書籍

みんなの疑問はこれで解決 できる!糖尿病診療

: 辻本哲郎
ISBN : 978-4-524-23157-7
発行年月 : 2022年7月
判型 : A5
ページ数 : 308

在庫あり

定価4,180円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

食事療法,運動療法,薬物療法,何となくでやっていませんか?『糖尿病診療ガイドライン2019』の作成に携わった著者が,エビデンスと実践を結びつける解説で,糖尿病診療の疑問をスッキリ解決!これから糖尿病診療を学びたい,あるいはもう一度糖尿病診療を見直そうとしている医療者に向け, 糖尿病診療の「ここは押さえておきたい」という内容 とその根拠を簡潔にまとめた. 糖尿病診療に関する最新知識が得られ, 診療の実践にも自信をもつことができる1冊.

第T章 まずはここから! 押さえておきたい糖尿病診療の7つのポイント
 1.糖尿病はどんな病気か
 2.糖尿病の診断と注意点
 3.糖尿病にもいろいろある
 4.血糖コントロールの必要性
 5.血糖値の下げすぎに注意
 6.目標血糖値は人それぞれ
 7.血糖値を見るのではなく糖尿病患者を診る

第U章 2型糖尿病診療のコツ
A.食事療法
 1.理想的なBMIと栄養摂取比率は?
 2.やせたいんですけど…
 3.糖尿病患者に対する理想的な食事
 4.食べ方はどうしましょう?
 5.実際に食事指導をしてみよう
B.運動療法
 1.運動の効果は?
 2.運動はいつ何をすれば良い?
 3.実際に運動療法を指導してみよう
C.経口血糖降下薬
 1.ビグアナイド薬って昔の薬?
 2.進撃のSGLT2阻害薬
 3.みんな大好きDPP-4阻害薬
 4.SU薬は危険な薬?
 5.α-GIは食後高血糖に対するスペシャリスト
 6.グリニド薬で診療の幅を広げよう
 7.チアゾリジン薬は難しい
 8.GLP-1受容体作動薬の経口薬が登場
D.注射製剤
 1.注射製剤の使用で何が変わる?
 2.GLP-1受容体作動薬はできすぎ!?
 3.インスリンを使うのは最後の手段?
 4.インスリンの使い方・考え方
 5.1日1回のインスリンから始めよう
 6.2つの成分が入った注射製剤は便利?
E.血圧管理を忘れていませんか?
 1.血圧の目標値は?
 2.血圧はいつどこで測定するの?
 3.高血圧の治療
F.脂質は基準値内で十分ですか?
 1.血中脂質の目標値は?
 2.脂質異常症にお勧めの食事
 3.脂質異常症に対する薬剤治療
G.検査・その他
 1.継続的な受診に必要なこと
 2.その血糖値は空腹時?食後?
 3.なぜHbA1cが下がらない?
 4.HbA1cと血糖値の乖離に御用心
 5.間歇スキャン式持続血糖測定のすゝめ

第V章 こんな場合はどうしましょう?
 1.腎機能が低下していたら
 2.肝機能が低下していたら
 3.高齢糖尿病患者を診る
 4.周術期や重症患者の血糖コントロール
 5.著明な高血糖に出会ったら

代表的な糖尿病治療薬一覧

はじめに

 糖尿病診療は昔に比べて新規薬剤が非常に増えています.そして,治療に対する考え方が大きく変わっています.しかし,糖尿病を専門にしていない医療者にとっては,たとえ有用な情報が断片的に入ってくる状況があったとしても,その内容を自分ひとりで理解し実行するのは難しいことだと思います.結局,今までの診療スタイルをどう変化させればよいかわからず,情報を整理できないまま昔得た知識のまま同じような診療が続いているかもしれません.
 今回,これから糖尿病診療を学びたい人やもう一度糖尿病診療を見直そうとしている人に向けて,まずは現時点の一般的な糖尿病診療のここまでは理解して欲しいという内容を一冊にまとめました.医師だけでなく,看護師,薬剤師,管理栄養士,臨床検査技師,理学療法士など糖尿病診療にかかわるすべての医療者が参考になるように心がけました.糖尿病に関する本は数多く出版されていますが,糖尿病専門医に向けた本が多かったり,糖尿病診療というよりは血糖コントロールに限定した薬物療法の本が多かったりします.しかし,糖尿病診療は糖尿病専門医だけが行っているものではなく,また,血糖コントロールだけを行えばよいというものでもありません.そして,次々に新規薬剤が登場することで薬物療法が注目されるのは当然のことかもしれませんが,治療の根本である食事療法や運動療法を学ぶ機会はほとんどありません.さらに,患者の視点として医療費は受診中断にもつながりうる重要な点なのですが,医療者側では効果ばかりを追いかけて,医療費がどの程度患者の負担になっているかを意識せず診療していることも多いかもしれません.
 本書では,そのような点をカバーしながら,実際に糖尿病診療で考えなければいけない内容を中心に,エビデンスを示しながら可能な限りわかりやすく解説しました.そして,単に知識が増えただけで終わらないように,得た知識を行動に移せるよう具体的な内容を意識しました.
 これからの糖尿病診療を支える皆様にとって本書がお役に立てば幸いです.

理論と現実を繋ぐ書,日々の糖尿病診療に必携の一冊

 『みんなの疑問はこれで解決 できる!糖尿病診療』は,エビデンスの理解だけではなかなかに難しい糖尿病診療を,無理なく躊躇なく進めることができるようにと記述された好個の一冊である.具体的には,この分野の,例えば初心者であっても,「日々,自信をもって糖尿病の診察にあたり,スムーズな意思決定を示せるように」という著者の心遣いが,いわば“親心”でもって十二分に梱包され,臨床における手順と考え方とについて,優しく懇切丁寧に説き進められた,易くは得がたいキラリと光る書物である.
 著者の辻本哲郎氏は,評者が国立国際医療研究センターに在職中に,初期研修医として内科研修を開始され,その後,糖尿病・代謝・内分泌科の後期研修医として研鑽の道を歩まれた.さらには,同センターにおいて,医員として多くの若手医師の教育にも携わった経験を有する有為の医師である.この間,辻本氏は糖尿病,内分泌をはじめとする多くの専門医,指導医を取得されるとともに,臨床研究にも強い志をもち,日夜,前進を続けられた.その後,氏は虎の門病院分院の糖尿病内分泌科の医長へと転ぜられ,忙しい日常を過ごしているものと拝察する.評者のもとから巣立ったあとも,梶尾 裕 国立国際医療研究センター副院長,森 保道 虎の門病院内分泌代謝科部長のもとで,臨床,そして研究にと,幅広く,積極的に,縦横に邁進されている.今後のますますの活躍を期待したい.本書では,その辻本氏によって,様々な薬剤の特徴や,個々に応じた血糖値や血圧の管理目標の設定のしかた,あるいは食事療法の実際の進め方など,初学者がとくに疑問に感ずる多くのポイントについて,彼らしい柔らかな口調で解説されている.
 ところで,辻本氏の著書には「みんなの」がタイトルに含まれることが多い.これには,専門医として上から目線をとることなく,読者と同じ地平に立って論を進めようという,彼の元来の気質が如実に現れているものと愚考する.本書は,このような彼の人柄そのままに,エビデンスとナラティブのいずれにも傾き過ぎることなく,糖尿病診療の理論と現実を繋ぐべく,ですます調の易しいトーンで記載されている.そして,おそらく,「できる!糖尿病診療」という書名にも二つの謂があって,「あなたもできる」という外形的な意味合いから,「おぬし,できるな!」に至るという,二つの含意の掛詞になっているのであろう.氏の語り口に合わせて,あまりくだけない私も少しくだけてきた.
 著者の豊富な臨床経験と,著者自身が構築したものを含む最近までのエビデンスに基づいて,糖尿病診療に必須の内容が本書の中には手際よく纏められている.手軽に読み進められるにも拘わらず,その内容が必ずや読者の血肉となるであろう本書を,是非とも皆様の書架にお加えいただければ幸いである.

臨床雑誌内科132巻5号(2023年11月号)より転載
評者●野田光彦(国際医療福祉大学市川病院 教授)

9784524231577