
 1 正常解剖
 2 軟部腫瘍の病理分類
 3 MRIの原理および他検査との使い分け
 4 治療方針への情報提供
 5 軟部腫瘍の病理診断
 6 軟部腫瘍の治療法
section2 MRI撮像法
 1 撮像法とコイル
 2 T1強調像
 3 T2強調像
 4 T2*強調像
 5 脂肪抑制像
 6 拡散強調像
 7 造影法
 8 MR angiography
section3 診断のチェックポイント
A.臨床像
 1 頻度(遭遇しやすさ)
 2 好発年齢・性別
 3 好発部位
 4 大きさ
 5 症状
 6 病歴
 7 多発軟部腫瘍の評価
B.MR診断
 1 診断の進め方
 2 脂肪成分を注意深く探す
 3 粘液状基質を注意深く探す
 4 膠原線維成分を探す
 5 出血/ヘモジデリン
 6 嚢胞性腫瘤
 7 flow voidを有する病変
 8 多発病変
 9 リンパ節腫大を伴う病変
 10 押さえておきたい軟部肉腫のMRI所見と注意点
 11 軟部腫瘍を合併する症候群・疾患群
 12 軟部腫瘤を形成する筋炎・筋膜炎
 13 頻度の高い軟部腫瘍のMRI所見のバリエーション
section4 読影レポートの書き方
索引

序文

 軟部腫瘍は数多く、様々な非腫瘍性疾患も軟部組織に腫瘤状の病変を形成するため、画像による軟部病変の診断は容易とはいえない。また、病理形態学的に同一疾患での多様性があり、疾患相互の類似性が認められることによって診断上の混乱を招くことも多い。この軟部腫瘍の画像診断において、中心的な役割を担うのがコントラスト分解能のよいMRIである。
 軟部腫瘍は全身あらゆる部位に発生するため、軟部腫瘍診断におけるMRIの重要性は整形外科のみならず、皮膚科、形成外科、小児科、小児外科、外科、産婦人科、泌尿器科、消化器科、耳鼻咽喉科など多くの臨床医に認識され、軟部病変に対してMRIを施行する機会は増えている。近年、MRIの高磁場化が進んだことで、軟部組織は従来よりも明瞭に描出され、詳細に解析することができるようになった。また、次第に症例が蓄積され、MRIの撮像法やコイル技術が進歩したことも相まって、質的診断(鑑別診断や良悪性の判定)はもちろんのこと、生検の必要性や部位決定、進展範囲や治療方針を決定する情報など、軟部腫瘍におけるMRI診断への要求は強くなっている。
 本書は、軟部腫瘍のMRI診断を行う際に、どのような所見に注目して、どのような手順で診断を進めるべきかを認識し、鑑別診断の絞り込みを含め、MRI画像から診療に必要な画像情報を余すことなく解析できることを目標として企画した。ご繁忙中にもかかわらず、意向を汲み取って執筆の労を執っていただいた先生方には心より感謝申し上げる。おかげで、類書のない軟部腫瘍のMRI診断を網羅した一冊になったと思う。
 軟部腫瘍の画像診断は一筋縄では行かないところが面白い。本書が読者の皆様にとって、軟部腫瘍診断体系の構築に役立つものになれば、無上の喜びである。

2016年8月
青木隆敏

 本書は放射線科医のために書かれた軟部腫瘍診断のための入門書でありながら、ある程度経験を積んだ骨・軟部腫瘍領域を専門とする整形外科医や放射線科医にも知識の整理を行うのによい解説書である。整形外科における骨・軟部腫瘍の領域は、放射線科においてもメジャーではなく専門医は少ない。しかし高齢化により悪性軟部腫瘍の絶対的頻度が高くなっており、正しい画像診断は整形外科医にとっても放射線科医にとっても必須のものとなってきている。また不必要で不適切な治療を行わないためにも、悪性腫瘍と混同する腫瘍類似病変や反応性病変の鑑別は重要である。
 従来の四肢の軟部組織発生の腫瘤性病変を取り扱うMRIの解説書は、多様な良性および悪性腫瘍のMRIを羅列したものが多かった。軟部腫瘍の疾患分類は多岐に渡るうえに、同一疾患でも内部の出血や壊死などの二次変化により個々の腫瘍によっても同じパターンを示すとは限らない。むしろMRI上のさまざまな二次変化の起こりやすさを腫瘍の特徴と考え、診断に臨むべきである。
 本書の特徴は、個々の軟部腫瘍のMRI所見の羅列ではなく、臨床医が軟部腫瘍の治療を開始する前の診断の手順を、臨床現場に即して解説していることである。まず四肢の正常MRIが50頁以上にわたり正確な解剖学とともに掲載されていることは大きな特徴である。頭頚部や胸腹部の画像診断では当然のことが、四肢の軟部組織の画像診断解説書ではほとんど行われてこなかった。特に、構造が複雑な関節周囲を中心に解説されており、本書のこの部分は関節のMRI診断では必携である。
 次いで軟部腫瘍の最新の世界保健機関(WHO)による腫瘍組織分類と病理組織像の解説が提示されている。軟部腫瘍のMRIを理解するためにはおおまかな病理像を理解していることが重要である。すなわち粘液性変化の強い腫瘍、線維化の強い腫瘍、基質を産生する腫瘍、嚢胞性病変などはすべてMRI所見に反映されるからである。また治療を行う整形外科医の立場を知るために、ほかの軟部腫瘍の画像診断法や手術と化学療法を含めた治療戦略が概説されている。
 また軟部腫瘍の臨床像について、頻度、好発年齢と部位、性、大きさ、症状、病歴に注意する点などが詳述されており、なかでも軟部多発性病変のまとめなどはたいへん役に立つものである。これらの臨床情報と病理所見の理解は軟部腫瘍診断に非常に重要であり、画像所見が似ていても、臨床的にまずありえない診断を放射線読影レポートに書かないためには必要な知識であろう。
 本書の最大の特徴とすばらしい点は、実際にMRIを診断する際にどのような手順で読影をすすめていくかを、具体的に示していることである。個々の疾患とMRIの対比に終わるのではなく、臨床所見と病理所見を念頭におき、注意して評価すべきMRI上の領域を正確に指摘している。たとえば嚢腫性病変であるか否か、また病変内に脂肪成分を含む領域の評価や粘液成分の評価、膠原線維の増生、出血とヘモグロビンの存在などから導き出される鑑別診断を解説している。またMRIでしかとらえられないflow voidを有する病変や多発病変をみた場合の診断やリンパ節腫大を伴う疾患の理解などは臨床の場できわめて有用な情報である。本書が述べるように、特に悪性軟部腫瘍は非特異的なMRIを示すために、これらの手順は確定診断の鍵となる所見を見逃さないための訓練ともいえる。
 また、随所に軟部腫瘍と混同しないために、腫瘍状石灰化症、骨化性筋炎、結節性筋膜炎、化膿性筋炎などの非腫瘍性疾患のMRIも提示している。本書に掲載されているすべてのMRIはコントラストがよく美しい。軟部腫瘍の病態をよく理解した専門家のみが執筆された解説書であり、実際の臨床に即したもので、入門書としてもよいが骨・軟部腫瘍の専門医の実用書としても必読と考えられる名著である。

臨床雑誌整形外科68巻1号(2017年1月号)より転載
評者●香川大学整形外科教授 山本哲司