書籍

整形外科医のための手術解剖学図説原書第5版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

監訳 : 辻陽雄/長野昭
ISBN : 978-4-524-23777-7
発行年月 : 2018年5月
判型 : A4変型
ページ数 : 822

在庫品切れ・重版未定

定価41,800円(本体38,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

整形外科手術における局所解剖と、安全・確実を旨とする基本的なアプローチを、美麗なわかりやすい図を数多く用いて解説。訳本では随所に監訳者らの工夫を加え、後期研修医の定本となっている。今改訂では、章構成の変更や約70点の図版の追加のほか、“Dangers”(注意すべき組織)の項目を中心に記述を強化し、完成度が増した。

整形外科手術手技序説
第1章 肩
 1 鎖骨への前方アプローチ
 2 肩関節への前方アプローチ
 3 肩関節への前方アプローチに必要な外科解剖
 4 肩鎖関節と肩峰下腔への前外側アプローチ
 5 上腕骨近位部への外側アプローチ
 6 上腕骨近位部への外側最小侵襲アプローチ
 7 上腕骨近位部への前外側最小侵襲アプローチ
 8 肩関節への前外側および外側アプローチに必要な外科解剖
 9 肩関節への後方アプローチ
 10 肩関節への後方アプローチに必要な外科解剖
 11 肩関節への関節鏡アプローチ
  関節鏡視の一般的原則
 12 関節鏡後方および前方アプローチ
 13 後方ポータルからの肩関節鏡視
第2章 上腕骨
 1 上腕骨骨幹部への前方アプローチ
 2 上腕骨骨幹部への前方最小侵襲アプローチ
 3 上腕骨への後方アプローチ
 4 上腕骨遠位部への前外側アプローチ
 5 上腕骨遠位部への外側アプローチ
 6 上腕骨遠位部への内側アプローチ
 7 上腕部の手術に必要な外科解剖
第3章 肘関節
 1 肘頭骨切り術を加えた肘関節への後方アプローチ
 2 肘頭骨切り術を加えない肘関節への後方アプローチ
 3 肘関節への前内側アプローチ
 4 尺骨鉤状突起への後内側アプローチ
 5 肘関節への前外側アプローチ
 6 肘窩部への前方アプローチ
 7 橈骨頭への後外側アプローチ
 8 肘関節手術に必要な外科解剖
  肘関節への内側アプローチに必要な外科解剖
  肘関節への前外側アプローチに必要な外科解剖
  肘窩部への前方アプローチに必要な外科解剖
  肘関節への後方アプローチに必要な外科解剖
第4章 前腕
 1 橈骨への前方アプローチ
 2 前腕の前方区画の手術に必要な外科解剖
 3 尺骨骨幹部へのアプローチ
 4 尺骨へのアプローチに必要な外科解剖
 5 橈骨への後方アプローチ
 6 橈骨への後方アプローチに必要な外科解剖
 7 前腕区画症候群に対する前方,後方アプローチ
  前腕屈筋区画の減圧のための前方アプローチ
  前腕区画症候群に対する減圧のための後方アプローチ
第5章 手関節と手
 1 手関節への背側アプローチ
 2 手関節背側の手術に必要な外科解剖
 3 橈骨遠位への掌側アプローチ
 4 手根管と手関節への掌側アプローチ
 5 尺骨神経への掌側アプローチ
 6 手関節掌側の手術に必要な外科解剖
 7 指屈筋腱への掌側アプローチ
 8 指屈筋腱鞘,基節および中節骨への側正中アプローチ
 9 指節骨と指節間関節への背側アプローチ
 10 指屈筋腱の手術に必要な外科解剖
  腱の血行
 11 舟状骨への掌側アプローチ
 12 舟状骨への背外側アプローチ
 13 手における膿瘍ドレナージ
  理想的な手術の条件
 14 爪周囲炎に対するドレナージ
 15 指腹腔感染(ひょう疽)に対するドレナージ
 16 指間腔感染に対するドレナージ
 17 指の指間腔の解剖
 18 母指の指間腔の解剖
  母指内転筋
  第1背側骨間筋
  動脈
 19 腱鞘の感染
 20 深手掌腔の感染
 21 内側腔(手掌中央腔)に対するドレナージ
 22 外側腔(母指腔)に対するドレナージ
 23 深手掌腔の手術に必要な外科解剖
  外側腔(母指球腔)
  内側腔(手掌中央腔)
 24 橈側滑液鞘感染に対するドレナージ
 25 尺側滑液鞘感染に対するドレナージ
 26 手の解剖
  手掌
  手背
第6章 脊椎
 腰椎
  1 腰椎への後方アプローチ
  2 腰椎への後方最小侵襲アプローチ
  3 腰椎への後方アプローチに必要な外科解剖
  4 腰椎への前方(経腹膜)アプローチ
  5 腰椎への前方(後腹膜)アプローチ
  6 腰椎への前方アプローチに必要な外科解剖
  7 腰椎への前側方(後腹膜)アプローチ
 頚椎
  8 下位(C3〜C7)頚椎への後方アプローチ
  9 下位頚椎への後方アプローチに必要な外科解剖
  10 上位(C1〜C2)頚椎への後方アプローチ
  11 上位頚椎への後方アプローチに必要な外科解剖
  12 頚椎への前方アプローチ
  13 頚椎への前方アプローチに必要な外科解剖
 胸椎
  14 胸椎への後側方アプローチ(肋骨横突起切除術)
  15 開胸による胸椎への前方アプローチ
 胸腰椎/脊柱側弯症
  16 脊柱側弯症に対する胸腰椎への後方アプローチ
  17 胸腰椎への後方アプローチに必要な外科解剖
  18 肋骨切除のための後側方アプローチ
第7章 骨盤と寛骨臼
 1 採骨のための腸骨稜への前方アプローチ
 2 採骨のための腸骨稜への後方アプローチ
 3 恥骨結合への前方アプローチ
 4 仙腸関節への前方アプローチ
 5 仙腸関節への後方アプローチ
 6 骨性骨盤へのアプローチに必要な外科解剖
 7 寛骨臼への腸骨鼡径アプローチ
 8 寛骨臼への腸骨鼡径アプローチに必要な外科解剖
 9 寛骨臼への後方アプローチ
第8章 股関節
 1 股関節への前方アプローチ
 2 股関節への前方最小侵襲アプローチ
 3 股関節への前外側アプローチ
 4 股関節への外側アプローチ
 5 股関節への前方,前外側および外側アプローチに必要な外科解剖
 6 股関節への後方アプローチ
 7 股関節および寛骨臼への後方アプローチに必要な外科解剖
 8 股関節への内側アプローチ
 9 股関節への内側アプローチに必要な外科解剖
第9章 大腿骨
 1 大腿骨への外側アプローチ
 2 大腿骨への後外側アプローチ
 3 大腿骨遠位2/3への前内側アプローチ
 4 大腿骨への後方アプローチ
 5 大腿骨遠位部への最小侵襲アプローチ
 6 髄内釘のための大腿骨近位部への最小侵襲アプローチ
 7 大腿骨の逆行性髄内釘のための最小侵襲アプローチ
 8 大腿部の手術に必要な外科解剖
 9 大腿骨への後方アプローチ
第10章 膝関節
 1 膝への関節鏡アプローチ
 2 膝への関節鏡視
 3 内側傍膝蓋アプローチ
 4 内側半月へのアプローチ
 5 膝関節への内側アプローチとその支持組織
 6 膝関節への内側アプローチに必要な外科解剖
 7 外側半月へのアプローチ
 8 膝関節への外側アプローチとその支持組織
 9 膝関節への外側アプローチに必要な外科解剖
 10 膝関節への後方アプローチ
 11 膝関節への後方アプローチに必要な外科解剖
 12 前十字靱帯手術のための大腿骨遠位部への外側アプローチ
第11章 脛骨と腓骨
 1 脛骨外側プラトーへの前外側アプローチ
 2 脛骨近位部への後内側アプローチ
 3 脛骨プラトーへの後外側アプローチ
 4 脛骨プラトーへの後方アプローチ
 5 脛骨近位部への前外側最小侵襲アプローチ
 6 脛骨骨幹部への前方アプローチ
 7 脛骨遠位部への前方最小侵襲アプローチ
 8 脛骨骨幹部への後外側アプローチ
 9 腓骨へのアプローチ
 10 下腿部の手術に必要な外科解剖−区画症候群減圧のためのアプローチ
 11 脛骨髄内釘のための最小侵襲アプローチ
第12章 足関節と足
 1 足関節への前方アプローチ
 2 内果への前方および後方アプローチ
 3 足関節への内側アプローチ
 4 足関節への後内側アプローチ
 5 足関節への後外側アプローチ
 6 外果への外側アプローチ
 7 足関節および後足部への前外側アプローチ
 8 後足部への外側アプローチ
 9 後距踵関節への外側アプローチ
 10 踵骨への外側アプローチ
 11 足関節へのアプローチに必要な外科解剖
 12 後足部へのアプローチに必要な外科解剖
 13 足中央部への背側アプローチ
 14 母趾中足趾節関節への背側アプローチ
 15 母趾中足趾節関節への背内側アプローチ
 16 外反母趾手術のための背外側アプローチ
 17 第2〜5趾の中足趾節関節への背側アプローチ
 18 Morton病に対する背側アプローチ
 19 前足部の手術に必要な外科解剖
第13章 創外固定のアプローチ
 1 上腕骨
 2 橈骨と尺骨および手関節
 3 骨盤
 4 大腿骨
 5 脛骨と腓骨
 6 足関節
索引
 図題索引
 内容項目索引
 用語索引

監訳者の序

 俗に“ホッペンフェルド”とも呼ばれるようになった本書は、創刊から30年余を経て、このたび5回目の改訂が行われた。これに伴い翻訳版もまた各位の要望に応えるべく、内容表現や構成の練り上げなどに可能な限り配慮する一方、臨床の現場にあっても必要となる事項の記載部位を誘導する目印を随所につけるなど利便性にも工夫を施し、ここに第5版として上梓することとした。
 広く整形外科領域の手術において必要不可欠なプロセスとしての“手術アプローチ”は、それがヒトの運動機能体そのものへの侵襲である以上、臨床解剖学に立脚した知と技が、ことのほか厳密に要求されるのは当然のことであろう。創の大小にかかわらず適正かつ安全確実なアプローチとともに、整形外科固有の骨関節手術手技とが両々相俟ってはじめて、手術の質が確保され満足できる好結果が得られるものと信じる。最小侵襲外科が志向される今日においても何ら変わることのない原則でもある。
 かくして私たちは、当初からこの書籍のもつ理念とユニークさ、そして今版では830葉にも及ぶ明解な図版による図解形式に共感してきたのであるが、30年の歴史における1つの節目でもあるこのたびの第5版訳書の上梓にさいしては、改めて本書には将来にわたってわが国整形外科医療、とくに手術における伴侶の1つとして存続すべき任務が付されていると感じられ、今回とくに念を入れた次第である。
 第5版原書では、前腕と下腿部の区画症候群に対する減圧術の充実、脛骨プラトーへのアプローチの追加、骨盤への前方展開路や股関節最小侵襲アプローチをはじめ、種々の項目再編などを加えつつ、全般にわたる見直しもされているが、訳書においては、多くの整形外科研修医の活用も考慮して、より無理なく理解されやすいよう工夫し、加えて図版などに付加的指示や説明、あるいは註釈などを随所に入れた。
 ともあれ本書は解剖学的手術アプローチに特化した運動器外科のあまり類をみない手術基本の書として、術者の目線に合わせた描画形式の集成と称することができよう。
 すでに超高齢化の急激な進行とともに受療者の生き甲斐観や価値観も多様化する中にあって、これからのわが国整形外科医療のニーズはますます高くなってゆくであろう。各位の不断の医療活動に本書が座右にあって、広く活用されることを望んでいる。
 最後に、四半世紀の長きにわたって本書の代表監訳者として多大な情熱を傾けられた寺山和雄先生の御霊に心からの労いと感謝を捧げるとともに、多忙の中、翻訳を担当された各位のご理解とご協力に感謝いたし、あわせて南江堂出版部担当者各位の熱意となみなみならぬご尽力に深謝いたす次第である。

2018年初春
辻陽雄
長野昭

 Stanley Hoppenfeld先生、Piet de Boer先生、Richard Buckley先生共著の“Surgical Exposures in Orthopaedics;The Anatomic Approach.Fifth Edition”の翻訳版『整形外科医のための手術解剖学図説(原書第5版)』(辻陽雄先生、長野昭先生監訳)が発刊された。初版の発刊から30年以上にわたり、整形外科医師に幅広く購入され、われわれにとってはバイブル的な存在である。俗に「ホッペンフェルド」と呼ばれ、整形外科1年生にとっては必須の教科書である。手術前夜には必読し、オーベンからの当日の質問に覚えたての知識を披露した記憶が昨日のことのように思い出される。そして今、小生は整形外科24年生であるが、あらためてその内容を拝読するに、正確な三次元的解剖アプローチ図、色使い、解説、また的確な監訳、すべてに調和がとれ、完成度が高いものと感銘を受ける。
 初版から特筆すべき点は、教育的見地から、浅層の展開と深層の展開が明確に区別されている点と、正確な三次元的解剖アプローチ図である。体表から筋層、さらには深部臓器、骨にいたるまで段階的に描かれている。特に解剖学的に重要な局面では、矢状断像、横断像の解剖図が描かれ、解剖名や学問的知識の習得にたいへん役立つ構成である。微妙な色合いや影を用いた正確な三次元的解剖アプローチ図は、われわれに3D用の眼鏡を付けているかのような錯覚に陥らせてくれる。学会などでのビデオによる手術供覧では平面的で味気ない気分にさせられるが、本書ではそのような印象を感じえない最高の仕上がりとなっている。
 さらに、手術的アプローチを規定する決定的因子であるinternervous planeを活用した点はわれわれに新たな概念を与えてくれた。異なった神経によって支配された筋と筋とが接している面を意味し、この面で展開を行う限り、その筋は麻痺(神経脱落)を生じないことを意味する。初版の序によると、このinternervous planeは、A. K.Henryの最初の記述、すなわち「もし手術の鍵が外科的解剖にあるならば、外科的解剖の鍵はinternervous planeにある」という理念に基づくと記載されている。おそらく日本中の整形外科医はこの概念を常に念頭において現在手術をしていると思われる。
 さて、改編を経て、今回原書第5版が発刊された。原書第5版の序にもあるように、現在のニーズに合わせてさまざまな改良が施行されている。初版から第4版までに、伝統的な骨膜下展開から血流温存の骨膜上展開の概念、また、膝関節、肩関節、脊椎などへの関節鏡、内視鏡手術の概念などを盛り込んでいる。第5版では、若い医師のみで行うことが多い、下腿と前腕のコンパートメント症候群の緊急除圧術の内容や橈骨遠位端骨折へのアプローチを増加し、最新のものとしている。3D-CTを用いることによって詳細に骨折型が術前にわかる脛骨高原骨折に対する手術も、二つの新たなアプローチを追記している。寛骨臼の手術における、腸脛鼡径アプローチに一部改訂を加え、また近年主流となった股関節の前方最小侵襲アプローチも追記された。このように第5版では、研修医目線や低侵襲手術の立場からの改訂も多く、著者らの御努力に感謝する次第である。また、長年にわたり監訳を頂いた諸先輩先生には、あらためて御礼申し上げる次第である。適切で、臨場感にあふれる監訳であり、所々にはいぶし銀のごとく「訳者註」がある。その内容は30年以上での軽度の改訂、用語使用の現状、本邦の実臨床に合致した考えを基に記載された訳者註である。
 最後にHoppenfeld先生は「すべての整形外科アプローチは“Avoid cutting round structure”という一語に集約されるといわれる。本書はいかにその原則を実践するかを示したものである」と述べている。低合併症、低侵襲の手術が叫ばれる中、われわれは利益や機器の開発に没頭し、真の患者アプローチを見失いがちである。アルバート・アインシュタイン大学医学部で行われた整形外科医師のための解剖講義の歴史的集約である本書は、現代に生きるわれわれに多くのことを投げかけてくれている気がしてならない。

臨床雑誌整形外科69巻12号(2018年11月号)より転載
評者●千葉大学大学院整形外科教授 大鳥精司

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