雑誌

別冊整形外科

No.72 高齢者(75歳以上)の運動器変性疾患に対する治療

編集 : 竹下克志
ISBN : 978-4-524-27772-8
発行年月 : 2017年10月
判型 : A4
ページ数 : 188

在庫あり

定価6,804円(本体6,300円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

本特集では“高齢者の運動器変性疾患に対する治療”を取り上げた。従来と異なる概念に基づいた治療アルゴリズム、新しいデバイスや診療チームによる保存的・手術的治療、また、それらの治療の適応に対する新たな視点や基準の設定、高齢者特有の問題に配慮した手術的治療などでの取り組みを紹介した。75歳を下限とし、80歳以上あるいは90歳、100歳以上とした内容も取り上げた。変性疾患としたが、骨粗鬆など脆弱性を基盤とする軽微な外傷も扱っている。

【内容目次】
I.上肢の変性疾患に対する高齢者治療
 1.肩関節変性疾患
  高齢者(75歳以上)の腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術の治療成績
  75歳以上の高齢者に対する鏡視下腱板修復術の術後成績
  75歳以上の高齢者腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術
 2.手関節・手の変性疾患
  高齢者の母指手根中手関節症に対するligament reconstruction with interposition arthroplastyとsuture-button suspensionplastyの併用手術−hybrid suspensionplasty
  高齢者の母指手根中手関節症に対する治療−Thompson法による関節形成術の検討
  Dupuytren拘縮に対するコラゲナーゼ注射療法
II.下肢の変性疾患に対する高齢者治療
 1.股関節変性疾患
  高齢者変形性股関節症に対する立位脊椎・骨盤矢状面アライメントの影響
  高齢者における変形性股関節症の治療−合併症予防と早期退院をめざして
  高齢者の変形性股関節症に対するdual mobility cupを用いた人工股関節全置換術の治療経験
  80歳以上の高齢者に対する人工股関節全置換術
  高齢者における人工股関節全置換術後脱臼
 2.膝関節変性疾患
  変形性膝関節症に対する軟骨温存をうながす振り子運動療法
  高齢者における開大式楔状高位𦙾骨骨切り術
  重篤な合併症を有する高齢者の変形性膝関節症に対する侵襲を考慮した人工膝関節単顆置換術
  85歳以上の超高齢者における人工膝関節全置換術の治療成績−再置換術例も含めて
 3.足関節・足部の変性疾患
  中足趾節関節固定術を行った強剛母趾の1例
III.脊椎の変性疾患に対する高齢者治療
 1.頚椎変性疾患
  非リウマチ性歯突起後方偽腫瘍の疫学と発症要因
  高齢者のmidcervical central cord syndromeに対する頚椎前方固定術
  高齢者頚髄症に対する頚椎前方手術の成績
  高齢者の頚椎症性脊髄症に対する内視鏡下椎弓形成術の有用性
 2.胸腰仙椎変性疾患
  1)変形性腰椎症・腰部脊柱管狭窄症
   80歳以上の高齢者に対する脊椎疾患の手術的治療と周術期合併症
   80歳以上の高齢者に対する脊椎固定術
   80歳以上の高齢者腰部脊柱管狭窄例に対する後方除圧術の治療成績
   高齢者(80歳以上)の腰椎変性すべり症に対する経筋膜的椎弓根スクリュー併用椎間関節固定術の臨床成績−その安全性と有用性
   頚椎と腰椎骨盤部の両方にアライメント異常をもつ変性疾患の治療
  2)変形性胸椎症・骨粗鬆症やびまん性特発性骨増殖症(DISH)に関連した病態
   骨粗鬆性椎体骨折を生じた高齢者治療の問題点と治療法
   高齢者(75歳以上)の骨粗鬆症性椎体骨折に対する椎体不安定性の定量評価に基づいた最適な治療アルゴリズムの確立に向けた試み
   日本およびスウェーデンにおけるびまん性特発性骨増殖症の有病率
   びまん性特発性骨増殖症に伴う椎体骨折に対する治療法とその問題点
IV.ロコモティブシンドロームの視点からみた高齢者治療
 ロコモティブシンドロームと筋力・転倒リスク・骨強度の関係
 高齢者のサルコペニアの診断と治療
V.高齢者の併存疾患・合併症に対する対策
 超高齢者における関節リウマチ治療の問題点と実際
 せん妄の現状と対策・診療
 高齢者脊椎変性疾患における術後合併症発生の危険因子−周術期栄養状態評価の重要性
VI.高齢者の診療に焦点を合わせた医療,デバイス,教育
 保存的治療のための新規治療デバイス
 手術的治療における新規治療デバイス
 骨粗鬆症治療を継続するための患者教育・啓発の重要性−市民・患者向け院内フォーラムによる意識変容調査
 高齢者の運動器変性疾患の周術期におけるリハビリテーションとチーム医療の実践
 急性期病院整形外科における在院死亡−整形外科医は超高齢社会にどのように対応すべきか



 日本の平均寿命は、世界一は香港に抜かれてしまいましたが、2016年時点で男性が80.98歳(2位)、女性が87.14歳(2位)となっています。少子化と相まって、高齢者が整形外科診療患者の過半を占める事態となっています。75歳以上、すなわち後期高齢者では運動器疾患は有して当たり前なうえに、複数罹患も珍しくはありません。また運動器以外の内科系疾患などへの理解と対応が必要であり、運動器疾患の診断、そして治療方針の決定を難しくしておりますし、現行治療の有効性についても検証が十分とはいえません。
 今回、本特集に「高齢者(75歳以上)の運動器変性疾患に対する治療」を取り上げましたところ、さまざまな論文をいただくことができました。上肢では最近とみに診療機会が増しており高齢者特有といえる腱板断裂や母指手根中手関節症などに対する治療内容、また下肢ではもっとも罹患率の高い変形性膝関節症、そして変形性股関節症・強剛母趾に対する運動療法から骨切り、人工関節まで幅広い治療内容をご報告いただきました。脊椎では腰部脊柱管狭窄症やすべり症、頚髄症などの代表的疾患や、高齢者に多い歯突起後方偽腫瘍、椎体骨折、びまん性特発性骨増殖症などの知見をご報告いただきました。さらにロコモティブシンドローム・サルコペニアの考察や、せん妄などに代表される高齢者治療での併存疾患・合併症の診断や対策に加えて、治療デバイスや意識変容・チーム医療など整形外科単独では解決が厳しい領域への論文をいただくことができました。
 診療や研究、そして教育でご多忙な中でご投稿いただいた先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げますとともに、読者の皆様の診療活動の一助としてお役に立つ内容になりました本特集を皆様に拝読していただければ幸いです。

2017年10月
自治医科大学教授
竹下克志