書籍

検査ができない!?専門医がいない!?現場で役立つ呼吸器診療レシピ

  • 新刊

: 長尾大志
ISBN : 978-4-524-23789-0
発行年月 : 2018年3月
判型 : A5
ページ数 : 216

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

プライマリケア医・非専門医に向けて、臨床現場で役立つ呼吸器診療の考え方と実践ポイントを一冊に凝縮。「検査ができない施設で症候からどのように診断をつけていくか?」、「専門医がいない中でどこまで治療を行い、どこから専門医へコンサルトすべきか?」など、各疾患のテキストやガイドラインでは解説がされていない、“プライマリの現場における本当の悩み”を解決すべく、わかりやすくかつユーモアあふれる筆致に定評のある著者がやさしく解説。

I これならできる!“せき”の鑑別診断アプローチ1
 A.急性の“せき”
  1.感冒:せいぜい数日の経過なら
  2.感冒以外の急性感染症を鑑別する
   肺炎を見極める
   閉塞性肺疾患の発作,増悪を診断する
 B.長引く慢性の“せき”
  1.まずは喘息かどうか?
   スパイロメトリーができる場合
   スパイロメトリーができない場合
   ICS/LABAの効果がなかったら
  2.胸部X線写真で異常なし+喘息と決められないときの鑑別は?
   感染性咳嗽:マイコプラズマ,クラミジア,百日咳
   後鼻漏
   胃食道逆流症(GERD)
   気管支結核,気管支内の腫瘍
   慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  3.胸部X線写真で異常ありの場合は何を考える?
  4.こんな咳嗽もあります
   誤嚥
   薬剤性咳嗽
II 非専門でもここまでやれる!診療のポイント
 1.感冒の治療
 2.喘息の治療
  吸入指導はどうするか?:治療アドヒアランス向上のためのキモ38
  ステップダウンの要点:いつまで継続するのか?
  薬物療法の考え方
  ステップアップ?:コントロール不良な場合
  喘息経過中の合併症
 3.COPDの治療
  薬物療法の考え方
  ICSはCOPD増悪を抑制するのか?
  投与の実践
  薬物以外の治療
 4.肺炎の治療
  外来での薬物療法の考え方
  在宅での薬物療法の考え方
  グラム染色ができる施設の場合:グラム染色の結果を基に決定する抗菌薬
  入院可能な施設の場合
  グラム染色なしで行う肺炎エンピリック治療の目安
  レジオネラ肺炎の薬物療法
 5.肺結核,肺非結核性抗酸菌症の診断と治療
  肺結核の診断
  肺非結核性抗酸菌症の診断
  MACの治療:線維空洞型の場合(抗菌薬使用の考え方)
  MACの治療:結節気管支拡張型の場合(治療開始のタイミング)
  MACの外科治療
  MAC以外の肺非結核性抗酸菌症の治療
  肺非結核性抗酸菌症に関して,非専門の先生方にぜひお願いしたいこと
 6.慢性気道感染症の治療:こんがらがった病態とマクロライド問題
  マクロライド耐性の問題(1):非結核性抗酸菌症と慢性気道感染症
  マクロライド耐性の問題(2):増えるマクロライド耐性
 7.肺がん化学療法の考え方
  肺がんのオーバービュー
  基本の考え方
  二次治療
 8.絶対困る間質性肺炎・肺線維症
  間質性肺炎の分類
  原因のある間質性肺炎の診断
  特発性(原因のわからない)間質性肺炎の診断
  INSIP(特発性非特異性間質性肺炎)と診断したら:治療編
  COP(特発性器質化肺炎)と診断したら:治療編
  IPF(特発性肺線維症)と診断したら:治療編
  膠原病性間質性肺炎の治療
  好酸球性肺炎(好酸球増多症)の診断・治療
  間質性肺炎の急性期の対応
  急性期のびまん性肺疾患の取り扱い・まとめ
  慢性期のびまん性肺疾患の取り扱い・まとめ
III そうだったのか!知っておくと役立つドレナージ・漢方の知識
 1.これでよかった?「胸腔ドレナージ」学び直し:気胸・胸水の対応に強くなる
  気胸の機序
  気胸のときの胸腔ドレナージ
  気胸のときの自己血注入
  自己血注入の手順
  気胸のときの胸膜癒着術
  胸水貯留の場合
  がん性胸水の場合
  がん性胸水に用いる薬剤と使用手順
 2.呼吸器が専門でないドクターのための「呼吸器漢方」の基礎知識
  麦門冬湯
  清肺湯
  小青竜湯
  半夏厚朴湯
  柴朴湯
  葛根湯
  麻黄湯
  香蘇散
文献
索引

序文

 滋賀医科大学に赴任して10年以上経ちますが、ずっと変わらないのが、「滋賀県に呼吸器内科専門医が少ない」という課題です。大学で頑張っていて、少しずつ呼吸器内科医を育ててはおりますが、かなりの規模の病院なのに、呼吸器内科医がいないという施設は県下にまだまだたくさんあります。

 全国各地の病院さん、医師会さんでも、伺った先での事情、特に呼吸器診療の実情をお尋ねするのですが、滋賀県同様、いやそれ以上に「呼吸器内科専門医がいなくて困っている」というお話をよく耳にします。

 「このあたりには呼吸器内科医がいないので、気管支鏡をできる施設がない」「気管支鏡は○○先生が昔習ったことがあってできるが、洗浄と採痰ぐらいしかできない」「BAL(気管支肺胞洗浄)ができない」

 「呼吸機能検査は器械もなく、できない」「技師さんが足りずできない」「点数があまり取れないからやっていない」

 「呼吸器内科医がいないので、間質性肺炎の治療は何となくステロイドを投与しているが、これでいいのかわからない」「MAC症と診断したけれども、治療してよいのかどうかわからない」

 「肺がんの化学療法は呼吸器科ではなく○○科医がやっているが、これで正しいのかわからない」

 検査ができない、呼吸器の医師がいない、だから、診断が適当になって、診療そのものまで適当になる…、これでは困るのは患者さんです。日本にはまだまだそういう事情の地域が見受けられる現状があります。事情は事情として仕方がないとしても、その状況でできるかぎり質の高いアウトカムを提供していただくために、どうすればいいでしょうか。

 自分にできることとして、呼吸器に理解がある医師を育てる、ということをミッションとして頑張っていますが、現状を少しでもよくする方策として、情報提供が有用ではないか、と思うに至りました。

 世の中には質の高いガイドラインや書籍がたくさんあり、こういう疾患のときにはこうするのがよろしい、ということはだいたい広まっています。しかしながら、それらはともするとエビデンス至上主義となり、原理主義に陥る危険性もあるのではないでしょうか。

 たとえば、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断にはスパイロメトリーが必須です」、それはまったくおっしゃる通りなのですが、でも現実的に、多くの施設で、いろいろな事情からスパイロメトリーはできません。ではそこに来られた患者さんに対してはどうしたらいいのでしょうか…?

 専門医に行きなさい。それは正論。でも、地方では交通手段の確保もままなりません。通院するのに片道3時間以上、誰かが付き添わなくてはならない…、それでも「専門医に行きなさい」と気軽に言えるでしょうか…?

 専門医に行きなさい、という原理主義と、ここでナントカできないのか、という合理主義。どうにか折り合いをつけることはできないでしょうか、ということです。

 たとえば、地域に呼吸器内科医がいない医師会にお招きいただいて講演をした際に、質疑応答で「でも、ウチでは○○はできないんですけど、実際どうしたらいいですか?」とご質問いただいたので、それにお答えする。質疑応答では、細かなニュアンスがなかなか伝わらないので、それにいろいろと現状のエビデンスをご紹介する。そんな問答集をまとめたものがこの本と考えていただければと思います。

 参考文献は、非専門の先生方が無理なく読み進めていただけるように、日本のガイドラインを中心にご紹介しましたが、こだわりのあるところではちょいちょい英文も挟まっています。

 誤解しないでいただきたいのは、決して「検査なんかしなくてもいい」「呼吸器の医師がいなくてもいい」ということではありません。しかし現状、「検査ができない」「呼吸器専門医がいない」というデメリットをできるだけ回避するには、こういう配慮が必要ですよ、ということをお示しできればと思いました。

 検査がスタンダードとなっているのには、ちゃんと理由があるのです。検査をしないとわからないことがたくさんありますから、検査をしない、ということは相応のリスクがあるということもご理解いただきたいと思います。

 この本は非専門医の先生方が日々診療をしておられる中での「お困りごと」から生まれました。ですから呼吸器のすべての項目を網羅しているわけではありませんし、教科書的な使い方は想定しておりません。少しでも現場で困っておられる先生方のお役に立てれば幸いです。

2018年1月
長尾大志