書籍

消化器疾患最新の治療2023-2024

編集 : 山本博徳/瀬戸泰之/吉治仁志
ISBN : 978-4-524-23367-0
発行年月 : 2022年12月
判型 : B5
ページ数 : 472

在庫あり

定価11,000円(本体10,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

2年ごとの改訂で,年々進歩する消化器疾患における治療指針と最新の情報を簡潔に提供.巻頭トピックスでは, 「消化器疾患におけるビッグデータ活用(内科,外科)」や, 「消化器疾患における遠隔診療の展望」,「肝癌診療の最新ガイドライン」 など,話題の 9 テーマを取り上げる.各論では各疾患の主要な治療法はもちろん,「患者への説明のポイント」や「最新の動向」,治療における豆知識や禁忌などのコラムを豊富に掲載.消化器診療に携わる医師,研修医にとって,知識のアップデートに欠かせない一冊.

巻頭トピックス
   1.消化器疾患におけるビッグデータ活用―内科[全国内視鏡データベース「JED(Japan Endoscopy Database)」の内容を中心に]
   2.消化器疾患におけるビッグデータ活用―外科(National Clinical Database)
   3.消化器疾患における遠隔診療の展望
   4.感染対策を考えた内視鏡診療(新型コロナウイルス感染症対策を中心に)
   5.再生医療における内視鏡の役割
   6.H. pylori除菌後胃癌の内視鏡診断
   7.ACLFの最新知見
   8.肝癌診療の最新ガイドライン
   9.胆膵疾患における超音波内視鏡の進歩

T 消化器疾患の治療法
   1.栄養療法
   2.内視鏡的止血法
   3.ステント治療
   4.胃瘻造設とその管理
   5.消化器癌の緩和ケア

U 主要な消化器症状へのアプローチ
   1.腹痛
   2.悪心・嘔吐
   3.吐血,下血,血便
   4.下痢
   5.慢性便秘

V 消化管疾患
 A.食道
   1.アカラシア
   2.食道炎,食道潰瘍およびGERD,NERD
   3.食道・胃静脈瘤
   4.食道癌
   a.内視鏡的治療
   b.外科的治療
   c.化学療法,放射線療法,狭窄対策
 B.胃・十二指腸
   1.急性胃炎,びらん性胃炎,AGML
   2.Mallory-Weiss症候群
   3.慢性胃炎
   4.機能性ディスペプシア
   5.消化性潰瘍
   a.薬物治療指針
   b.H. pyloriの除菌療法
   c.NSAIDs潰瘍の治療
   6.消化性潰瘍の合併症
   a.内科的治療
   b.外科的治療
   7.胃MALTリンパ腫
   8.胃癌
   a.早期胃癌の内視鏡的治療(腺腫を含む)
   b.早期胃癌の外科的治療
   c.進行胃癌の外科的治療
   d.切除不能胃癌の治療
   9.胃術後障害
  10.表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の内視鏡的治療
 C.腸
   1.腸管感染症
   2.抗菌薬関連腸炎
   a.出血性大腸炎
   b.Clostridioides(Clostridium)difficile感染症
   3.吸収不良症候群
   4.蛋白漏出性胃腸症
   5.急性虫垂炎
   6.潰瘍性大腸炎
   7.Crohn病
   8.腸結核
   9.虚血性腸炎
  10.過敏性腸症候群
  11.小腸腫瘍
  12.mid-GI bleeding
  13.大腸ポリープ,ポリポーシス
  14.大腸癌
   a.早期癌
   b.進行結腸癌
   c.進行直腸癌
  15.大腸憩室の合併症
   a.内科的治療
   b.外科的治療
  16.腸閉塞
   a.成人の場合
   b.小児の場合
  17.偽性腸閉塞
  18.放射線性腸炎
  19.腸管Behçet病,非特異性多発性小腸潰瘍症
  20.痔核,痔瘻,裂肛
 D.消化管全般にわたるもの
   1.急性腹症
   2.好酸球性消化管疾患
   3.膠原病の消化管病変
   4.消化管リンパ腫
   5.消化管神経内分泌腫瘍
   6.消化管間質腫瘍
   7.横隔膜ヘルニア
   8.鼠径部ヘルニア

W 肝・胆・膵疾患
 A.肝
   1.A型肝炎,E型肝炎
   2.B型急性肝炎
   3.急性肝不全,劇症肝炎
   4.B型慢性肝炎
   5.C型肝炎
   6.自己免疫性肝炎
   7.薬物性肝障害
   8.アルコール関連肝疾患(アルコール性肝障害)
   9.NAFLD/NASH
  10.肝硬変
   a.一般的治療,外来管理
   b.肝性脳症
   c.腹水
  11.原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎
  12.代謝性肝疾患
  13.肝膿瘍
  14.肝囊胞
  15.肝良性腫瘍
  16.肝細胞癌
   a.TACE,動注療法,全身化学療法
   b.アブレーション
   c.外科手術と集学的治療
  17.胆管細胞癌(肝内胆管癌)
  18.転移性肝がん
  19.生体肝移植
 B.胆
   1.胆道閉鎖症
   2.胆道感染症
   3.胆囊・胆管結石症
   a.内科的治療
   b.外科的治療
   4.胆囊・胆管癌
 C.膵
   1.急性膵炎
   a.内科的治療
   b.外科的治療
   2.慢性膵炎
   a.内科的治療
   b.外科的治療
   3.膵囊胞性疾患
   4.膵癌

巻末付録
 主な消化器系薬剤一覧表
 A 消化性潰瘍治療薬
   1 プロトンポンプ阻害薬(P-CAB含む)
   2 H2受容体拮抗薬
   3 選択的ムスカリン受容体拮抗薬
   4 抗コリン薬
   5 制酸薬
   6 ベラドンナアルカロイド
   7 プロスタグランジン製剤
   8 防御因子増強薬
   9 配合剤
  10 H. pylori除菌薬
  11 H. pylori感染診断薬
 B 胃腸機能調整薬
 C 健胃消化薬
   1 健胃薬
   2 消化酵素薬
 D 炎症性腸疾患治療薬
 E 過敏性腸症候群治療薬
 F 止痢薬・整腸薬
 G 下剤
 H 肝・膵治療薬
   1 肝疾患治療薬
   2 肝不全治療薬
   3 抗肝炎ウイルス薬
   4 免疫抑制薬
   5 膵疾患治療薬
   6 その他
 I 利胆薬
   1 催胆薬
   2 排胆薬
 J 抗菌薬
 K 消化吸収阻害薬
 L 代謝機能活性薬
 M 抗肥満薬・消化管ホルモン関連薬
 N 消化器癌に用いられる抗悪性腫瘍薬
 O 抗悪性腫瘍薬による悪心の防止薬
 P その他の消化器系薬剤
   1 アカラシア治療薬
   2 痔疾患治療薬
 Q 漢方薬

 「消化器疾患最新の治療」は,消化器病専門医はもちろんのこと,消化器領域を専門としない医師・医療関係者にとっても消化器病診療の進歩を簡潔に解説する書籍として,これまで多くの先生からご好評をいただいてきました.本書は2年ごとに改訂を行っており,今回の2023–2024版は第18版となります.全体の構成としては,これまでと同様「巻頭トピックス」,「消化器疾患の治療法」,「主要な消化器症状へのアプローチ」,そして各消化器疾患の基本および最新の治療法について内科および外科といったさまざまな立場から解説されています.
 今回の「巻頭トピックス」には,この2年間に注目された消化器病に関する新たな医療知識としての9項目を設けました.内科・外科それぞれの立場からみたビッグデータの活用,新型コロナウイルス感染症対策を考えた内視鏡診療,2022年に改訂された肝癌診療ガイドライン,わが国における定義が提唱された肝硬変を基礎疾患として急激に生じる肝不全であるACLF(acute-on-chronic liver failure)など最新のトピックスを網羅しています.
 各消化器疾患については,冒頭に「患者への説明のポイント」を箇条書き形式で簡潔にまとめたあとに,原則として「疾患の解説」,「診断と検査」,「治療の一般方針」,「生活指導」に分けて記載されています.さらに,最新の進歩・話題をわかりやすく説明するために必要に応じて「最新の動向」や「TOPICS」として記載させていただきました.その他にも役立ちそうな情報を「役に立つ豆知識」として,また,一歩進んだ治療やピットフォールを「治療の奥の手」,「治療のご法度」として紹介しております.前版と同じ疾患項目であっても,この2年間に明らかとなったエビデンスを盛り込み,各疾患における最新の情報を得ることができます.
 近年の医学の進歩は急速であり,消化器疾患の診療においても年々新しい進歩がみられています.最新の情報を得て患者さんに最善の医療を提供し続けていくためには,正確な知識を習得していく努力は欠かせません.最新かつ正確な情報を適切かつコンパクトにまとめて編集している本書を,皆様の明日からの日常診療に役立てていただければ幸いです.

2022年11月
編集者一同

代わっても変わらない良書

 評者が「消化器疾患最新の治療」を初めて手にしたのは2003年であった.2003—2004年版の本書が医局の本棚に残っており,久しぶりに開いてみた.現在と同じような構成であり,巻頭特集として7項目が組まれていた.うち3項目はウイルス性肝炎関連で,「C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法の新しい展開」「B型慢性肝炎に対するラミブジン療法」「E型肝炎の現況」であった.至極当然ではあるが,この構成に時の流れを感じた.その頃から20年が経過しようとしており,今まさに本書の最新版の書評を執筆する機会をいただき,感慨深いものがある.
 本書は2年ごとに改訂が行われ,全体の構成としては「巻頭トピックス」「消化器疾患の治療法」「主要な消化器症状へのアプローチ」,そして各論として各消化器疾患の基本と最新の治療法について,内科および外科の立場などから解説されている.
 この2年の間にアップデートされた最新の知見などについては「巻頭トピックス」として詳しく記載されており,今回は九つのテーマが取り上げられている.そのうちのいくつかをここで紹介したい.まず,全国内視鏡データベースであるJapan Endoscopy Database(JED)と全国手術症例データベースであるNational Clinical Databaseが最初の2項目として据えられている.厚生労働省が推進しているデータヘルス改革において鍵となるものがビッグデータの活用であり,今後の消化器領域の発展に欠かせないものである.また,2020年より世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症は日本の医療に大きな影響を及ぼしており,医療サービスにおいては広くオンライン化が行われ,消化器領域では,内視鏡診療において個人防護具(personal protective equipment:PPE)の着用,内視鏡室のゾーニングなど,よりいっそうの感染対策が要求されている.本書の巻頭トピックスでは,こうしたWithコロナ時代の診療のあり方についても述べられている.さらに,近年の肝細胞がんに対する薬物療法の開発は目覚ましく,2021年に改訂された「肝癌診療ガイドライン」に沿った最新の肝細胞がん治療アルゴリズムが同じく巻頭トピックスで取り上げられている.
 第T章では,「消化器疾患の治療法」として,「栄養療法」「内視鏡的止血法」「ステント治療」「胃瘻造設とその管理」「消化器癌の緩和ケア」について,体系的に解説されている.第U章では,「主要な消化器症状へのアプローチ」として,日常臨床で遭遇する機会が多い症状である腹痛,悪心・嘔吐,吐血・下血・血便,下痢,慢性便秘が取り上げられており,それぞれ診断,検査,治療について非常にわかりやすくコンパクトに解説されている.そして,第V章では「消化管疾患」,第W章では「肝・胆・膵疾患」がそれぞれ各論として取り上げられている.ここでは,知っておくべき頻度の高い疾患や知っておくとためになる疾患について,最新のエビデンスを交えながらエキスパートが丁寧に解説している.
 近年の医学・医療の進歩は急速であり,さらに専門領域の細分化が進む現代医療において,知識を常にアップデートし続けることは容易ではない.本書は内科および外科の立場からきめ細やかに,日常診療に必要な内容が網羅されており,消化器専門医のみならず非専門医にとっても必携の書といえるであろう.

臨床雑誌内科131巻6号(2023年6月号)より転載
評者●自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科 准教授 松本吏弘

 『消化器疾患最新の治療』は,専門医だけでなく消化器領域を専門としない医師・医療関係者にも最新トピックスを簡潔に解説することを目的としているため2年ごとの改訂を重ね,本書が第18版の非常に歴史のある書籍である.
 本書の巻頭トピックスで扱われているのは,ビッグデータの活用や内視鏡診療における新型コロナウイルス感染対策などであるが,消化器診療に当たる医療者が知りたい情報を図表およびカラー写真を多く用いて解説しており,必要な知識をもれなく提供しているといっても過言ではない.このような多大なる労力を2 年ごとに18 版まで重ねてこられており,著者の先生方には心より敬意を表すると同時に,編集者である山本博徳先生,瀬戸泰之先生,吉治仁志先生のこの領域でのリーダーシップをうかがい知ることができる.
 各消化器疾患の項では冒頭に「患者への説明のポイント」が箇条書で提示されており,専門医をめざす先生にはインフォームド・コンセントの前にぜひ熟読していただきたい完成度の高い内容となっている.続けて「最新の動向」も簡潔に記載されており,この項があることにより専門医にも必要な情報を提供しているのが本書の真骨頂である.それだけでなく,通常の医学書にありがちな長文の羅列はなく,「TOPICS」,「役に立つ豆知識」,「治療の奥の手」や「治療のご法度」が絶妙に配置されており,読み物としても読者の知識欲を十分満足させる内容になっている.
 また,本書のもう一つの特徴として,使用されている用語や構成が統一されており,これも理解しやすさの助けになっている.具体的な処方例の提示は用法・用量まで記載されており,本書が医師だけでなくすべての医療者に向けてつくられた教科書であること明確にしている.
 これらの工夫によりたいへん読みやすく,筆者自身もどんどん知識量が増えていくのがわかる良書であるが,読み終わったときに感じたのは項目を任された各先生の責任感とプライドの化学反応に対する畏敬の念であった.
 医学の進歩は急速であるが,医療者は常に最新の情報を得て患者に最新の医療を提供する義務がある.本書は消化器疾患にかかわるすべての医療者に推薦したい一冊である.

臨床雑誌外科85巻6号(2023年5月号)より転載
評者●高知大学消化器外科教授・瀬尾 智

9784524233670