書籍

抗酸菌検査ガイド2025

編集 : 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
ISBN : 978-4-524-21601-7
発行年月 : 2025年1月
判型 : A4判
ページ数 : 144

在庫あり

定価3,850円(本体3,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本結核・非結核性抗酸菌症学会による,最新の抗酸菌検査のためのガイドブック.結核菌に加え,患者が増加傾向にある非結核性抗酸菌(NTM)に対する指針を示す.最新のCLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute,臨床・検査標準協会)の検査指針改訂を反映し,また最新の薬剤耐性検査や遺伝子検査,質量分析にも対応した.

1章. 抗酸菌検査概要
2章. 用語の定義・略称
3章. 抗酸菌検査関連法規
4章. 抗酸菌検査のバイオセーフティ(検体収集〜輸送〜検査〜保管〜滅菌・廃棄)
5章. 検査材料
6章. 抗酸菌塗抹検査
7章. 抗酸菌分離培養
8章. 抗酸菌の同定
9章. 抗酸菌の遺伝子検査
10章. 抗酸菌の遺伝子型別解析
11章. 薬剤感受性試験
 @ 結核菌
 A 非結核性抗酸菌
12章. 精度保証
索引

 日本結核・非結核性抗酸菌症学会では,1950年の「 結核菌検査指針」 の刊行以降,新しい基準や方法に対応した検査指針のアップデートを続けている.2000年には「 新 結核菌検査指針」 が刊行され,2007年には「 結核菌検査指針2007」 に改訂されて,迅速検査体制の構築を念頭に置いた液体培養の推奨や,精度保証体制の強化のための記述の追加・改訂が行われた.さらに2016年には,非結核性抗酸菌症の検査にも一部対応した「 抗酸菌検査ガイド2016」 を上梓している.その後のアップデートに対応し,2020年には「 抗酸菌検査ガイド2020」 を上梓した.今回,その後の疾患および検査環境の変化に対応すべく「 抗酸菌検査ガイド2025」 への改訂にいたった.
 既知の事実ではあるが,日本の結核は2023 年度には罹患率8.1/10 万人まで低下し,減少傾向が続いている.ただし社会的弱者や外国出生者など,いまだに相対的罹患数が多かったり,薬剤耐性率が高かったりする集団も一定数存在し,単純に罹患数の減少を喜べる状態ではない.一方で非結核性抗酸菌症は2017 年時点での検査データからの推定で19.2/10 万人と漸増している.しかしながら,単純にMycobacterium avium あるいはMycobacterium intracellulare 感染症が増加しているわけではなく,質量分析やゲノム解析の発達もあり,稀少菌種( 一部は新種) による稀少な感染病態が増加しているのが現状であろう.これらの抗酸菌感染症に関する病態の変化は,あらためて臨床力の強化を要請するはずであるが,対応には多大な労力と時間が必要と思われる.その間のギャップを埋めるのが抗酸菌検査の役割であり,世界的に抗酸菌検査は「 多様性」 に対応する方向に向かっている.たとえば,舌スワブや尿,便,バイオエアロゾルなどに代表される非喀痰検体への移行や,多様な抗酸菌を一度に定量的に検出可能な網羅解析,あるいは培養を使わない経過観察法などの方向性である.日本は残念ながらこれらの抗酸菌検査の分野で先端を走っているとはいえないが,せめて遅れをとらないようにとの思いで本改訂版を上梓する次第である.
 本書の改訂にあたっては再び多くの多忙な先生方にご協力をいただいた.あらためて深甚なる感謝を申し上げたい.次の改訂は私の責任ではないと思うが,世界に互する抗酸菌検査システムへのアップデートが近日中に実現することを期待する.
2025年1月
一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 抗酸菌検査法検討委員会 委員長
御手洗 聡

「抗酸菌検査,必携の書 〜新しい検査法を含め分かりやすく解説〜」
 『抗酸菌検査ガイド2025』が2025 年1 月に発刊された.2020 年に前版が発表されてから5 年ぶりの改訂である.近年,非結核性抗酸菌症の増加が世界中で問題になっていることはご承知のとおりである.結核の減少とは対照的な疫学動向であり,なぜ非結核性抗酸菌症が増加しているのか,世界中の研究者が注目する研究テーマとなっている.非結核性抗酸菌は自然界に広く分布する細菌であり,その種類は類縁属菌を合わせると200菌種以上になることが報告されている(本書51〜55頁).とくに近年,質量分析装置,網羅的遺伝子検査法などの新規検査法の導入により新しい菌種の検出と同定が容易になっていることが重要である.新しい菌種の同定とともに,それぞれの菌種がどのような感染症と関連しているのか,なぜその感染症と関連するのか,菌の病原性や生体反応の視点での解析がますます重要になっているように思われる.このような背景のなかで発刊された『抗酸菌検査ガイド2025』である.臨床において抗酸菌症を診療される医師はもちろんのこと,微生物検査に関わる検査技師,感染対策に関わる自治体の方々,基礎的・臨床的な抗酸菌症研究に携わる研究者にとって必携の書になると確信している.一般社団法人日本結核・非結核性抗酸菌症学会の理事長である礒部 威 理事長,抗酸菌検査法検討委員会の委員長 御手洗 聡先生,大変お忙しいところ最新の情報を加えてご執筆いただいた先生方にお礼を申し上げたい.5年後の2030年,日本・世界における抗酸菌症の疫学がどのように変わっているのか,抗酸菌検査の領域でどのような変化・進化がみられているのか.そして抗酸菌症のもっとも重要な特徴である慢性化・難治化のメカニズムに迫る検査法がどのような形で表れてくるのか,次の世代につながる抗酸菌検査の進化に期待したい.

臨床雑誌内科136巻1号(2025年7月号)より転載
評者●舘田一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座 教授)

9784524216017