書籍

肝臓を診る医師のための肝臓病理テキスト

編著 : 中沼安二
ISBN : 978-4-524-26920-4
発行年月 : 2013年5月
判型 : B5
ページ数 : 322

在庫あり

定価16,200円(本体15,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

臨床の観点から必要とされる肝臓病理の基礎的・実践的な知識を、総論と各論の二部構成で完全網羅。総論では、肝臓の解剖と発生、病理の基礎知識を実践的に解説。各論では、各疾患の病理像とその解説に加え、病期分類や診断・鑑別など実践的な内容を、貴重な写真とともに詳しく解説。臨床現場で活かせる肝臓病理の全てが一冊で理解できる“スタンダード”登場。

I章 解剖と発生
 A.肝臓の解剖
 B.肝臓の発生
II章 肝臓病理の基礎:病変の名称、疾患や病変の成り立ちと進行
 A.肝細胞傷害機序
 B.肝の壊死・炎症性変化
 C.肝内胆管障害機序
 D.胆汁うっ滞
 E.肝線維化と血管新生
 F.再生/過形成と肝ステム/前駆細胞
 G.肝硬変
III章 非腫瘍性疾患
 A.ウイルス性肝炎:急性肝炎と慢性肝炎/肝硬変
 B.自己免疫性肝炎
 C.アルコール性肝疾患、NAFLD
  1.アルコール性肝疾患
  2.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
 D.代謝異常、遺伝性疾患
  1.金属代謝異常
  2.ポルフィリン症
  3.糖原病
  4.アミノ酸代謝障害
  5.アミロイドーシス
  6.ライソゾーム貯留症、他の貯留症
  7.体質性黄疸
 E.薬物性肝障害、中毒性肝障害
 F.胆汁うっ滞・胆管の疾患
  1.原発性胆汁性肝硬変
  2.原発性硬化性胆管炎
   a.原発性硬化性胆管炎
   b.IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4関連炎症性偽腫瘍も含む)
  3.その他の二次性硬化性胆管炎、胆管系疾患
 G.循環系、血管系の疾患
  1.肝動脈、門脈、虚血性疾患
  2.中心静脈、肝静脈、うっ血性疾患
  3.代表的な形成異常と肝病変
 H.新生児肝炎、胆汁うっ滞
 I.胆道閉鎖症、形成異常
 J.肉芽腫性疾患、その他の感染症
  1.肉芽腫性疾患の病理
  2.その他の感染症
IV章 肝腫瘍
 A.肝細胞性腫瘍
  1.良性腫瘍・腫瘍類似病変の病理
  2.悪性腫瘍の病理
   a.背景病変、前癌病変と早期病変
   b.古典的肝細胞癌の病理
   c.まれな悪性肝細胞性腫瘍
   d.肝芽腫
   e.肝細胞癌の発癌(遺伝子異常や分子病理を含む)
   f.肝細胞癌の表現型(主に免疫染色)からみた鑑別診断と予後予測
 B.胆管系腫瘍
  1.良性腫瘍の病理
  2.悪性腫瘍の病理
   a.背景病変、前癌病変と早期病変(IPNB、BilINを含む)
   b.浸潤性胆管癌:末梢型と肝門型
   c.発癌(遺伝子異常、分子病理を含む)
   d.肝内胆管癌の表現型(主に免疫染色)からみた鑑別診断と予後予測
 C.混合型肝癌:古典型およびサブタイプ
 D.原発性肝癌の表現型(主に免疫染色)からみた鑑別診断と予後予測(肝細胞癌、肝内胆管癌を除く)
 E.嚢胞性腫瘍/嚢胞性疾患
 F.血管系腫瘍
 G.リンパ・間葉系腫瘍(炎症性偽腫瘍、偽リンパ腫を含む)
 H.転移性
V章 移植関連
 A.肝移植
  1.拒絶反応の病理
   a.急性拒絶反応
   b.慢性拒絶反応
  2.de novo疾患
  3.原疾患の再発
 B.骨髄移植に伴う肝障害の病理
  1.移植片対宿主病
  2.肝静脈閉塞性疾患、自己免疫性肝炎、その他
索引

2010年10月に横浜で開催された第18回 日本消化器関連学会週間(JDDW)の会期中に、第14回 日本肝臓学会大会でワークショップ「肝臓病理最前線」が企画された。わが国を代表する肝臓病理医、さらに韓国、香港の病理医も講師として参加し、肝臓病理の今日的な話題が発表された。JDDWに参加された多くの臨床医が会場に集まり、周到に準備された発表に対して熱心な議論があり、会場は熱気につつまれた。大変好評であった、このワークショップの演者と発表内容を中心に、本書「肝臓を診る医師のための 肝臓病理テキスト」が南江堂により企画された。
 現在、肝疾患における病理診断は、病態解明の進歩、血清診断や画像診断能の向上などにより、その位置づけはかつてほど高いものではなくなったものの、自己免疫性肝炎(AIH)や原発性胆汁性肝硬変(PBC)の診断、臓器移植例での生検診断、また早期診断が可能となった肝腫瘍の質的診断などには、病理組織学が欠かせない。また、肝疾患診療に携わる医師にとって肝臓病理の知識が必須であることに変わりはない。本書は、肝臓病理の今日的なテキストを目指しており、実臨床に有用な最新の内容を余すところなく網羅している。さらに、2010年に発表された新しい「WHO消化器腫瘍分類」や最近のコンセンサスなどを取り入れるなど、この1冊で肝臓病理のすべてが理解できる「肝臓病理のスタンダード」型の単行本となっている。
 本書は5つの章から構成されており、「I章 解剖と発生」では、本書を理解するための一般的な肝臓の解剖と発生が記載してある。「II章 肝臓病理の基礎」では、現在注目されている肝臓の病態を病理学の角度から詳細に、またわかりやすく記載してある。そして「III章 非腫瘍性疾患」、「IV 章肝腫瘍」、「V章 移植関連」では、各論的に肝臓病理を網羅してある。
 本書は、肝疾患診療に携わる臨床医、病理医を対象として、肝臓病理の基本的・実践的知識をまとめたものであり、肝臓専門医、消化器科医、病理医、レジデントに読んでもらうことを意図している。現在、肝臓病理の教科書的な単行本としては、欧米の執筆者が中心となって編集されている「Pathology of the Liver」が代表的である。今回、発刊の運びとなった「肝臓を診る医師のための 肝臓病理テキスト」は、日本を代表する病理専門医が執筆者となり企画され、まさに「Pathology of the Liver」に匹敵する、あるいはこれを超える内容となっていることを自負したい。

2013年3月
中沼安二

中沼安二氏編集の「肝臓を診る医師のための 肝臓病理テキスト」が刊行された。序文によると、中沼氏が会長をされた第14回日本肝臓学会大会の2日目に行われた特別企画「肝臓病理一日コース」の内容をもとに本書が企画されたとのことである。拝読してまず驚いたのは、「I章 解剖と発生」に続く「II章 肝臓病理の基礎」を、中沼氏が自らすべて執筆している点である。非常にわかりやすく書かれてあるのに加えて、種々のサイトカインや増殖因子との関連や肝ステム/前駆細胞についても最新の情報が書かれている。興味を引いたのはhepatocellular injuryを「肝細胞傷害」という表現にした点で、肝臓病理医である中沼氏のこだわりかと思う。私も個人的には、薬物性肝障害はliver injuryなので「肝傷害」が本来なのであろうが、「肝障害」というのが慣例的に使われているので仕方がないと思っている。「III章 非腫瘍性疾患」では、種々の疾患での病理所見について、各分野の専門家がすばらしい病理組織像を提示しながら、各々の分野の最先端のことを含めてわかりやすく執筆している。とくに中沼氏のライフワークである原発性胆汁性肝硬変の項は氏自らが執筆し、最近提案されたNakanuma分類について詳しく述べられている。「IV章 肝腫瘍」は肝細胞性腫瘍、胆管系腫瘍をはじめとする8つの項目からなる。近年、肝腫瘍の鑑別診断に各種免疫染色が広く用いられているが、これらについても詳細にわかりやすく説明されている。胆管癌については、最近注目されている胆管内乳頭状腫瘍(IPNM)や前癌状態である胆管上皮層内腫瘍(BilIN)について、分子病理の最近の進歩も含めて概説されている。「V章 移植関連」では肝移植後の拒絶反応、de novo疾患および原病の再発や骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)などについて、わかりやすく説明されており、移植を行っていない施設の先生方にも興味をもって読んでいただけると確信する。
 私どもは毎月、内科と病理で肝生検カンファを行い、臨床データ、画像と病理所見を付き合わせながら議論を行っているが、本書を拝読し、このカンファでの私どもの肝臓病理への理解がより深まると考える。また、基臨の会(Liver Disease Working Group)という、関東地区の肝臓専門医と肝臓病理医が年2回集まってテーマを決めて会合をもち、現在、私が代表世話人を務めさせていただいている。本書の執筆者のなかにはこの会のメンバーも含まれており、この会の肝臓専門医のメンバーにも一読していただきたい。
 最後になるが、本書は肝疾患診療に携わる臨床医、病理医を対象に書かれたものであり、肝臓専門医のみならず消化器病専門医、病理医や研修医にも広く読んでいただきたいと考える。

臨床雑誌内科113巻1号(2014年1月号)より転載
評者●帝京大学医学部内科学講座主任教授 滝川一

肝臓学を学ぶ者の一人としていつも尊敬申し上げている肝臓病理学者の中沼安二氏が編集・執筆した肝臓病理テキストの決定版がついに刊行された。欧米で著名な「『Pathology of the Liver』の日本版」という序文のキャッチフレーズ通り、編著者・中沼氏の意気込みが随所ににじみ出ているカラー図版満載の教科書である。執筆陣はもちろん各領域のエキスパートであるが、中沼氏自身を含めて教室のスタッフが主要部分の多くを担当し、一貫したスタイルで執筆しているのが特徴であり、教科書として読みやすくまとまっている。また、引用文献は2012年までと最近の論文が多く、最新の知見を多く盛り込んだことも特徴である。
 章立てを追っていくと、「I章 解剖と発生」では基本的な肝の解剖と発生がわかりやすいイラストを多用して解説されている。「II章 肝臓病理の基礎」では肝細胞障害機序、肝内胆管障害機序、胆汁うっ滞、肝線維化と血管新生などの病態生理の解説を、最新の知見を含めて中沼氏自らがすべて執筆している。「III章 非腫瘍性疾患」ではウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、代謝異常、遺伝疾患など、主要な肝疾患が各専門家によって、これも最新の知見を加えながら解説されている。最近注目されているIgG4関連硬化性胆管炎、同炎症性偽腫瘍についても5ページを割いて詳細に解説している。「IV章 肝腫瘍」では肝細胞癌、胆管細胞癌の発癌過程についての解説がすばらしい。特に中沼氏が世界をリードしている研究分野であるintraductal papillary neoplasm of bile duct(IPNB)、biliary intraepithelial neoplasia(BilIN)に関する記述は詳細で、現在改訂作業が進行中の『原発性肝癌取扱い規約』(第6版)や『胆道癌取扱い規約』(第6版)にも採用が検討されている。「V章 移植関連」は筆者のような移植外科医にはたいへんありがたい章の設定で、拒絶だけでなく原疾患の再発診断などについても解説されている。
 序文中にある「病態解明の進歩や血清診断、画像診断の進歩によって、肝疾患の病理診断はかつてほど重要ではなくなったかもしれない」という中沼氏の記述は、やや自虐的でショッキングでさえある。確かに臨床の現場では肝硬変や肝細胞癌の診断は病理検査をまたずになされ、治療が開始されることが多い。しかし、病理診断がなされてはじめて診断やステージが確定し、その後の診療方針が決まることも臨床の原則である。病理診断というゴールド・スタンダードがあってはじめて、たとえばエラストグラフィなどの新しい診断法の価値が実証されてきた。また肝移植の医療現場において、治療方針を誤ればgraft lossにつながる急性拒絶の診断は、肝生検による病理診断が不可欠である。血清の肝機能データが動いて必要と判断したら、休日でも生検して移植医がまず顕微鏡をのぞくことも珍しくない。このように筆者がくどくど解説しなくても、本書を一読すれば肝疾患の臨床に肝臓病理学がいかに重要かわかるでしょう、という中沼氏の逆説めいたメッセージが序文に込められていることは明らかである。
 本書タイトルにもある通り、「肝臓を診る」すべての医師にすすめられる「肝臓病理テキスト」である。

臨床雑誌外科75巻13号(2013年12月号)より転載
評者●東京大学肝胆膵外科・人工臓器移植外科教授 國土典宏

関連書籍

胆道疾患を診る医師のための胆道病理テキスト
胆道疾患を診る医師のための胆道病理テキスト
詳しく見る