書籍

関節内運動学

4D-CTで解き明かす(DVD-ROM付)

監修 : 宇都宮初夫
: 片岡寿雄
ISBN : 978-4-524-26982-2
発行年月 : 2014年9月
判型 : A4
ページ数 : 188

在庫あり

定価7,560円(本体7,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

動作を改善しようとするすべての臨床家にとって、運動療法の技術向上に不可欠となる関節内運動学の知識を包括的にまとめた。これまで触知によってしか認識することができなかった生体の関節内の動きを、3D・4D-CTを用いて可視化し、付属のDVD-ROMに収録。上肢・下肢・体幹で計82の動画を提示し、書籍内でも動画から切り出した画像を用いることで各関節の構造・構成運動をビジュアルに理解することができる。

監修の序
はじめに
本書の使い方
I.総論
II.各論−骨運動と関節内運動(構成運動)の実際
 1 運動科学(kinesiology)における関節内運動学(arthrokinematics)
 2 関節の種類
 3 滑膜性関節(synovial joint)の構造と機能
  a 構造
   1)関節包(articular capsule)
   2)滑液(synovial fluid)
   3)関節軟骨(articular cartilage)
   4)関節包靱帯(capsular ligaments)
   5)特殊構造
  b 機能
   1)潤滑(joint lubrication)
   2)関節神経学(articular neurology)
   3)循環(blood supply)
 4 滑膜性関節の分類
  a MacConaillの構造分類
  b MacConaillの構造機能分類
   1)卵形(unmodified ovoid type)
   2)変形した卵形(modified ovoid type)
   3)鞍形(unmodified sellar type)
   4)変形した鞍形(modified sellar type)
 5 関節内運動学の歴史
  a Walmsleyの法則
  b 潤滑理論
  c 副運動(accessory movements)
  d 関節の遊び(joint play)
  e 生理的運動(physiological movements)における関節面の動き表現
  f 凹凸の法則(Kaltenborn’s convex-concave rule)
  g 構成運動(component movements)
 6 骨角運動学(osteokinematics)
  a 骨運動(bone movements)
  b 解剖学的骨運動の表現
  c 運動自由度(degree of freedom)
  d MacConaillによる骨運動の分類
  e 生理的運動(physiological movements)
  f 骨運動の特徴
   1)連合回旋(conjunct rotation)
   2)付加回旋(adjunct rotation)
 7 関節内運動学(arthrokinematics)
  a 関節内運動(intra-articular movements)とその分類
   1)関節の遊び(joint play)
   2)構成運動(component movements)
  b 関節面(卵形・鞍形を含む)の構造的・機能的特徴
   1)関節面の面積比
   2)関節面曲率
   3)転がりに付加される凹面が導く滑り
   4)関節面移動の経路(軌道)
   5)球体面の幾何学的特性
   6)軌道がつくる骨体の回旋
   7)特別な肢位
   8)凹凸の法則(convex-concave rule)
   9)瞬時の回旋軸(instantaneous axes of rotation:IAR)
   10)関節内運動と骨運動の関係
A.上肢
 1 肩複合体
  a 関節窩上腕関節(glenohumeral joint)
   1)構造
   2)構成運動
  b 肩鎖関節(acromioclavicular joint)
   1)構造
   2)構成運動
  c 胸鎖関節(sternoclavicular joint)
   1)構造
   2)構成運動
 2 肘部
  a 腕尺関節(humeroulnar joint)
   1)構造
   2)構成運動
  b 腕橈関節(humeroradial joint)
   1)構造
   2)構成運動
  c 近位橈尺関節(proximal radioulnar joint)
   1)構造
   2)構成運動
 3 手根部
  a 遠位腕尺関節(distal radioulnar joint)
   1)構造
   2)構成運動
  b 手根部の関節
  c 橈骨手根関節(radiocarpal joint)
   1)構造
   2)構成運動
  d 手根中央関節(midcarpal joint)
   1)構造
   2)構成運動
 4 手指部
  a 第2.5手根中手関節(carpometacarpal joint :CMC joint)
   1)構造
   2)構成運動
  b 第1(母指)手根中手関節(CMC joint of the thumb)
   1)構造
   2)構成運動
  c 中手指節関節(metacarpophalangeal joint)
   1)構造
   2)構成運動
  d 指節間関節(interphalangeal joint :IP joint)
   1)構造
   2)構成運動
B.下肢
 1 股関節
   1)構造
   2)構成運動
 2 膝部
  a 脛骨大腿関節(tibiofemoral joint)
   1)構造
   2)構成運動
  b 膝蓋大腿関節
   1)構造と構成運動
  c 近位脛腓関節
   1)構造と関節の遊び
 3 足部・足趾部
  a 距腿関節(talocrural joint)
   1)構造
   2)構成運動
  b 距骨下関節(subtalar joint)
   1)構造
   2)構成運動
  c 距踵舟関節(talocalcaneonavicular joint)、横足根関節(transverse tarsal joint)[距舟関節+踵立方関節]
   1)構造
   2)構成運動
  d 楔舟関節(cuneonavicular joint)、楔間関節(intercuneiform joint)、楔立方関節(cuneocuboid joint)
   1)構造
   2)構成運動
  e 足部運動のまとめと他の運動
   1)構成運動
  f 足趾部
   1)構造(足根中足関節、中足間関節、中足趾節関節、趾節間関節)
   2)構成運動
C.体幹
脊柱の運動学
  a 運動節(motion segment)
  b 運動節における運動特徴
  c 運動節と骨運動
  d 椎骨の組み合わせ運動(coupling of intervertebral motion)
  e 椎間関節における関節内運動
 1 頭頚部
  a 頚部
   1)構造
   2)構成運動
  b 顎関節(temporomandibular joint)
   1)構造
   2)構成運動
 2 胸部
   1)構造
   2)構成運動
 3 腰部
   1)構造
   2)構成運動
巻末資料
(1) 主な関節のCPPおよびLPP 一覧表
(2) 関節窩の軌道図(右上腕骨頭)
文献
索引

著者は、学生時代に関節内運動について深く学ぶ機会を得た。その後も本書の監修者である宇都宮夫先生に師事し、様々なことを教えていただいた。関節内運動(学)を学んでいると、それが一般的に特殊な治療技術で、それを扱う人だけの学問であるといった認識に遭遇し、大きな違和感を感じた。脊柱の関節内運動を治療するといえば、「痛みの治療?」といった具合である。これはわが国において関節内運動学の導入が、学問体系としての紹介や導入ではなく、治療技術の理論的根拠として紹介されることが多かったことによる。たとえば、『Gray’s Anatomy』には関節内運動学が「関節学(arthrology)」の章の中に詳しく記述されているが、わが国の解剖学書の中には関節内運動学の記述はなく、成書と呼べるような解剖学書でなければ関節学の記述すらない。関節内運動学を学べる機会は、痛みの治療として紹介された特殊な臨床技術と呼ばれるものか、『Gray’s Anatomy』のいずれかを学ぶ者にしか与えられてこなかったのである。
 関節可動域運動を考えてみると、これは2骨の間でつくられた関節の動きを治療する技術である。たとえば脊柱は全体として動くが、運動節(上下椎骨を1組とした脊柱の部分)の総合された動きである。よって関節可動域運動の対象は1つひとつの運動節(具体的には椎間関節の動き)であって、脊柱全体ではない。脊柱全体を動かすというのは運動ではあっても、関節可動域運動にはならないのである。動作には体幹の動きが伴う。ということは、動作を改善しようとするすべての臨床家は、脊柱運動節の構造と関節内運動を理解する必要がある。これは疾患にとらわれることではない。
 このように脊柱ひとつとっても、それを構成する関節の構造や関節内運動を学ぶことは、特殊な一部の人の学問ではない。運動科学(kinesiology)としては、筋の力学的特性を中心に理学療法・作業療法に導入されてきた。しかし、筋の機能は収縮することであり、その目的は関節を動かすことである。また神経の機能は伝達することであり、目的は複数筋を巧みに操ることである。関節が動くことが運動であり、その運動の組み合わせが動作である。これらのことを考えれば、まず動かされる関節の特性を学び理解しなければならない。このことは、理学療法・作業療法の治療場面でも同じで、まず関節への治療が行われ、次いで神経筋に……という順序をたどらなければならないことを示唆する。正常な神経筋の機能は、正常な関節内の動きに依存している。つまり神経筋によって動かされるべき関節が正常に動けない場合は、神経筋の機能もまた十分に回復することはできないのである(Mennell、1964年)。
 関節の中で起こっている動きは、目では見えないが手で確認することはできる。しかし、それ故この運動を認知する技術は非常に難しく、学ぶのに時間を要する。3D・4D-CTという機器の発展を見た今日、これを活用して関節内の動きを調べることに年から着手した。関節内の動きを初めて見たとき、四肢関節であってもその動きは書籍で学んできたことや想像と違うものがいくつもあった。また関節内の動きの巧妙さに驚嘆した。
 以後、少しずつ研究してきたが、視覚で与えられると関節内運動の理解は容易となり、知識や技術の向上が速やかになることを教育場面で感じた。また臨床的にも関節内の動き、とりわけ骨運動に伴って動く関節面の動き(構成運動)を学ぶことは価値が高い。関節面が必要かつ微妙な方向へ動いていくので、骨運動は軽く滑らかになり、また骨は止まらず必要な範囲まで角度を変えることができるからである。このように骨運動の範囲を広げ、軽く動くという運動の質を向上させるためにも構成運動は必須である。
 このような経緯から構成運動について理解しやすく、一目瞭然となる動画を用いながら関節内運動学全般を学べるよう本書を構成し、学生にとどまらず臨床で活躍されている方々にも参考にしていただけるように本書を出版することにした。
 本書全般にわたっては歴史を大事にしている。これは、使用用語の変遷や、構造・機能が発見された流れを知ることは、学問(ここでは関節内運動学)を理解するうえで非常に重要と考えているからである。ある書物からの知識だけをうのみにすることは、うわべの学習となる。ここに至る過程を知ってこそ、成り立ち・意味・使用用語の変遷といった基礎となるすべてを知ることができ、それは学問そのものを深く理解する手助けとなる。過去を振り返り歴史を知ることで、用語に対する新しい定義の必要性や区別の必要性が理解されるであろう。
 本書が、意欲ある学生諸君や、多くの臨床家の方々の手助けになってくれることを期待している。そして機能障害を有するたくさんの患者を救うことに寄与できると信じている。また関節内運動学がさらに研究され、理学療法士・作業療法士教育の必須科目になってくれることを念願する。
 最後に、撮影に協力してくれた岩倉病院放射線科技師の方々および岩倉病院職員諸氏、さらに医学生諸君ならびにSJF学会愛知支部会員の方々に心より感謝申し上げます。また本書が多くの協力者の献身的な好意で成り立っていることを付け加えます。そしてご多忙にもかかわらず本書全般にわたる監修を快く引き受けてくださいました宇都宮初夫先生に厚く深謝いたします。

2014年9月
片岡寿雄