書籍

もう迷わない!外来インスリン療法マスターブック

導入からステップアップまでをこの一冊で!

: 弘世貴久
ISBN : 978-4-524-26937-2
発行年月 : 2013年5月
判型 : A5
ページ数 : 118

在庫あり

定価2,376円(本体2,200円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

外来インスリン導入のコツから一歩進んだ知識までマスターできる実践的な一冊。豊富な臨床経験をもつ著者が、「外来導入にふさわしいレジメンは?」「コントロールがうまくいかないときは?」「併用薬はどう選ぶ?」など身近な疑問点を中心にわかりやすく解説。インスリン導入を始めたい方はもちろん、導入で困っている方、一歩進んだインスリン療法を目指したい方にもおすすめ。

I インスリン導入を行うために、まず患者をどうやって説得するか?
 A.インスリンって悪いイメージ?
 B.インスリン療法は、一度始めると一生やめられないのか?
 C.インスリンを体験する
II 外来導入に用いるインスリン療法のレジメンはどうするのか?
 A 海外の大規模研究からみる最適なレジメンとは?
  1.英国発、私が最も注目する4Tスタディ
  2.1種類のインスリンを用いて外来で導入する 〜1st phase〜
  3.2種類目のインスリンでステップアップ 〜2nd phase〜
  4.低血糖頻度は基礎インスリンの追加で大きく変わる!
  5.追加インスリンと基礎インスリンのバランスとは?
 B 私たちの研究からみる最適なレジメンとは?
  1.日本発、JUN-LANスタディ6
III いよいよインスリンを持って外来導入!しかし、エビデンスを知るだけでは外来インスリン導入はできない!
 A 外来インスリン導入を安全に行うための4つの約束事
  1.最初は治療内容をできるだけシンプルに
  2.インスリンは、急がずゆっくり増量
  3.導入後の急激な血糖コントロールの悪化を避ける
  4.わからなくなったら無理させない
 B 外来導入にふさわしいインスリンレジメンは?
  1.段階的にステップアップ!今や外来導入の主流、BOTとbasal-plus
  2.超速効型3回注射からの導入〜最初にガツンと始めることが結局、よりよい血糖コントロールにつながる
  3.至適な基礎/追加インスリン比の混合型インスリンの3回注射を用いた新しいインスリン外来導入〜ヒューマログミックス50注の3回注射
IV これであなたもインスリンマスター
 A インスリンの「離脱」について考えよう
  1.インスリンを離脱することの意味
  2.グリニド系薬を使ってインスリンを離脱する
  3.インスリンから「おさらば」してしまわない離脱法
 B せっかくインスリン療法を始めたのにコントロールがうまくいかないときの解決法
  1.「食事や運動療法がまるでできていない」
  2.「1日4〜5回もインスリンを注射しているのにコントロールが不良」
  3.「従来療法の混合型あるいは2相性インスリンの2回注射を実施しているのにコントロールが不良」「入院はできないのでbasalbolus療法に変更できない」
  4.「インスリン注射をちゃんと実行していない」
  5.「決められた単位を注射していない」
  6.「間違った注射方法を行っている」
  7.「いつも同じ場所に注射しているので硬結ができている」
 C インスリン療法を行ってもうまくいかないときの経口薬の併用療法
  1.SU薬併用のメリット
  2.グリニド系薬と基礎インスリンの併用
  3.DPP-4阻害薬との併用は理想的?
  4.チアゾリジン薬は塩分制限で併用を
  5.ビグアナイド薬との併用は効果的か?
  6.α−グルコシダーゼ阻害薬との併用は食後高血糖患者に
 D GLP-1受容体作動薬、インスリンとどう使い分ける?
付録
 A.インスリン関連の医療保険点数一覧(2012年4月版)
 B.インスリン製剤一覧
 C.患者用資材を活用しよう!
 ●コピーして使える患者用説明書〜インスリン注射を行う患者さまへ
索引
おわりに

私が医師になったのは今から27年前、インスリン療法といえばブタのレギュラーインスリンとレンテインスリンを用いるのが主流で、実際に外来レベルの患者はだいたいレンテインスリンの1回注射を打って治療されていました。当時の糖尿病治療といったらこの2種類のインスリンとSU薬ぐらいしかなく、実はメトホルミンも存在していましたが、私の周りにはほとんど使う人はいませんでした。糖尿病の薬物治療はそれほど選択肢がなかったのです。しかも当時は医師と患者の関係というのは今からは考えられないくらい医師の立場が強く、診察室の会話といえば「食べすぎです!運動不足!」「こんなに血糖悪くて、入院しないと死んでしまいますよ!」といった感じで極めてお粗末な状況だったように記憶しています。当時、内分泌代謝領域に興味を持っていましたが、糖尿病の治療がこんな感じだったので、自然に内分泌の道を選びました。それから12年が過ぎ、大阪大学から兵庫県の西宮市立中央病院に赴任することになり、この300床の病院の内分泌代謝の臨床を現実一人で管理しなければならなくなってしまいました。ふたをあけると担当の患者の8割は糖尿病、あとは脂質異常症や高血圧。内分泌疾患といえば甲状腺疾患だけで、これは糖尿病の勉強を1からやり直さないと大変なことになる!と感じました。
 その私の助け舟になってくれたのは日本糖尿病学会が1年に1回行っているレクチャーやシンポジウムだけの学会、「糖尿病学の進歩」でした。このシンポジウムは大きく分けると次の3種類のセッションに分かれています。(1)医師向け、主に基礎的研究の現状についてのシンポジウムやレクチャー、(2)医師およびコメディカル向け、主に糖尿病診療に関するレクチャー、(3)コメディカル向け、主に糖尿病療養指導に必要な知識。私は糖尿病学の進歩に3年連続で参加して、多くはかぶりついて席に陣取り、決して途中で観光地巡りなどはせず聴講しました。当然、私が参加したのは(2)と(3)ばかり、日常診療でどうすればいいかわからないことをしっかり吸収して帰ることが目的でした。当初はワクワクしながらいろんなセッションを聞いており、次々と日常診療の問題点が解決されていきました。しか し次第に「ええっ!本当??」と思うレクチャーがぼつぼつ出てくるようになりました。最も私が疑問に感じたのはインスリン療法のところでした。「できるだけ、入院させる」「経験豊富な専門医が行うのが望ましい」「退院時には4回打ちから混合型2回打ちに変更した」。そうです。自分が日々インスリン療法を行って感じている疑問点にこれらのレクチャーはまったく答えてなかったのです!こんなに糖尿病の治療が進歩しているのに、なぜインスリン療法は進歩していないのか!!?自分の興味はおのずとインスリンの導入という点に引き込まれていったのです。

2013年4月
東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野 教授
弘世貴久

患者さん一人一人によって違いますが、2型糖尿病では時間の経過とともに、膵β細胞の機能が徐々に低下していく疾患と考えられています。ですから、ごくわずかの経口糖尿病治療薬で治療がうまくいっていた方でも、時間が経つにつれて必要な薬剤の量が増え、インスリン治療が必要になることも少なくありません。
 しかし、インスリン治療には患者さんにも医療者にも「壁」があります。
 注射という医療行為は「面倒」、「痛い」、「低血糖を引き起こす」、「インスリンなんか注射したらもうおしまいだ」……という患者さんの思い(大部分は誤解ですが……)はインスリン治療に移行する際に大きな障壁となります。医療者側も、「注射は面倒かもしれない」、「患者さんに嫌がられる」、「高齢なので理解力は十分だろうか」、「休日に何か起きたときの対応はどうしたらよいだろうか」……などと考えますので、スムーズにインスリン治療を導入するときの障壁は小さなものではありません。しかし、一昔前と違い、インスリンはペン型の注入器を用いてきわめて細く痛みの少ない注射針で容易に行うことが可能です。インスリン治療を開始した多くの患者さんたちは、こんなに簡単なのであればもっと早く始めてもよかったと考えているのです。
 このような背景のなかで、医療従事者のインスリン治療に対する「壁」を取り去ることを目的として書かれたのがこの書籍です。弘世貴久先生のインスリン治療に対する思いがすみずみにまで詰まっています。超速効型インスリンの各食前投与、時効型インスリンの1回投与、混合製剤による導入、経口血糖降下薬との併用……、どのような方法でもまずインスリン治療を外来で簡単に始めるということの重要性を多くの方に伝えたいという熱意が伝わります。コラムには、インスリン治療に関する解説のみならず、SMBGを行う際の果汁の影響、新しいインスリン製剤やデバイスについても取り上げられています。また、付録として保険点数や患者さん向けの資料なども掲載されています。
 『君子は豹変す』という言葉があります。本来、肯定的な意味で使用される言葉で、豹の毛が季節の変わり目に抜け替わって斑紋も鮮やかに美しくなるように、徳のある君子は一つの考えに拘泥せずに、すばやくはっきりと考えを変えるということです。特定のインスリン治療レジメンにこだわらず、治療の多様性を認識し、その時点でのベストを考えることの重要性を実践している、まさに糖尿病診療の君子たる弘世先生の思いの丈がしっかりと詰まったプラクティカルな書籍です。巻末に、弘世先生のお仕事をしっかりと支えてくださるご家族が紹介されています。ご家族思いの夫として父親としての優しい一面を窺うことができ、最後まで読まれた読者の心にほんのりとした思いを残してくれます。これも、忙しい毎日に忙殺される私たちに弘世先生が伝えたかったメッセージの一つではないかと思われます。

臨床雑誌内科113巻4号(2014年4月号)より転載
評者●NTT東日本札幌病院内科診療部長 吉岡成人

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