書籍

骨折の治療とリハビリテーション

ゴールへの至適アプローチ

監訳 : 江藤文夫/中村利孝/赤居正美/肱岡昭彦
ISBN : 978-4-524-22371-8
発行年月 : 2002年5月
判型 : A4変
ページ数 : 488

在庫あり

定価10,800円(本体10,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

骨折の治療とリハビリテーションの最新情報とスタンダードを明解に解説。整形外科医、リハビリテーション医双方の観点から、どのように骨折を治療していくか、段階に応じた治療の目標設定を具体的に提示した。骨折別に受傷直後、1週、2週、4〜6週など経時的な骨癒合の状態を示し、各時点で行うべき手技、処置、後療法を統一した形で解説した。

Part1 総論
 1. 骨折治療
 2. 骨折治癒時期の決定
 3. 固定機器の生体力学的原理
 4. 運動療法と関節可動域
 5. 骨折治療に用いられる物理療法
 6. 歩行
 7. 日常生活動作・活動(ADL)のための補助具と適応器具
 8. 装具と副子
 9. 複雑骨折の治療と分類

Part 2 上肢の骨折
 10. 鎖骨骨折
 11. 上腕骨近位端骨折
 12. 上腕骨骨幹部骨折
 13. 上腕骨遠位端骨折
 14. 肘頭骨折
 15. 橈骨頭骨折
 16. 前腕骨骨折
 17. Colles骨折
 18. 舟状骨骨折
 19. 中手骨骨折
 20. 指節骨骨折

Part3 下肢の骨折
 21. 大腿骨頚部骨折
 22. 大腿骨転子部骨折
 23. 大腿骨転子下骨折
 24. 大腿骨骨幹部骨折
 25. 大腿骨顆上骨折
 26. 膝蓋骨骨折
 27. 脛骨プラトー骨折
 28. 脛骨骨幹部骨折
 29. 脛骨天蓋骨折
 30. 足関節骨折
 31. 距骨骨折
 32. 踵骨骨折
 33. 中足部骨折
 34. 前足部骨折

Part4 脊椎の骨折
 35. 環椎骨折(Jefferson骨折)
 36. 軸椎骨折(ハングマン骨折)
 37. 歯突起骨折(Dens)
 38. 頚椎圧迫・破裂骨折
 39. 頚椎片側・両側椎間関節脱臼
 40. Gardner-Wells牽引の装着とハローベスト
 41. 胸腰椎骨折

骨折の治療では、初診から機能回復にいたるまでに3つの段階があり、各々の段階で適切な判断が必要とされる。その3つとは、1.治療開始時における損傷状態の把握、2.急性期治療における骨折部の固定性の獲得、3.慢性期における機能回復の処方である。これらの各時期における判断は、予後に決定的な影響を与えるという意味で骨折治療の根幹をなす。最近、医学における専門性の高まりと医療の枠組みの再編成により、これらの3つの時期を常に一人の医師が担当する機会は、必ずしも多くはなくなってきた。むしろ、初期の損傷状態の把握は救急医、急性期の骨折部の固定性については整形外科医、機能回復期にはリハビリテーション科の医師や理学療法士をはじめとするセラピストという役割分担が明確になってきているようにみえる。
 従来から、骨折治療の教科書は、骨折部の固定性を獲得するための手術法に関するものが多い。近年、evidence based medicine(立証に基づいた医療)の普及に伴い、手術法を網羅するとともに、各々の治療法について臨床成績を詳細に記載した教科書も出てきた。これらの知識は整形外科専門医には大いに参考となるが、実際に手術を担当しない医師にとっては必ずしも必須ではない。術者となることの少ない救急外来担当の医師、専門医を目指して修練中の整形外科医、オフィス医療を中心とした医師、術後患者を担当するセラピストらにとっては、手術法の詳細な解説よりも慢性期の機能回復の情報がより重要であろう。
 一方、骨折の慢性期治療について系統だって記載した教科書は少ない。我々が新人として勤務していた頃、骨折手術例の後療法については、すべて術者である先輩の指示に頼っていた。文献や教科書にははとんど記載がなく、実は、その先輩も、昔、先輩から言われた通りを伝授してくれていたに過ぎない。現状も、その頃とあまり変わりはないであろう。
 本書は骨折の慢性期治療に主眼を置いて書かれた教科書であり、その内容は極めてユニークである。初期治療や急性期の手術治療については原理的な事柄の紹介にとどめ、術後の後療法を含めて慢性期の治療を詳細に記載している。各週ごとの骨折部の状態を丁寧に記載し、それに応じた機能回復処方が段階的に提示されていて、実用的である。もちろん大腿骨転子部骨折でEnder pinを用いた治療について述べられていないなど、わが国の状況と異なる点もある。内容のすべてについてevidenceが得られているものではないとは思われるが、十分な経験と考察に裏打ちされていることはよく理解できる。骨折治療をこれから学ばうとする方々だけでなく、ベテランの方々にとっても、慢性期治療について明確な指針が得られるという意味で極めて有益であると思われる。本書が骨折診療に携わる多くの方々にご利用いただければ幸いである。
2002年4月
監訳者一同

本書の原書はAlbert Einstein College of Medicine整形外科のHoppenfeld氏と、同大学リハビリテーション科のMurthy氏らが中心となり、骨折治療のリハビリテーションについて書かれたtext bookである。

 “適切な骨折治療には、リハビリテーションと整形外科の両分野が協力することが不可欠である。両分野とも人間の運動・機能とともに筋、靱帯、骨を扱い、その共通分野は骨折に関する理想的な治療法を生み出す。両者を包括する連続した体系ができれば、断続のない完璧な患者ケアを可能とし、回復時間を短縮し、患者に安心感を与えるであろう”と原書の序に書いてあるように、まさに本書は以上のことを実践するのに最適な参考書といえる。

 まず、本書の内容について簡単に述べておく。

 「Part I 総論」の章では、骨折治癒の病理、骨癒合時期の定義、各種骨固定法の理論的背景と概略、骨折治療後の装具治療を含めたリハビリテーションの概略、開放骨折治療時の注意点や問題点などが簡潔、かつ詳細に述べられている。従来のリハビリテーション関係の書と異なり、整形外科関連の洋書、たとえば『Skeletal Trauma』や『Rockwood and Green』の骨折治療の総論で書かれている内容に匹敵するような力作といえる。

 Part II〜IVは各論で、おのおの上肢、下肢、脊椎の各部位の骨折の概説が書かれている。各Partは、「A。はじめに:1。定義、2。受傷機序、3。治療のゴール(整形外科的目標、リハビリテーション的目標)、4。標準的な骨癒合期間、5。標準的なリハビリテーション期間、6。治療法(ギプス、内固定、創外固定)、7。本骨折の注意点、8。合併損傷、9。荷重、10。歩行、B。治療(各時期における整形外科とリハビリの具体的治療法と施行するうえでの注意点)、C。長期的予後と問題点、D。まとめ(各骨折における各種骨固定法について、各時期での注意点や特徴に関し表を用いてわかりやすく解説してある)の構成となっている。

 このように本書は、経過を追って治療の枠組みが示されるように、受傷日から1週間ごとの経過時期で表されているため、レジデントにとっては骨折の初期治療に引き続くガイドラインとして大いに活用できるものである。

 しかし、若い先生方が本書を臨床の現場にフィードバックする場合、本書に書かれていることを鵜呑みにせず、やはり手術時の骨固定性の程度や多発骨折の存在について考え、自分らの行った治療自体の吟味を上級医とも十分に討論したうえで活用するべきと考える。とくに、日本では医局制度なるものに支配され、個々の医局や各病院で連綿と続けられてきた治療を上から下へ伝授していく方式が少なからず存在する。それはそれで知識の伝搬という意味からは意義あるものと考えられるが、本書をきっかけに互いに議論し、患者にとって最良の医療が提供できるものであれば幸いである。

 また、医療費の包括化に伴い、整形外科およびリハビリテーションに関係する医療従事者にとっては、これから激動の時代を迎えようとしている。米国と同様、医療の均質化・標準化や、それに伴う各治療のクリティカルパスの開発・普及など、医療行為自体の簡素化・組織化などが必須なものとなりつつある。このような状況の中で、整形外科治療の中でもっとも遭遇しうる“骨折”を扱う各医師が、本書を活用することによって、最適な、かつ合理的な医療が実践できれば至福の喜びである。

(横山一彦)
臨床雑誌整形外科53巻12号(2002年11月号)より転載