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甲状腺超音波診断ガイドブック改訂第2版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本乳腺甲状腺超音波医学会 甲状腺用語診断基準委員会
ISBN : 978-4-524-26317-2
発行年月 : 2012年4月
判型 : A4
ページ数 : 176

在庫なし

定価3,960円(本体3,600円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

甲状腺疾患の超音波検査に対する用語の定義、検査法、判定法等の標準化を目的にJABTS甲状腺用語診断基準委員会がまとめた診断指針。診断フローチャートの充実、組織弾性イメージング(エラストグラフィ)等の最近の進歩・知見を盛り込んだ充実した最新情報を提供。オールカラーにより読みやすさにも工夫。甲状腺領域に携わる医師・コメディカルにとって必携の書。

I.機器の条件、操作法
 A.使用装置
  1.診断装置
  2.探触子(プローブ)
  3.使用周波数
 B.検査手順
  1.甲状腺
  2.副甲状腺(上皮小体)
  3.甲状腺・副甲状腺(上皮小体)超音波検査の手技
 C.観察項目
  1.甲状腺
  2.副甲状腺(上皮小体)
 D.ドプラ法
  1.甲状腺カラードプラの意義
  2.ラードプラ法の検査手技
  3.血流波形分析の検査手順
  4.血流情報の有用性
  5.Bモード所見との組み合わせによる悪性所見の予測
  6.濾胞性腫瘍の診断におけるドプラ法の有用性
  7.診断におけるドプラ法の問題点
  8.まとめ

II.甲状腺・副甲状腺(上皮小体)の解剖と超音波画像
 A.甲状腺・副甲状腺(上皮小体)の解剖
  1.甲状腺の解剖
  2.副甲状腺(上皮小体)の解剖
 B.甲状腺・副甲状腺(上皮小体)の超音波画像
  1.表示方法
  2.正常甲状腺の超音波画像
  3.副甲状腺(上皮小体)の超音波画像

III.甲状腺・副甲状腺(上皮小体)疾患の病理
  1.橋本病(慢性甲状腺炎)
  2.Basedow病
  3.亜急性甲状腺炎
  4.腺腫様甲状腺腫
  5.濾胞腺腫
  6.濾胞癌
  7.乳頭癌
  8.髄様癌
  9.低分化癌
  10.未分化癌
  11.悪性リンパ腫
  12.転移性腫瘍
  13.副甲状腺過形成
  14.副甲状腺腺腫
  15.副甲状腺癌

IV.甲状腺超音波における用語
  1.形状
  2.境界、辺縁、周辺
  3.内部エコー
  4.エコーレベル
  5.嚢胞パターン、混合パターン、充実パターン
  6.境界部低エコー帯
  7.後方エコー

V.診断の進め方
 1.総論
  1.甲状腺超音波検査の位置づけ
  2.甲状腺超音波検査の実際
 2.びまん性病変
  1.超音波検査による診断
  2.その他の検査
 3.結節性病変
  1.結節が嚢胞性病変の場合
  2.結節が充実性病変の場合
  3.頸部リンパ節腫大、甲状腺外腫瘤がある場合

VI.疾患別診断
 A.甲状腺の良性疾患
 A-1.Basedow病
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-2.橋本病(慢性甲状腺炎)
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-3.破壊性甲状腺炎
 A-3-1.亜急性甲状腺炎
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-3-2.無痛性甲状腺炎
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-3-3.橋本病の急性増悪
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-3-4.急性化膿性甲状腺炎
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-3-5.甲状腺癌における破壊性甲状腺炎
 A-4.腺腫様結節・腺腫様甲状腺腫
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.鑑別診断
  4.治療法の選択
 A-5.自律性機能性甲状腺結節
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 A-6.嚢胞性疾患
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 B.甲状腺の悪性疾患
 B-1.乳頭癌
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 B-2.濾胞癌(濾胞腺腫)
  1.疾患の特徴
  2.臨床所見
  3.疫学、遺伝性
  4.超音波診断
  5.他の画像診断
  6.治療法の選択
 B-3.髄様癌
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 B-4.未分化癌
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.超音波以外の特徴的な画像所見
  4.治療法の選択
 B-5.悪性リンパ腫
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療法の選択
 B-6.転移性腫瘍
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
 B-7.その他の悪性腫瘍
 B-7-1.平滑筋肉腫
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
 B-7-2.胸腺様分化を示す癌(ITET/CASTLE)
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
 C.副甲状腺(上皮小体)の疾患
 C-1.副甲状腺腺腫・過形成
  1.副甲状腺の発生・解剖
  2.疾患の特徴・病態
  3.超音波診断
  4.その他の画像診断
  5.治療法の選択
 C-2.副甲状腺癌
  1.疾患の特徴
  2.超音波診断
  3.治療と予後
 D.その他の疾患
 D-1.耳下腺
  1.耳下腺の解剖と超音波検査基本手技
  2.炎症性疾患
  3.耳下腺腫瘍
  4.耳下腺疾患と鑑別を要する疾患
 D-2.顎下腺
  1.顎下腺の解剖と超音波検査基本手技
  2.炎症性疾患
  3.顎下腺腫瘍
  4.顎下腺疾患と鑑別を要する疾患
 D-3.リンパ節
  1.正常リンパ節
  2.非特異的リンパ節炎
  3.転移性リンパ節
  4.悪性リンパ腫
  5.その他の炎症性リンパ節炎
 D-4.神経鞘腫
  1.疾患の特徴
  2.超音波所見
  3.診断と治療

VII.インターベンション
 1.超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(FNAC)
  1.適応
  2.穿刺部位
  3.禁忌と合併症
  4.準備
  5.穿刺手技
  6.検体処理方法
 2.超音波ガイド下太針生検(CNB)
 3.経皮的エタノール注入療法(PEIT)
  1.甲状腺嚢胞に対するPEIT
  2.自律性機能性甲状腺結節(AFTN)に対するPEIT

VIII.組織弾性評価
  1.組織弾性評価の登場
  2.組織弾性評価の原理からの分類
  3.RTE

IX.検診
  1.結節性甲状腺疾患に対する甲状腺検診の有効性と問題点
  2.びまん性甲状腺疾患のスクリーニング
  3.甲状腺超音波検診の評価方法と精査基準
  4.甲状腺外病変のスクリーニング
  5.甲状腺超音波検診の実際
  6.甲状腺超音波検診の実施方法

X.甲状腺結節のコンピュータ支援診断システム(CAD)
  1.CADとは
  2.甲状腺CADの実際

索引

2008年12月、日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)の甲状腺班の先生方が総力を結集して作成した『甲状腺超音波診断ガイドブック』は、同分野の診断・検診分野における体系化、標準化に多大な貢献を果たしてきました。さらに、初版に寄せられたさまざまなご意見をもとに、甲状腺用語診断基準委員会の先生方の弛まぬ議論が重ねられ、ここに改訂第2版を出版するに至りました。
 消化器内視鏡や超音波診断装置は、日本のお家芸とも称され、これまで世界をリードしてきました。機器の進歩は、臨床現場のニーズを正しく捉えることに始まり、その解決に向けて、機器開発の研究者と臨床家が、共通言語で議論する中で実を結びます。さらに、最新の機器を用いて得られた知見を、広く世の中に発信することにつながるものと思います。本書が、このところ停滞気味のわが国における新規医療技術の開発や、診断精度向上に寄与することを期待しております。
 おりしも、2011年3月の東日本大震災および福島原発事故に伴う、放射線被曝の問題がクローズアップされ、大規模な甲状腺検診が開始されました。我われ医療者には、被災された方々の健康を末永く守り、さらに、この未曾有の大規模災害から得た教訓を世界に発信していくことが求められております。これまで以上に、多くの医師、検査技師の方が、甲状腺の検診業務に携わることとなり、本書がその一助となることを祈念しております。
2012年3月
日本乳腺甲状腺超音波診断会議
理事長 中村清吾

 『甲状腺超音波診断ガイドブック』の初版が2008年12月に刊行され、翌年4月にはもうすでに改訂の準備が始まり、ほぼ3年の歳月をかけ改訂作業を完了しました。本書初版は日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)より『乳房超音波診断ガイドライン』に次いで刊行され、乳腺、甲状腺の超音波診断の参考書として世に出た反響は大きいものでした。本書初版は韓国語にも翻訳され、韓国でも広く用いられています。
 近年の超音波機器の向上や頸動脈エコーの普及によって、偶発的に微小な結節や嚢胞、腺腫様結節などが多数認められるようになりました。乳癌のように、微小な結節を拾い上げ、細胞診組織診をすることにより生存率の向上に寄与するものとは異なり、剖検時にも多数の潜在癌の存在するような進行の遅い甲状腺癌の診断では、細胞診をするための拾い上げをする道具であるだけでなく、細胞診をせずとも超音波機器のみで診断を可能にすることが望まれます。そのような意味から、本改訂版では「診断の進め方」という章を設け、甲状腺超音波診断のためのフローチャートを掲載しました。また血流評価・組織弾性評価の章を充実し、転移性腫瘍やその他の疾患として耳下腺、顎下腺、リンパ節、神経鞘腫を取り上げました。さらに機能性結節や嚢胞の項目も追加し、インターペンションの章も充実を図りました。
 改訂作業のさなか、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、それに伴う東京電力福島第1原子力発電所事故による放射線の影響から、小児甲状腺の超音波検査が開始されました。多くの医療従事者が超音波検査にかかわらざるを得ない状況となっております。その意味からも本改訂版はまさに時宜にかなったものであり、本書によってより正確な診断と共通の判断基準が日本中に伝わることを願ってやみません。初版同様、広く皆様のご意見をお寄せいただきながら、常によりよいガイドブックへと熟成させていく努力を継続する所存ですので、ご意見ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
2012年3月
貴田岡正史
鈴木眞ー

この度、日本乳腺甲状腺超音波診断会議と甲状腺用語診断基準委員会が中心となり、『甲状腺超音波診断ガイドブック』の改訂第2版が刊行された。
 医師や臨床検査技師が甲状腺疾患の診療を行う際は、甲状腺超音波(エコー)の技術は欠かせない。甲状腺エコー装置の進歩は目覚ましく、甲状腺(前頸)部の視診や触診で異常が認められない場合でも甲状腺エコーでは異常を認めることが多い。まず、甲状腺がびまん性に腫大しているのか、結節性に腫大しているのかを見極める必要がある。
 びまん性に甲状腺が腫大している場合には、甲状腺機能異常症を呈していることが多く、その鑑別診断にも甲状腺エコーが有用となる。たとえば、バセドウ病ともっとも鑑別を要するのは、主として橋本病を基盤として発症してくる無痛性甲状腺炎であるが、両者における甲状腺エコー像は明らかに異なる。さらにウイルス性による亜急性甲状腺炎では結節状に発症する場合もあるが、この際も甲状腺エコー像は特徴的な画像を示す。バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎では治療法が決定的に異なるので、これらの疾患の鑑別は重要である。
 甲状腺結節を有する際には、悪性と良性結節の鑑別を行う必要がある。甲状腺の悪性腫瘍として乳頭癌、濾胞癌、未分化癌、転移性癌、悪性リンパ腫などがあるが、一番頻度の多いのは乳頭癌である。甲状腺エコー所見による甲状腺良性腫瘍と乳頭癌との鑑別の要点は、微細石灰化、腫瘍の境界不整、結節内血流増加、内部低エコー像などの有無であり、これらの所見を見極める必要がある。濾胞癌の鑑別には甲状腺エコー像だけでは判別が困難なことが多い。未分化癌や転移性癌、悪性リンパ腫などの鑑別には甲状腺エコーガイド下での穿刺吸引細胞診が有用なことが多い。さらに、副甲状腺機能亢進症を示す場合には、甲状腺エコーで副甲状腺腫大を認めることが多い。
 これらの観点から本書を眺めてみると、初心者が甲状腺エコーを扱う際でも困らないように、甲状腺エコーの機器の条件や操作法の説明から始まり、甲状腺・副甲状腺の解剖と甲状腺エコー画像、甲状腺・副甲状腺疾患の病理、用語などについてのわかりやすい解説が記述されている。それに次いで、甲状腺エコーによる診断の進め方、鑑別診断のポイントが詳述されているので、実際に甲状腺エコーを行う際に重宝である。さらに、甲状腺エコーを用いるインターベンション法についても記述されており、また穿刺吸引細胞診時に得られた組織評価や、検診とCPU支援診断システムが丁寧に記述されている。甲状腺疾患の鑑別のために甲状腺エコーを行おうとしている、または、現在甲状腺エコーを行って技術更新を目指している医師や検査技師の諸氏に、本書は好都合の書となっている。

評者● 森昌朋
内科110巻3号(2012年9月号)より転載

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