書籍

RHOTON 頭蓋内脳神経解剖と手術アプローチ

  • 新刊

監訳 : 松島俊夫/井上亨
ISBN : 978-4-524-26915-0
発行年月 : 2017年10月
判型 : A4
ページ数 : 734

在庫あり

定価21,600円(本体20,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

脳外科学領域の微小解剖の権威Albert L.Rhoton Jr.による、頭蓋臨床解剖と手術アプローチの実際を示した名著の翻訳版。各部位別の顕微解剖と外科的アプローチを高精細な解剖画像を多数用いてビジュアルに解説。基本手技や手術用器具についても解説しており、安全かつ正確な手術の実践に資する内容となっている。

監訳者序文−我らの師Rhoton先生:脳神経微小外科解剖の先達
編集者序文−見るも驚嘆(Mirabile Visu)
原著者序文−脳と頭蓋底:微小外科解剖と外科到達法(The Brain and Cranial Base:Microsurgical Anatomy and Surgical Approaches)
第I部 脳神経外科における手術手技と器械使用法(OPERATIVE TECHNIQUES AND INSTRUMENTATION FOR NEUROSURGERY)
 第1章 脳神経外科における手術手技と器械使用法(Operative Techniques and Instrumentation for Neurosurgery)
  1 一般的事象
  2 頭部固定具
  3 手術器具の選択
  4 手術用顕微鏡
  5 超音波.離装置・レーザー.離装置28
第II部 テント上頭蓋スペース−微小外科解剖と手術アプローチ(THE SUPRATENTORIAL CRANIAL SPACE:MICROSURGICAL ANATOMY AND SURGICAL APPROACHES)
 第1章 大脳(The Cerebrum)
  1 大脳半球
  2 シルビウス裂
  3 脳溝と脳回
  4 中心核
  5 白質
  6 中心核における灰白質
  7 考察
 第2章 テント上動脈(The Supratentorial Arteries)
  1 床上部内頚動脈
  2 眼動脈
  3 後交通動脈
  4 前脈絡叢動脈
  5 中大脳動脈
  6 前大脳動脈
  7 前穿通動脈
  8 ウィリス動脈輪の後方部
  9 後大脳動脈
 第3章 脳動脈瘤(Aneurysms)
  1 脳動脈瘤発生部位
  2 直達手術の解剖学的重要事項
  3 手術アプローチ
 第4章 大脳静脈(The Cerebral Veins)
  1 表在静脈
  2 深部静脈
  3 脳室グループ
  4 脳槽グループ
  5 考察と手術アプローチ
 第5章 側脳室と第三脳室(The Lateral and Third Ventricles)
  1 側脳室
  2 第三脳室
  3 動脈との関連
  4 静脈との関連
  5 外科的考察
  6 手術アプローチ
  7 手術アプローチの選択
 第6章 前・中頭蓋底(The Anterior and Middle Cranial Base)
  1 前頭蓋底
  2 中頭蓋底
  3 後頭蓋底
  4 考察
 第7章 眼窩(The Orbit)
  1 骨構造との関連
  2 眼窩骨膜,硬膜および総腱輪
  3 神経との関連
  4 動脈との関連
  5 静脈との関連
  6 筋肉と腱との関連
  7 外科的検討
 第8章 トルコ鞍部(The Sellar Region)
  1 頭蓋下との関連
  2 鞍上部および第三脳室周囲
  3 考察と手術アプローチ
 第9章 海綿静脈洞,海綿静脈洞静脈叢,内頚動脈襟(The Cavernous Sinus,the Cavernous Venous Plexus,and the Carotid Collar)
  1 海綿静脈洞
  2 骨構造との関連
  3 硬膜との関連
  4 神経との関連
  5 海綿静脈洞と中頭蓋窩の三角群
  6 動脈との関連
  7 静脈との関連
  8 考察
第III部 後頭蓋窩−微小外科解剖と手術アプローチ(THE POSTERIOR CRANIAL FOSSA:MICROSURGICAL ANATOMY AND SURGICAL APPROACHES)
 第1章 小脳半球と第四脳室(Cerebellum and Fourth Ventricle)
  1 小脳半球面
  2 第四脳室と小脳脳幹裂
  3 外側陥凹と小脳橋裂
  4 脈絡叢
  5 脳幹と脳室底
  6 血管との関連
  7 考察
 第2章 小脳動脈(The Cerebellar Arteries)
  1 上小脳動脈
  2 前下小脳動脈
  3 後下小脳動脈
 第3章 後頭蓋窩静脈(The Posterior Fossa Veins)
  1 表在静脈
  2 深部静脈
  3 脳幹静脈
  4 主な灌流グループ
  5 考察
 第4章 外側後頭下開頭後頭蓋窩法による小脳橋角部と後頭蓋窩脳神経(The Cerebellopontine Angle and Posterior Fossa Cranial Nerves by the Retrosigmoid Approach)
  1 上部神経血管複合体
  2 中間部神経血管複合体
  3 下部神経血管複合体
 第5章 テント切痕(Tentorial Incisura)
  1 小脳テントの解剖
  2 テント切痕
  3 テント切痕前隙
  4 テント切痕中隙
  5 テント切痕後隙
  6 考察
 第6章 大[後頭]孔(The Foramen Magnum)
  1 大[後頭]孔
  2 考察
 第7章 Far-lateral approachのバリエーション:後頭顆経由法,後頭顆上部経由法,後頭顆外側部経由法(The Far-lateral Approach and Its Transcondylar,Supracondylar,and Paracondylar Extensions)
  1 手術手順
  2 考察
 第8章 側頭骨と経側頭骨アプローチ(The Temporal Bone and Transtemporal Approaches)
  1 側頭骨と経側頭骨アプローチ
  2 手術アプローチ
  3 考察
 第9章 頚静脈孔(Jugular Foramen)
  1 骨構造との関連
  2 周囲の骨構造
  3 動脈との関連
  4 静脈との関連
  5 筋肉との関連
  6 手術アプローチ
  7 考察
 第10章 後頭蓋窩脳槽(The Posterior Fossa Cisterns)
  1 脚間槽とリリキスト膜
  2 橋前槽
  3 小脳橋角槽
  4 延髄前槽
  5 小脳延髄槽
  6 大槽
  7 四丘体槽
  8 上小脳槽
  9 考察
索引(Rhoton’s Anatomy)
著者・監訳者プロフィール

監訳者序文

我らの師Rhoton先生:脳神経微小外科解剖の先達

 長年望んでいたRhoton先生の名著「RHOTON-Cranial Anatomy and Surgical Approaches」(Neurosurgery)の日本語版をお届けすることができて、大変に嬉しい。Rhoton先生は、言うまでもなくフロリダ大学医学部で長年脳神経外科学の教授を務められた脳の微小外科解剖のパイオニアであり世界的権威である。また、監訳者の松島俊夫・井上 亨および訳者の多くの恩師でもあるので、以下でも普段の呼び方である「Rhoton先生」という表現をさせていただく。
 原書は、雑誌「Neurosurgery」のミレニアム号と25周年記念号を合わせて書籍としてまとめられたものであり、また同時にRhoton先生が1960年代から始められた微小外科解剖研究の2003年までの約40年間に及ぶ研究成果の集大成でもある。脳神経学を専攻する者にとってまさにバイブルと言っても過言ではない。本書の内容紹介については、原書の雑誌「Neurosurgery」誌の編集者序文と、Rhoton先生の原著者序文の訳に詳しいので、そちらを参照されたい。
 翻訳作業には2014年春から本格的に取りかかった。原書が700ページを超える膨大なものなので、フロリダ大学Rhoton研究室留学者を中心に総勢32名の体制で翻訳に臨むとともに、松島・井上で監訳を分担した。Rhoton先生が書かれた文章がより正確に翻訳されるように、訳者にはフロリダ大学留学中の研究内容に呼応した章の翻訳を担当してもらった。その傍ら、1冊の本としてのまとまりを持たせるため、特に解剖用語に統一性を持たせるように努力した。英語解剖用語に対応する日本語解剖用語がないものが多数あったため、監訳者と一部訳者で小委員会を立ち上げ、「解剖学用語」(日本解剖学会監修、医学書院)などを参考に、新たな日本語訳を作った。特に、小林茂昭先生(信州大学名誉教授)、山本勇夫先生(横浜市立大学名誉教授)にご意見をいただき、翻訳のための2,000語弱の解剖用語のリストを作成する作業に約1年を要した。脳神経外科医のみならず、神経放射線科医、神経内科医、解剖学専攻医や医学部学生にも理解しやすいようにと、基本的に人名以外の解剖用語をすべて日本語に訳すとともに、英語で慣れ親しまれている一部の単語は、英語を併記した。一方、図に対して長い説明文が付されているものが多いが、この説明文は比較的やさしい英語なので、原文のまま残した。本文を読まれて図をご覧いただけば、説明文の英語は容易に理解できるものと思う。本書の翻訳の機会をいただき、光栄に感じるとともにRhoton先生の知識を正確に訳し伝えなければとの責任を強く感じて監訳作業にあたった。この仕事の完成の日をついに迎え、これで日本人も母国語でこの膨大な脳神経解剖書を勉強できると安堵した気持ちである。
 ここで、監訳者のRhoton先生とのかかわりを、本書への思いをお伝えすることも兼ねて記させていただく。
 松島は、フロリダ大学へ留学した1980年以来約35年間、松島本人のプロジェクトのみならず、後輩リサーチフェローたちのプロジェクトの手伝いを通してRhoton研究室の仕事にかかわらせていただき、先生のご指導を受けた。1980年7月から第1回目の留学をしたが、研究開始当初はゆっくり話される先生の英語すら聞き取れなかったのを覚えている。松島が質問事項を手紙にして先生にお渡ししたのが始まりで、しばらくの間は毎日手紙をやり取りしながら研究を始めた。先生は日々大変お忙しかったにもかかわらず、本当に辛抱強く親切にご指導してくださったものだと思う。先生の優しさと忍耐強さがなければ、松島のその後の長年にわたる神経解剖の勉強はなかったものと感じている。帰国後、Rhoton研究室の外科解剖の仕事と経験が脳神経外科医にとって大変役立つと確信し、無給にもかかわらず多くの後輩たちにRhoton研究室への留学を勧めた。
 先生は、米国内にとどまらず世界中で頻繁に講演や実習指導をされた。そうした機会に松島にもときどきお誘いがかかり、ご一緒させていただいた。先生は毎日鉄アレイを使ったトレーニングをされていた。これは、パソコンがない時代の講演旅行の際に、膨大なスライドが入った大変重いスーツケースをご自身で運ばれていたためであろう。また腕立て伏せやジョギングを趣味にされたのも、講演旅行が多いお忙しい生活での健康管理を考えてのことと思われる。研究・論文作成にも「perfect」を求められる先生は、ご自身の講演に対する準備にもすさまじいものがあった。3D映写設営を前日からご自身も加わり準備されていたポルトガルのブラガでのセミナーや、まだ朝食時間前の早朝からホテルを出て講演会場へご一緒したドイツのフランクフルトでのセミナー旅行が思い出される。翻訳の仕事をしている最中に、これらの月日のさまざまな思い出が蘇ってきた。松島が先生と過ごした約30余年が、あっという間にすぎたような気がする。
 井上は、九州大学神経病理で脳腫瘍の研究をしていたときに、フロリダ大学から帰国した松島に出会い、微小外科解剖の大切さを知り、その美しさに魅せられた。1986年、日本で最初の微小脳神経外科解剖セミナーが九州大学で開催され、会場係を務めるとともにRhoton先生の講義を最前列で拝聴したのをきっかけに留学を決意した。故北村勝俊九州大学脳神経外科名誉教授と松島の推薦をいただき1987年にフロリダ大学へ留学した。当時、先生は若く、研究と手術に大活躍されていた。研究の合間に、下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、三叉神経痛など多くの手術を見学させてもらった。1980年代は、頭蓋底外科草分けの時代であり、井上に与えられたテーマは海綿静脈洞であった。Rhoton研究室には国内外から多くの来客があり、先生自身も海外講演が多く、研究について相談できるのは月に1回、日曜日くらいであった。英語に慣れない井上にも懇切丁寧にご指導いただいたことを心から感謝している。研究テーマ以外にも、脳脊髄すべての微小外科解剖を2年間しっかりと勉強することができたのは、井上の脳神経外科医としての人生の最大の喜びであった。帰国後は、松島を兄と慕い、手術に専念する傍ら日本での微小外科解剖の普及と教育に努めた。
 Rhoton先生にお誘いいただいてメキシコのアカプルコ、米国ラスベガスの学会へ同行したのは懐かしい思い出である。拙い英語での微小外科解剖講義であったが、聴衆が真剣に聴いてくれるので嬉しかった。井上は、帰国後すぐに勤務した福岡県の飯塚病院で若手医師を集め、微小外科解剖の実習コース(ぼた山会)を開始した。企業の協力も得られ充実した勉強会であったと思う。現在、井上は勤務する福岡大学で松島とともにRhoton Memorial Conferenceを年1回、Rhoton研究室の留学者たちの力を借りて開催している。先生の教育に対する情熱を引き継ぎ、1人でも多くの優れた脳神経外科医を育てるのが最大の恩返しと思う。今回、松島・井上で本書の監訳を担う機会を得たのは至上の喜びである。
 翻訳作業中にRhoton先生がご病気と伝えられ、松島は2016年1月にフロリダにお見舞いに伺った。先生はお元気なご様子で、毎日数時間名誉教授室に通われ、リサーチフェローの研究の指導をされていた。そのときに先生が語られた今後の研究計画は、80歳を超えているとは思えないほど情熱にあふれたものであった。残念なことに翌月に急逝され、先生の思いがかなうことはなかったが、先生はわれわれに、そして後から続く者に多くのものを遺された。手術を屍体解剖から真摯に学ぶ、手術にしろ研究にしろ「more accurate,safe and gentle」に行う、「keep working hard」に、人間として辛抱強くなければならないこと、などがまず頭に浮かんでくる。これらの尊い教えを胸に刻み、今後も医師として、脳神経外科医として、教育者として自分たちの責務を果たしていきたい。
 完成した本書を生前にお見せできなかったのは残念であるが、若い医師たちが本書を通じてRhoton先生の志を引き継ぎ、よき脳神経外科医を目指してくれることを願ってやまない。
 最後になったが、本書を出版するにあたり、このような機会を下さった南江堂に、特に担当された多田哲夫氏と倉持隆史氏のご尽力に深謝する。

2017年9月
松島俊夫
井上亨