教科書

化学療法学

病原微生物・がんと戦う

監修 : 上野芳夫/大村智
編集 : 田中晴雄/土屋友房
ISBN : 978-4-524-40248-9
発行年月 : 2009年4月
判型 : B5
ページ数 : 330

在庫あり

定価5,940円(本体5,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

『微生物薬品化学』を、薬学6年制カリキュラムに沿って新刊移行。薬学教育モデルコア・カリキュラムC14(5)の内容を柱とし、微生物学関連事項を一冊にまとめた化学療法学のテキスト。旧版の軸である化学療法薬の要点をふまえた平易な解説を受け継ぎ、各医薬品をよりわかりやすく紹介。さらに、背景となる病原微生物・悪性腫瘍についての解説、化学療法薬の使い方などの臨床につながる事項を加えた。

第1章 小さな生き物たち(微生物)
1.総論
 A 生態系の中での微生物の役割
 B 原核生物と真核生物
2.各論
 A 細菌
 B ウイルス
 C 真菌・原虫・その他の微生物
第2章 微生物感染症
 A 感染症とは
 B 細菌感染症
 C ウイルス感染症
 D プリオン病
 E 真菌感染症
 F 原虫感染症
第3章 感染症治療薬:総論
 A 化学療法薬の発展の歩み
 B 力価と検定法および感受性試験
 C 抗菌薬耐性
 D 選択毒性と副作用および相互作用
 E 使い方
第4章 感染症治療薬:各論
 A 抗菌薬(抗細菌薬)
 B 抗原虫・抗寄生虫薬
 C 抗真菌薬
 D 抗ウイルス薬
第5章 抗腫瘍薬
 A 悪性腫瘍の病態と治療
 B 抗悪性腫瘍薬
 C 抗悪性腫瘍薬の耐性と副作用
第6章 微生物が生み出す医薬品
 A 免疫抑制薬
 B 糖鎖関連酵素阻害薬
 C コレステロール代謝酵素阻害薬
 D マイコトキシン
第7章 発酵による医薬品の生産
 A 抗生物質の生合成
 B 発酵による抗生物質の生産
 C 半合成抗生物質
第8章 発酵による有用物質の生産
 A アミノ酸発酵
 B 核酸発酵
 C 糖質発酵
 D 微生物酵素の利用
 E その他の有用物質の生産
索引

世界保健機構(World Health Organization、WHO)によると、世界レベルでは今でも感染症が死亡原因の1位であり、中でも結核、マラリア、AIDSが3大感染症である。一方、わが国では「がん」が最も多く、死亡者の三人に一人が「がん」で亡くなる時代となっている。このような時世を背景として、「化学療法学―病原微生物・がんと戦う―」と題したこの教科書が、以下に述べるように(1)化学療法の新しい展開、並びに(2)薬学教育の6年制への変換という節目の時に出版されることは大変意義深いものと考えられる。
 (1)化学療法の新しい展開
「化学療法(Chemotherapy)」という概念は、化学療法の創始者と言われるP.Ehrlichによって最初に唱えられ、「感染症を化学物質で治療すること」と定義された。そして、サルバルサンを世に送り出したが、この合成化学療法薬の流れはその後サルファ薬、キノロン薬、アゾール薬などへと発展し、抗菌薬から抗真菌薬、さらには抗ウイルス薬へと広がりを見せた。また、A.Flemingによるペニシリンの発見以降、化学療法薬の範囲は化学的に合成されたものに加えて天然有機化合物である抗生物質へと大きな広がりを見せるにいたった。
 一方、化学療法の対象も、感染症を引き起こす微生物から悪性腫瘍(悪性新生物)へと広がっていった。第二次大戦中に毒ガスの一種であるマスタード・ガスに曝された兵士の白血球が減少しているという発見から白血病の治療ヘと進展した。マスタード・ガスと同じ作用があり、しかも毒性の少ないナイトロジェン・マスタード関連化合物が開発され、抗悪性腫瘍薬として用いられるようになった。その後、多くの抗生物質や植物アルカロイドががん化学療法薬として開発されて現在にいたっている。
 特に近年、イマチニブやゲフィチニブを皮切りとした分子標的薬が開発され、今後さらに新しい分子標的薬が次々と登場してくるものと期待されている。このようにして、化学療法の対象は病原微生物のみならず悪性腫瘍をも含むようになっている。
 (2)薬学教育の6年制への変換
 日本における薬学教育は、2006年から新しい制度による6年制の教育がスタートした。この6年制の薬学教育の目標は、「豊かな教養とコミュニケーション能力があり、問題発見能力と問題解決能力を兼ね備えた薬の専門家として臨床の現場で活躍できる質の高い薬剤師を育成する」ことにある。この課題を達成するために、「教授者主体」から「学習者主体」の立場で作成された薬学教育モデル・コアカリキュラムが日本薬学会により作成された。そして、2012年3月以降に実施される薬剤師国家試験は、このコア・カリキュラムをベースとして設定される出題範囲に基づいて展開されることになった。
 モデル・コアカリキュラムの中では、微生物に関する項目および悪性新生物に関する項目として、下記のようなものが設定されている。
・C7(2)「薬物の宝庫としての天然物」の中の〔微生物が生み出す医薬品〕、〔発酵による医薬品の生産〕、〔発酵による有用物質の生産〕
・C8(4)「小さな生き物たち」の全項目
・C10(2)「免疫系の破綻・免疫系の応用」の中の〔予防接種〕、(3)「感染症にかかる」 の中の全項目
・C14(5)「病原微生物・悪性新生物と戦う」の全項目
 これらの中で、抗微生物薬と抗がん薬が同一項目として扱われていて、薬学教育の中でもかなり重要な位置を占めると考えられる。また、この分野の医薬品の研究と開発において、日本の研究者が大いに活躍し、世界的な貢献をしてきた分野でもある。
 そこで、本書では、C14(5)の「病原微生物・悪性新生物と戦う」の項目を柱として、書名を「化学療法学―病原微生物・がんと戦う―」とし、モデル・コアカリキュラムの中に散在する微生物学関連の内容並びに抗微生物薬と抗悪性腫瘍薬を一冊の本にまとめることとした。これらの内容は微生物学を専門とする教員が担当すると予想される項目をすべて含んでおり、6年制の薬学教育における微生物学関連の教科書として大変便利であると考えられる。本書が、新しい薬学教育において大いに貢献できることを願ってやまない。
 最後に、以上の観点をご理解いただき、お忙しい中貴重な原稿をご執筆いただいた先生方に心からお礼申し上げる。
2008年12月
編者(田中晴雄・土屋友房)