教科書

パートナーシリーズ

パートナー薬品製造学改訂第2版

編集 : 野上靖純/田口武夫/長普子
ISBN : 978-4-524-40294-6
発行年月 : 2012年4月
判型 : B5
ページ数 : 382

在庫あり

定価5,940円(本体5,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

わかりやすい解説と美しく見やすい構造式で有機合成の基礎知識を身につけることができる教科書。今改訂では、この間の新知見への内容更新とともに第十六改正日本薬局方への対応を行った。また、章末にモデルコアカリキュラムの到達目標に沿った演習問題が加わり、より効果的な学習が可能な一冊となっている。

総論 有機合成と医薬品の創製
1.有機反応と試薬
 A 有機反応の種類
  1)置換反応
  2)付加反応
  3)脱離反応
  4)転位反応
 B 反応中間体の種類
  1)カルボカチオン(炭素陽イオン)
  2)カルボアニオン(炭素陰イオン)
  3)ラジカル(遊離基)
  4)カルベンとナイトレン
  5)ぺリ環状反応
 C 反応試薬の種類
  [I]反応形式による分類
  1)求核試薬
  2)求電子試薬
  3)ラジカル試薬
  [II]反応の種類による分類
  1)酸化剤
  2)還元剤
  3)アルキル化剤
  4)アシル化剤
  5)ハロゲン化剤
2.これからの有機合成―必要なものだけをつくる反応設計
 A 試薬の役割―新しい合成試薬の開発
 B 選択的合成と反応の制御
  1)位置選択的合成
  2)官能基選択的合成
  3)立体選択的合成
  4)不斉合成
3.ドラッグデザインと有機合成的アプローチ
 A 天然薬物から合成医薬品の開発―麻薬性の除去と合成鎮痛薬ぺンタゾシンの合成
 B 生化学・薬理学的発想による新しい薬の概念―薬物受容体の構造からのアプローチ
4.これからの医薬品開発の道―機能性分子設計
 A 分子を捕える分子―シクロデキストリン
 B 酵素機能モデル修飾シクロデキス卜リンを用いた選択的加水分解
セルフチェック問題

第1章 酸化と還元
1.酸化
 A 炭素-炭素二重結合の酸化
  1)エポキシ化
  2)グリコール化
  3)酸素添加反応
  4)水和反応
 B 炭素-炭素結合の酸化的切断
  1)オゾンによる二重結合の酸化的開裂(オゾン分解)
  2)過マンガン酸カリウムによる二重結合の酸化的開裂
  3)過ヨウ素酸塩によるグリコールの開裂
  4)四酸化オスミウム-過ヨウ素酸塩複合系による二重結合の酸化的開裂
  5)Baeyer-Villiger酸化
  6)環状ケトンの光分解
 C アルコールの酸化
  1)遷移金属酸化物による酸化
  2)Oppenauer酸化
  3)ジメチルスルホキシドによる酸化
 D アルデヒドの酸化
 E アリル位およびベンジル位の酸化
  1)二酸化セレンによるアリル位の酸化
  2)過マンガン酸塩、クロム酸によるベンジル位の酸化
 F カルボニル基に隣接する活性メチレンの酸化
  1)四酢酸鉛によるα-アセトキシケトンの生成
 G 芳香環の酸化
 H 脱水素反応
 I 微生物によるC-H結合の酸化
2.還元
 A 炭素-炭素結合の還元
  1)飽和炭素-炭素結合の還元開裂
  2)炭素-炭素二重結合の還元
   a)孤立オレフィンの還元
   b)α、β-不飽和ケトン類の還元
   c)ベンゼン環の還元(Birch還元)
  3)炭素-炭素三重結合の還元
   a)Lindlar触媒を用いる接触還元
   b)Birch還元
 B 炭素-ヘテロ原子結合の還元
  1)炭素-酸素二重結合の還元
   a)アルデヒド、ケトンのアルコールへの還元
   b)カルボニル基のメチレン基への還元
   c)カルボン酸およびその誘導体の還元
  2)炭素-窒素多重結合の還元
  3)炭素-ヘテロ原子単結合の還元的開裂
   a)ベンジルエーテルの還元的開裂
   b)芳香族ハロゲン化物の還元的脱ハロゲン
   c)カルボニル基のα位における還元的関裂
   d)エポキシドの還元的開環
セルフチェック問題

第2章 付加と脱離
1.付加
 A ハロゲンの付加
 B ハロゲン化水素の付加
 C ハロニウムイオンを中間体とするその他の付加反応
2.置換によるハロゲン化物の合成
 A アルコール類のハロゲン化
 B カルボン酸のOHのハロゲン化
 C カルボニル基のα-ハロゲン化
 D カルボン酸のα-ハロゲン化(Hell-Volhard-Zelinsky反応)
 E アリル位およびベンジル位のハロゲン化(Wohl-Ziegler反応)
 F カルボン酸銀塩の脱炭酸によるハロゲン化(Hunsdiecker反応)
3.脱離
 A 1、2-脱離の機構的分類
 B 1、2-脱離の配向性
 C アルコールの脱水反応
 D 脱ハロゲン化水素
 E 脱ハロゲンおよび脱ハロヒドリン(還元的脱離)
 F Hofmann分解
 G 分子内シン脱離(Ei反応)
セルフチェック問題

第3章 芳香族置換反応
1.芳香族置換反応の分類
2.ニトロ化
 A 置換基の影響:反応性と配向性
 B ヘテロ環のニトロ化
 C 医薬品合成への応用
3.ニトロソ化
4.ハロゲン化
5.スルホン化
6.芳香環への炭素側鎖の導入
 A Friedel-Crafts反応
 B Friedel-Crafts
7.ジアゾ化
 A ジアゾニウム塩の生成機構
 B N2を放出するジアゾニウム塩の反応
 C N2を放出しないジアゾニウム塩の反応(ジアゾカップリング)
8.Meisenheimer錯体を中間体とする反応(芳香族求核置換反応)
9.ベンザインを中間体とする反応
セルフチェック問題

第4章 炭素-酸素結合の合成
1.アルコール結合の生成
 A ハロゲン化物の加水分解
 B 窒素化合物の脱アミノ
  1)第一級アミンのジアゾ化分解
  2)アミド基の加水分解
  3)シアノ基の加水分解
  4)ジアゾケトンの転位反応(Wolff行転位)
 C オレフィンへのヒドロキシ基導入
  1)水和反応-
  2)ハロヒドリンの合成
  3)オキシ水銀化-脱水銀法
  4)ヒドロホウ素化-酸化法
  5)エポキシドの加水分解
  6)酸素分子の光付加反応
 D その他のアルコール結合生成反応
  1)微生物を利用したC-H結合のヒドロキシ化
  2)環状ケトンの光分解
2.エーテル結合の生成
 A アルコールおよびフェノールのアルキル化
 B オレフィンへのアルコールの付加
 C 官能化による環状エーテルの合成
  1)次亜ハロゲン酸エステルの光分解
  2)アルコールの四酢酸鉛による環化反応
3.エステル結合の生成
 A アルコールおよびフェノールのアシル化
 B カルボン酸のアルキル化
 C ケトンのBaeyer-Villiger反応
 D ラクトン環の合成
  1)オキシ酸およびハロカルボン酸のラクトン化
  2)不飽和カルボン酸のラクトン化
  3)環状ケトンのBaeyer-Villiger反応
  4)N-ハロアミドの光分解
4.カルボニル結合の生成
 A 含窒素化合物からの変換
  1)イミノ基の加水分解
  2)イミニウム塩の加水分解
  3)ニトロ基の加水分解(Nef反応)
  4)ニトロ基の酸化
 B アセチレンからの変換
  1)酸触媒水和反応
  2)ヒドロホウ素化-酸化
 C オレフィンからの変換
セルフチェック問題

第5章 炭素-窒素結合の合成
1.飽和炭素での求核置換反応
 A ハロゲン化アルキルとアミンの反応
 B アルコールとアミンの反応
 C エポキシドまたはアジリジンとアミンの反応
2.不飽和炭素での求核置換反応
 A 芳香族ハロゲン化物とアミンの反応
 B フェノールとアミンの反応
 C 芳香族活性水素のアミノ化
 D カルボン酸とアミンの反応
 E 酸塩化物とアミンの反応
 F 酸無水物とアミンの反応
 G カルボン酸エステルとアミンの反応
 H 転位反応によるC-C結合からC-N結合への変換
3.不飽和炭素での脱水縮合反応
 A カルボニル化合物とアミンの反応
 B カルボニル化合物の還元的アミノ化
 C 活性メチレンのアミノメチル化(Mannich反応)
4.不飽和炭素での付加反応
 A 二重結合へのアミンのMichael型付加
 B 二重結合へのニトリルの付加(Ritter反応)
5.求電子性窒素の反応
 A 脂肪族活性メチレンに対する求電子置換反応
 B 芳香環に対する求電子置換反応
6.窒素ラジカルまたはナイトレンを経由する反応
 A 亜硝酸エステルの光分解反応(Barton反応)
 B 脂肪族炭化水素の直接ニトロ化およびニトロソ化反応
 C ナイトレンを経由する反応
セルフチェック問題

第6章 炭素-炭素結合の合成
1.カルボアニオンによるアルキル化
 A カルボアニオンの生成
 B シアン化物イオンの置換反応
 C 2つの電子求引性基をもつ活性メチレンのアルキル化
 D 1つの電子求引性基をもつ活性メチレンのアルキル化
 E エナミンを経由するアルキル化
2.カルボアニオンのカルボニル基への付加反応
 A シアン化物イオンの付加
 B アルドール反応
 C アルドール型反応
 D カルボアニオンの共役系への付加
 E カルボアニオンとイミニウム塩の反応(Mannich反応)
 F カルボアニオンと酸ハロゲン化物の反応
 G カルボアニオンとエステルの反応
 H イリドを用いる反応
3.有機金属化合物を用いる反応
 A 有機マグネシウム化合物
 B 有機リチウム化合物
 C 有機銅化合物
 D 有機亜鉛化合物
4.カルベン、カルボカチオンおよびラジカルを用いる反応
 A カルベンを用いる反応
 B カルボカチオンを用いる反応
 C ラジカルを用いる反応
5.ペリ環状反応
 A 付加環化反応
 B シグマトロピー転位
 C 環状電子反応
セルフチェック問題

第7章 官能基の保護
1.ヒドロキシ基の保護
 A アルコール性ヒドロキシ基の保護
  1)エーテル型保護基
  2)アセタール型保護基
  3)エステル型保護基
 B グリコール型ヒドロキシ基の保護
  1)環状アセタール型保護基
 C フェノール性ヒドロキシ基の保護
  1)エーテル型保護基
 D カテコール型ヒドロキシ基の保護
  1)環状アセタール型保護基
  2)環状エステル型保護基
2.カルボニル基の保護
  1)アセタール型保護基
  2)エナミン型保護基
  3)セミカルバゾン、オキシムおよびヒドラゾン型保護基
3.カルボキシ基の保護
  1)エステル型保護基
4.アミノ基の保護
 A 第一級および第二級アミノ基の保護
  1)アミド型保護基
  2)ウレタン型保護基
 B 第三級アミノ基の保護
  1)第四級アンモニウム塩型保護基
5.スルファニル基の保護
  1)チオエステル型保護基
セルフチェック問題

第8章 有機合成のデザイン―逆合成の考え方―
1.有機化合物の合成計画と逆合成解析―その歴史―
 A 逆合成解析
 B 炭素骨格形成法と官能基変換法
2.逆合成解析の基礎
 A 標的化合物の切断と合成素子シントン
 B 逆合成解析の記号の使い方
 C 合成等価体
3.逆合成解析の実際
 A 基本的な切断
  1)切断タイプ-1(ヘテロ原子のα切断)
  2)切断タイプ-2(ヘテロ原子のβ切断)
  3)切断タイプ-3(カルボニル基のα切断)
  4)切断タイプ-4(カルボニル基のβ切断)
 B 簡単な標的化合物の切断
  1)エーテルの切断
  2)アルコールの切断
  3)二重結合の切断
  4)ケ卜ンの切断
4.医薬品の合成デザイン
セルフチェック問題

第9章 医薬品の合成
1.複素環式化合物
  1)アンチピリン
  2)インドメタシン
  3)クロルフェニラミンマレイン酸塩
  4)クロルジアゼポキシド
2.アルカロイド
 A モルヒネおよび関連アルカロイド
  1)パパベリン塩酸塩
 B フェニルエチルアミン系アルカロイド
  1)エフェドリン塩酸塩
3.ステロイド
 A ステロイドの合成例
  1)11α-ヒドロキシプロゲステロンの合成
  2)エストラジオールの合成
4.プロスタノイド
 A プロスタノイドの合成例
  1)ジノプロスト(PGF2α)およびPGE2の合成
  2)アルプロスタジル(PGE1)の合成
5.アミノ酸・ペプチド
 A アミノ酸
  1)アミノ酸の合成
 B ペプチド
  1)ペプチドの合成
6.核酸
 A ヌクレオシドとヌクレオチド
 B 核酸関連物質の合成
  1)プリン系化合物
   a)メルカプトプリンとアザチオプリン
  2)ピリミジン系化合物
   a)フルオロウラシルとテガフール
  3)ヌクレオシド
   a)シタラビン
セルフチェック問題

第10章 医薬品の確認試験
1.分解により発生するガスを検出する方法
 A アンモニア発生
 B 低級アミン臭発生
 C 酢酸エチル臭発生
 D 低級カルボン酸臭発生
 E ヨウ素ガス発生―芳香族ヨード化合物の確認
 F ホルムアルデヒド臭発生―ヘテロ原子にはさまれたメチレン基の確認
 G フェニルイソシアニド臭発生
 H ヨードホルム臭発生
 I 硫化水素発生―含硫化合物の確認
 J 二酸化硫黄臭発生―含硫化合物の確認
 K その他の特殊ガス発生
  1)酸化反応による生成物
  2)脱水反応による生成物
2.呈色または脱色をみる方法
 A ジアゾカップリング反応を利用した確認試験
  1)芳香族第一級アミノ基の確認
  2)フェノール性ヒドロキシ基の確認
  3)芳香族第二級アミンの確認
3.分解生成物による確認試験
 A 加水分解生成物の融点測定
 B 加水分解による白色沈殿の生成
4.誘導体生成による確認試験
 A カルボニル基の検出
  1)オキシムの生成
  2)2、4-ジニトロフェニルヒドラゾンの生成
  3)酸ヒドラジドを用いるアシルヒドラゾンの生成
 B ヒドロキシ基またはアミノ基の検出
  1)ベンゾイル誘導体の生成
  2)アセチル誘導体の生成
 C バルビツール酸骨格の確認―p-ニトロベンジル誘導体の生成
セルフチェック問題

セルフチェック問題の正解と解説
参考書
事項名索引
医薬品名索引

医療の担い手である薬剤師の養成課程は、2006年より六年制となった。新しい薬学教育を修めた第一回目の卒業生が、今春、全国の大学薬学部から巣立っていった。
 薬学部を出た者の特徴、それは化学物質の生体との関わりを熟知していることに他ならない。薬剤師の専門性とは、いうまでもなく薬に関する広範な知識であり、その学問的基盤の中心は有機化学である。薬学分野に必要とされる有機化学の応用力を高め、自ら問題点の発見と解決力を培うために学ぶのが「薬品製造学」である。すなわち薬が創られ、世に出て治療の目的で使われ、そして役目を終えて体から出ていくまでの“薬の一生"に一貫して精通し、正しい判断ができるのは薬剤師をおいて他になく、この点では他のいかなる学部の出身者よりも抜きんでているはずである。とくに、薬の創り方に習熟することによってその生体内変化(活性の発動、代謝、排池)といった薬学的諸現象の予測も容易となる。薬を使う薬剤師が、薬の合成法や確認方法を知らないで済まされるものではない。そういう意味でも、薬学教育の中で「薬品製造学」の重要さは計り知れないものがある。
 医療現場で薬剤師が真に頼りにされるのは、薬の調剤や服薬指導のみならず、薬物治療の投薬計画や薬剤管理指導業務にみられるような現場における化学的な対応や問題解決能力にある。また、若者たちから薬剤師が尊敬される職種の一つにあげられる第一の要因は、「人」である薬剤師が薬を創り出して使うということが、畏れ多い神技のように見えるからであるともいわれる。
 新しい薬学教育が向かっている方向が必ずしも理想とは思わない。薬を使う場面に焦点をしぼった薬剤師教育にあまりに偏っていると思うからである。人体や疾患に関する知識を重視するあまり薬剤師の長所たる化学的専門性を軽視したのでは、本当の意味で社会に貢献する薬剤師にはなりえない。これからの薬剤師にとっても有機化学の知識の重要性が減ずることは決してないであろう。
 20年以上の長きにわたって版を重ねた南江堂薬学教科書シリーズ「INTEGRATED ESSENTIALS薬品製造学」の後継書にあたる本書「パートナー薬品製造学」は、創薬をめざす有機合成の基礎知識を確実に身につけることを目的とした学部学生のための教科書である。改訂第2版では従来の編集方針を踏襲して、最小限の基本的かつ重要な反応や合成法を簡潔に分かりやすく説明することに努め、不必要に高度な内容に踏み込まないように細心の注意をはらった。また、本書の執筆者の半数以上に異動があり、内容については新執筆者により必要な改稿が加えられたもので、これに伴うレベルや用語の統一、全体のバランスの調整については編集者にご一任いただいた。
 本文解説と医薬品の名称は、第十六改正日本薬局方に準拠している。また、到達度をセルフチェックできるように、章ごとに薬学教育モデル・コアカリキュラムの到達目標に関する演習問題を備え、正解(解答例)と解説を加えた。
 本書が若い薬学生の有機化学ひいては有機合成への興味をかき立てることに少しでも貢献できれば、編集者・著者一同のこの上ない喜びである。
野上靖純、田口武夫、長普子