この1冊からはじめる 肺聴診の手引き[Web音源・動画付]
編集 | : 肺音(呼吸音)研究会 |
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ISBN | : 978-4-524-21041-1 |
発行年月 | : 2025年4月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 104 |
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定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 書評

肺音(呼吸音)研究会による肺聴診の手引きが登場!毎年開催され好評を博している「肺聴診セミナー」の講師陣が,聴診器の当て方や聴診部位,身体診察などの基本知識から,肺音の特徴,各疾患に特徴的な所見までをわかりやすく解説.また,豊富な症例や肺音所見を収載したWeb音源・動画付で病態把握・診断の実践的な理解を深められる.これから肺聴診を学ぶ初学者必携の1冊.
肺音研究会のエッセンスをこの1冊に
『この1冊からはじめる 肺聴診の手引き』(肺音(呼吸音)研究会(編)),肺聴診だけで1冊,それってどうなの? と思われるかもしれません.これまでにも肺(呼吸音)聴診を扱った書籍や音源はいくつも出ていますが,聴診だけで1冊,ということになりますとボリュームが若干不足する印象です.これまでに上梓されていた書籍も,古くはカセットテープやCDが(に?)付属していたり,身体診察に頁を結構割かれていたりということで,なかなか聴診だけで1冊というのは難しかったように思います.私が若い頃に聴診の勉強をしたのは『CDによる聴診トレーニング』という,CDに薄いブックレットが付属したような教材でしたが,こちらも一通りの所見に対する音源が付属していました.
本書も肺の聴診のみに関して記載されているわけではなくて,たとえば最初のところでは聴診の歴史的背景,用語の変遷から統一の経緯,聴診器の選び方や呼吸器疾患の身体所見というところにも30頁程度割かれていて,これも大変興味深いものです.それに続いての呼吸音のあれこれも,「この1冊からはじめる=biginner’s guide」の名にふさわしい,初学者にもやさしい基本事項・原理のところから,以前参加した肺音研究会で感じた,血沸き肉躍るような,オタク心をくすぐるような深い学び・蘊蓄の数々まで,およそ肺音に関することは(マニアの方以外には)これ1冊で完結するのではないかと思われるほどの記載があります.小児の呼吸音という章があり,小児の呼吸音の特徴も述べられていますので,小児の聴診機会が多い先生方にも有用でしょう.
少なくとも学生さんや研修医の先生を指導する立場の先生方はぜひこちらをご覧いただき,若い方にその理屈から教えていただけると,興味をもっていただきやすいのではないかと考えます.自分は毎週学生実習で呼吸器の身体診察を教えるのですが,多くの学生は呼吸器の実習を通して最も印象深かったのは「身体診察をきちんとできるようになったこと」だといってくれます.五感を使って情報を得る身体診察の技法を獲得することは,若い人にとってほかでは得られない貴重な体験になっているようです.これがきっかけで呼吸器そのものに興味をもつ人も多く,本書をリクルートにも役立てていただけると思います.
さて,本書は肺音(呼吸音)研究会の主要なメンバーの先生方が執筆されています.私自身も以前に一度肺音研究会に参加させていただいたことがあります.当時から重鎮の先生方の熱量が大きく,多くのことを教えていただいて大変勉強になりました.当時のテキストは今も大切に保存し,折に触れて参照させていただいておりますが,なかなか通常の教科書には載っていないような古の呼吸音分類,呼吸音の成り立ちの医学的な理屈,それからサウンドスペクトログラムによる聴診音を可視化したものをみせていただくことで理解が深まると感じました.そのあたりのことがらも本書にはしっかりと盛り込まれています.肺音研究会に参加してみたいけどハードルが高い,という方はこの1冊でそのエッセンスを知ることができてお得ですね.
臨床雑誌内科136巻2号(2025年8月号)より転載
評者●長尾大志(島根大学医学部内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学 教授)
