基礎から学ぶ医療関連感染対策改訂第4版
標準予防策からサーベイランスまで
| 著 | : 坂本史衣 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-22188-2 |
| 発行年月 | : 2026年3月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 272 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

感染対策を本格的に学べるテキスト.感染対策の基礎知識から最新の臨床実践まで網羅.今改訂では,新型コロナウイルス感染症の流行に伴って変化した感染経路の考え方,CDC隔離予防策ガイドライン改訂や医療環境管理に関わる法改正に伴う変更点を反映し,新興感染症への備えと対応など,大幅な加筆修正を行った.ビギナーはもちろん,専門看護師・認定看護師をめざす方,感染対策チームの医療従事者,感染管理に関わる自治体・企業関係者にも有用.患者の安全を守る医療者に必携の一冊.
第I章 感染の成立と予防に関する考え方
A. 医療関連感染とは
B. 感染の成立とは
C. 感染の連鎖に基づく医療関連感染予防の考え方
第II章 基本的な感染予防策
1 標準予防策
2 手指衛生
A. 手指衛生とは
B. 手指衛生の効果
C. 手指を介した微生物の伝播様式
D. 手指衛生のタイミング
E. 手指衛生の方法
F. 手術時手洗い
G. 効果的な手指衛生を推進するための取り組み
3 個人防護具の活用
A. 個人防護具の種類と選択
B. 着脱のタイミングと手順
C. 咳エチケット
column 手袋と手指衛生
D. ユニバーサル・マスキング
4 感染経路別予防策
A. 接触感染予防策 総論
B. 接触感染予防策 各論
C. 飛沫感染予防策
D. エアロゾル感染予防策
E. 空気感染予防策 総論
F. 空気感染予防策 各論
5 新興感染症パンデミックへの備えと対応
A. 新興感染症のパンデミックとは
B. 新興感染症パンデミックへの平時の備え
C. 新興感染症パンデミック発生時の国の基本的な対策指針
D. 新興感染症パンデミック発生時の医療機関の対応
第III章 医療器具・手技関連感染対策
1 血管内留置カテーテル関連血流感染
A. 血管内留置カテーテル由来血流感染(CRBSI)とは
B. 微生物の侵入経路
C. CRBSIのリスク因子
D. CRBSI予防のための基本的な対策
E. 末梢静脈カテーテル関連血流感染の予防
F. 中心ライン関連血流感染(CLABSI)の予防
2 膀胱留置カテーテル関連尿路感染
A. 膀胱留置カテーテル関連尿路感染とは
B. 微生物の侵入経路
C. 膀胱留置カテーテル関連尿路感染対策
3 人工呼吸器関連肺炎
A. 人工呼吸器関連肺炎とは
B. 人工呼吸器関連肺炎のメカニズム
C. 人工呼吸器関連肺炎対策
4 手術部位感染
A. 手術部位感染とは
B. 手術部位感染のリスク因子
C. 手術部位感染対策
第IV章 職業感染予防
1 針刺し・切創・皮膚/粘膜汚染
A. 針刺し・切創・皮膚/粘膜汚染による感染リスク
B. 針刺し・切創・皮膚/粘膜汚染の予防
C. 針刺し・切創・汚染発生時の対応
2 職員の予防接種
A. 麻疹, 水痘, 風疹, 流行性耳下腺炎
B. 季節性インフルエンザ
C. 新型コロナウイルス感染症
D. その他の予防接種
column 流行性角結膜炎
column 帯状疱疹と単純(口唇)ヘルペス
第V章 洗浄, 消毒, 滅菌
A. 再処理工程の選択
column 再製造単回使用医療機器
column スポルディング分類の課題
B. 再処理工程の中央化
C. 使用済み医療器具の回収と搬送
D. 血液,体液の固着予防
E. 洗浄
F. 消毒
G. 滅菌
第VI章 医療環境管理
1 医療環境管理の概要
A. 医療環境とは
B. 医療環境のリスク評価
column 医療環境管理とファシリティ・マネジメント
2 建築・改築・解体工事におけるリスク評価と管理
A. 建築・改築・解体工事に伴う医療関連感染リスク
B. 工事前のリスク評価と対策
3 水質管理
A. 水道の管理
B. レジオネラ対策
C. シンクの管理
D. 加湿器の管理
E. 製氷機の管理
F. 透析用水の管理
G. 花・植物の取り扱い
4 空調管理
A. 空調と換気
B. 良好な換気とは
C. 換気の評価と改善
5 清掃
A. 床
B. 壁,ブラインド,窓,カーテンなどの垂直面の清掃
C. 高頻度接触面の清掃
D. 血液・体液汚染が生じた場所の清掃
E. 手術室の清掃
F. 免疫不全患者の病室の清掃
G. 清掃作業における注意点
6 洗濯
A. リネン
B. 布団, 枕
C. マットレス
7 感染性廃棄物の管理
A. 廃棄物処理法に基づく管理
B. 医療現場における感染性廃棄物の取り扱い
8 給食
A. 食品衛生法に基づく管理
B. 厨房における食品衛生管理
C. 食中毒への対応
D. 病棟における食品衛生管理
資料 医療環境インスペクション・チェックリスト
第VII章 部門別感染対策
1 検体検査業務に関連する感染対策
A. 検査室関連感染とは
B. 発生状況と原因微生物
C. 感染経路
D. LAIのリスク評価
E. 基本的な感染対策
F. バイオセーフティキャビネットの管理
G. 検査室における結核対策
2 内視鏡室における感染対策
A. 軟性内視鏡を介した感染の発生状況
B. 軟性内視鏡を介した感染の要因
C. 軟性内視鏡の再生処理工程
D. 再生処理区域の環境管理
E. 再生処理の中央化と研修
F. スコープおよびすすぎ水の細菌学的検査
column 軟性内視鏡には滅菌が必要か?
3 透析室における感染対策
A. 透析室における感染のリスク
B. 透析室における標準予防策
C. ベッドコントロール
D. スクリーニング検査
E. 透析用水の管理
F. 透析患者に推奨されるワクチン
4 NICUにおける感染対策
A. NICU患児の感染リスク
B. NICU患児の感染リスクを踏まえた感染対策のポイント
第VIII章 医療関連感染サーベイランス
1 医療関連感染サーベイランスの定義と意義
2 アウトカムサーベイランス
A. 対象の選択
B. アウトカム指標
C. アウトカムデータの評価
3 プロセスサーベイランス
4 サーベイランスデータのフィードバック
索 引
改訂第3版が発行された2019年の暮れ,中国湖北省で発生した原因不明の肺炎について報じる記事がSNSで流れた.年が明けて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と名付けられたこの新興感染症は全世界を巻き込む未曾有のパンデミックとなり,今日に至るまで,医療関連感染の予防と管理(IPC)に関わる我々に多くの教訓を残した.
まず,未知の感染症に対峙する医療現場がレジリエンスを発揮するために必要なのは,目新しい対策ではなく,平時の体制,平時からの実践であることを学んだ.手指衛生と個人防護具の適切な活用を含む標準予防策の実施率を普段から高めておくことが,未知の病原体への無防備な曝露を防ぐこと.良好な換気を維持することが,空気中の感染性微粒子を吸入するリスクを低減すること.流行性ウイルス感染症を疑う症状のある受診者を早期に把握また隔離して適切な検査につなげるトリアージ体制が,集団感染の防止につながること.職員へのワクチン接種や感染を疑う場合の就業制限が,医療機関の安全性と業務継続性を支えること.そして,サプライチェーンの断絶に備えた資材の在庫管理と調達体制の構築が不可欠であることを知った.
また,パンデミックで医療現場に古くからある問題がより深刻化することも経験した.侵襲的デバイスの使用頻度が増加し,血流感染,尿路感染,肺炎のリスクが上昇した.広域抗菌薬の使用量増加,入院期間の延長,長時間の個人防護具着用により,多剤耐性菌の新規獲得が起こりやすい状況も生じた.サーベイランスに基づくリスク評価と改善,抗菌薬適正使用支援と接触感染予防策は,パンデミック下でも維持が求められる対策であった.
さらに,COVID-19以外のウイルス感染症の発生動向にも変化が生じた.市中での感染対策強化による病原体曝露機会の減少と,受診控えによるワクチン接種率低下で感受性者が増加した.海外渡航の再開と気候変動の影響も相まって,感染症の流行期や流行地域が変化し,予期せぬ感染者数の急増も見られている.その結果,医療現場には,市中の流行状況を注視し,柔軟に対応することが,これまで以上に求められるようになった.
本改訂第4版では,COVID-19パンデミックから得られたこれらの教訓と第3版以降の新たな知見を統合し,実践的なIPCの指針を提示した.本書が,様々な立場でIPCに携わる読者の日々の実践を支え,安全で質の高い医療の実現に寄与することを心より願う.
最後に,本書の制作にあたり献身的なご支援をいただいた南江堂の村上生馬氏,梶村野歩雄氏をはじめ編集部の皆様に,心から感謝を申し上げる.
2026年2月吉日
坂本史衣

