書籍

周術期輸液の考えかた

何を・どれだけ・どの速さ

: 丸山一男
ISBN : 978-4-524-23631-2
発行年月 : 2005年1月
判型 : A5
ページ数 : 198

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

周術期の輸液を行うための考え方、背景となる基礎知識を学ぶ入門書。輸液の量、成分、速度の決定に際して生理学的根拠に基づく判断ができ、多数のイラストと要点をまとめたユーモアあふれる文章からなる解説を読み進むうちに、実際の処方ができる力が身につくよう工夫されている。一人で輸液計画が立てられるようになることを到達目標としている。

第1章 単位を知る
 A. 単位:モルと当量
 B. mOsm/kg・H2O、mOsm/L
 C. 浸透圧モル濃度と浸透圧
 <コラム>
 当量は慣れると便利!
 OsmolalityとOsmolarity

第2章 水はどこへ行く?
 A. 浸透圧が等しくなるよう水が分布
 B. 体内水分布
 C. 組織間液と血漿
 D. ブドウ糖はどこへ行く?
 E. 乳酸リンゲル液はどこへ行く?
 <コラム>
 Donnan平衡

第3章 水と塩で生きる
 A. 毎日の食事からみた水分量と電解質量
 B. 輸液だけで生きるとしたら
 <コラム>
 浸透圧と粒子数

第4章 細胞外液を輸液すると?
 A. 輸液による血液量の変化
 B. 細胞外液の輸液:組織間質にも行く
 C. 健常者に細胞外液を輸液すると
 D. 出血を細胞外液補充液で補うと
 E. 術後患者に細胞外液を輸液すると
 F. 血圧低下と輸液

第5章 脱水をさがせ
 A. 脱水とは
 B. 脱水の原因
 C. 脱水のさがしかた
 D. 水不足?塩不足?どちらも不足?
 <コラム>
 小児の脱水症状と高齢者の脱水症状

第6章 水たまりの出現:サードスペース
 A. サードスペースとは
 B. サードスペースの発見
 C. サードスペースの特徴

第7章 ハイポボレミア
 A. ハイポボレミアとは
 B. 心拍出量はいかにして決まるか?
 C. ハイポボレミアの診断
 D. ハイポボレミアの治療:輸液負荷

第8章 乏尿
 A. 尿の生成
 B. 尿量減少
 C. 腎前性高窒素血症
 D. 乏尿を発見したら
 E. 尿所見による腎前性腎不全とATNの鑑別
 <コラム>
 腎機能のポイント

第9章 ナトリウム
 A. 血清ナトリウムの測定
 B. 低Na血症
 C. 高Na血症
 <コラム>
 低Na血症の落とし穴
 周術期の低Na血症

第10章 術中輸液計算
 A. 水分量の計算
 B. 電解質量の計算
 C. 輸液の選択

第11章 漏れやすい血管と輸液
 A. アルブミンが漏れる
 B. 血管透過性亢進の診断
 C. セプシス患者の循環動態
 <コラム>
 体内のアルブミン

第12章 外科侵襲と水の動き
 A. 術後数日の尿量に注目
 B. バランス物語
 C. 輸液バランスの推移を追う
 D. 麻酔・鎮痛・鎮静に注意

第13章 バランスシートを考える
 A. INバランス
 B. OUTバランス
 C. 失敗例から学ぶ:バランスでNa濃度を考える

第14章 違いがわかる輸液製剤
 A. 細胞外液補充液
 B. 維持液
 C. 開始液(1号液)
 D. 開始液と脱水

第15章 肺水腫
 A. 正常肺胞壁での水の動き:肺間質への液漏出と汲み出し
 B. 肺水腫の発生
 C. 輸液量と肺水腫

周術期輸液とは、本質をシンプルにいいかえるなら、けがの前後の輸液である。手術そのものは、コントロールされた外傷(けが)であり、出血や浮腫、サードスペースの出現を伴う。周術期には感染を併発しやすく、セプシスを併発すれば血管透過性が変化し漏れやすい血管となる。入れすぎで肺水腫の心配をし、足らないと腎不全にならないかと気を配る。「何を、どれだけ、どの速さ」で入れるのか? まずは開始してみて様子(血圧、脈拍、尿量、中心静脈圧などの血管内圧、皮膚のハリ、電解質濃度)をうかがい、次を考える。実際の具体的な数値で輸液計画を指示しなければならないが、輸液製剤の選択理由、投与速度や予定量の決定理由をはっきりさせて、すっきりしたいものである。学生や研修医・看護師の方々は、納得の輸液を身につけたいと本当は思っているのだけれども、日々追われているので深く追求することなくマニュアル的な輸液(××mL/kg/時)に陥っているのではないだろうか。
 本書は、具体的な数値もさることながら、「輸液の考えかた」を手術、外傷、熱傷、セプシスなどの侵襲時に応用できるよう焦点を絞って説明した。個々の症例で、輸液した結果、予測や期待と違う結果(尿量、理学的所見、検査値など)が得られたとき、どのように考え、説明するのか? 体内で何が起こっているのか合点がいけば、明日からの輸液が上達するほずである。料理に例えるならレシピというより、どうしてそのレシピができたのかを解説することに主眼を置いた。
 今の教育は小学校から、「生きる力」を育むことが目標となっている。生きる力とは問題解決能力であり、記憶力より考える力のほうが困ったときに役立つということであろう。巻頭のフローチャートでは、輸液計画における各章の役割を示した。木を見て森を見ないことを避けたいと思うのである。
 原始、生命は海から生まれた。水と塩の動きの原則に沿って考えれば、輸液がわかりやすくなると思う。輪液が苦手と感じている方々のお役に立ち、輸液の指導をされている方々の参考になれば幸いである。
2005年1月
丸山一男

輸液療法は、外科、内科いずれの診療領域を問わず、基本的な治療法の一つである。現在多くの病院ではオーダリングシステムを用いて、24時間あるいは一定時間の輸液処方をオーダーするのが、研修医はじめ担当医の重要な日常業務になっている。このさい、患者の体重や尿量、電解質測定値などが自動取り込みされて輸液の質や量、速度などを指示し、誤った処方にはアラームを出すような輸液オーダリングシステムがよく用いられている。しかしながら、そのようなオーダリングはコンピュータ任せのマニュアル的な輸液処方ともいえる。一歩すすんでオーダーメイドの輸液療法を行うには、病態の理解とともに輸液の基本を学ぶ必要がある。しかし、輸液療法についての解説書は数多く出版されているものの、輸液の理論から実践までをわかりやすく解説した書物は数少ない。

 このたび南江堂から出版された本書は、輸液の理論から実践までを初心者にもわかりやすく説明した数少ない解説書である。まず輸液療法の基本であるモル、当量、浸透圧などの単位、水分や電解質の体内分布、細胞内外移動、バランスなどについて、簡単な数式とイラストで解説している。とくにイラストが、むずかしい理論の理解におおいに役立っている。次いで、周術期の輸液療法について、脱水の原因、診察法、症状からの体液異常の診断方法が述べられている。なかでも、侵襲期の輸液療法を理解するうえで必須のサードスペースについてのやさしい解説は、これまでの類書ではみられなかったものである。さらにハイポボレミア、乏尿、電解質異常についての記述も初心者に理解しやすい。加えて、著者の実践的な経験に裏打ちされた術中から術後、セプシス、肺水腫などでの輸液療法も具体的に記述されている。

 本書のタイトルは、「周術期輸液」となっているものの、その解説は輸液の基礎事項から侵襲期輸液までをも広くカバーしている。そして本書は、おもな読者対象を学生、研修医、看護師に想定しているようである。しかし本書は、輸液療法の基礎と実践の知識の整理におおいに役立つことから、これらの読者対象のみならず、研修を終えて専門医を目指す卒後3年目以降の外科系医師、さらには輸液療法を指導しているさらに上級の外科医にも、ぜひ一読をおすすめしたい。

評者●齋藤英昭(杏林大学医療管理学教授)
臨床雑誌外科67巻10号(2005年10月号)より転載