書籍

CE技術シリーズ

人工心肺

編集 : 四津良平/平林則行
ISBN : 978-4-524-22407-4
発行年月 : 2015年10月
判型 : B5
ページ数 : 290

在庫あり

定価5,724円(本体5,300円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

人工心肺を扱うメディカルスタッフに求められる知識と技術をわかりやすく解説した指南書。各疾患・手術に即した解説により、人工心肺使用時の病態生理や人工心肺機器の扱い方、さらにそれぞれの手術手技の概要と人工心肺の特徴・リスクマネジメントなど、臨床現場で求められる知識を網羅。人工心肺を扱うメディカルスタッフ必携の一冊。

第1章 人工心肺とは
 I.人工心肺の歴史
 II.人工心肺の原理と低侵襲体外循環回路
  A.人工心肺の基本構造
  B.閉鎖型体外循環回路:mini−circuitとは
第2章 人工心肺に必要な循環生理
 I.解剖
  A.血管の解剖と血液循環
  B.脱血路(静脈カニュレーション)
  C.送血路(動脈カニュレーション)
  D.心筋保護のためのカニューレ挿入部位
  E.左心系のベントのためのカニューレ挿入部位
 II.血液ガス
  A.血液ガス分析
  B.人工心肺中の血液ガス測定
 III.酸塩基平衡
第3章 人工心肺装置
 I.血液ポンプ
  A.ローラーポンプ
  B.遠心ポンプ
 II.人工肺
  A.ガス交換膜
  B.構造と特性
 III.血液回路
  A.体外循環回路
  B.付属回路
 IV.カニューレ
第4章 人工心肺の実際
 I.情報収集
 II.準備からカニュレーションまで
  A.人工心肺回路の組み立て
  B.回路の充填
  C.各部の点検
  D.カニュレーション
 III.実際の操作
  A.体外循環開始
  B.冷却
  C.完全体外循環
  D.大動脈遮断
  E.心筋保護液注入
  F.体外循環維持
  G.復温開始
  H.大動脈遮断解除
  I.体外循環離脱
  J.体外循環終了後の処理
第5章 人工心肺とモニタリング
 I.心電図
 II.血管内圧モニタ
 III.心拍出量モニタ
  A.肺動脈カテーテル
  B.低侵襲心拍出量モニタ
 IV.中枢神経系モニタ
  A.処理脳波モニタ
  B.誘発電位モニタ
  C.脳オキシメトリ
 V.凝固系モニタ
  A.ヘパリン活性モニタ
第6章 人工心肺時の麻酔
 I.人工心肺の生体への影響
  A.炎症反応
  B.非拍動性
  C.血液希釈
  D.低体温
  E.溶血
 II.心臓麻酔と麻酔薬
  A.吸入麻酔薬
  B.静脈麻酔薬
  C.麻薬
  D.筋弛緩薬
 III.人工心肺時の麻酔薬による影響
  A.血液希釈,吸着
  B.低体温
 IV.運動誘発電位と麻酔薬
 V.呼吸管理
  A.人工心肺中の呼吸管理
  B.分離肺換気
 VI.人工心肺中の循環管理
 VII.人工心肺離脱時の循環管理
  A.離脱の手順
  B.離脱困難とその対応
 VIII.中枢神経系合併症とその管理
  A.脳合併症
  B.脊髄保護
 IX.血液凝固系の管理
  A.ヘパリン
  B.プロタミン
  C.ヘパリン抵抗性
  D.人工心肺による止血凝固異常と対処
第7章 人工心肺時に必要な経食道心エコーの知識
 I.経食道心エコーの位置づけ
 II.人工心肺開始前
  A.心機能評価
  B.術前診断の再評価
  C.人工心肺に関連する経食道心エコー所見
  D.動脈硬化性病変の評価
 III.人工心肺開始時
  A.送血カニューレの挿入
  B.脱血カニューレの挿入
  C.心筋保護液注入
 IV.人工心肺離脱時
  A.心腔内遺残空気の除去
  B.人工心肺からの離脱
  C.手術結果の評価,合併症の検索
第8章 心筋保護法
 I.心筋保護法の歴史
 II.心臓手術時の心筋障害
  A.心筋虚血
  B.虚血再灌流障害
 III.心筋保護を効果的に行うための要件
  A.迅速な心停止
  B.低温維持
  C.エネルギー(ATP)生成のためのエネルギー基質(糖分,酸素)の供給
  D.適切なpHの維持
  E.細胞膜の安定化
  F.心筋浮腫の回避
 IV.心筋保護液の組成
  A.電解質(K,Na,Ca)
  B.付加保護物質
 V.血液添加心筋保護液(blood cardioplegia)
  A.付加保護物質
 VI.各種心筋保護法
  A.warm blood cardioplegia
  B.warm induction
  C.terminal warm blood cardioplegia(TWBCP,hot shot)
  D.controlled aortic root reperfusion(CARP)
  E.tepid cardioplegia
  F.逆行性心筋保護法(retrograde cardioplegia)
 VII.心筋保護効果の評価
  A.大動脈遮断から心停止までの時間
  B.心停止後の心臓触知
  C.再灌流時の心室細動
 VIII.心筋保護法の限界
第9章 体外循環の病態生理
 I.血行動態の変化
  A.平均動脈圧
  B.灌流量
  C.血液希釈
  D.全身への酸素供給
  E.定常流と拍動流
 II.水分バランスの変化
 III.血液損傷,溶血
 IV.血液と体外循環回路の接触
  A.凝固系:カリクレイン−キニン系
  B.線溶系
  C.補体系
 V.細胞成分と全身性炎症反応症候群
  A.血管内皮細胞
  B.白血球
  C.血小板
  D.虚血再灌流障害
  E.エンドトキシン
 VI.体温
  A.低体温
  B.超低体温
 VII.酸塩基平衡
 VIII.内分泌代謝系
第10章 成人の人工心肺
 I.冠動脈疾患
  A.病態,術式の特徴
  B.体外循環法,リスクマネジメント
 II.弁膜症(大動脈弁置換術)
  A.病態,術式の特徴
  B.体外循環法,リスクマネジメント
 III.弁膜症(僧帽弁形成術)
  A.病態,術式の特徴
  B.体外循環法,リスクマネジメント
第11章 大動脈手術の人工心肺
 I.弓部大動脈瘤
  A.病態,術式の特徴
  B.体外循環法,リスクマネジメント
 II.下行・胸腹部大動脈瘤
  A.下行大動脈瘤:病態,術式の特徴
  B.胸腹部大動脈瘤:病態,術式の特徴
  C.胸腹部大動脈手術(下行大動脈手術含む)の体外循環法,リスクマネジメント
第12章 新生児・乳児の人工心肺
 I.人工心肺からみた新生児・乳児の特徴
  A.新生児・乳児の生理学的,解剖学的特徴
  B.動脈の先天異常
  C.静脈の先天異常
  D.re−do(再手術)
 II.低体温
  A.低体温の深度
  B.低体温中のpH(CO2分圧)の管理
  C.超低体温循環停止
 III.新生児・乳児における心筋保護
 IV.新生児・乳児における人工心肺による合併症
  A.全身炎症性反応
  B.肺機能不全と肺高血圧症
  C.神経学的合併症
  D.腎機能不全
  E.血液凝固障害による出血
 V.新生児・乳児における人工心肺の外科的手技
  A.人工心肺開始
  B.人工心肺からの離脱
  C.modified ultrafiltration
  D.機械的循環補助
第13章 低侵襲心臓手術(MICS)での人工心肺
 I.心房中隔欠損症
  A.手術適応
  B.手術時期,術式
 II.弁膜症
  A.僧帽弁形成術
  B.大動脈弁置換術
 III.port−access手術によるMICSでの人工心肺
  A.体外循環の術前準備
  B.体外循環法
第14章 補助循環
 I.大動脈内バルーンパンピング
  A.大動脈内バルーンパンピング(IABP)とは
  B.作用機序
  C.補助効果
  D.IABPにおける基本的な戦略
 II.経皮的心肺補助(PCPS,ECMO)
  A.成人
  B.新生児・小児
第15章 補助人工心臓
 I.歴史
 II.適応と分類
  A.補助人工心臓の適応
  B.補助人工心臓の分類
 III.安全対策
  A.機器の管理
  B.創部の管理
  C.体調管理
  D.緊急時の対応と医療機関への報告
 IV.最新の機種
第16章 体外循環の合併症と対策
 I.体外循環による炎症反応の惹起
  A.補体系
  B.血液凝固系
  C.線溶(線維素溶解)系
  D.カリクレイン−ブラジキニン系
  E.好中球
  F.血小板
 II.体外循環の合併症と対策
  A.脳合併症
  B.肺合併症
  C.腎合併症
  D.溶血
  E.術後出血
  F.酸塩基平衡と電解質異常
  G.急性大動脈解離
  H.消化器合併症
第17章 肝移植における体外循環
 I.肝臓生理
 II.門脈バイパス
  A.遠心ポンプを用いた門脈バイパス
 III.リスクマネジメント
第18章 点検と安全管理
 I.機器の点検,安全管理
  A.機器の点検
  B.安全装置
  C.マニュアル
  D.チェックリスト
  E.トラブルシューティング
 II.教育,訓練,研修
  A.医師
  B.技士
第19章 体外循環システム,各施設の特徴
 I.自治医科大学附属さいたま医療センター
  A.システムの概要
  B.人工心肺の特徴と操作法
  C.smart circuitの特徴と操作法
 II.大垣市民病院
  A.基本システムの特徴
  B.吸引,ベンティング操作
  C.小児体外循環
 III.聖隷浜松病院−低充填体外循環システム
  A.システムのコンセプト
  B.体外循環システム
  C.システム以外の低充填化の工夫
 IV.榊原記念病院−大動脈弓部置換術を中心に
  A.大動脈弓部置換術における体外循環の流れ
  B.近年の大動脈弓部置換術の結果
 V.川崎幸病院
  A.人工心肺回路
  B.体外循環方法(弓部大動脈瘤の場合)
索引

序文

 本邦では、先天性心疾患、後天性心疾患、大血管疾患やその他を加えた年間4万例を超す手術が人工心肺装置を用いた体外循環下に行われている。これに年間の経皮的心肺補助循環(PCPS)症例数約1,800例を加えると毎年約5万例の症例に対して人工心肺装置の駆動下に外科治療が行われている。
 人工心肺装置とその駆動・運転は多くの専門分野が集合された医術である。それらは体外循環技術、医用工学、外科、麻酔科、病態生理学、生体材料学、解剖学などである。今日の人工心肺技術における向上は、小児から高齢者にわたる心臓手術・開心術を非常に安全なものにした。人工心肺装置の駆動・運転操作は、瞬時のうちにいろいろな変化が起き患者の生死に関わる重要な任務である。安全・確実でなくてはならない。日本人工臓器学会が中心となり日本体外循環医学会など複数の関連学会が認定する体外循環技術認定士制度も軌道にのりつつある。近年では、心臓手術でも他の外科分野と同じく内視鏡補助下に行う低侵襲心臓手術(MICS)が行われるようになった。手術アプローチが体外循環方法の新しい技術向上を生み出している。MICS時の陰圧吸引補助脱血法などはこのよい例である。このように心臓外科の技術進歩には体外循環技術の進歩に負うところが大きい。本書は人工心肺を扱う臨床工学技士はもちろんのこと心臓外科医、麻酔科医、看護師の教科書的な内容になるよう編集した。
 本書が外科医、臨床工学技士、看護師、麻酔科医などの医療従事者にとってよい手引きとなれば幸いである。

2015年9月
四津良平

 今回、四津良平先生、平林則行先生編集の『CE技術シリーズ−人工心肺』が出版されることになった。本邦では久しぶりの体外循環の教科書である。現在、本邦では年間6万例を超える心臓胸部大血管手術が良好な成績で施行されているが、その多くは人工心肺を必要とする手術であり、時代とともに進歩する体外循環に対応している教科書の出版が待望されていた。本書は体外循環技術認定士をめざす臨床工学士や、実際に体外循環を扱っていながら最新技術を習得しなければならない体外循環技術認定士のみならず、手術における重要な補助手段として体外循環を熟知していなければならない心臓血管外科医や、心臓大血管手術を介助する看護師をも対象としており、幅広い人々に読んでいただきたい体外循環に関する必読書となっている。
 まず、本書の特徴は難解な解説を避け、理解しやすく読みやすい構成になっている点である。特に、読者の理解を深めるためにわかりやすい図表を多く用いており、人工心肺をはじめて勉強する人にも優しい教科書となっている。総論として体外循環を施行するためには知っておかなければならない歴史、解剖、装置、手順、モニタリングなどといった内容が過不足なく簡潔に記載されているうえに、麻酔、経食道心エコー、心筋保護法、体外循環の病態生理についても解説されており、人工心肺とその周辺についても深く知ることができるようになっている。各論では、冠状動脈バイパス術、弁膜症手術、大血管手術、先天性心疾患手術といった各疾患に応じた体外循環が詳細に学べるようになっている。また、近年再び脚光を浴びるようになった低侵襲心臓手術における人工心肺についても章が設けられており、本邦における低侵襲心臓手術のパイオニアであり、かつ第一人者である四津良平先生の編集ならではと感心させられる内容になっている。その他、大動脈内バルーンパンピング、経皮的心肺装置といった補助循環や補助人工心臓についての新しい情報も盛り込まれており、人工心臓管理技術認定士をめざす人や植込み型補助人工心臓導入を考慮している心臓外科医の導入編となっている。また、肝移植における体外循環の章の新設はこれまでの成書にはみられなかった画期的なことであるが、肝臓の拡大手術時にも応用できる項目であり、今後は必須項目になることを見越した慧眼と敬服の意を表したい。
 本書を読ませていただいて感じることは、人工心肺に関する安全管理の意識が根底にあるということである。体外循環の合併症と対策を知るとともに、多忙な日常臨床の中で、いかにして安全管理を徹底するかのノウハウ、そして教育、訓練、研修の重要性に多くの頁が割かれている。これは低侵襲心臓手術を始めるにあたって、まず患者さんの安全を第一に考えられてきた四津良平先生の、過去数多く起こった人工心肺関連の事故を撲滅させたい、という思いが強く反映されたものと推察している。人工心肺のシステムが各施設で異なっている本邦において、本書の最後に示されている国内有数の施設のシステムも非常に参考になる。本書を編集された四津良平先生と平林則行先生、そして執筆と出版に尽力された多くの方々に敬意を表するとともに、本書が今後の本邦の心臓血管外科手術の成績向上に、大きく寄与していくであろうことを確信している。

胸部外科69巻3号(2016年3月号)より転載
評者●横浜市立大学外科治療学主任教授 益田宗孝